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資料2021年03月01日 重要資料 令和3年改正消費税経理通達関係Q&A(2021年3月1日号・№872)

重要資料

令和3年改正消費税経理通達関係Q&A


 令和3年2月
 国 税 庁

 令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除制度において適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)が導入されます。
 これに伴い、国税庁では令和3年2月に平成元年3月1日付直法2−1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)(以下「消費税経理通達」といいます。)の改正を行いました。
 このQ&Aは、具体的な事例に関して、改正後の消費税経理通達を基に、法人税の所得金額の計算における消費税及び地方消費税の取扱いをまとめたものです。
(注)このQ&Aは、令和3年2月9日現在公布されている法令及び同日現在の通達に基づいて作成しています。

Ⅰ 令和3年2月の消費税経理通達の改正の趣旨

問1 令和3年2月の消費税経理通達の改正の趣旨を教えてください。

【回答】
 消費税の納付税額は、税の累積を排除するため、課税売上げに係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を控除して算出することとされており、この控除することを「仕入税額控除」といいます。
 令和5年10月1日からは、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として「適格請求書等保存方式」(以下「インボイス制度」といいます。)が導入され、インボイス制度の下では、仕入税額控除の要件として、原則、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」等の保存が必要になります(新消法30⑦⑧⑨)。
 この仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税額は、インボイス制度導入前においては、課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額とされています(旧消法30①、28年改正法附則34②)。
 一方、インボイス制度導入後においては、仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税額は、適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に基づき計算した金額その他の政令で定めるところにより計算した金額とされ、適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けることができなくなります(新消法30①)。
 ところで、消費税の納税義務者である法人は、法人税の所得金額の計算に当たり、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)の経理処理については、
・ 消費税等の額とこれに係る取引の対価の額とを区分して経理する「税抜経理方式」と、
・ 消費税等の額とこれに係る取引の対価の額とを区分しないで経理する「税込経理方式」
とのうちいずれかを選択できることとされています(旧経理通達3)。
 このうち、税抜経理方式によった場合、インボイス制度導入前は、課税仕入れに係る仮払消費税等の額として計上する金額は、地方消費税も加味したところで、課税仕入れに係る支払対価の額(消費税等の額がある場合にはその額を含みます。以下同じです。)に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出した金額に相当する額とされていました。例えば、法人が国内において資産(軽減税率の対象ではないものとします。)を取得し、対価として11,000円を支払った場合の仕訳は、次のようになります。

 しかしながら、インボイス制度導入後は、課税仕入れであっても適格請求書又は適格簡易請求書の保存がないものは原則として仕入税額控除の適用を受けることができないため、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れ(古物営業を営む者が棚卸資産を取得する取引等を除きます。以下同じです。)について仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税額はないこととなります。この点、法人税では、仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れ等の税額及び当該課税仕入れ等の税額に係る地方消費税の額に相当する金額の合計額が仮払消費税等の額とされていますので、税務上は仮払消費税等の額がないこととなります(法令139の4⑤⑥、法規28②)。
 このため、令和3年2月、消費税経理通達を改正し、仮に法人が適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについてインボイス制度導入前のように仮払消費税等の額として経理した金額があっても、税務上は当該仮払消費税等の額として経理した金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことを明らかにしました。具体的な税務調整の例については、以下の問を参照してください。
※ 消費税経理通達と同日に改正された平成元年3月29日付直所3−8ほか1課共同「消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)(以下「所得税に係る消費税経理通達」といいます。)についても、同様の改正の趣旨となります。

〔参考〕適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る経過措置
 インボイス制度導入後6年間は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を課税仕入れに係る消費税額とみなす経過措置が設けられています。
 具体的には、次の課税仕入れの区分に応じてそれぞれ次の算式により算出した金額が仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税額に該当します(28年改正法附則52、53)。

※ この経過措置による仕入税額控除の適用に当たっては、適格請求書発行事業者以外の者から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等及びこの経過措置の適用を受ける旨(80%控除・50%控除の特例を受ける課税仕入れである旨)を記載した帳簿の保存が必要です。

