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資料2020年11月10日 【税制改正関連情報】 第4回納税環境整備に関する専門家会合 議事録

第4回納税環境整備に関する専門家会合 議事録

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納税環境整備に関する専門家会合(第4回)議事録
日 時:令和2年11月10日(火)10時00分
場 所:WEB会議(財務省第3特別会議室を含む)

○岡村座長
時間となりましたので、ただいまから「納税環境整備に関する専門家会合」の第4
回目を開会いたします。
今回も委員の皆様方の御理解、御協力をいただき、オンラインを利用した会議とさ
せていただきました。
本日の出席者一覧は、お手元にお配りさせていただいております配席図を御確認く
ださい。
会議の途中でパソコン操作などに支障が生じましたら、事務局を呼んでいただくか、
あらかじめお伝えしております事務局の電話番号に御連絡をいただければ、対応させ
ていただきます。
この専門家会合におきましては、これまで3回にわたりまして、ウィズコロナ時代
における税務手続の電子化やグローバル化・デジタル化の進む経済社会における適正
課税のあり方について、御議論いただいてきました。その結果として、当初予定して
いた議題については、一通りの議論ができたと考えています。
本日の会合では、前回、皆様に御賛同いただいたとおり、これまでいただいた御意
見を総会に報告するための案につきまして、意見交換をしたいと思います。
それでは、申し訳ございませんが、カメラの皆様は、ここで御退席をお願いいたし
ます。
(報道関係者退室)
○岡村座長
それでは、総会に報告するための案につきまして、意見交換に移りたいと思います。
前回、お伝えいたしましたとおり、報告のための原案を用意いたしましたので、資
料実4-1を御覧いただければと思います。
資料の構成につきましては、前半部分にこれまでの会合での議題、論点の紹介のた
めに、第1回から第3回までの会合で使用した資料を抜粋して載せております。
その上で、41ページ以降になりますが、後半部分には、これまでの会合で皆様から
いただいた意見を載せております。
こちらの原案につきましては、これから皆様からの御意見をいただいた上で、総会
へ報告させていただきたいと思います。
それでは、まず事務局から内容を説明していただきたいと思います。
主税局の中島企画官、よろしくお願いします。
○中島主税局税制第一課企画官
委員の皆様におかれましては、これまで3回にわたって、お忙しい中、御議論に精
力的に御参加いただきまして、誠にありがたく存じます。おかげさまをもちまして、
本日、総会への報告案について、お示しすることができました。どうぞよろしくお願
いいたします。
それでは、目次をお開きください。
資料の構成について、御説明いたしますと、先ほど岡村座長から御紹介いただきま
したように、前半におきましては、これまでの会合で使用した資料のうち、委員の皆
様の御指摘が集中した資料を抜粋して載せております。
これまでの議論を振り返る意味で、目次を上から申しますと、一番目から三番目の
テーマのところは、第1回会合で使用した資料の抜粋です。第1回会合では、これま
での税調における議論と日本商工会議所・新経済連盟から記帳の実態、ICT、クラウド
会計ソフトの登場によって、記帳がどのように変わっていくのか、あるいはそれをや
っていく上での課題としては、どのようなものがあるのかといったことを御紹介いた
だきました。
四番目と五番目のテーマのところは、第2回会合の資料の抜粋ですが、第2回会合
では財務省、総務省のそれぞれから、国税・地方税における税務手続の電子化につい
てのこれまでの状況、現在の取組状況、今後の課題について、御紹介申し上げました。
また、電子帳簿の前提としての記帳水準についての現在の状況、今後の課題について
も、御紹介を申し上げたところです。
目次の次のページですが、上から二番目と三番目のテーマのところは、第3回会合
の資料の抜粋ですが、第3回会合では、書面、押印、対面原則の見直しについて、こ
れは政府全体で取り組んでいるテーマでして、税務手続についても例外ではないとい
うことで、これについても、見直しに当たっての論点を御紹介申し上げたところでご
ざいます。また、課税実務をめぐる環境変化への対応ということで、いわゆるグロー
バル化・デジタル化、そうした中で特に国境を越えた経済活動に対して、税務執行の
困難度が増している中で、一つには、税務調査の適正な確保、もう一つは、徴収の確
保の両面から論点をお示し申し上げました。
5ページをお開きいただけますでしょうか。昨年、政府税調において取りまとめら
れた中期答申における「令和時代の税制のあり方」から納税環境整備についての記述
を抜粋した資料です。
「4.デジタル時代における納税環境の整備と適正・公平な課税の実現」として、一
つ目にデジタル化に関して、例えばマイナポータル等を活用した税務手続の電子化、
二つ目に電子帳簿等保存制度の見直しといったようなところが、テーマとして取り上
げられたところです。
三つ目に、地方税共通納税システムの利用促進がございまして、今回、まさにこの
点について、議論を深めた状況です。
6ページ以降には、第1回会合で日本商工会議所から御説明のあった資料を抜粋し
て載せております。
7ページは、クラウド会計ソフト登場以前の、簿記の知識が不可欠で、手書きや手
入力で記帳をしているような時代から、クラウド会計ソフトの登場により、原始記録
をスキャンして、そのまま記帳まで移行できるような時代になっているのではないか
という話です。
8ページですが、帳簿の電子化というのは、経理事務の軽減のみならず、経営面か
らもメリットがあります。
特に、コロナ禍において、様々な支援措置を受けるに当たって、現在の経営状況を
客観的に把握する、証明する手段として、帳簿は非常に重要になってきており、その
ような中で、帳簿の電子化の重要性が認識されてきているのではないか。
一方で、バックオフィスに人員を割けない中小・小規模事業者が電子帳簿保存に取
り組もうとしても、紙保存より厳格な要件をクリアするのは極めて困難であったが、
クラウド会計の登場で、小規模事業者でも電子帳簿・電子申告に取り組みやすい環境
が整備されつつある中、コロナ禍でデジタル化への機運が高まる今が電子帳簿を促進
する好機なのではないかといった御指摘がありました。
9ページ以降は、新経済連盟の御説明資料の抜粋ですが、11ページ目をお開きいた
