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資料2020年10月21日 【税制改正関連情報】 第3回納税環境整備に関する専門家会合 議事録

第3回納税環境整備に関する専門家会合 議事録

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納税環境整備に関する専門家会合(第3回)議事録
日 時:令和2年10月21日(水)13時00分
場 所:WEB会議(財務省第1会議室を含む)

○岡村座長
それでは、時間となりましたので、ただいまから「納税環境整備に関する専門家会
合」の第3回を開会します。
今回も委員の皆様方の御理解、御協力をいただき、オンラインを利用した会議とさ
せていただきました。
本日の出席者一覧は、お手元にお配りさせていただいております配席図を御確認く
ださい。
会議の途中でパソコン操作などに支障が生じましたら、事務局を呼んでいただくか、
あらかじめお伝えしております事務局の電話番号に御連絡をいただければ、対応させ
ていただきます。
先般の第2回会合におきましては、税務手続の電子化や記帳水準の向上について、
皆様に御議論、御意見をいただきました。
今回の第3回会合におきましては、税務上の書面、押印、対面原則の見直しや、課
税実務をめぐる環境変化への対応について、議論を行っていきたいと思います。
それでは、申し訳ございませんが、ここでカメラの皆様は御退席をお願いします。
(報道関係者退室)
○岡村座長
それでは、議論に入りたいと思います。
本日は、税務上の書面、押印、対面原則の見直しについて議論を行い、その後、課
税実務をめぐる環境変化への対応についての議論を行いたいと思います。
まず税務上の書面、押印、対面原則の見直しについて、議論を行いたいと思います。
国税について、事務局より説明をお願いします。
資料は、実3-1になります。
主税局税制第一課の中島企画官、よろしくお願いします。
○中島主税局税制第一課企画官
主税局税制第一課の通則法規の担当をしております、中島と申します。
国税関係ですが、2ページ目をおめくりいただけますでしょうか。これまでの経緯
ということです。
上半分は令和2年7月2日の規制改革推進会議の答申から抜粋したものでして、ア
ンダーラインを引いているところで、「行政手続において、書面・押印・対面を求め
るすべての法令や慣行について、次のとおり全面的に見直しを行うべきである」とい
ったところです。
書面規制につきましては、オンライン利用の円滑化のための様式の簡素化や添付書
類の削減、あるいはオンライン化を推進していく。
もう一つは、押印原則については、押印を求める行政手続等について、押印の必要
性を検証し、真に必要な場合を除き、押印を廃止。押印を残す場合にも、電子的に代
替できる方策を明確にする。
最後、対面手続につきましては、デジタル技術を活用したオンライン対応を検討す
るといった基本的な考え方に基づいて、行政手続全般について、見直しを行っていく
といった方針であります。
これを受けた形で、下半分は令和2年7月17日の閣議決定からの抜粋ですが、各府
省は、緊急対応を行った手続だけでなく、原則として全ての見直し対象手続について、
恒久的な制度的対応として、年内に規制改革推進会議が提示する基準に照らして、順
次必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行う。
見直し対象手続は、注書きのところにありますが、国民や事業者等に対して、書面
の作成・提出等を求めているもの、押印を求めているもの、そういったものでありま
す。
こうした行政手続全般についての方針の下、国税関係手続についてはどうかという
ことについては、次の3ページ目です。
国税関係手続における押印原則につきまして、現行制度の概要から御説明します。
一つ目は、税務署長に提出される税務書類、いわゆる確定申告書などがありますが、
そういったものには、提出者等が押印しなければならないといった通則的な規定が国
税通則法に定められています。
税理士等による税務代理等についてですが、こちらは税理士法で、税理士等は押印
しなければならないといった規定が設けられています。
加えまして、法令上、大半の手続におきましては、印鑑の種類については限定がな
いということで、認印でも構わないという一方で、一部の手続では、実印による押印
とその印鑑証明書の添付を求めているものがあります。
その例ですが、一つ目は、担保提供関係書類への担保提供者の押印があります。
これはどういう場面で適用されているかと申しますと、例えば相続税などで、土地
を担保として延納、あるいは猶予の申請をする場合に、担保として、もし土地につい
て抵当権を設定するといった場合には、土地所有者による抵当権設定登記の承諾書を
提出していただくことになっています。その際、押印については実印、また、添付書
類として、印鑑証明書の添付が必要になっています。
また、第三者の保証人を立てていただく場合、当該保証人の保証書に実印を押して
いただくとともに、印鑑証明書が必要になります。
これは、抵当権の設定登記は、税務署長が納税者から抵当権設定登記の承諾書の提
出を受けて、それを登記所に持ってき、嘱託の登記を受けるわけですが、不動産登記
法令上、不動産に係る権利登記の嘱託時には、登記義務者の承諾書の添付が必要であ
り、当該承諾書には、承諾者の押印と印鑑証明書の添付が必要となっているためです。
もう一つ、遺産分割協議書への共同相続人等の押印ということで、例えば相続税に
ついて、配偶者の相続税額軽減といった特例がありますが、この場合には、配偶者が
相続した財産を確認する必要がありますが、この場合にどのような形で分割されてい
るかといったことを確認するために、遺産分割協議書には全ての共同相続人の実印の
押印と印鑑証明書の添付が必要になっています。
この趣旨としましては、遺産分割協議書に記載されている合意内容の真正性を確保
するといった必要から、そういった手続が設けられているところです。
以上は、相続税等の個別税法の法令で定められているところです。
以上のような現行制度を前提としたところの論点を三つほど掲げさせていただいて
います。
一つ目は、国税関係手続における押印義務は、原則として廃止すべきではないか。
二つ目は、実印による押印及び印鑑証明書の添付を求めているような一定の手続に
ついては、政府全体の方向性を踏まえたところで、その取扱いを検討していくべきで
はないか。
ちなみに政府全体の方向性としましては、検討中の部分がありますが、例えば実印
を求めているようなものは残してはどうかといった御議論があるところです。
三つ目は、実務上、「署名又は押印」を求めるような手続であって、現状において、
その押印について認印を許容しているものについては、押印だけ廃止すると、署名だ
けが残ってしまうところで、「署名又は押印」を求めている手続については、押印と
併せて署名も不要と整理すべきではないかという論点があります。
以上が押印に関する論点です。
次のページは、国税関係手続における書面・対面原則に対応する形での電子化の話
です。
電子化につきましては、前回の第2回会合でも取り上げましたが、ここでもう一度、
概要について整理させていただいています。
現行制度上、国税に関する申告や申請をオンラインで行う場合には、基本的には申
告書等に記載すべき事項を入力して送信していただくといった形になっています。他
方、申告書等の添付書類につきましては、PDFファイルとか、スキャンしたデータを添
付して、送信することも可能になっています。