Ⅱ 免税事業者から課税仕入れを行った場合の法人税の取扱い

問2 当社(飲食業)は、インボイス制度導入後である令和11年10月1日に免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、その対価として1,100万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理していますが、この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか。

【回答】
 1,100万円を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります。
【解説】
 インボイス制度導入後(令和11年10月1日以降)は、課税仕入れであっても適格請求書又は適格簡易請求書の保存がないものは仕入税額控除の適用を受けることができないため、適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税額はないこととなります(新消法30①)。
 このため、法人が税抜経理方式で経理している場合において、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて仮払消費税等の額として取引の対価の額と区分して経理する金額はなく、支払対価の額を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達14の2)。
※ 所得税に係る消費税経理通達についても同様の取扱いとなります(所得税に係る消費税経理通達11の2)。

問3 当社(飲食業)は、インボイス制度導入後である令和5年10月1日に免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、その対価として1,100万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理していますが、この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか。

【回答】
 支払対価の額のうち、80万円を仮払消費税等の額として取引の対価から区分し、1,020万円を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります。
【解説
 インボイス制度導入後、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間に行われた適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、当該課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の80を乗じて算出した金額を課税仕入れに係る消費税額とみなすこととされています(28年改正法附則52①)。すなわち、インボイス制度導入前の課税仕入れに係る消費税額の80%相当額について仕入税額控除の適用を受けることができます。
 このため、法人が税抜経理方式で経理している場合において、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、支払対価の額のうちインボイス制度導入前の仮払消費税等の額の80%相当額を仮払消費税等の額とし、残額を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達3の2、経過的取扱い(2))。
※ 所得税に係る消費税経理通達についても同様の取扱いとなります(所得税に係る消費税経理通達3の2、令和3年2月9日付課個2−3「『消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて』の一部改正について」(法令解釈通達)経過的取扱い(2))。

問4 当社(飲食業)は、インボイス制度導入後である令和8年10月1日に免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、その対価として1,100万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理していますが、この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか。

【回答】
 支払対価の額のうち、50万円を仮払消費税等の額として取引の対価から区分し、1,050万円を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります。
【解説】
 インボイス制度導入後、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの間に行われた適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、当該課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の50を乗じて算出した金額を課税仕入れに係る消費税額とみなすこととされています(28年改正法附則53①)。すなわち、インボイス制度導入前の課税仕入れに係る消費税額の50%相当額について仕入税額控除の適用を受けることができます。
 このため、法人が税抜経理方式で経理している場合において、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、支払対価の額のうちインボイス制度導入前の仮払消費税等の額の50%相当額を仮払消費税等の額とし、残額を建物の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達3の2、経過的取扱い(2))。
※ 所得税に係る消費税経理通達についても同様の取扱いとなります(所得税に係る消費税経理通達3の2、令和3年2月9日付課個2−3「『消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて』の一部改正について」(法令解釈通達)経過的取扱い(2))。

Ⅲ 会計上、インボイス制度導入前の金額で仮払消費税等を計上した場合の法人税の取扱い
 インボイス制度導入後は、原則として(注)、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、税務上、仮払消費税等の額はないこととなります。
 しかしながら、法人の会計においては、消費税等の影響を損益計算から排除する目的や、そもそも会計ソフトがインボイス制度に対応していないなどの理由で、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについてインボイス制度導入前と同様に、支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出した金額を仮払消費税等の額として経理することも考えられます。こうしたケースにおける具体的な税務調整の例については、以下の問を参照してください。
(注)インボイス制度導入後6年間は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を課税仕入れに係る消費税額とみなす経過措置が設けられています(問1の「〔参考〕適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る経過措置」をご覧ください。)。

問5 当社(9月決算法人、飲食業)は、インボイス制度導入後である令和11年10月1日に免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、その対価として1,100万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理しており、本件取引について支払対価の額の110分の10相当額を仮払消費税等の額として経理し、決算時に雑損失として計上しましたが、この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか。
   なお、この建物は取得後直ちに事業の用に供しており、耐用年数20年で定額法により減価償却費を算出しています。

