解説記事2020年09月21日 SCOPE ASBJ、LIBOR停止を踏まえた実務対応報告を決定へ(2020年9月21日号・№850)
SCOPE
公開草案から変更される点は?
ASBJ、LIBOR停止を踏まえた実務対応報告を決定へ
企業会計基準委員会(ASBJ)は8月3日まで意見募集を行っていた実務対応報告公開草案第59号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」に対して寄せられたコメントについて検討を行っており、早ければ9月中にも実務対応報告を正式決定する方針だ。公開草案からの変更点としては、例えば、ヘッジ有効性テストの起点については、2023年3月31日までの事後テストに関する特例的な取扱いを適用した場合であっても適用しない場合であっても、起点をヘッジ開始時とすることを原則とし、継続適用を前提に金利指標置換時を起点とすることも認めるとしている。また、注記事項は定量的な情報を求めないことを明確化している。
なお、現時点では金利指標の選択に関する実務や企業のヘッジ行動について不確実な点が多いため、同委員会では実務対応報告の正式決定後から約1年後に、金利指標置換後の取扱いについて再度確認するとしている。
ヘッジ有効性テストは継続適用前提に金利指標置換時の起点も可
今回の実務対応報告案は、LIBORの公表が2021年12月末をもって恒久的に停止される見通しが高まっていることを踏まえたもの。実務対応報告案では、今回の金利指標改革に起因するLIBORの置換は企業からみると不可避的に生じる事象であるため、ヘッジ会計を継続して適用することができるとの特例的な取扱いを容認している。
まず、用語の定義に関しては、「金利指標置換時」の定義について、ヘッジ対象又はヘッジ手段のいずれかのみがLIBORを参照している場合もあるとのコメントを踏まえ、「ヘッジ対象又はヘッジ手段の金融商品のうちいずれかのみがLIBORを参照している場合は、そのいずれかにおいて後継の金利指標を基礎とした計算が開始される時点をいう」旨を追加するとしている。
時価ヘッジも繰延ヘッジの取扱いと同様
金利指標置換前の会計処理に関しては、その他有価証券(債券)の金利要素について時価ヘッジを適用している場合が想定されるため、繰延ヘッジだけでなく時価ヘッジの取扱いに関する記載を明記する。
また、ヘッジ手段がリスク・フリーレート、ヘッジ対象がLIBORの新規のヘッジ会計を適用する場合、金利指標の不一致は一時的なものであり、いずれ収斂する可能性があるため、このようなケースではヘッジ会計の事前テストを不要にすべきとのコメントが寄せられている。この点は、ヘッジ対象及びヘッジ手段の後継の金利指標の選択は、契約ごとに当事者間で合意していくものと考えられ、最終的に両者が収斂するかどうかは現時点で明らかでないことなどから公開草案は変更しないとしている。
原則はヘッジ開始時
金利指標置換後の会計処理に関しては、特例的な取扱いとして事後テストにおける有効性評価の結果、ヘッジ有効性が認められなかった場合であっても2023年3月31日以前に終了する事業年度まで、ヘッジ会計の適用を継続することができるとし、この取扱いを継続している間は、再度金利指標を置き換えたとしてもヘッジ会計の適用を継続することができるとしている。
一方、2023年3月31日以前に特例的な取扱いを適用しない企業については、ヘッジ会計を継続しているのであれば、引き続き金融商品会計基準等の原則通り、「ヘッジ開始時」を起点とする方法を原則的な方法とするが、金利指標置換前と後では参照する金利指標が変更されているため、金利指標置換後については後継の金利指標を基礎として事後テストを行うことがその後のヘッジ有効性を評価する方法として適切であるとの考え方もあることから、「金利指標置換時」を新たなヘッジ開始時とみなし、「金利指標置換時」を起点とすることも容認することとする。これは特例的な取扱いを適用する企業についても同じく継続適用を条件に「金利指標置換時」を起点とすることも容認する。
なお、包括ヘッジに関する特例的な取扱いも同様である旨を明確化する。
損益の繰延べ可能に
その他、ヘッジ会計の適用を中止している繰延ヘッジ損益について、その後、ヘッジ対象の金利指標の置換が行われた場合であっても、2023年4月1日以降も新たなヘッジ対象の損益認識の期間に繰り延べることができる旨の記載を追加するとしている。
注記は2023年3月31日に終了する事業年度まで
報告日時点において実務対応報告を適用することを選択した企業は、本実務対応報告を適用しているヘッジ関係の内容(ヘッジ会計の方法、ヘッジ手段、ヘッジ対象、ヘッジ取引の種類等)を注記するとされているが、明確化すべきとのコメントが寄せられているため、注記は定性的な情報を求めることを明確化することとし、下表の通りとする方向だ。
【表】注記事項
① ヘッジ会計の方法(繰延ヘッジか時価ヘッジか)並びに金利スワップの特例処理及び振当処理を使 用している場合にはその旨 ② ヘッジ手段である金融商品の種類 ③ ヘッジ対象である金融商品の種類 ④ ヘッジ取引の種類(相場変動を相殺するものか、キャッシュ・フローを固定するものか) |
また、当該注記は2023年3月31日に終了する事業年度まで求める旨を明確にする。
適用時期は実務対応報告の公表日以後適用することができるとされている。この点、遡及適用に関して明確化すべきとのコメントを踏まえ、前述のヘッジ会計の適用を中止している繰延ヘッジ損益の取扱いを除き遡及適用することができない旨を記載する。
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