こうした建てつけの下、国税に関する申告や申請については、件数ベースですと、
99%の手続がe-Taxによるオンラインでの手続が可能になっており、税務当局から入力
フォームを提供しているところです。実際、所得税の申告は約6割、法人税の申告は
約9割、e-Taxを通じて行われているといった話は、前回の会合で御説明したとおりで
す。
他方、次の類型に該当する手続については、こういった入力フォームが提供されて
いないので、オンラインで手続することができない状況にあります。
一つ目は、臨時に必要となるような申告等でして、例えばたばこ税の税率引上げ時
の手持品課税の申告などがこれに該当します。
二つ目は、件数が僅少な手続で、例えば石油石炭税の納期限の延長申請があります。
三つ目は、第三者を経由して行われる申告等ということで、例えば金融機関とか、
取引先の企業とか、そういった第三者を経由して申告等を行っていただくような手続
でして、第1回会合でも話題になりました租税条約に関する届出は、金融機関や取引
先企業を経由して、申請者が税務当局に対して提出するといった手続です。
論点のところですが、費用対効果の観点を踏まえたところで、入力フォームが用意
されていない手続がありますが、そういった場合でも、スキャンしたデータを送信す
ることによるオンライン手続を認めてはどうか。
ただ、その際、例えば現在でも電子で申告するときには、電子署名をしていただく
わけですが、こうした手続を認めたときに、その際の電子書面の扱いなども論点にな
ってきます。
以上が国税についての手続の説明です。
○岡村座長
ありがとうございました。
続きまして、資料実3-2の地方税につきまして、総務省自治税務局の寺﨑企画課
長、よろしくお願いします。
○寺﨑自治税務局企画課長
お手元の資料の2ページ、地方税関係手続における押印原則についてであります。
現行制度の概要ですが、国税と異なりまして、地方団体宛てに提出される税務書類、
申告書等一式ですが、地方税法上、全般的な押印を求める規定は存在していません。
一方で、個別の手続に係ります省令の様式におきまして、押印欄が設けられているケ
ースが多くございます。現在、このような形で事実上、納税者等からの押印を求めて
いる手続が大半となっているところです。
この他、地方税に関しましては、地方団体が独自に条例で様式を定めているものも
多くございます。こういった中にも押印欄を設けているものが多く存在すると認識し
ています。
さらに国税と同様、それぞれ個別に見てまいりますと、例えば犯則事件の調査にお
ける調書の作成など、署名、押印の規定が存在するものもあります。
論点として、三つ挙げております。
一つ目は、国税と同様、地方税関係手続における税務書類等への押印義務につきま
しては、原則として廃止すべきではないかという論点です。
二つ目は、署名又は押印を求めている手続や犯則事件調査などにつきましても、税
手続の統一性の観点などから、国税と同様の対応を行うべきではないかという論点で
す。
三つ目は、少々難しいところですが、地方団体が条例で独自に押印を求めているも
のについて、どのように考えるかという論点もあろうかと考えております。
3ページにお移りいただきまして、地方税関係手続における書面・対面原則につい
てです。
これにつきましても、地方税に関する申告や申請は、主に法人が行うものではあり
ますが、eLTAXを通じたオンラインでの手続が可能となっていまして、入力フォームを
提供しております。
現時点では、地方法人二税に係る申告書提出の約7割、個人住民税に係る給与支払
報告書提出の約5割がeLTAXを通じて行われている状況です。
eLTAXにおきましては、添付書類をスキャンしたデータ等のファイルによる提出も可
能となっています。さらには今般の新型コロナウイルスに係る固定資産税等の特例申
請におきましても、なるべく接触を避けるという観点から、申請書本体につきまして
も、スキャンしたデータ等のファイルを送信することにより、提出できる機能を追加
する予定でして、令和2年12月から稼働を開始する予定となっているところです。
全地方団体が共同で運用しておりますeLTAXの性格を踏まえまして、これまでの扱い
は、オンライン化のニーズが高い手続を対象としているところでして、件数が僅少な
申請等につきましては、オンラインでの手続の対象外となっているのが現状です。
そこで、デジタル化の推進の観点から、現在eLTAXを通じたオンラインでの手続がで
きないものにつきましても、納税者や地方団体における業務効率化・省力化の効果な
どを踏まえつつ、オンライン手続を可能とするよう、検討していくべきではないかと
いう論点を挙げさせていただいております。
地方税からは、以上です。
○岡村座長
ありがとうございました。
それでは、意見交換に入らせていただきたいと思います。
前回同様、私から指名をさせていただきますので、会場にいらっしゃる皆様を含め
て、ミュートボタンを解除してから御発言ください。
御質問、御意見のある方は挙手、または挙手ボタンをお願いします。
佐藤教授、お願いします。
○佐藤慶應義塾大学大学院法務研究科教授
国税、地方税を通じまして、全般的な政府の方針との関係では、押印義務の原則廃
止という方向性は、進めるべきであると考えます。
それに関連して、国税について、二点、御質問があります。
一つは、e-Taxについて、個人は手続の開始の際に、かなり慎重に確認をして利用す
るということで、当該本人であることが担保されていると理解をしておりますが、ま
た、若干手続の軽いものについては、できることが制限されているとも伺っています
が、法人の場合の真正性、本人性の確保は、どういう形でなされているのかというの
が一点目の質問です。
二点目は、犯則調査手続の話が地方税から出ていましたが、押印廃止ということは、
税務調査の際の聴取書の作成等についてもお考えなのかということを伺いたいと思い
ます。これが二点目の質問です。このように読み書きさせて間違いないことを確認し
たといって、押印させる手続です。
地方税については、一点、意見があります。
実3-2の3ページの論点のところで、方向性としてはこのとおりだと思いますが、
前回の会合でも御指摘申し上げたように、eLTAXは、入り口のところのチェックが甘い
のです。基本的に思想が違うと前回申し上げたと思いますが、「納税者や地方団体に
おける業務効率化・省力化の効果などを踏まえつつ」というところ、これは一定のチ
ェックがeLTAXの最初のところでかかるという形にしないと、今でもeLTAXで受け付け
たデータを地方団体が一旦プリントアウトして処理しているという現状がかなりある
ことは承知しておりますので、その辺りをお考えにならないと、納税者としてはオン
ラインで手続ができたけれども、地方団体としては省力化につながらない可能性も
多々あろうかと思いますので、お考えいただきたい論点だと思います。
以上です。
○岡村座長
ありがとうございました。
それでは、御質問は二点ございますが、国税について中島企画官からお願いします。
○中島主税局税制第一課企画官
御質問ありがとうございます。
一点目、e-Taxにおける法人の本人確認も、基本的には電子署名で行います。
犯則調査手続に関してですが、基本的にはこれも政府全体の話ではあるのですが、
刑事手続、司法手続については、今回、押印原則の見直しの対象外として考えられて
おりますので、国税についても、その整理を前提とすれば、犯則調査手続については、
今回の見直しでは対象外と。全体の統一的な方針の下ということで考えております。
○佐藤慶應義塾大学大学院法務研究科教授
犯則調査はそうですが、一般の税務調査については、いかがお考えですか。