【回答】
 以下のような申告調整を行います。

【解説】
 インボイス制度導入後(令和11年10月1日以降)は、税務上は適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについて仮払消費税等の額はないこととなるため、仮に法人の会計において仮払消費税等の額として経理した金額がある場合には、その金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達14の2)。
 本事例においては、法人の会計上、100万円を仮払消費税等の額として建物の取得価額と区分して経理していますが、税務上は仮払消費税等の額はないことになりますので、この100万円は建物の取得価額に算入することになります。
 ところで、本事例においては、建物の取得時に仮払消費税等の額として経理した金額を、決算時に雑損失として計上しています。この雑損失の額は、本来は建物の取得価額に算入すべきものですが、「償却費として損金経理をした金額」として取り扱い、結果として償却限度額を超える部分の95万円を減価償却の償却超過額として当該事業年度の所得金額に加算することになります(新経理通達14の2(注)1)。
※ 建物減価償却超過額の計算
 (10,000,000円+1,000,000円)×0.050=550,000円(償却限度額)
 (500,000円+1,000,000円)−550,000円=950,000円

問6 当社(9月決算法人、小売業)は、インボイス制度導入後である令和12年9月1日に免税事業者から国内にある商品(家具)20個を仕入れ、その対価として220万円(11万円×20個)を支払いました。当社は税抜経理方式で経理しており、本件取引について支払対価の額の110分の10相当額を仮払消費税等の額として経理し、決算時に雑損失として計上しました。また、この商品のうち10個は期末時点で在庫として残っています。この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか。

【回答】
 以下のような申告調整を行います。

【解説】
 インボイス制度導入後(令和11年10月1日以降)は、税務上は適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについて仮払消費税等の額はないこととなるため、仮に法人の会計において仮払消費税等の額として経理した金額がある場合には、その金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達14の2)。
 本事例においては、法人の会計上、20万円を仮払消費税等の額として商品の取得価額と区分して経理していますが、税務上は仮払消費税等の額はないことになりますので、この20万円は商品の取得価額に算入することになります。
 ところで、本事例においては、商品の取得(仕入)時に仮払消費税等の額として経理した金額を、決算時に雑損失として計上しています。この雑損失の額は、本来は商品の取得価額に算入すべきものですが、期中に販売した商品に係る部分の金額は売上原価として当該事業年度の損金の額に算入されますので、期末に在庫として残った商品に係る部分の金額を当該事業年度の所得金額に加算することになります。

問7 当社(9月決算法人、小売業)は、全社員の慰安のため、インボイス制度導入後である令和12年9月1日に免税事業者が営む国内の店舗において飲食を行い、その対価として11万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理しており、本件取引について支払対価の額の110分の10相当額を仮払消費税等の額として経理し、決算時に雑損失として計上しました。この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか。

【回答】
 申告調整は不要です。
【解説】
 インボイス制度導入後(令和11年10月1日以降)は、税務上は適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについて仮払消費税等の額はないこととなるため、仮に法人の会計において仮払消費税等の額として経理した金額がある場合には、その金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達14の2)。
 本事例においては、法人の会計上、1万円を仮払消費税等の額として福利厚生費と区分して経理していますが、税務上は仮払消費税等の額はないことになりますので、この1万円は福利厚生費の額に算入することになります。
 ところで、本事例においては、福利厚生費の支出時に仮払消費税等の額として経理した金額を、決算時に雑損失として計上しています。この雑損失の額は、本来は福利厚生費の額に含めるべきものですが、いずれも当該事業年度の損金の額に算入されることについては変わりありませんので、結果的に税務調整は不要となります。

〔参考〕交際費等の損金不算入制度の適用
 新経理通達は、令和5年10月1日以後に国内において法人が行う資産の譲渡等又は課税仕入れ等に係る消費税について適用することとされておりますが、交際費等の損金不算入制度は法人が令和4年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額がある場合に適用されます(経過的取扱い(1)、措法61の4)。このため、新経理通達の適用時における交際費等の損金不算入制度の在り方は不明ですが、仮に現行制度と同様の場合には、本事例の飲食のために要した費用の支出がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものである場合には、交際費等の額の計算や、交際費等の範囲から除かれる飲食費の金額基準である5千円以下の判定は、本事例における仮払消費税等の額として経理した金額を飲食のために要した費用の額に算入した後の金額により行うことになります(消費税経理通達12)。