だけますでしょうか。特に電子的な会計経理を進めていく上で、スキャナ保存制度に
ついての御指摘がございました。
領収書等を紙で取引先から授受するという商慣習が、まだまだ続くだろうというこ
とを前提に、それをスマホ等で撮影して、電子的に画像で保存しておくといったスキ
ャナ保存制度の利用が拡大していくことが望まれるといった中で、今の電子帳簿等保
存制度において課されている要件というのは、そういった制度の利用を阻害している
のではないかといった御指摘だったと思います。
特に御指摘があったのは、スキャナ保存制度は、原本である紙の領収書等と副本で
ある画像との同一性を担保し、改ざんを防止するという観点から、紙と画像の突合を
求める制度ですが、そのため、紙の原本を本社なり、部署に提出するために出勤をし
なければいけないとか、定期検査が終わるまでは紙で保管しなければいけないという
ような御指摘がございました。
13ページ以降は第2回会合の資料の抜粋です。第2回会合では、財務省、総務省か
ら国税・地方税における税務手続の電子化についてそれぞれ御説明申し上げました。
14ページは、以前、政府税調でお取りまとめいただいた税務手続のデジタル化につ
いての全体像、全体的な方向性です。
これまでは、納税者による申告・納税といった手続の電子化に力を入れて進めてき
たということで、各種の施策を実施してきているところですが、今回、メインで取り
上げたのは、納税者によるデータの作成・保存ということで、具体的には電子帳簿等
保存制度ですが、そうしたところについて御議論をいただいたところです。
15ページは、e-Taxの普及促進に向けた取組ということで、大法人については電子申
告が義務化されている中で、中小法人についてさらなるe-Taxの利用率向上のための方
策を講じていく必要があるといった御議論がございました。
16ページ、電子帳簿保存法については、電子データは改ざんしたときの痕跡が残り
にくいことから、改ざんなど課税上で問題となる行為を防止する観点からの要件が設
けられています。
それによって事後検証可能性の高い、要は税務調査においても効率的に誤りのチェ
ック等ができる、非常に信頼性の高いものとなっているといった面もございます。
電子帳簿等保存とスキャナ保存については、一定の要件の下で、税務署長の承認に
基づいてデータによる保存を認める制度となっています。
17ページですが、新経済連盟からも御指摘をいただいたスキャナ保存制度の概要で
すが、スキャナ保存制度は、紙の領収書等をスキャンして作成した画像データを保存
することを認める制度であります。そのため、コピーであるデータと原本である紙と
の同一性を担保するための要件が設けられているところです。
スキャナ保存制度には、スキャナ保存データの信頼性確保のための措置が設けられ
ているので、もしペーパーレス促進の観点から、紙原本の確認が前提となっているよ
うな要件、先ほど申したような紙とデータとの突合みたいなものを緩和するというこ
とであれば、一方で、代替となる改ざん抑止措置も講ずる必要があるのではないかと
いったことがございます。
18ページは、電子帳簿等保存制度の利用状況です。利用件数は顕著に増加していま
すが、伸びしろは依然として大きいのではないか。令和元年で見ますと、承認件数で
約27万2,000件ということで、事業者の全体の数から見ると、非常にごく一部に利用が
とどまっている状況です。
こうした点を踏まえて、電子帳簿等保存制度の創設から20年が経過しているところ
で、データの活用、文書保存についての負担軽減を図りつつ、一方で、事後検証可能
性の高い改ざんなどがしにくい信頼性の高い記帳を推進する観点から、利用促進につ
いて検討していく必要があるのではないかという御議論でございます。
19ページですが、こちらは地方税における税務手続のデジタル化ということで、一
つは申告・納税のデジタル化ですが、昨年10月から地方税共通納税システムが稼働し
ています。ただ、対象税目としては、主として法人向けの税目という状況であります。
そのほかにも収納手段の多様化や、国税当局との情報連携にも取り組んでいるとこ
ろです。
21ページ目以降は、記帳水準の現状と今後の向上に向けた課題といったことでござ
います。
22ページをお開きください。個人事業者の小売、飲食店等の伝統的自営業について
は、経理事務を1人で行うような場合も多く、記帳にそれほどの事務量を割くことは
難しい状況にあります。
フリーランス、ギグワーカーと呼ばれる方々は、年々増加傾向にありますが、一方
でこうした方々は一定のITリテラシーを有していると考えられます。
中小企業については、基本的には市販製品などの何らかの会計ソフトを利用されて
いますが、その一方、電子帳簿保存法の承認を得ている企業は少ない。そういった中
小企業は、印刷して紙で帳簿を保存されているのが一般的といった状況にあります。
23ページですが、伝統的自営業と呼ばれる方々の個人事業者全体に占めるウエイト
は、年々減少傾向にあります。
その一方、雇用者でないにもかかわらず使用従属性の高い自営等、いわゆる雇用的
自営等と呼ばれる方々のウエイトが高まってきている。こういった近年の個人事業者
の動向を踏まえて、記帳のあり方を議論していく必要があるといった話です。
24ページでは、第1回会合で日本商工会議所から御説明頂いた資料を紹介させてい
ただいておりますが、記帳をすることの意義など、事業者サイドの御意見として整理
されておりますが、例えば金融機関の融資を受けるときの融資相談がスムーズに行う
ことができたとか、帳簿をつけていることで有事の際に支援をきちんと受けられる。
POSレジとクラウド会計システムを連動させることで、記帳や様々な税務申告業務を削
減できたという声も寄せられているところです。
25ページは、個人事業者の記帳の概況です。税務調査において、記帳が不備と指摘
されているような方々の割合をそれぞれの記帳の形態別に整理した表ですが、白色申
告の方などでは、7割を超えるような方について、何らかの記帳不備が確認されてい
ます。
白色申告、簡易簿記といったものについては、収支だけが記帳されて、資産項目の
異動が記帳されていないので、所得額の検証が不十分で申告漏れが生ずるような可能
性も高いといった状況であります。
以上のようなことを踏まえて、26ページですが、今後の記帳水準の向上に向けた課
題について、納税者の類型別に整理したものです。マトリックスは、上半分が記帳水
準の高い方、下半分は記帳水準の低い方です。左半分が申告や記帳に対する意識があ