○中島主税局税制第一課企画官
税務調査における聴取したときの手続は法定されているものがないので、今回の見
直しの対象は、あくまでも法律に基づく申告とか、申請、そういったものについては、
国税通則法によって統一的に押印の義務が定められていますので、そういった制度の
見直しを行います。
○岡村座長
どうもありがとうございました。
土居先生、お願いします。
○土居委員
ありがとうございます。
私から一点質問と二点意見を述べさせていただきたいと思います。
先に質問をさせていただきたいと思うのですが、これは総務省の資料の実3-2に
書かれていたところについての御質問なのですが、2ページに地方団体が条例で独自
の様式を定めて、押印欄を設けているものも存在するということですが、押印欄に関
して、ないしは条例で押印を求めているということについて、自治税務局としてどの
ぐらい網羅的に捕捉しておられるのかをお伺いしたいと思います。
そう申しますのは、国で原則押印廃止と定めたとしても、当然ながら、地方団体が
条例を改めていただかなければいけないのですが、地方団体も昔定めた条例でその規
定があることを必ずしも網羅的に把握しておらず、条例改正が滞ってしまう、ないし
はそもそも変える必要がないと認識して、結局は押印規定が残ってしまうということ
も起こり得るかもしれないと思ったものですから、その点について、お伺いしたいと
思います。先に質問をさせていただければと思います。
○寺﨑自治税務局企画課長
地方団体の様式全てについて、何か所ぐらい押印義務があるかということを現時点
で把握したものはございません。ただ、土居委員の御指摘のように、恐らく国の様々
な様式に押印欄がありますので、それとの並びで押印欄が設けられているケースが多
いのではないか。逆に押印欄がないと非常に困るといったケースが本当にどこまであ
るのだろうかということは、今回、私どもの見直しと同様に地方団体でもお考えいた
だくべき論点だと考えておりますので、先生方から御意見を賜りたいと考えていると
ころです。
○土居委員
お答えをどうもありがとうございました。
それでは、意見を述べさせていただきたいと思います。
これは国税、地方税ともにということですが、押印義務を原則廃止するということ
は、私としても賛成ということで、この方法で進めるべきではないかと思います。
当然懸念はあると思うので、その懸念に対しては、一つ一つ丁寧に払拭していく必
要はあると思いますが、そもそも押印文化のない国で税務手続の適正性をどのように
担保しているかというところを鑑みれば、押印がなくても税務手続を適正に行うこと
は可能だという発想は、当然あるのではないかと思います。ですから、押印がなくな
ったら、適正に手続ができないということがあるとすれば、押印がなくても適正にで
きるような方法を別途考えるという発想で臨むべきではないかと思います。
もう一点は、先ほどの地方税に関する質問に関連するところでの意見なのですが、
基本的に国の法律に準じて押印欄を設けているということであれば、国の法令を変え
れば、それに準じて変えていただけることが期待できるということですが、そうはい
っても地方団体の条例改正が細かく目配せできていなくて、うっかり押印欄を規定す
る条例が残ってしまう場合があったときに、後々面倒なことになってはいけないとい
うことかもしれませんが、そういうことを察すると、国が定める手続には、条例で押
印を求めてはならないという条例を上回る規定を国で設けておけば、その法令が施行
された後は、条例で残っていても、押印欄に押印を求める必要はないという読み方も
できることが可能ならば、そういうこともあり得ると思いました。
○岡村座長
どうもありがとうございました。
石井特別委員、お願いします。
○石井(夏)特別委員
書面、押印、対面原則の見直しに関しまして、やや税務を超えた意見になる部分も
ありますが、コメントをさせていただきたいと思います。
全体的な見方としましては、行政手続のオンライン化は時代の流れですので、見直
しに向けた変化には対応していかないといけないと考えています。事務局にお示しい
ただきました論点の中で、一定の方向性が示されているものについては、私も賛成の
意見です。
他方、個別事案に落として見てみますと、担保とか、財産処分のときなどの本人の
意思確認が特に重要な手続については、印鑑証明や実印が求められる場合があるとの
御説明があったところで、これは証拠としての価値を図る上でも、認印とは性格が大
分違ってくるということで、別の考慮が必要になってくるのだろうと思います。
その関係で、押印の要否を考えるときには、当該手続との関係でなぜ押印を必要と
しているのかという趣旨をきちんと精査していくことが重要ではないかと考えていま
す。具体的には本人確認、文書作成の確認、文書内容の真正性、証拠としての保障、
そういう趣旨があると、それぞれの趣旨との関係での整理が可能と思われます。
特に証拠としての保障を押印という形で維持する必要性があるのかどうかというこ
とに留意しながら、その手続が署名で代えられるようなものであるのかということを
丁寧に見ていただきたいと思いました。
地方税に関しましては、法人税の申告と法人住民税の申告のように、様式が共通で
国税と横並びの議論が行えるものもあると伺っておりますが、そうではないものもあ
ると思いますので、横並びで議論できるものと、横並びで議論できないものについて
は、趣旨をよく精査しつつ検討していただく。横並びで議論できるものについては、
国税の方向性と並べて、同様に御検討いただくことになろうかと思います。
地方団体が条例で独自に押印を求めているものにつきましては、土居委員から既に
御質問が出ているところでありますが、これを地方団体が調整を行う上で、現在、押
印の必要性があるのかどうかという観点を踏まえた上での御検討をいただく必要があ
ると思いました。
最後は感想です。
財産処分の関係で実印が必要な書類というのは、行政手続だけではなく、法律実務、
特に民事的な紛争の場面でも、証明力を保障する上で検討の必要性があると思われま
すので、法律実務の面でも並行して変化に対応していかないと、結局、そこで紙と押
印が残るという話になってしまうと、作成者側の利便性は向上せず、行政手続をオン
ライン化していくという政府全体の方針にも影響を与える可能性もなきにしもあらず
だと、そのような感想を抱きました。
○岡村座長
ありがとうございました。
神津特別委員、お願いします。
○神津(信)特別委員
国税関係手続、地方税関係手続等に関する押印義務の廃止の方向については、原則
的に賛成です。
ただ一つ、問題点と御質問をしたいのは、相続税の申告書のケースです。一人の被
相続人がいて、相続人が三人いらっしゃるというケースで、遺産分割について、若干
もめているというケースを想定しました。例えば税理士に委任している相続人が二人
いらっしゃるとすると、相続税の申告書には、共同相続人の三人のお名前を書いて、
税額を計算して、税理士に委任している相続人は、相続税の申告書に押印をすること
によって、申告をしたということになり、税理士に委任していない相続人については、
形式不備になるという解釈でおります。
そこの点では、今のところ、相続税の申告書で共同相続人全員が記名して、押印す
るという規定なのですが、押印がない者について、代理権限証書が出されていないと
か、マイナンバーに関する届出が出ていないとか、いろいろと確認手段はあると思う
のですが、押印が廃止された場合の何らかの検証手続が必要だというようなことを考
えました。
○岡村座長
ありがとうございました。
宮永特別委員、お願いします。
○宮永特別委員
