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資料1999年02月08日 【裁決事例】 滞納国税の保証人に対する告知処分は、滞納国税の徴収権の消滅時効の完成前になされたとした事例(納税者Kの滞納国税に係る保証人に対する納付通知書による告知処分/棄却)

(平11.2.8裁決、裁決事例集No.57 64頁)

《裁決書(抄)》
1 事実
(1)事案の概要
 本件は、滞納国税の保証人に対する納付通知書による告知処分が、時効の完成による滞納国税の徴収権の消滅後になされたか否かが争われた事案である。
(2)審査請求に至る経緯
 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成3年12月20日に、P市R町2丁目47番地の7―706号に居住していたK(以下「滞納者」という。)の納付すべき税額(以下「本件国税」という。)について、別表1のとおり、納税を保証する旨の書面(以下「本件納税保証書」という。)を提出した。
 そこで、原処分庁は、これを担保として、国税徴収法(以下「徴収法」という。)第151条《換価の猶予の要件等》第1項第1号の規定により、滞納者に対し別表2のとおり、換価の猶予期間を平成3年12月20日から平成4年3月31日までとする換価の猶予の通知をした。
 次いで、原処分庁は、滞納者が換価の猶予期間を経過しても猶予税額の一部しか納付しなかったため、更に徴収法第151条第1項第2号の規定により、滞納者に対し別表3のとおり、換価の猶予期間を平成4年12月24日から平成5年12月23日までとする換価の猶予の通知をした。
 その後、滞納者は、別表4に記載のとおり、平成5年10月28日に100,000円を納付した後、行方不明となった。
 このため、原処分庁は、国税通則法(以下「通則法」という。)第52条《担保の処分》第2項の規定により、請求人に対して別表5のとおり、納付の期限を平成9年5月19日とする同年4月17日付の告知処分(以下「本件告知処分」という。)をした。
 請求人は、原処分を不服として、平成9年6月16日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年9月10日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分について、なお不服があるとして平成9年10月8日に審査請求をした。

2 主張
(1)原処分庁
 請求人は、本件告知処分時には既に本件国税の徴収権が時効により消滅していると主張し、原処分の取消しを求めているが、原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 国税の徴収権は、通則法第72条《国税の徴収権の消滅時効》第1項の規定により、その国税の法定納期限から5年間行使しないことによって時効により消滅するが、同法第73条《時効の中断及び停止》第1項第4号の規定により、督促状が滞納者に送達された時に時効が中断し、督促状を発した日から起算して10日を経過した日まで中断事由は継続し、その後、時効は進行する。
 また、換価の猶予に係る部分の国税については、同法第73条第4項の規定により、その猶予がされている期間内は国税の徴収権の時効が進行しないこととされている。
ロ これを本件についてみると、次に述べるとおり、本件告知処分時には、本件国税は、時効の中断及び停止の措置により、国税の徴収権が消滅しておらず、完納されていないから、本件告知処分は、通則法第52条第2項の規定により適法に行われている。
(イ)本件国税のうち昭和63年分、平成元年分及び平成2年分の所得税の各修正申告に係る納付すべき税額(以下「本件本税」といい、本件本税を各別に「昭和63年分修正本税」、「平成元年分修正本税」及び「平成2年分修正本税」という。)及び本件本税に係る延滞税(以下「本件延滞税」という。)については、平成4年1月29日付で督促がされており、時効の中断措置が採られていること。
(ロ)本件国税のうち昭和63年分、平成元年分及び平成2年分の所得税の各修正申告に係る過少申告加算税及び重加算税(以下「本件加算税」という。)については、平成4年3月30日付で督促がされており、時効の中断措置が採られていること。
(ハ)本件国税については、平成3年12月20日から平成4年3月31日まで換価の猶予がされており、その期間について時効の進行が停止していること。
(ニ)本件国税のうち平成元年分修正本税、平成2年分修正本税、本件加算税及び本件延滞税については、更に平成4年12月24日から平成5年12月23日まで換価の猶予がされており、その期間について時効の進行が停止していること。
(2)請求人
 原処分は、次の理由により、平成9年4月17日付で本件告知処分がされた時点で国税の徴収権が時効の完成により消滅しており、違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 国税の徴収権の時効は、督促の日に中断するが、その翌日から新たに進行し、5年以上の期間が経過した時に完成すると解される。
 よって、平成4年1月29日に督促された本件本税及び本件延滞税は同月30日から、また、同年3月30日に督促された本件加算税は同月31日から、それぞれ時効が新たに進行し、この時から5年以上の期間が経過した時に、消滅時効が完成する。
ロ 換価の猶予期間の時効の停止は無期限の効力があるものではなく、実際の換価手続が換価の猶予期間内に行われないときは、時効の停止の効力は失効すると解される。
 原処分庁は、滞納者に対する換価の猶予期間の平成3年12月20日から平成4年3月31日まで及び平成4年12月24日から平成5年12月23日までの間に、実際の換価手続を行っていないので、時効の停止の効力は失効している。