問8 当社(9月決算法人、金融業)は、インボイス制度導入後である令和5年10月1日に免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、その対価として1,320万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理しており、本件取引について支払対価の額の110分の10相当額を仮払消費税等の額として経理しました。また、当社の消費税の課税期間は事業年度と一致しており、当該課税期間の課税売上割合は50%で、仕入税額控除の計算は一括比例配分方式を適用しているところ、当該事業年度において仮払消費税等の額として経理した金額は本件取引に係る120万円のみで、このほか仮受消費税等の額として経理した金額が120万円ありました。決算時において、納付すべき消費税等の額が72万円算出されたため、仮受消費税等の額から仮払消費税等の額を控除した金額との間に差額が72万円生じることとなり、その差額を雑損失として計上しました。この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか。
   なお、この建物は取得後直ちに事業の用に供しており、耐用年数20年で定額法により減価償却費を算出しています。

【回答】
 以下のような申告調整を行います。

【解説】
 インボイス制度導入後、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間に行われた適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、当該課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の80を乗じて算出した金額が仕入税額控除の対象となる課税仕入れに係る消費税額となります(28年改正法附則52①)。すなわち、インボイス制度導入前の課税仕入れに係る消費税額の80%相当額について仕入税額控除の適用を受けることができます。
 このため、法人が税抜経理方式で経理している場合において、免税事業者からの課税仕入れについては、支払対価の額のうちインボイス制度導入前の仮払消費税等の額の80%相当額を仮払消費税等の額として経理し、残額を資産の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達3の2、経過的取扱い(2))。
 本事例においては、法人の会計上、120万円を仮払消費税等の額として建物の取得価額と区分して経理していますが、税務上は仮払消費税等の額は96万円となりますので、120万円のうち96万円を超える部分の金額である24万円は、建物の取得価額に算入することになります。
 ところで、本事例においては、決算時に仮受消費税等の額の合計額から仮払消費税等の額の合計額(建物の取得時に仮払消費税等の額として経理した金額)を控除した金額と納付すべき消費税等の額(未払消費税等の額)との清算の結果生ずる差額を雑損失として計上しています。この雑損失の金額のうち24万円は、前述のとおり本来は建物の取得価額に算入すべきものですが、「償却費として損金経理をした金額」として取り扱い、結果として償却限度額を超える部分の22万8千円を減価償却の償却超過額として所得金額に加算することになります(新経理通達3の2(1)(注))。
 また、本事例では、課税売上割合が50%ですので控除対象外消費税額等が生ずることになります。この控除対象外消費税額等は、仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税等の額のうち新消法第30条第1項の規定による控除をすることができない金額(地方消費税相当額を含みます。)となりますので、地方消費税も加味したところで計算すると、仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税等の額(支払対価の額1,320万円×10/110×80%=96万円)のうち、控除をすることができない金額は96万円×(1−課税売上割合50%)=48万円となります(法令139の4⑤⑥、30年改正法令附則14③)。本事例の控除対象外消費税額等は、法令第139条の4第3項及び第4項の規定により、損金経理を要件として5年以上の期間で損金の額に算入します。本事例ではこの控除対象外消費税額等について決算時に雑損失として損金経理をしており、当該事業年度の損金算入限度額は資産に係る控除対象外消費税額等を60で除して12(当該事業年度の月数)を乗じた金額の2分の1に相当する金額となりますので、結果として、43万2千円を繰延消費税額等として当該事業年度後の各事業年度において、損金の額に算入することになります(法令139の4③)。
※ 建物減価償却超過額の計算
 (12,000,000円+240,000円)×0.050=612,000円(償却限度額)
 (600,000円+240,000円)−612,000円=228,000円
※ 控除対象外消費税額等の損金算入限度超過額の計算
 480,000円÷60×12×1/2=48,000円(損金算入限度額)
 480,000円−48,000円=432,000円