今回の全体の動きは大変ありがたいことと思っておりますし、国税、地方税とも押
印の原則廃止に関しては賛成で、特に原則廃止ということで、真に押印を残す必要が
ある手続というのは、本当は何なのかということの逆からのアプローチをはっきりさ
せることで、残していくものをより明確化していくことが望まれるのではないかと思
っています。
次に、書面・対面原則に関連しまして、税務手続のデジタル化が非常に重要だと思
っていますし、例えば資料実3-1の4ページにあります、現在、オンラインででき
ない手続として掲載されている中で、第三者を経由して行われる申告等という中に、
実は租税条約に関する届出書が含まれているのではないかと理解しています。
この届出書は、企業がロイヤルティーなどを非居住者に支払う際に、非居住者から
企業を通じまして、日本の税務署に租税条約上の源泉所得税の減免を届け出るもので
すが、件数の多い企業では、年間100件単位の届出をしておりまして、コロナ禍におい
ては、非居住者による届出書への署名とか、企業への郵送、その他、様々な手続のた
めに出社をしないといけないとか、不便なことになっていますので、ここには押印が
なくなるような前提で、何とか書類をスキャナにかけてPDF化して、e-Taxで受け付け
ていただくとか、そういうことで事務負担を軽減をする方向を考えていただければ、
それが実務的にもよいのではないかと思っています。
次に、検討条件の質問というか、希望ですが、企業側としては、スキャニングとい
うか、スキャナを使う場合に、紙の書類が残るような前提にも思えるところがあるの
ですが、何とか工夫をすることで、データだけでのやり取りで完結できるように何と
かならないかということを、これからも検討していただければと思っています。作業
フローの効率化というのは、実務的にも非常に助かりますし、テレワークのようなも
のはコロナのときには大変ありがたく思っていますし、業務の効率化につながると思
います。
最後に、地方税におきまして、資料実3-2の3ページのeLTAXの活用促進の中で、
私ども企業サイドが注目しておりますのは、地方税共通納税システムの対象税目の固
定資産税等への拡大ということ、もう一つは、納税義務者への個人住民税の特別徴収
税額通知の電子化ですが、これにつきましては、両方ともなるべく早く実現されるこ
とを期待しています。
○岡村座長
どうもありがとうございました。
梶川特別委員、お願いします。
○梶川特別委員
御説明ありがとうございました。
本日、御提案いただいた方向性というのは、私も賛成です。
一つだけ確認させていただきたいところがあるのですが、資料実3-1の3ページ
の御説明で、押印を併せて署名も不要と整理すべきではないかというところがあるの
ですが、記名、押印という形の押印というのは、本人の意思確認として効果的ではな
いのかもしれないのですが、そういう意図があったのかもしれなくて、そこを署名と
いう形で本人の意思確認を行うということであれば、非常に流れとしてよく分かるの
ですが、もし署名もないとすると、本人の意思確認に関して、どのように担保してい
くのか、または係争になったときに、どのような代替的対応策がとれるのかというこ
とについて、懸念というか、確認をさせていただければという気はしました。これが
電子のときには、代替的な電子署名等ということはあるのですが、アナログというか、
紙書面のときの署名も省いていいとお考えなのかというところです。
○岡村座長
梶川特別委員、ありがとうございます。
これは我々で議論したほうがいいのかもしれないのですが、事務局から御意見、あ
るいはコメント等がありましたら、お願いします。
○中島主税局税制第一課企画官
国税の手続で署名及び押印を求めるものはありますが、署名又は押印を求めるとい
うのはあまりないのですが、ただ、ここであえて載せているのは、政府全体でそのよ
うな方向で検討が進んでいるから、それに合わせて、非常に僅少ではありますが、統
一的な扱いの下、整理していくということで書いています。
考え方としては、署名又は押印を求めることとなっているものは、別に署名は要ら
なかった、押印だけでよかったということです。その押印というのは、認印だけでよ
かったとすれば、そこで本人確認とか、意思確認の程度というのは、認印で許容して
いた程度のものだったのだと、そういうものであれば、署名を求める趣旨というのは、
その手続においては、それほど強くないのではないかという、一応の整理です。逆に
署名又は押印を求めることとなっているものを、押印だけを廃止すると、署名しか選
択肢がなくなって、逆に負担が増えるだけなのではないか、そういったことでござい
ます。
他方、もう一つ、梶川特別委員から御指摘のあった、押印がなくなった場合に本人
の意思確認をどうするかは、実務的には考える必要が出てくると思いますが、ただ、
実際に本人の意思確認がどこまで全てのケースにおいて必要になってくるのかという
話なのだと思うのです。結局、本人の意思確認、証拠能力として、本人や申請人が作
成したものかどうかは、恐らく今の認印では何にも担保はされていなくて、実際に訴
訟になったときとか、刑事訴追するときに、脱税であれば、犯意があったかどうかと
いう確認は、押印だけではなくて、周辺事情からどういう意図でこの資料を実際に作
成したのか、そういったところを客観的証拠に基づいて、個別に判断していかざるを
得ないのだと思います。
○岡村座長
ありがとうございました。
沼尾委員、お願いします。
○沼尾委員
基本的には皆様方が御発言くださったところと変わらないところもあるのですが、
若干異なるところだけ申し上げたいと思います。
税務手続における押印の廃止については、確かに作成者側の利便性も高まると思い
ますし、作業フローが効率化するところは、大変評価できるものではないかと思って
いるところです。
他方で、これまでも少し意見もあったところだと思いますが、押印文化があって、
印を押すことによって、精神的な安心・安全みたいなものが得られる。そういうとこ
ろも大きいと思いますし、逆に納税者側も押印して書類を出すということで、これで
納税したという気持ちの面もあるのではないか。
そうしますと、確かに業務フローとしての効率化という観点から、デジタル化も非
常に重要ですし、押印義務の廃止は大事なのだけれども、納税者側の納税に対する意
識などを考えたときに、必ずしも原則廃止ということで、原則という書き方になって
いるのですが、全てのところでこれをなくしていくところが、本当に納税者の意識を
考えたときに最適なのかどうかというところについては、若干懸念があります。
そういったところから考えますと、原則として押印を廃止するということで進めて
いくとしても、是非そこのところは、丁寧に議論を進めていただけないかということ
を申し上げたいと思います。
それとの関係で、地方自治体が条例で独自に押印を求めているものがあるという話
もあって、自治体によってそれぞれの対応があります。これについても、確かに手続
の簡便性とか、そういった流れから様式を見直して、押印を廃止していく方向で進め
ていくこと自体は構わないのですが、自治体によっては、住民の方々の押印があるほ
うが安心して手続きが進む関係が残っているとか、また、いろいろなタイプの手続き
もあると思いますので、その辺りについては、それぞれの地域の状況を見ながら、柔
軟に対応できるような方向性を考えていくことも必要ではないかと思ったところです。
○岡村座長
ありがとうございました。
続きまして、納税実務を巡る環境変化への対応についての議論に移りたいと思いま
す。
まずは国税について、事務局より御説明をお願いいたします。
