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解説記事2002年12月09日 【税制改正】 政府税調「平成15年度における税制改革についての答申」を読み解く(2002年12月9日号・プレ創刊第2号)

政府税調「平成15年度における税制改革についての答申」を読み解く
社団法人日本経済団体連合会経済本部税制グループ長 阿部泰久


政府税制調査会は、例年より一か月ほど早く、11月19日に来年度税制改正に関する答申をとりまとめた。本稿では、年初来の税制改革議論を総括しつつ、この答申を読み解いていきたい。

「基本方針」から「答申」へ
今年は、税制改革を経済構造改革の一翼に位置付けるとの小泉総理の方針のもと、年明けから税制改革論議が進められ、政府税調では、既に6月に「あるべき税制の構築に向けた基本方針」を取りまとめた。今回の答申は、基本方針で示した「あるべき税制」の構築に向けての第一歩として、平成15年度税制改正に当たっての指針を示したものとされている。

 6月の基本方針は、様々な視点=理念を掲げながらも、税制改革とは財政再建のために「税の空洞化」を修復するものであるとの立場を明確にし、各税目にわたって極めて増税色が濃いものであった。同じく6月に経済財政諮問会議が示した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」が、税制改革として個人や企業の「活力」を支える税制を志向したのに対比され、政府として、財政再建か経済活性のいずれが優先されるのかが問われていた。

 その後、株価の急激な下落や、経済の先行き不安、さらには金融機関の不良債権処理がもたらす企業倒産や失業増大への懸念が高まる中、政府税制調査会として「基本方針」と来年度税制改正答申をどのように調和させるのかが関心事であったが、答申では基本方針で示した措置を実施することが当然としつつ、「現下の経済情勢を踏まえ、その実施時期を調整することにより、全体として減税を先行させることも政策判断としてやむを得ない」としつつ、「一定期間での税収中立」および将来の増税を含む「一括法」を求め、減税のみの先食いを牽制している。


法人課税
答申の中で先行減税の内容についてかなり具体的に踏み込んでいるのが、法人課税の政策減税である。
 その第一は、研究開発税制であり、研究開発支出の総額の一定割合を控除する制度の導入、さらに制度の基幹的部分を期限を区切らない措置とするとしている。
 第二は、設備投資税制であり、一般的な投資促進税制を否定した上で、期限を区切ったIT投資の促進、研究開発設備の取得に対する支援措置を挙げている。

 一方、「国の法人税率」については、数次の引き下げにより既に先進国並みであり、「現在これ以上の税率引き下げを行なうことは適当でない」としつつ、法人税負担水準の見直しは、税体系全体のあり方の見直しの中での検討課題としている。ここで注目すべきは、あえて「国の」法人税率としていることであり、地方課税である法人事業税、法人住民税の水準については含みを残している。これは法人事業税に外形標準課税を導入することで税率を引き下げる道筋への布石とも言えよう。ただし、外形標準課税については「早急に導入すべきである」とするのみで、昨年末の与党税制改正大綱で15年度導入を目途としていたことからすれば先送りの感は否めない。

 なお、連結付加税については、15年度末までが期限であるにもかかわらず、あえて言及し「連結納税の選択の実態等を踏まえ」あり方を検討するとして、来年度からの撤廃を意識している。

デフレ対策としての税制措置

現下の経済運営における最優先課題は、デフレ経済からの脱却であるのは、政府の基本見解でもある。答申では、このような観点には一切触れられていないが、具体的税目の中では土地、株式や個人消費・住宅投資促進につながる税制措置をいくつか挙げている。

 まず、生前贈与の促進策となる相続時精算課税制度の具体的提案を行なうとともに、都市再生等土地の有効利用促進の観点からの土地流通課税(登録免許税、不動産取得税)の見直し軽減を検討することとしている。

 株式については、利子・配当・株式譲渡益への課税の一体化を目標とした上で、配当や株式投資に対する課税の簡素化・合理化、さらには、株式譲渡益課税の改善に触れている。

 一方、土地税制でも固定資産税については、地価公示価格に対する7割評価を維持しつつ、「これまでの負担調整措置を基本に、負担の均衡化・適正化を一層促進する」として、評価換えによる減収を背景に、制度的減税の否定のみならず、現行方式のもとでの増収を企図している。

 なお、金融機関の不良債権処理と税制とのかかわりについても、1節を設けて検討するとしているが、欠損金の15年にわたる繰り戻し控除・繰越控除期間の10年への延長については、課税の適正・公平性などを理由に否定的である。

増税措置

一方で増税となる項目については、6月の基本方針に沿って、個人所得課税の人的控除の簡素化・集約化、消費税の益税解消を主に取り上げている。

 所得税では、配偶者特別控除・特定扶養控除の廃止・縮減を15年度税制改正において取り組むべきとする他、個人住民税では控除水準を所得税より低くするよう見直すとするのに加えて、均等割りの見直しに言及入していることが注目される。

 消費税では、免税点(現行年間課税売上高3,000万円)の見直しについて、法人事業者は全廃とし、簡易課税制度についても原則廃止としている。

 なお、増税項目としては、これらに加えて酒税とたばこ税が明記されている。

今後の展望

以上、政府税制調査会答申を概観してきたが、減税・増税のいずれの項目についても方向性を示すのみで具体的な数字には触れられていない。政府税制調査会は早めに方向性を示し、額を決めていく作業は自民党税制調査会に委ねるとの方法は、従来、答申が自民党大綱と同時に示され、事実上、自民党税調の議論に平仄を合わせるのに腐心していたことからすれば大きな改善ではある。

 平成15年度税制改正をめぐる議論は自民党税制調査会に移り、12月13日を目途に与党税制改正大綱が取りまとめられる予定であるが、政治が、答申をそのまま尊重するとは限らない。

 第一に、答申が示した増税項目については、個人所得課税、消費税の益税解消ともに大きな抵抗が予想される。場合によっては増税はたばこや酒のみとなることもあり得よう。

 一方で、減税規模について1兆円を超える「出来る限りの規模」が大きな議論となる。財務省は1兆円+15年度増税額でしかありえないとするが、増税が抑えられる一方、減税の拡大を求める声は与党内に澎湃としてある。そうなれば、一定期間内税収中立や一括法による処理という枠組みも困難になる。

 今後、1月足らずの自民党税制調査会の議論がどのような展開をたどるのか。本当の税制改正は、やはり、年末の党税調が決めることになる

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