る方、右半分は残念ながらそういった意識がない方に分かれているものでして、特に
記帳水準の向上に向けた課題としては、下半分が課題になるわけですが、記帳水準は
低いが、適正な記帳や申告に対する意識はあるといった方々については、税務調査に
要する時間、労力がかかるものですから、こういった方々に対して、手軽に記帳でき
るような形でいかに記帳していただけるか誘導していくことが課題になると思います。
一方、記帳水準が低く、また、適正な記帳や申告に対する意識もないといった方々
については、当然ながら税務調査も困難になりますし、さらには帳簿書類の破棄みた
いなものと、不作成、不保存等の区別も困難で、いわゆるペナルティーとしての重加
算税を賦課することもできない。そういう事例もある中で、こういったことへの対応
を検討していく必要があるといった御紹介をさせていただきました。
以上の第2回会合での議論の整理が27ページ目以降にございます。
28ページでは、国税における税務手続の電子化について、今後の主な論点として、
一点目は中小法人の電子申告を推進させていくためには、高い税理士関与割合を踏ま
えて、税理士会との一層の連携を図るという点です。
二点目は、記帳水準の向上を図る観点から、電帳法の要件を満たす信頼性の高い記
帳を推進していく必要があります。一方で、中小事業者でも既に電子的に帳簿を作成
されている、あるいは今後のギグワーカーの増加、そういったものを鑑みて、低コス
トの電子記帳の利用可能性を考えていく必要があります。
三点目は、スキャナ保存制度についてですが、紙原本によるチェックを極力縮小し
ていきながら、代替となる改ざん抑止措置を検討していくといった話でございます。
29ページは、記帳水準の向上に向けての話ですが、今後の主な論点として、ICT等の
活用を通じて、個人事業者全体の記帳水準についてどのように底上げを図っていくか。
記帳水準の低い方をどのように高い記帳水準に促していくか、そういった問題意識
の下、中長期的な記帳・帳簿書類保存制度のあり方を検討していく必要といったとこ
ろであります。
30ページは、地方税ですが、今後の主な論点として、地方税共通納税システムにつ
いての対象税目の拡大や納税義務者用の特別徴収税額通知の電子化という話がござい
ます。
31ページ以降は、第3回会合の資料の抜粋です。
33ページをお開きください。政府全体で押印についての見直しを統一的に進めてい
く中で、現行、税務署長に提出する書類については、全て押印しなければならないこ
ととされており、これは認印でもよいとされています。
他方、一部の手続では、実印による押印及び印鑑証明の添付が求められていまして、
例として担保提供関係書類への担保提供者の押印、もう一つは遺産分割協議書への共
同相続人等の押印といったものがございます。
論点として、国税関係手続における押印義務は原則として廃止すべきではないか。
他方、実印による押印及び印鑑証明の添付を求めているような手続については、政府
全体の方向性を踏まえ、そのあり方を検討すべきではないかといったことがございま
す。
34ページの地方税関係手続における押印原則についても、同様の論点でございます。
35ページ以降は前回の会合の最後の議題でございました課税実務を巡る環境変化へ
の対応についてです。
36ページは、国境を越えた経済活動の活発化ということで、非居住者、あるいは外
国法人で国内に何らの拠点もない納税者に対しても、適切に課税権を及ぼしていかな
ければならないということでございます。
例えばどのような場面があるかと申しますと、いわゆるインバウンド不動産投資と
いうことで、高値で売買が期待できるような不動産に対しての投資が活発化していま
す。
また、国際的デジタル企業については、国内に拠点がなく経済活動を行っています。
最後、オンライン配信ということで、ゲームや音楽、そういったコンテンツを国内
の消費者向けに配信している外国法人、こういったところに対しては、消費税が課税
されるわけでございますが、その適切な執行をどう確保するかということです。
37ページですが、国内に何らの拠点を持たない外国法人や非居住者に対する税務調
査等については、基本的には国内に所在する納税管理人を通じた接触のほか、租税条
約に基づいた情報交換要請等により対応している状況です。
納税管理人制度は、納税管理人を定めなかった場合について、何らかの担保もない
わけでございまして、こういったものの充実を図る必要があるのではないかといった
話です。
38ページは、国際的な徴収逃れに対する対応ということで、平成25年10月に税務行
政執行共助条約が発効して、外国との間で徴収共助ができるようになっています。我
が国が外国に徴収共助を要請すると、外国当局が当該外国にある財産から滞納処分に
相当する強制執行を行い、徴収をして、我が国に送金をしてくれます。これを相互主
義の下、相互にやり合うといった仕組みですが、この実績が上がってきている一方で、
徴収共助逃れをするような事例も把握されてきています。
その事例を紹介させていただいたのが40ページになります。国際的な徴収逃れとし
て想定されるケースということで、一つは、滞納者の国内財産を国内の配偶者に贈与
したときに、第二次納税義務を賦課することができますが、滞納者が国外の財産を配
偶者に贈与したときには、第二次納税義務が賦課できないということがあります。
もう一つは、滞納者が国内財産を国外に移転させた場合には、滞納処分免脱罪が適
用できる一方で、滞納者の国外財産を共助要請ができない国に移転させても、滞納処
分免脱罪が適用できないといったことがあります。
以上の議題を踏まえまして、41ページ以降に、これまでの専門家会合でいただきま
した主な御意見を列挙させていただいております。
42ページをお開きください。国税における税務手続の電子化については、税務手続
の電子化全般についての御意見です。デジタルトランスフォーメーションを通じて、
多様性に柔軟な対応ができるというデジタル化のメリットについての御指摘をいただ
きました。
年末調整、確定申告、電子納税、そういったものをどこまで徹底させていくのか、
そういった道筋を明らかにしていく必要があると御指摘もいただきました。
マイナンバーカードの普及拡大が必須になってくるのではないかという御意見も頂
戴しています。
電子帳簿等保存制度に関しては、まず帳簿書類関係ということで、国税の帳簿書類
の保存を電子的に行うときには、様々な要件が課せられている中で、実務上、紙で保
存せざるを得ない状況になっています。