資料は、お手元の実3-3及び実3-4となります。
中島企画官、よろしくお願いいたします。
○中島主税局税制第一課企画官
ありがとうございます。
それでは、まず国税に関して、御説明申し上げます。
資料は、2パートに分かれております。
前半部分は、いわゆる税務調査の実効性の確保といった話でして、特に国内に何ら
拠点を持っておられない非居住者、あるいは外国法人、そういったいわゆるインバウ
ンド投資などの場面で、税務調査をする必要が生じたときに、全く国内に拠点がない
方に対して、どのように適正執行を確保していくのかといった問題意識があります。
2ページ目は、税務調査の流れです。
納税者による確定申告から始まり、税務当局による様々な情報の分析を経た上で、
税務当局による税務調査の実施、その結果で得られた事実認定に基づく是正、納税、
そういった手続の流れになっています。
例えば税務当局による税務調査を実施するといった段階においては、納税者に対し
て実効的に接触を確保する必要が出てきます。それまでの手続は、申告や、あるいは
各種情報の分析ということなので、特に情報の分析などは、様々な情報が税務当局に
寄せられてまいりますので、必ずしもこの段階では、納税者御自身に対して、接触を
確保する必要はないのですが、税務調査の実施に当たっては、納税者の方に接触をす
る必要が出てきます。
この場合、制度としては、一義的には税務職員に質問検査権があるわけですが、当
然ながら、これは域内といいますか、日本国内でしかできません。外国において、こ
ういった公権力の行使をすることはできません。
租税条約等に基づく外国税務当局への情報交換要請ということで、これは外国の税
務当局に対して情報提供要請を行うことで、外国税務当局が調査をしてくれます。
もう一つは、国内に拠点のない非居住者や、外国法人の調査をする際に納税管理人
制度があります。現行制度は以上のようになっています。
3ページですが、国内の拠点のない非居住者、外国法人に対して、どういう場面で
課税が発生し、あるいは事実認定といいますか、税務調査をする必要が出てくるのか
ということで、抽象化しています。
例えば昔からある話ですが、近年、活発化しております国内の不動産に対して投資
をする非居住者、外国法人がいまして、投資をするだけですので、特に国内に支店と
か、工場とか、そういったものは必要ないわけです。単に国内にいる不動産管理会社、
仲介業者と取引をしているということで、この不動産管理会社などは単なる取引先な
わけです。そういったところを通じて、国内不動産を取得して売却するといった投資
を行ってきています。
国際的デジタル企業ということで、外国法人が国内の消費者、顧客向けに様々な役
務提供をする際に、当然現地にサポート会社があるので、これは関連会社があるケー
スもありますが、現地のサポート会社を通じて本国の法人が直接商売をしているとい
ったケースもあります。
最後、プラットフォーマーを介して様々なコンテンツや、ゲーム、音楽などのオン
ライン配信などを行っているようなケースもあります。こういった電子的な国境を越
えた役務提供については、外国法人に対して、消費税を課税する制度になっています
が、国内に何ら拠点を設けずにそういったコンテンツを配信しているようなケースで、
どのように適正執行を確保していくかといった話になってきます。
4ページ目ですが、こういった実態に対して、国内に何ら拠点を持たない外国法人
や非居住者に対しては、国内に所在する納税管理人を通じた接触や、あるいは租税条
約に基づいた情報交換要請によって対応している状況です。
国税通則法の117条に納税管理人の設置義務が定められています。国内の拠点のない
納税者が納税申告書の提出、その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、
納税管理人を定めなければならない規定されており、これは義務ですが、他方、この
義務を履行しなかったときに、税務当局で取り得る手段というのは、これ以上ないわ
けでして、そうすると、納税管理人を定めた方については、納税管理人を通じた税務
調査は可能ですが、納税管理人を定めない方については、そのままだと納税者間の公
平性が確保できないのではないか、そういったところがあろうかと存じます。
そういった問題意識の中で、クロスボーダー取引が活発化する中で、外国法人や非
居住者に対して、効果的に税務調査を確保していくために、どのような対応をしてい
くことが考えられるかといったところが課題になっています。
○岡村座長
それでは、地方税について、寺﨑企画課長から御説明をお願いします。
○寺﨑自治税務局企画課長
それでは、資料実3-5をお開きいただきたいと思います。
国税の納税管理人制度に対しまして、地方税法では若干違うような規定もあります
ので、その点を中心に御説明申し上げたいと思います。
納税義務者は、国外に居住するなど、納税義務を負う地方団体内に住所等を有しな
い場合には、納税に関する一切の事項を処理させるため、これは滞納処分を除く賦課
徴収、還付に関する書類の受理などを行うという意味ですが、こういったものを処理
させるため、納税管理人を定めなければならないとされているところです。
地方税法の300条を記載していますが、地方税法というのは、構成として、まず総則
がありまして、その後に税目ごとに規定が置かれています。ここでお示ししています
のは、市町村民税の納税管理人の制度ですが、それぞれの税目ごとに、ほぼ同じよう
な納税管理人の制度の規定があると御理解ください。
300条の本項では、納税管理人をつくらなければならないということが書かれてござ
いまして、さらに301条では虚偽の申告による罰金のお話、302条では納税管理人につ
いて、正当な事由がなくて申告しなかった場合には、その者に対し、当該市町村の条
例で10万円以下の過料を科するということができる規定がございます。
ちなみに、私どもで調査したところでは、政令指定都市だけですが、現在、20の政
令指定都市がありますが、この内、17の政令指定都市が過料に関する規定を整備して
います。
簡単ではございますが、地方税の状況について、御報告申し上げました。
○岡村座長
ありがとうございました。
それでは、引き続き、課税実務を巡る環境変化への対応の後半部分について、中島
企画官、よろしくお願いします。
○中島主税局税制第一課企画官
資料実3-4に基づいて御説明申し上げます。
先ほどは税務調査の話でしたが、次はいわゆる徴収、滞納整理の話です。
これも問題意識としましては、国境を越えた形での財産移転が容易となる中で、執
行管轄権の及ばない外国に財産を留保し、あるいは逃避させることによって、徴収を
逃れるといったことに対する対処が課題になっているところです。
2ページでは、その前提としまして、一般的な国税徴収手続の流れを御説明申し上
げます。
左半分が日本、右が外国になっていますが、納税義務が成立、納期限が到来、督促、
その後、滞納処分という流れですが、こういった場面で国内に財産がないのではない
か、外国には財産があるのではないかというときには、まず外国当局に情報交換の要
請を行い、外国当局から外国には財産があるといった情報を把握する仕組みがありま
す。
また、国内で徴収を尽くしても、全額徴収できないような場合には、徴収共助とい
うものを外国当局に要請しまして、外国に所在する財産から滞納処分をしていただい
て、徴収をしていただいて、日本に送金をしていただくといった仕組みがあります。
こういったことで、外国に所在する財産からの徴収の構図が確保されているところで
す。
ちなみに3ページ目は、徴収共助の仕組みを詳しく御説明している資料ですが、徴