3 判断
 本件審査請求の争点は、本件告知処分が時効の完成による本件国税の徴収権の消滅後に行われた違法な処分であるか否かであるので、以下審理する。
(1)認定事実
 次の事実については、当事者間に争いがなく、原処分関係資料及び当審判所が調査したところによっても認められる。
イ 滞納者は、原処分庁の所得税の調査に基づき平成3年9月26日に、昭和63年分、平成元年分及び平成2年分の所得税の各修正申告書を原処分庁に提出したこと。
ロ 請求人は、滞納者を通じて平成3年12月20日に、本件納税保証書を原処分庁に提出したこと。
ハ 原処分庁は、滞納者に対し、平成4年1月28日付で本件加算税の各賦課決定処分をしたこと。
ニ 原処分庁は、本件本税及び本件延滞税が納期限までに完納されないことから、滞納者に対し、平成4年1月29日付で通則法第37条《督促》の規定により督促したこと。
ホ 原処分庁は、徴収法第151条第1項第1号の規定により、滞納者に対し、平成4年2月20日付で、上記ロを担保として、本件国税について平成3年12月20日から平成4年3月31日までの間、別表2のとおり換価の猶予をする通知をしたこと。
ヘ 原処分庁は、本件加算税が納期限までに完納されないことから、滞納者に対し、平成4年3月30日付で通則法第37条の規定により督促したこと。
ト 原処分庁は、本件国税のうち上記ホの換価の猶予期間を経過しても完納されなかった額について、更に財産の換価を猶予することが徴収上有利であると判断して、徴収法第151条第1項第2号の規定により、滞納者に対し、平成4年12月24日付で、上記ロを担保として、同日から平成5年12月23日までの間、別表3のとおり換価の猶予をする通知をしたこと。
チ 原処分庁は、請求人に対し、平成9年4月17日付で納付の期限を同年5月19日とする本件告知処分をしたこと。また、本件告知処分に係る納付通知書が、同年4月18日に配達証明郵便により請求人に送達され、その時に本件告知処分の効力が生じたこと。
リ 原処分庁は、請求人に対し、平成9年5月26日付で通則法第52条第3項の規定により、納付催告をしたこと。
ヌ 本件国税の納付状況は、別表4のとおりであること。
(2)本件告知処分の違法性の有無について
イ 通則法第72条第1項は、国税の徴収権はその国税の法定納期限から5年間行使しないことによって時効により消滅する旨規定している。
 また、同法第73条第1項は、国税の徴収権の時効は、〔1〕更正又は決定、〔2〕賦課決定、〔3〕納税に関する告知、〔4〕督促及び〔5〕交付要求の各処分に係る部分の国税について、その処分の効力が生じた時に中断し、同項各号に掲げる期間を経過した時から更に進行する旨規定している。
 そして、同条第4項は、〔1〕延納、〔2〕納税の猶予、〔3〕換価の猶予及び〔4〕徴収の猶予又は滞納処分の続行停止に係る部分の国税(当該部分の国税にあわせて納付すべき延滞税を含む。)については、その延納又は猶予がされている期間内は時効が進行しない旨規定している。
 さらに、同条第5項は、国税(附帯税を除く。)について時効が中断するとき及び納付されたときは、その中断及び納付された部分の国税に係る延滞税は時効が中断する旨規定している。そして、通則法第57条《充当》第2項は、同条第1項の規定による充当があった場合には、政令で定める充当をするのに適することとなった時に、その充当をした還付金等に相当する額の国税の納付があったものとみなす旨規定しているから、通則法第73条第5項に規定する「納付」には充当が含まれると解するのが相当である。
ロ 上記(1)の事実を上記イに照らして、本件告知処分の効力が生じた日の前日(平成9年4月17日)までにおける本件国税の時効の経過期間を判断したところ、次のとおりである。(イ)別表5の「〔1〕」欄の延滞税203,800円(以下「〔1〕欄の延滞税」という。)は、昭和63年分修正本税が別表4の「〔1〕」欄の納付状況のとおり平成4年6月16日に完納され延滞税の額が確定したことから、同日に時効が中断している。