電子帳簿保存法の承認制度につきましては、事務負担になっている点も鑑みて、申
告する側が信頼性の高い、改ざんができないようなものを使っているのであれば、そ
こはより簡易化する形でバランスを取ることができるのではないか。
領収書等のスキャナ保存に関しても、様々な要件が課されている中で、社内整備等
のソフト面、機器などのハード面の双方でハードルが高い状況にあり、さらなる利便
性を考えていく必要があるだろうということです。
国税における税務手続の電子化については、43ページの冒頭にありますように、電
子保存ができる会社にとっては紙保存がある種のペナルティーになってしまっている
のではないかといった御指摘があります。
また、改ざんや捏造といったものについては、それに対するペナルティー、重加算
税といった御指摘もありましたけれども、そういったペナルティーを課すことで対応
するといった議論をすべきではないかといった話も頂戴しました。
その他、請求書、領収書だけではなくて、税務の中に必要とされる書類はたくさん
ありますので、そういったものについての電子的な保存についても、議論していくべ
きだといった御指摘です。
最後は、電子取引関係ということで、紙の領収書よりも入力事務、データ保管、バ
ックオフィスの効率性の徹底の観点からすれば、請求書、領収書自体を直接デジタル
データで交付するやり方がよりいいのではないかといった御指摘をいただきました。
44ページは、地方税における税務手続の電子化についてですが、一つは地方税共通
納税システムの対象税目の拡大をすべきといった御指摘です。
また、納税義務者用の特別徴収税額通知についても、電子化することによって、利
便性向上、コストダウンを図ることができることについての御期待する意見を頂戴し
てございます。
45ページは、記帳水準の向上についてですが、コロナ禍において、会計状況を的確
に証明できるような帳簿組織が非常に重要です。
個人事業者についても、クラウド会計ソフトの技術の発展で、もはや記帳が手間だ
ということは言えない時代になってきているのではないかといった御指摘もありまし
た。
そういったところも踏まえて、正規簿記による青色申告にいかに誘導していくか、
そういった制度改正の検討も必要ではないか。
例えば概算での必要経費水準を決めて、それを超える必要経費については、帳簿に
よって証明する形とか、あるいは法人については、電子化などを租税特別措置の要件
とするとか、そういった御提言などをいただきました。
46ページは、税務上の書面、押印、対面原則の見直しについてですが、押印文化の
ない国でも、納税の適正性を担保しているわけですから、押印がなくても税務手続を
適正に行うことが可能だという発想はあるのではないか。
他方、担保提供や財産処分のときなど、本人の意思確認が非常に重要な場合などは、
印鑑登録証明や実印が求められる場合があるが、これは証拠としての価値を測る上で
も、単なる認印とは性格だいぶ違うのではないかといった御指摘です。
また、相続税の申告の際、共同相続人の意思確認なども必要になってくるわけです
ので、押印が廃止された場合にも何らかの検証手続が必要になるのではないかといっ
た御指摘をいただきました。
最後は47ページでございまして、納税管理人制度の見直しと国際的徴収回避行為へ
の対応です。
一つ目の納税管理人制度の見直しについては、納税管理人になってほしいという要
望が中小企業にもある一方、かつて働いていた外国人労働者が帰国して、日本の税金
を払わなかったときに、連絡を取ることができなくなってしまっていて、実務上は難
しいといった御指摘もありました。
その一方で、納税管理人として指定された方が書類の窓口のような役割を担うにす
ぎないことに鑑みれば、必ずしも責任は重いものではないので、納税管理人を指定で
きるようになったとしても、納税管理人としての負担は、必ずしも重いものではない
のではないかといった御指摘もございました。
最後は、国際的な徴収回避行為ということで、徴収共助制度をスタートしたところ、
さらに徴収共助を逃れるような立法事実も生じてきたので、例えば滞納処分免脱罪と
か、第二次納税義務のところは、法改正をする方向に持っていったらどうかという御
指摘を頂戴したところです。
以上が前回までの議論の概要と委員の皆様から頂戴した主な意見です。
紙面の都合で主な御意見のみの列挙とさせていただいていますが、追加等の御意見
がございましたら、頂戴したく存じます。
私からの説明は以上です。
○岡村座長
ありがとうございました。
それでは、意見交換に入らせていただきたいと思います。
前回と同様、私から指名させていただきますので、会場にいらっしゃる皆様方も含
めて、ミュートボタンを解除してから御発言ください。
それでは、御質問や御意見のある方は、挙手、または挙手ボタンをお願いいたしま
す。田近特別委員、お願いします。
○田近特別委員
今日は取りまとめということで、一点、申し上げさせていただきます。
資料の42ページを開いていただくと、専門家会合でいただいた主なご意見として、
税務手続の電子化について、年末調整、確定申告、納税電子化がどこまで徹底される
のか。それがいつまでにどういう姿になるのかということです。
私の意見は、この点に関わるのですが、資料の14ページを御覧になっていただきた
いのです。当専門家会合には二つの役割があると思っていて、それは14ページの図だ
と思うのです。国税における税務手続のデジタル化ということで、要するにここには
っきり書いてあるように、納税者の利便性を向上させ、電子化を進める。その際、多
様な働き方が問題になっているということです。
当専門家会合の役割は、確定申告等の電子化を進めていく、記帳の簡易化、高度化
の徹底ということですが、私が言いたいのは、官民を含む多様な当事者がデータをデ
ータのまま活用・やり取りするということをもう少しきちんと言及されてもいいので
はないか。
つまり記帳をお願いするだけではなくて、会議の席でも申し上げたと思うのですが、
納税者としては、データからデータということで、マイナポータルを開ければ、自分
の所得、売上情報が入ってくる仕組みを徹底すべきだということを、私はもう少し強
調してもいいと思います。
○岡村座長
石井夏生利特別委員、お願いします。
○石井(夏)特別委員
税務手続の電子化は、国税と地方税で一体的に行っていく必要がありますので、協
力関係を維持しながら進めていただければと考えております。
個別の点については、過去3回の専門家会合でも申し上げたとおりではありますが、
国税に関しましては、事業者だけではなく、個人の申告の利便性を高める必要が特に