収共助は、租税債権の徴収において、公権力の行使ということで、執行管轄権という
制約があるわけです。これは税務調査と同様ですが、そうしますと、外国にある財産
について、我が国が直接自力執行権を行使して、滞納整理を行うことはできない中で、
それは各国とも事情は同じなわけですから、ここは租税条約に基づいて、相互主義の
下で、それぞれの国の税務当局が互いに徴収共助を要請し合って、要請に基づいて外
国のために租税債権を徴収するという仕組みです。
平成25年10月に発効した税務行政執行共助条約等に基づいて実施をしているわけで
すが、令和元年7月から令和2年6月における実施実績としまして、日本からの要請
は29件、金額は37億円程度といった実績が上がっているところです。
4ページですが、徴収共助のネットワークです。先ほど租税条約に基づきと申しま
したけれども、具体的には69の国や地域との間で租税条約を締結して、徴収共助を行
っているところです。
相手国については、多国間租税条約と二国間租税条約をを合わせたところで、69の
国と徴収共助ができるような状況になっております。
徴収共助が可能なのは、今、ヨーロッパの国々が多い中で、一方、アジアの国とい
うのは、まだ徴収共助が導入されていない国も多い状況です。
5ページでは、そうした中で、徴収逃れなどに対して、どのように補完していくか、
あるいは抑止していくかといった現行制度について、御説明します。
一つが滞納処分免脱罪でして、こちらは国税徴収法で、納税者が滞納処分の執行を
免れる目的で財産を隠蔽する等の行為をしたときは、罰則が設けられています。
ただし、滞納処分の執行というのは、徴収共助による徴収は含まれておりません。
あくまでも国内において行われる滞納処分、執行を免れる目的で財産を隠蔽したり、
あるいは移転させたり、そういったことが滞納処分免脱罪の構成要件になっています。
もう一つは、第二次納税義務というものです。滞納者の財産だけでは徴収すべき国
税が足りないときに、一定の範囲で二次的な納税義務を課す制度ですが、その例とし
まして、滞納者が受贈者に自分の財産を贈与する。自分の財産を減少させる行為をし
た。その結果、滞納国税に徴収不足が発生し、あるいは徴収不足が拡大したときには、
受贈者には受益の限度で、二次的に納税義務を課すことができる制度です。
ところが、徴収不足というのは、現行制度では、滞納処分が可能な国内財産のみで
判断する仕組みになっています。したがいまして、国内財産が不足し、かつ贈与によ
って不足額が拡大した場合には、第二次納税義務を課すことができるのですが、問題
は滞納者の財産が国外財産の場合ですと、それを贈与しても、それによって徴収不足
が拡大するわけではありませんので、現行制度の下では受贈者に第二次納税義務を賦
課できないという事象が発生します。
これを分かりやすく説明したのが6ページです。滞納者の国内財産がある状況にお
いて、滞納者が国内財産を国外に移転した、徴収共助ができない国に移転した場合は、
滞納処分免脱罪が適用できる。ところが、滞納者の国外財産が共助要請可能国にあっ
て、例えば徴収共助が開始したということを察知して、当該財産を共助要請不可能国
に移転させる。これについては、滞納処分免脱罪が適用できないといった形になって
います。
滞納者が国内にある財産を配偶者に贈与する。それにより自分を無資力にして、滞
納処分を免れるといったことに対しては、配偶者に対して、第二次納税義務を賦課で
きるわけです。
ところが、共助要請可能国にある国外財産を配偶者に贈与する。徴収共助を開始す
れば、相手国の税務当局によって滞納整理ができるわけですが、それを察知する形で
配偶者に対して贈与すると、第二次納税義務は賦課できないといったことがあります。
徴収共助は、近年始まった制度ですが、年間30件弱程度活用しているわけですが、
だんだん徴収共助を逃れるような動き、徴収共助可能国にある財産をさらに徴収共助
の不可能な国に移転したり、あるいは配偶者などに贈与したり、そういった形で徴収
共助逃れをすることに対して、対処していく必要があるのではないかといった問題意
識です。
御説明は以上です。
○岡村座長
ありがとうございました。
それでは、意見交換に入らせていただきたいと思います。
こちらの議題につきましても、私から指名をさせていただきますので、ミュートボ
タンを解除してから御発言ください。
御質問、御意見のある方は、挙手または挙手ボタンをお願いいたします。
石井特別委員、お願いします。
○石井(夏)特別委員
課税実務をめぐる環境変化への対応で、地方税における納税管理人制度と徴収共助
の仕組み、国際徴収の仕組みは、いずれも立法的な対応が必要ではないかという問題
意識の下での御説明なのでしょうかというのが、お伺いしたい点です。
納税管理人との関係ですと、例えば個人情報の世界でも、越境適用をする場合に国
内の代理人を置くよう定める国外の立法例としてヨーロッパの立法などがありますし、
国内ですと電気通信事業法の改正によって、外国法人等に代表者または代理人を指定
する義務を課したり、そういったものがあります。こうした立法例と同列に見て良い
かという問題はありますが、取引が増加する、特にオンライン取引が主流の領域など
においては、税務分野の納税管理人は重要性が増してきているだろうと認識している
ところです。
その上での質問として、納税管理人について、国税においては納税管理人の設置義
務を果たしていない事業者がそれなりにいて、国税事務に支障を来す例があり、立法
的な追加手当が必要になるという御認識の下での問題提起と受け止めて良いのかとい
うことです。国税については、罰則規定などがどうなっているのか。私が確認すべき
だったかもしれませんが、制裁に関する措置がどうなっているのか。 地方税につい
ては、地方税事務に支障を来している例は、具体的にはあまり存在しないと見て良い
のかどうか。このあたりが納税管理人についての質問です。
国際徴収に関しては、国際的な取決めにのっとって資産逃れを防止する必要性とい
うのは、異論のないところで、徴収共助のネットワークなどは拡大していただきたい
のですが、こちらも法的な手当が新たに必要なのでしょうかという質問です。
滞納処分免脱罪、第二次納税義務についても、徴収共助可能国の国外財産も含めら
れるようにすべきというお考えの下での問題提起なのでしょうか。実3-4の6ペー
ジを拝見しますと、国内を基点とする財産移転にしか、滞納処分免脱罪や第二次納税
義務ができないような絵になっていると思いますので、そういう意味で立法的な手当
が必要になっていると事務局としてお考えなのかをお聞きしたいと思います。
○岡村座長
ありがとうございました。
それでは、中島企画官からお答えをお願いします。
○中島主税局税制第一課企画官
御質問、誠にありがとうございます。
いずれも運用で対処するのは難しいテーマだと、お示しを申し上げている次第です。
まず納税管理人からまいりますと、石井特別委員が先ほど御指摘のとおり、確かに
税法ではない、他法の分野で、例えば業法においては、一定の事業を国内で行うとき
には代理人の設置みたいなものを義務づけている。そういたしますと、私も不勉強で
申し訳ありませんが、一方でそういう代理人の設置義務を履行しないときは、業法上
の活動を制限するとか、そういった形で、不履行に対する何らかの不利益な扱いとい
うか、そういったことが可能になっている例を承知しているところです。
他方、納税管理人について、国税に関しては、設置義務はありますが、不履行の場
合はどうかというと、先ほど冒頭で御説明しましたように、不履行だからといって、
特に不利益な扱いをする制度があるわけではありませんので、そうすると、納税管理