 また、〔1〕欄の延滞税は、上記(1)のトのとおり換価の猶予が、平成4年12月24日から平成5年12月23日まで行われているため、その期間の時効は進行しない。
 この結果、〔1〕欄の延滞税の時効の経過期間は、平成4年6月17日から同年12月23日までの190日及び平成5年12月24日から平成9年4月17日までの3年115日を通算した3年305日であり、5年を経過しておらず、時効は完成していない。
(ロ)別表5の「〔2〕」欄の延滞税453,000円(以下「〔2〕欄の延滞税」という。)は、平成元年分修正本税が別表4の「〔2〕」欄の納付状況のとおり平成5年1月26日に完納され延滞税の額が確定したことから、同日に時効が中断している。
 また、〔2〕欄の延滞税は、上記(1)のトのとおり換価の猶予が平成4年12月24日から平成5年12月23日まで行われているため、その期間の時効は進行しない。
 この結果、〔2〕欄の延滞税の時効の経過期間は、平成5年12月24日から平成9年4月17日までの3年115日であり、5年を経過しておらず、時効は完成していない。
(ハ)別表5の「〔3〕」欄の本税1,026,200円(以下「〔3〕欄の本税」という。)は、平成2年分修正本税1,826,200円の一部であるところ、〔3〕欄の本税及びそれとあわせて納付すべき延滞税は、平成4年1月29日付で督促状が発せられており、当該督促状が請求人に送達された日(通則法第12条《書類の送達》第2項の規定により、郵便物が通常到達すべきであった時に送達があったものと推定される。)に時効が中断し、当該督促状を発した日から起算して10日を経過した日である同年2月8日まで中断事由は継続している。
 また、〔3〕欄の本税及びそれとあわせて納付すべき延滞税は、上記(1)のホ及びトのとおり換価の猶予が平成3年12月20日から平成4年3月31日まで及び平成4年12月24日から平成5年12月23日まで行われているため、その期間内、時効は進行しない。
 この結果、〔3〕欄の本税及びそれとあわせて納付すべき延滞税の時効の経過期間は、平成5年2月26日から同年10月28日までの間における一部納付による中断の有無を考慮しないで判断した場合でも、平成4年4月1日から同年12月23日までの267日及び平成5年12月24日から平成9年4月17日までの3年115日を通算した4年17日であり、5年を経過しておらず、時効は完成していない。
(ニ)別表5の「〔4〕から〔6〕」欄の本件加算税は、平成4年3月30日付で督促状が発せられており、当該督促状が請求人に送達された日(通則法第12条第2項の規定により、郵便物が通常到達すべきであった時に送達があったものと推定される。)に時効が中断し、当該督促状を発した日から起算して10日を経過した日である同年4月9日まで中断事由は継続している。
 また、本件加算税は、上記(1)のトのとおり換価の猶予が平成4年12月24日から平成5年12月23日まで行われているため、その期間内、時効は進行しない。
 この結果、本件加算税の時効の経過期間は、平成4年4月10日から同年12月23日までの258日及び平成5年12月24日から平成9年4月17日までの3年115日を通算した4年8日であり、5年を経過しておらず、時効は完成していない。
ハ 請求人は、換価の猶予期間の時効の停止は無期限の効力があるものではなく、実際の換価手続が換価の猶予期間内に行われないときは失効する旨主張するが、通則法第73条第4項の規定により、換価の猶予期間内は国税の徴収権の時効は進行しないことが明らかであるから、請求人の主張には理由がない。
ニ 以上の審理の結果、本件国税はいずれも時効は完成しておらず、滞納者に対する国税の徴収権は消滅していないことから、本件告知処分は適法であると認められる。したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても相当と認められる。






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