あると思います。
そういう意味では、マイナンバーカードの普及、マイナポータルの利便性向上が非
常に重要な視点になってくるわけでございまして、マイナンバーカードの普及拡大に
関しましては、ほかの政策に依存するところも大きいと認識しておりますが、そうし
たマイナンバーカードカードの普及拡大の見込みを見据えて、税務の場面からもマイ
ナポータルが使い勝手の良い仕組みとして手当てされたシステムになるような、より
一層の工夫を期待しているところであります。
地方税に関しましては、主として法人の納税者からの要望があります地方税共通納
税システムの対象税目拡大、納税義務者用の特別徴収税額通知の電子化を是非進めて
いただきたいと考えております。
地方税共通納税システムの対象税目拡大に関しましては、固定資産税や自動車税な
どの賦課税目は要望の多いところですが、これらは地方自治体が賦課決定をした上で、
納税通知書を納税者などに送付し、納税通知書の情報に基づいて、納税する仕組みで
あります。
これに対して、これまでの地方税共通納税システムの対象税目では、課税の前段階
の申告などによって、納税者側からの必要な情報が送られて、その申告の手続は、既
にeLTAXの対象になっていました。そうした仕組みの違いがありますので、それをどう
クリアしていくかが課題になってくると思われます。
地方税共通納税システムの対象税目拡大については、賦課税目の仕組みの違いなど
を踏まえた上で、早期に納付の電子化を実現するべきと考えております。
また、主に法人が複数の自治体に一括して納付したいというニーズがあるというこ
とで、そうしたものに対応する観点からも、eLTAXに搭載されている現行の地方税共通
納税システムを生かすのが、効率性の観点からも望ましいといえます。
今後は総務省が方向性を示しつつ、地方団体などから集めていただく必要がると考
えます。
○岡村座長
沼尾委員、お願いします。
○沼尾委員
事務局で丁寧に取りまとめてくださいまして、ありがとうございます。
今回、出てきたものに関して、気になっていることを三点申し上げたいと思います。
一点目は、第2回会合の議論のときに、税務データを社会保障分野において使用す
る、しないということで、幾つか意見が出ていたと思うのですが、こういった税務デ
ータの取扱いのことも含めて、今回、このように税務手続をデジタル化することに対
して、国民全体の中でそのようにしてデータ化されたものは、例えば政府の中でどの
ように管理されるのかとか、どのように共有されるのかとか、税務データがそのまま
いろいろな役所に使われてしまったりすることがないのかとか、そういうことに対す
る国民に対する説明を行って、デジタル化してデータをどこの省庁がどういう形で管
理をしていくのかというところを明確にすることで、データに関する安心というので
しょうか、安全に関して、きちんと説明していくことが大切ではないかと思っていま
す。
第2回会合の際も、例えば税務データを全部、社会保障関係の厚労省に提出すべき
だということを私は申し上げたかったわけではなくて、これは以前に政府税調で、ア
メリカ、カナダに調査に行かせていただいたときに、アメリカの場合には、それぞれ
のセクションがそれぞれの責任を持ってデータを管理しながら、何か必要があるとき
には、ソーシャルセキュリティーナンバーを介して、ある社会保障のデータと税務デ
ータの突合を行って、それで支援が必要な人に関する情報が把握されたら、その段階
で他の役所からもらったデータは全部廃棄します。そのようにして、それぞれが分散
型で、責任を持って情報を管理しながら、それらの情報を突き合わせるときにだけ、
ソーシャルセキュリティーナンバーを使う形で、データの所有に関して、非常に明確
な責任分担を行っていたことが印象に残っています。
今回、デジタル庁を設置して、内閣官房などを中心にマイナポータルなどを含めて
整備をしているということなのですが、これは外から見ていると、データがどのよう
に使われていくのかとか、どのように保存されるのかは分からない。そうしたところ
もきちんと説明をしながら、税務情報に関するデジタル化の効率性とか、メリットを
適切に説明していくことが必要ではないかということが、申し上げたかったことの一
点目です。
二点目は、押印の件ですが、前回の会合で、私は紙情報で押印も非常に大事ではな
いかということも申し上げたのですが、認印などを廃止して手続をしていくことで、
それがスピーディーに対応できて、利便性の向上にも資することは理解をしておりま
す。
他方で、必要なものもあることはよく分かっているので、その辺りのところも現場
の状況などをリサーチしていただきながら、廃止すべきものと残すべきものの基準を
明確に決めることが大切ではないかと思ったところです。
三点目は、税務手続の電子化については、納税者というよりも、役所の内部でスピ
ーディーに効率化するためには、今ある紙情報を電子化していく作業も必要ではない
かと思うのですが、この辺りの財政措置についても、今、国でも速やかに行っている
と思いますが、その取扱いも含めて、スピーディーに進めていくための環境を整える
ことが必要ではないかということです。
○岡村座長
土居委員、お願いします。
○土居委員
事務局におかれましては、資料の41ページ以降の「専門家会合でいただいた主なご
意見」をうまくまとめていただきまして、誠にありがとうございました。私としては、
このような形で取りまとめられていることについて、異論はございません。
それに加えまして、今日は三点ほど申し上げたいと思います。
一点目は、マイナンバーカードの話でありますが、先ほど来、委員の方からマイナ
ンバーカードについて言及がありまして、今後、マイナンバーカード及びマイナポー
タルを税務手続において積極的に活用する方向で整えていくことは、むしろ加速すべ
きではないかと思っております。
マイナンバーカードは、来年3月から健康保険証利用が始まりまして、2023年度ま
でというところで、より普及するということを、今、政府が進めようとしていて、こ
れは一つの切り札になるだろうと思います。健康保険証を持たずに医療機関に行くこ
とは、普通ないわけでありますので、マイナンバーカードの健康保険証利用が進むと、
マイナンバーカードを多くの方がお持ちになりますので、税務手続にも今まで以上に
活用できる、マイナポータルもより活用できるようになるので、当然ながらマイナポ
ータルの内容を充実していくことが、税務手続上でも求められるのだろうと思います。