人を設置されている方は、円滑に税務調査ができる一方で、納税管理人がいない方に
ついては、それまでという形になると、不公平が生じるのではないかといった問題意
識でして、ここは納税管理人を定めない場合の対処といったものを考える必要がある。
その場合に立法的な対応が必要であれば、立法措置を講ずる必要があるといった認識
です。
国際徴収についても、制度としまして、6ページにあるような国内財産を逃避され
る行為に関しては、滞納処分免脱罪を適用したり、第二次納税義務を課すことによっ
て、不正を抑止したり、あるいは徴収を確保するという構図がありますが、国外の徴
収共助が可能な国にある財産の逃避に対しては、制度として手当がされていない。こ
ういったアンバランスをなくすためには、運用でできることには限界があると思いま
す。
お答えになっていないかもしれませんが、以上です。
○岡村座長
ありがとうございます。
それでは、地方税について、お願いします。
○寺﨑自治税務局企画課長
地方税の納税管理人に関しする問題意識は、法制面のものというよりも、個人住民
税は前年所得に対して課税されるものですから、最近、非常に増えております実務上
の問題としまして、1月1日の時点では日本におられた外国人の方が帰国されてしま
ったというケースが多々ございまして、この場合、住民税が徴収できないというケー
スが各地で多発しております。
法的な整備につきましては、先ほども御説明したとおり、罰則も含めてあるのです
が、現実の世界としましては、納税管理人を置かなければならないということを、外
国人並びに外国人を雇用されておられる事業主の方が十分認識されておられないとい
うことから、私どもは関係省庁と連携しながら、帰国されるときには、納税管理人を
置いてくださいということを周知するということを、関係機関、地方団体と連携して
行っている。こういった実務上の問題が地方団体における論点であると御理解を賜れ
ればと考えています。
○岡村座長
ありがとうございました。
神津特別委員、お願いします。
○神津(信)特別委員
徴収共助の話とは少しずれますが、意見というか、質問をさせていただきたいと思
います。
非居住者に対する不動産の賃借料とか、土地の譲渡代金に対し、源泉徴収をする必
要があるということについてです。不動産の賃借料の場合、大家さんが非居住者であ
る場合は、仲介の不動産業者等により源泉徴収の必要があるという御案内が通常され
ているので、問題はないと思いますが、相手方が土地の譲渡代金を支払う場合には、
相手が非居住者かどうか分からないということが多々あると思います。そのときは、
源泉徴収義務者にだけ負担をさせるのではなくて、土地の譲渡代金を受け取る者につ
いても、私は非居住者ですということを相手側に通知する義務等が制定されたら、利
便性があると思います。
買手側では、相手が居住者か非居住者かの区別をできないのが通常なので、今のと
ころ、自分としてはいい案が思いつかないのですが、私は非居住者であるということ
を通知する義務規定みたいなものが創設されると、こういうことでいろんな瑕疵がな
くなると考えますので、御提案申し上げました。
以上でございます。
○岡村座長
ありがとうございます。
田中特別委員、よろしくお願いします。
○田中特別委員
一つ前の議題に関してですが、税務上の書面、押印、対面原則の見直しについて、
中小企業も同様にスムーズに行うということについては、賛成しております。
また、中小企業のほとんどは、納税申告を税理士に頼んでいるので、税理士がされ
ていることが多いと思います。業務関係の中でオンライン化をどうしていくのか、実
務上のお約束事であるとか、契約、財産についての書類などをどのようにしていくの
かということは、企業にとっては大事なテーマです。オンライン化をスムーズに進め
るというのは、大事なテーマとして、もう一方では、そういった書類関係、約束事関
係、法的担保、書類などをどのように取っていくのかということを、企業サイドに立
って一緒に検討していただくことも大事だと思います。石井特別委員にそういったこ
とを大分おっしゃっていただいたような気がします。これが前の議題についての御意
見です。
それから、課税実務を巡る環境変化について、納税管理人になってほしいという要
望が中小企業にもたくさんあるらしいのですが、企業を退職したり、帰国した外国人
労働者に対して、継続的に連絡を取るようなことは、実務上非常に難しいという意見
が集まった次第です。
以上、2点だけ、意見をさせていただきます。
○岡村座長
どうもありがとうございました。
渕教授、お願いできますでしょうか。
○渕神戸大学大学院法学研究科教授
御説明を承りまして、確かに御指摘のような問題がいろいろあると、私も認識を新
たにしたところです。
コメントというか、感想のようなものになってしまうのですが、納税管理人という
制度については、実際、例えば地方税法ではかなりしっかり規定があるにもかかわら
ず、運用上は市町村から出たところで、必ず納税管理人を指定とはなっていないとい
うこともあって、非常に難しい問題であると思います。
この点の解決を図るには、もちろん納税管理人をしっかり定めていくことも必要で
すが、納税義務を負うタイミングと実際に納税するタイミングの時間的な乖離が制度
上短くなることで、源泉徴収制度などはそうですが、ゼロであればもちろんいいので
すが、その間隔を実体法上できるだけ短くしていくということも、ある程度は視野に
入れる必要があると思っています。特にこの税制をこう変えろということまでは申し
上げませんが、そういうことがあると思います。
滞納処分免脱罪とか、第二次納税義務については、大したことは申し上げられない
のですが、滞納処分免脱罪については、対応するような強制執行の免脱罪の規定が刑
法の96条の2にあるということです。
あと、第二次納税義務についても、第二次納税義務という制度が単独であるわけで
はなくて、国税通則法でも準用されているような、詐害行為取消権という民法の制度
があって、それを強化したものとして、その制度が存在していると認識しております。
民事法上の制度と整合的に制度設計をするというか、細かく書いていくことももちろ
ん大事なのだけれども、例えば詐害行為取消権で十分にいけるのに、第二次納税義務
で細かく書いてしまうことで、かえってそれができなくならないようにしておく必要
があると感じたということでございます。
○岡村座長
ありがとうございます。
佐藤教授、お願いします。
○佐藤慶應義塾大学大学院法務研究科教授
御説明ありがとうございました。
納税管理人について議論を深めるためには、納税管理人を置いたら、納税管理人に
対して、税務当局は何ができるのかということを御説明いただかないと、先に進みに
くいと思います。納税管理人さえ置けば、問題が解決するわけではないように承知し
ているので、特に国税の納税管理人を置いたときに、当局側から何ができるようにな
るのかということを一言言っていただければよいと思います。
二つ目は質問ですが、国税徴収法153条で滞納処分と徴収共助を書き分けているので、
滞納処分が国内財産に限定されていると理解しています。そうだとすると、もともと
滞納処分と徴収共助を書き分けたときの経緯に照らして、この場面で両者を同じに扱
うことが適切なのか、ないしはそれが許されるのか。その辺り、現行法が別々にして
いる、滞納処分と徴収共助を書き分けて適用している理由を教えていただくと、さら
に検討が深まると思います。後者は純然たる質問です。自分で調べてこなくてすみま
せん。よろしくお願いします。
○岡村座長
中島企画官からお願いできますか。
○中島主税局税制第一課企画官