問9 当社(9月決算法人、金融業)は、インボイス制度導入後である令和8年10月1日に免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、その対価として1,320万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理しており、本件取引について支払対価の額の110分の10相当額を仮払消費税等の額として経理しました。また、当社の消費税の課税期間は事業年度と一致しており、当課税期間の課税売上割合は50%で、仕入税額控除の計算は一括比例配分方式を適用しているところ、当該事業年度において仮払消費税等の額として経理した金額は本件取引に係る120万円のみで、このほか仮受消費税等の額として経理した金額が120万円ありました。決算時において、納付すべき消費税等の額が90万円算出されたため、仮受消費税等の額から仮払消費税等の額を控除した金額との間に差額が90万円生じることとなり、その差額を雑損失として計上しました。この場合の課税仕入れに係る法人税の取扱いはどうなりますか。
   なお、この建物は取得後直ちに事業の用に供しており、耐用年数20年で定額法により減価償却費を算出しています。

【回答】
 以下のような申告調整を行います。

【解説】
 インボイス制度導入後、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの間に行われた適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れについては、当該課税仕入れに係る支払対価の額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の50を乗じて算出した金額が仕入税額控除の対象となる課税仕入れに係る消費税額となります(28年改正法附則53①)。すなわち、インボイス制度導入前の課税仕入れに係る消費税額の50%相当額について仕入税額控除の適用を受けることができます。
 このため、法人が税抜経理方式で経理をしている場合において、免税事業者からの課税仕入れについては支払対価の額のうちインボイス制度導入前の仮払消費税等の額の50%相当額を仮払消費税等の額として経理し、残額を資産の取得価額として法人税の所得金額の計算を行うことになります(新経理通達3の2、経過的取扱い(2))。
 本事例においては、法人の会計上、120万円を仮払消費税等の額として建物の取得価額と区分して経理していますが、税務上は仮払消費税等の額は60万円となりますので、120万円のうち60万円を超える部分の金額である60万円は、建物の取得価額に算入することになります。
 ところで、本事例においては、決算時に仮受消費税等の額の合計額から仮払消費税等の額の合計額(建物の取得時に仮払消費税等の額として経理した金額)を控除した金額と納付すべき消費税等の額(未払消費税等の額)との清算の結果生ずる差額を雑損失として計上しています。この雑損失の金額のうち60万円は、前述のとおり本来は建物の取得価額に算入すべきものですが、「償却費として損金経理をした金額」として取り扱い、結果として償却限度額を超える部分の57万円を減価償却の償却超過額として所得金額に加算することになります(新経理通達3の2(1)(注))。
 また、本事例では、課税売上割合が50%ですので控除対象外消費税額等が生ずることになります。この控除対象外消費税額等は、仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税等の額のうち新消法第30条第1項の規定による控除をすることができない金額(地方消費税相当額を含みます。)となりますので、地方消費税も加味したところで計算すると、仕入税額控除の適用を受ける課税仕入れに係る消費税等の額(支払対価の額1,320万円×10/110×50%=60万円)のうち、控除をすることができない金額は60万円×(1−課税売上割合50%)=30万円となります(法令139の4⑤⑥、30年改正法令附則14④)。本事例の控除対象外消費税額等は、法令第139条の4第3項及び第4項の規定により、損金経理を要件として5年以上の期間で損金の額に算入します。本事例ではこの控除対象外消費税額等について決算時に雑損失として損金経理をしており、当該事業年度の損金算入限度額は資産に係る控除対象外消費税額等を60で除して12(当該事業年度の月数)を乗じた金額の2分の1に相当する金額となりますので、結果として、27万円を繰延消費税額等として当該事業年度後の各事業年度において、損金の額に算入することになります(法令139の4③)。
※ 建物減価償却超過額の計算
 (12,000,000円+600,000円)×0.050=630,000円(償却限度額)
 (600,000円+600,000円)−630,000円=570,000円
※ 控除対象外消費税額等の損金算入限度超過額の計算
 300,000円÷60×12×1/2=30,000円(損金算入限度額)
 300,000円−30,000円=270,000円

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