二点目ですが、記帳水準の向上でございます。当専門家会合では、記帳水準の向上
について取り上げており、記帳水準の向上は、小規模事業者、とりわけ個人事業者に
とって事業の経営状態をタイムリーな形で把握することができたり、分析することが
できたりするという点で、まずは事業者に第一義的な恩恵があるということだと思い
ます。
それを踏まえた上で、専門家会合の議題ということで、事業者の適正申告の確保に
向けた取組の中に、記帳水準の向上というものは、中長期的な課題としてあるのだろ
うと思います。もちろん中長期的な課題ではあるのですが、早急にかつ着実にこの取
組を進めていく必要があると考えます。
そのためには、電子帳簿保存法の見直しなどを踏まえて、今後の道行きについて、
ロードマップのようなものを作成して、計画的にこの取組を進めていくことが重要だ
と思います。そうすることで、記帳水準の向上とそれに関連する取組について、対外
的にも多くの方に知っていただくことになり、さらには会計ソフトの供給メーカーの
開発計画など、そういうところにも役に立つでしょうし、事業者の対応準備にも資す
るものだと思います。この観点から、記帳水準の向上については、政府税制調査会で
も引き続き議論を進めていくべきではないかと考えます。
三点目は、資料の47ページですが、国際的な徴収回避行為への対応については、御
意見として既に出されておりますように、やはり法制的な手当てというのはするべき
だと思います。もちろんそれなりの準備なり、議論を尽くすことは必要なのだろうと
思いますが、できるところから早期に始めることを求めたいと思います。
○岡村座長
神津特別委員、お願いします。
○神津(信)特別委員
今回の専門家会合でございますが、幅広い観点から、現在、社会で要請されている
必要なことを財務面・税務面で全面的に検討した、すばらしい提案ができたと思いま
す。その上で、若干付け加えることも含めて、三点申し上げたいと思います。
一点目は、税務上の書面、押印、対面原則の見直しでございます。このことについ
て、いろいろと議論されて、方向性としてはすばらしいものになったと思いますが、
一つだけ追加していただきたいことがございます。それは税理士法上の書面添付制度
というものでございます。ウィズコロナの時代にあって、対面原則の見直しからも、
いわゆる密にならないということが求められる中、今後一層の活用が望まれる制度だ
と思います。これは、原則的には実地調査の省略にまでつながる制度ですので、より
一層この制度の活用が広がることを望みたいと思います。
二点目は、電子帳簿保存法の保存要件の簡略化については大賛成でありますので、
是非ともその方向で進めていただきたいと思います。一つだけ、私なりに考えた、い
わゆる企業にとってのメリットを御披露したいと思います。スマホのキャッシュレス
決済の方法ですが、例えば小売店でキャッシュレスで支払うと、スマホから小売店の
パソコンに行き、それがキャッシュレス決済事業者に行って、小売店に短期間で振り
込まれる。通帳に振込履歴が記載されて、小売店の会計帳簿にそれが取り込まれると、
決算に完全に反映される。それを基に電子申告になって、電子納税までつながれば、
小売店や店舗側にとってのメリットもあるし、完全に電子で行われていることの典型
的な例ではないかと思います。こういう典型例によって、電子帳簿保存法のことから、
いろいろなことを見直していくお手本になる制度ではないかと思います。これは企業
にとって大変メリットのあることで、完全キャッシュレス化、ペーパーレス化、電子
化の典型的な例ではないかと思いますので、こういうことを活用していく方向性がい
いのではないかと思います。
三点目は、先ほど土居委員がおっしゃったことの繰り返しになると思いますが、私
どももマイナンバーカードの普及・定着については、早急に進めるべきだと思います。
これが政府税調の守備範囲でないことはよく分かっておりますが、マイナンバーカー
ドの普及については、いいのか悪いのか、いまだに完全秘密主義で行われており、こ
れが漏れたら大変だということで、門外不出という状況がございます。それをある程
度見直していただきたい。
それから、マイナンバーカードについては10年に一度の更新制度があり、これにつ
いては賛成ですが、マイナンバーカードに格納される電子証明書の有効期限は5年間
で1ございまして、これを10年に統一する必要があるのかないのかということも含め
て、検討すべきだと思います。
○岡村座長
渕教授、お願いします。
○渕神戸大学大学院法学研究科教授
私は、今回、取りまとめていただいたものについて、全体として、これでよいので
はないかという印象を持っております。
特に私が関心を持っている点としましては、土居委員が御指摘されたことの三点目
ですが、資料の47ページの国際的な徴収回避行為への対応については、まさにいろい
ろ行っていく必要があると思います。そこに当たって、当事者に対する手続保障とい
うことです。これをきっちりしなくてはいけないということで、乱暴な制度はつくる
ことができないということだと思いますが、そこをうまく手当てをしていただきたい
と思っております。
もう一点ですが、沼尾委員がおっしゃった一点目について、私も少し思うところが
ありますので、コメントさせていただきますと、むしろこれは石井特別委員が御専門
のところではあるのですが、政府や役所が税に関する情報等を収集する場合には、完
15
全に門外不出ということではないのかもしれないのですが、目的外で使うことはいけ
ないと基本的に考えるべきだと思います。ですので、他の役所に情報を持っていく場
合もそうだと思いますが、目的外で使用することについては、沼尾委員がきちんと説
明をすべきだとおっしゃったところでありますが、私としては、しっかり法律で定め
ていくことが必要だと思っております。
○岡村座長
田中特別委員、お願いします。
○田中特別委員
私からは一点あるのですが、資料の28ページ目に国税における税務手続の電子化に
関する今後の主な論点があります。これが今後にとって非常に重要だと思うのですが、
まず中小法人というカテゴリーがすごく広いのです。ですから、零細な個人企業から
大きな中小企業までという領域の中で取りまとめれば、ここで言っているようなイメ
ージであるとは思うのですが、それぞれのフェーズにどのように対応していったらい
いのかという手がかりがないと、一概には先に進まないと思います。
日本商工会議所からもお話しさせていただいたとおり、帳簿をつくっていない事業
者もあります。そういったところはどうやっていくのかというところから始めなけれ