納税管理人を置くとできることですが、ごく簡単に申しますと、税務調査の場面で、
納税者の方にこういう資料を出してくださいとか、事実関係を確認するための資料で
すとか、証拠となるものの提出を求めて、事実認定をするわけですが、そういったも
のは、国内に納税者がいらっしゃる場合には、直接提出の求めをすればいいわけです
が、国外にいる納税者に直接求めることは執行管轄権の制約があってできない中で、
基本的に納税管理人の方に対して、こういう書類を出してくださいということを本人
に伝えてください、かつ本人から提示されたものについて、税務当局に提出してくだ
さいといった取次ぎをすることが考えられます。
そのほかの使い方ができるかというのは、国税庁側で補足がありましたら、お願い
したいと思います。
国税徴収法153条というのは、執行停止に関する規定でして、滞納処分と徴収共助に
よる徴収の両方ができなくて、初めて滞納処分を停止することができるという規定が
ございます。その規定のことを先生はおっしゃっているのだと思います。
その規定というのは、滞納処分の執行と徴収共助による徴収が並列で書かれている
から、その反対解釈で、滞納処分と裸で書かれている国税徴収法187条や、同法39条と
いうのは、徴収共助による要請を含まないと解釈されるということを先生は御指摘さ
れていまして、その解釈は私どもの解釈と同じでございます。
その上で、なぜ書き分けているかということですが、当時の経緯はつぶさに整理が
必要になるのですが、一義的に徴収共助というのは、2ページ目にありますが、簡単
に申しますと、徴収手段の中で最後の最後と理解されているところでございまして、
納税義務の成立から始まって、滞納処分が始まっていくのですが、徴収共助に行くた
めには、実際に滞納処分、財産を差し押さえて換価をする、そういった負担を外国に
お願いする。当然ながら外国には一般債権者もいるわけで、一般債権者にとっての責
任財産かもしれない中で、こういった形で公的債権についてクロスボーダーで要請を
するというのは、国内で徴収できない場合の最後の手段として理解されている。そう
いった点に鑑みますと、基本的には国内で徴収することを前提に現行の制度はつくら
れています。したがって、平成24年度の税制改正の時点では、滞納処分免脱罪や第二
次納税義務まで拡大するほどのものではありませんでした。当時としては、これから
始める話だったので、その必要性を認めず、手当はしなかったのではないかと思いま
す。
ただ、一方で、実態としては、クロスボーダーで滞納者が財産移転をする場面が出
てきている中で、徴収共助が件数的にはかなり増えてきている中で、今度は徴収共助
による徴収を詐害するような行為が把握されてきた。ある意味、徴収共助制度を導入
した当時には把握されていなかったようなものが、近年、把握されてきていることを
踏まえて、検討が必要なのではないかという問題意識であります。
○佐藤慶應義塾大学大学院法務研究科教授
ありがとうございました。
二点のお返事についてですが、まず納税管理人に関して言うと、納税管理人が置か
れたから何でもできるわけではなく、逆に言えば、納税管理人として指定される者の
責任というのは、決して重いものではないだろう。納税管理人自体が質問検査権の対
象になるわけではないと理解をしていますから、ある意味では書類の窓口なのです。
もしも外国にいる納税者本人が何も出してこなければ、出してきませんという答えを
返さざるを得ない立場なのだろうと思いますので、その辺り、納税管理人を置けば、
国税は何でもできるわけでもないし、反対にそういうものになったからといって、大
変なことになるわけでもないということを確認しておきたかったということです。
徴収共助については、よく分かりました。まず制度をつくってみて、必要な立法事
実が生じたので、さらに法制的な手当をすべきだというのは、非常に穏当な進め方だ
と思いますので、必要な各種の法制的な手当を組み合わせて対応するのが適切だと考
えます。
どうもありがとうございました。
○岡村座長
ありがとうございました。
梶川特別委員、お願いします。
○梶川特別委員
初歩的な質問になってしまうのですが、徴収共助というのは、3ページの御説明の
ように執行管轄権の制約と、先ほど御説明いただいたように、相手国でも手間がかか
ることという、租税債務が確定した後の執行のお話しのような気がするのですが、6
ページで御説明の国外財産を国内の配偶者に渡したときの第二次納税義務が賦課でき
ないというお話は、執行段階の話で、第二次納税義務というのは、その前に確定する
ような話なのですが、ここはどのような関連でこういう建て付けになっているのか、
今後、検討するのか。ここでディスカッションしていて、第二次納税義務について解
釈を変えられる余地があるお話しなのか。執行段階の話は租税条約というか、相手国
もあることなので、その話でいけば、それしかないような気もするのですが、第二次
納税義務に関しての国外財産の意味合いを教えていただくとありがたいです。
○岡村座長
中島企画官、お願いできますか。
○中島主税局税制第一課企画官
御質問ありがとうございます。
第二次納税義務という名前が若干誤解をお招きしているのかもしれないのですが、
執行段階というか、正確に言えば、滞納処分段階の話でございます。あくまでも滞納
者がいて、課税は終わっている。課税は終わっていて、納税義務は成立しているので
すが、法定の期限までに完納しない。したがって、滞納者になっている段階において、
滞納処分をしても徴収不足が発生する場合、徴収不足となったことと一定の関係があ
る方に対して、二次的に納税義務を負っていただくというのが、第二次納税義務制度
ですので、執行段階の話です。
○梶川特別委員
執行段階ということですね。
○中島主税局税制第一課企画官
そうです。
○岡村座長
ここのお話は、第二次納税義務を拡張する、概念を拡張するということではなくて、
佐藤教授がおっしゃいましたように、滞納処分の執行について、外国までを視野に入
れて、徴収共助の条約や情報交換条約も整備が進んでいますから、こういったものを
実効的に使っていくという意味で、滞納処分免脱罪と第二次納税義務のところは、少
し法改正をする方向で持っていったらどうかというお考えだと思いますし、私も賛成
です。
○梶川特別委員
分かりました。
○岡村座長
ありがとうございました。
本日は、税務上の書面、押印、対面原則の見直しや課税実務を巡る環境変化への対
応について、皆様から様々な御意見をいただけたと思います。
本専門家会合は、8月5日の総会の議論を踏まえまして、ウィズコロナ時代におけ
る税務手続の電子化やグローバル化・デジタル化の進む経済社会における適正課税の
あり方について、今後の総会における議論の素材を整理するため、設置されたもので
す。
これまで3回の会合で、当初予定していた議題については、一通りの議論ができた
かと思います。そこで、次回の専門家会合におきましては、これまでの会合でいただ
いた御意見を総会に報告するための原案について、委員の皆様にお示しし、御意見を
伺うこととしてはどうかと考えております。
また、その際の公開体制につきましては、原則どおり公開という形で行いたいと考
えておりますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○岡村座長
ありがとうございました。
今後の日程につきましては、追って事務局から御連絡させていただきます。
本日の会合は以上です。ありがとうございました。
[閉会]

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