ばならないわけで、その部分については、税理士が関与していて、今後改善されるで
あろうということが多いのだと思います。帳簿をつくっているところにしても、月の
領収書をまとめて税理士にお願いして、記帳をしているということが現実には多いよ
うに思うので、そういったところをどのように進めていくのかということを具体的に
検討していただきたいと思います。そういう今まで手が及んでいなかったところも、
デジタル化の中に組み込んでいくようなことを考えていただきたいと思います。
中小企業でもある程度の規模になれば、ほとんど電子化しているのです。ソフトウ
エアで電子化を進めているということで、帳簿の記帳の後の段階は、かなり電子化が
進んでいると思います。そのときに、記帳までをどうするのかということがすごく問
題だと思います。
今、ここでは、スキャンをして、そのまま記帳するというお話がずっと例として出
されているのですが、企業によっては請求の妥当性をチェックしたり、仕分けをした
りすることが会社にとって大事な業務なので、その作業を必ずしもAIがやってくれる
ということではないので、その際にどの段階でスキャンするのかということで、今ま
でと違った煩わしさが出てくると思います。全部スキャンした後にチェックをすると、
フィードバックしなければならない項目が多いので、そのときはどうするのかという
ことも含めて、そういうことからいえば、企業に合わせたシステムフローを考えて取
り入れていくことが大事だろうと思います。
そのときに障害になるのは、スキャンデータにして保存するということが企業にと
ってメリットがあるかどうか、現実的かどうかということも一つあると思います。企
業側にとってどのようにすることが一番スムーズになるのかということの観点から検
討していただければいいと思います。要するに改ざんを防ぐためだけにスキャンを入
れるということであれば、企業にとっては労力が多くなるわけです。一方で、そうす
ることで、AIによって仕分けをしなくてもいいというのは、あまり説得力がないと思
うので、エビデンスをどう保存するのか、電子化をどのように整備していくのかとい
うことについては、一気通貫ではなくて、もう少し検討が必要だと思います。
それから、電子帳簿にすると、税理士に頼むことも含めて、そういったことについ
て、ある程度インセンティブを設けていただくことがいい方法だと思います。
改ざんについては、電子化をしようと何をしようと、改ざんは絶対に出るので、完
全に防げるということではないと思います。ですから、その辺の勝手を考えるのがい
い。AIに頼っていれば、その目をくぐった改ざん方法が出てくると思います。海外に
もそういう事例はあるように思うので、今までどおりの帳簿閲覧を含めて、妥当性を
見ながら、現実的にチェックをしていくという方法は必要だと思います。
○岡村座長
佐藤教授、お願いします。
○佐藤慶應義塾大学大学院法務研究科教授
私も今回取りまとめてくださった資料に賛成です。
その上で一点、追加の意見を申し上げます。意見の対象は、たった今、御指摘のあ
ったスキャナ保存における改ざんの点です。スキャナ保存制度について、資料の17ペ
ージに「原本の確認が前提の要件を緩和するのであれば、その一方で、代替となる改
ざん抑止措置も論ずる必要」と記載されており、また、43ページで「それでも改ざん
や捏造は出てくるため、それに対するペナルティーの議論をすべきではないか」とい
う御意見が紹介されています。この点について、私の考えを申し上げます。
スキャナ保存制度の要件の緩和と併せて一定の抑止措置を講ずることが必要になる
ことは、私もそのとおりだと思います。また、スキャナ保存制度についての現在の状
況から見れば、これは急ぐ施策であろうと思いますので、当面は要件の代替となる改
ざん抑止措置が、現在の重加算税を若干衣替えする形にならざるを得ないことも理解
いたします。しかし、将来的には恐らく、改ざんそのものがなくなる、なくならない
ではなくて、発覚しにくい改ざんが生じてくる点が問題になるということも含めると、
税額ベースの重加算税で対応できるかということについては、中期的に相当疑問を持
っております。他方で、どれだけ実効的な改ざん抑止措置を講じることができるかと
いうことは、どれだけ要件を緩和できるかということと見合いになります。したがっ
て、この制度を動かしていく中で、実効的な改ざん抑止措置として、例えば改ざんさ
れた書類の件数等をベースに租税制裁が加えられるような、新しい行政制裁のあり方
を同時に考えていく必要があると考えております。
○岡村座長
梶川特別委員、お願いします。
○梶川特別委員
取りまとめにつきまして、御説明ありがとうございました。
私も委員の意見も含めた取りまとめの方向性については、特段の異論はございませ
ん。
その上で、各委員の皆様がおっしゃられていることと全面的に重複することでござ
いますが、私もそこは少し強調させていただきたいということで、一言だけお話をさ
せていただきます。
冒頭、田近特別委員がおっしゃられていたこととほぼほぼ同趣旨ですが、今回、税
務手続のICT利用というか、デジタル化というテーマですが、これについては、もちろ
んこれ自身も納税者利便になりますし、税務当局の税務調査を含めた業務の効率化に
もつながると思います。難しい部分ではあるのですが、第一前提としては、その前に
取引自身でICT利用が進むことが大前提のお話しだと思いまして、納税行為というのは、
事業者にとってとても大きな関心があるので、税務手続等をきっかけに、取引自身の
デジタル化が重要だということの誘導的発信というのでしょうか、その辺を今回の取
りまとめの中にも入れていただきたいと思います。具体的な話については、これから
現実を見ながら、段階的に進めなければいけないのですが、取引自身のデジタル化の
誘導的発信を是非お願いしたいと思います。
例えば資料の43ページに書かれていることですが、請求書や領収書などがデジタル
データで送られてという、まさにシステムの利便性というのは、データの流れの一貫
性だと思います。ですから、この辺がどれだけ経済社会として進んでいくかというこ
とはとても大きくて、その引き金として、税というのは、国民的というか、事業者的
関心が高いことだと思います。
私の仕事でいえば、いわゆる信頼性の高い記帳というのは、会計的にもそうなので
すが、一番頼るところは、外部証憑というもので証拠力を補塡するのですが、外部証
憑というのは、要するに第三者から入手される情報と当該事業者の記録が照合できる
かということで、こういう意味では、マイナンバーなどをさらに一段進められて、こ
れはここだけの議論ではないのですが、金融機関情報であったり、顧客からの当該情
報が入手できるということがあります。現実には個人情報の問題等々があるのですけ
れども、何とか進めていただきたいということを発信していただければと思います。
税務手続に関しては、善良な納税者と故意に税を逃れようとする、この両者にとっ
て、きちっと整理された議論が必要で、善良な納税者の利便性を高めるという意味で
は、自分の全ての金融情報なども出して、それで利便的に税務手続を補助してくれる
のであれば、善良な納税者としては、むしろやりたいこともあると思います。ですか
ら、選択制みたいな話も十分に可能で、個人ないしは事業者が善良であれば、むしろ
そういった情報、ないしは金融機関情報などをマイナンバーなどを使いながら当局に
出す、またその利用を許可するということ、それによって事務効率が随分上げられる
ということを考えるところもあるのではないかと思うので、その辺の一定の選択制に
基づくインセンティブとペナルティーみたいなことも、検討いただく方向性があって
もいいのではないかという気がいたしました。
○岡村座長
土居委員、お願いします。
○土居委員
二度目の発言をさせていただきます。今回の発言は、前回と全く違うことで、先ほ
ど沼尾委員、渕教授が提起された論点に私自身も触発されましたものですから、建設
的にこの議論を進める必要があるのではないかと思っております。
専門家会合の冠は、納税環境整備ということですので、納税環境整備とは直接関係
がないものの、政府税制調査会としては、これをしっかりメンションしておく必要が
あるのではないか。主な御意見の中には入らないけれども、事務局にはここでこうい
う議論があったことを是非引き継いでいただきたいと思います。納税環境整備の周辺
分野に社会保障制度があって、社会保障制度があることは無視できないということは、
はっきりしているのだろうと思います。マイナンバーカードという存在がそもそもそ
れを象徴していると思います。
その上で、さはさりながら、この会合は社会保障制度を議論するわけではございま
せんので、むしろ所得税なり、住民税の制度を利用した形での所得情報が社会保障制
度で利用されていることについて、政府税制調査会は何も意見を言わないのかという
ところに、私自身は少し問題提起をさせていただきたいということであります。
渕教授がおっしゃったように、目的外使用というものが、何の断りもなく行われて
いるということは、現状ないと私自身は信じておりますが、経済学者からすると濫用
されている。もっと露骨なことを言うと、財務省主税局は所得税制について所管をし
ているのだけれども、片や歳出予算を所管している財務省主計局は児童手当の所得基
準とか、医療保険での現役並み所得の定義などについて、疑義を呈しているわけです。
しかも、それらは所得税制における所得の定義をもろともに使っているわけでありま
すから、これについて何の整理もなく、政府の中でそのまま存置されているというこ
とで、果たしてよいのだろうかと思うわけです。
これについての是非は、ここでは申しませんが、少なくとも所得税制の所得の定義
が使われていることだけは間違いないわけで、もちろん事前に厚生労働省等から照会
などはあるのかもしれませんが、果たして所得の定義の使われ方がこれでよいのかと
いうことは、さすがに所得税制が基になっているということでありますので、今後、
何らかの整理が必要になってくるのだろうと思います。適当につまみ食いして、所得
税の所得の定義を他の制度で使われること自体、目的外使用とまでは申しませんが、
目的外に近いような、つまり所得税は所得税として、そういう意味を持って規定した
けれども、それが意図せざる形で用いられている面もあるということですので、そう
いう意味では、政府税制調査会としても、所得税における所得の定義が、他の制度で
変な形で濫用されないように見張っているというところは、あってもいいという気も
しております。
○岡村座長
宮永特別委員、お願いします。
○宮永特別委員
皆さんの御意見を聞いていて、今回の取りまとめに関して、私も全く異存はござい
ませんし、善意の納税者というか、基本的に善意の方が多い中で、データ改ざんリス
クその他について、今後どういうことが起こっていくかというときのペナルティーと
いうか、悪意に対するペナルティーについては、今後とも考えていかないといけない
と思っておりますが、他のことにつきましては、実務的に少しでもいろんな方たちが
苦労しないでという、時代の流れに沿った形になっていると思っております。
もう一つだけ、非常に共感しておりますが、少しずつデジタル化していく中で、あ
る分野ができたところ、その次、フェーズを見て、時折、どの状態で、思ったことが
どのように進展していったかという定点観測的なものを今後進めていくことは、非常
に大事なのではないかと思った次第でございます。
○岡村座長
どうもありがとうございました。
それでは、本日いただいた御意見も踏まえて、私のほうで最終調整をさせていただ
き、その上で次回の総会に報告したいと思いますが、報告の内容につきましては、私、
座長に御一任をいただけますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○岡村座長
ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。
新型コロナウイルスの影響やグローバル化・デジタル化の進展により、納税環境の
整備については、その重要性が増してきていると感じております。本専門家会合にお
きましては、皆様に活発に御議論、御意見をいただき、これからの納税環境のあり方
について、とても有用な議論ができたと存じます。
総会においても、引き続き議論を行っていくことになるかと思いますが、専門家会
合では、そのための参考となる素材をしっかりと整理できたのではないかと考えてお
ります。
10月7日から4回にわたり御参加いただきました皆様に、この場をお借りして感謝
申し上げます。ありがとうございました。
また、有識者の皆様におかれましても、大変御多忙のところ、会合開催に当たり御
尽力いただきましたことに、重ねて厚く御礼を申し上げます。ありがとうございまし
た。
それでは、当会合はこの辺りで終了したいと思います。本日も、お忙しい中、御出
席いただき、ありがとうございました。
[閉会]

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