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行政・財政2021年04月26日 国有財産の使用許可制度 (行政財産を使いたいときにどうするか) 執筆者:髙松佑維

1.国の土地や建物の一部を使いたいとき
ある建物内に自販機を設置したい、ある土地に電柱を立てたい、工事用車両や機材を一時的に置かせてほしい、地下の一部に埋設管を通したい・・・皆さんが事業を行う場面等で、隣接地が国有地の場合や、事業に関係する場所が国の建物等の場合があるかもしれません。
使用したいと考える対象不動産が私人所有であれば、その所有者と交渉し、使用に関する内容の契約を締結する又は権利の設定を受けるという方法が考えられます。
しかし、対象不動産が国所有(国有財産)の場合、同じように契約等を行えばよいのでしょうか。
2.国有財産の種類
そもそも、国有財産とは、国の負担等において国有となった財産(国有財産法第2条1項柱書)であって、同項各号に掲げるもの(不動産、不動産の従物、地上権等)を指します。
さらに、国有財産は、行政財産と普通財産に分類され(同法第3条1項)、行政財産はその中で4種類(公用財産、公共用財産、皇室用財産、森林経営用財産)に分けられます(同条2項各号)。行政財産以外の一切の国有財産が普通財産です(同条3項)。
1.で挙げた場面における対象不動産は、公用財産(国において国の事務、事業等に供しているもの等(同条2項1号))にあたることが多いと思われますので、対象不動産が公用財産の場合について検討します。
3.行政財産と普通財産の違いと制限
国有財産法上、普通財産には、貸し付け、売り払い、私権の設定といった処分等に関する定めがあります(同法第20条以下)。一方、行政財産にはこれらに相当する定めがないだけでなく、貸し付け、交換、売り払い、譲与、私権設定等ができないとされ(同法第18条1項)、行政財産の処分等は原則として制限されています。
行政財産は、その名のとおり、行政のための財産、つまり、国の事務等に使用されるための財産ですから、国が行政目的のために管理する必要があります。国が自由に処分したり、国以外の者が使用収益したりすることは、行政財産の本来の用途や目的から外れてしまうため、法令上、強力な制限(「違反する行為は、無効」(同条5項))がされているのです。
しかし、全ての場面で原則を貫けば、いかなる時でも国以外の者が一時使用すること等はできないといった不都合が生じます。さらに、国有財産は元を辿れば国民全体のものであるため、行政がその管理を適正に行い、かつ、最も効率的に運用しなければなりません(財政法第9条2項、国有財産法第9条の5)。
そこで、国有財産法は、第18条2項以下において、処分等禁止原則の例外として国以外の者が行政財産を活用できる場面を限定的に定めています。
4.例外の一つとしての行政財産の使用許可
例外の一つとして同条6項で定められているのが、行政財産の使用許可制度です。この制度は、行政財産を管理する行政の長が、国以外の者に対し、「用途又は目的を妨げない限度」の範囲内で、行政財産の使用収益を許可するというものです。
まず、使用収益したい者は、行政財産を管理する行政の長に対し、国有財産使用許可申請書を提出します。申請を受けた行政の長は、申請内容を精査し、許可の要件を満たすかの審査を行います。その際、必要な場合は財務大臣への協議を行い(同法第14条7号)、納付すべき使用料を算定し、期間等の条件を付して許可するか、又は不許可とするかの決定を行います。
許可とあるように、この制度は行政上の処分として使用収益を認めるものです。借地借家法の適用排除(同法第18条8項)や、許可内容に不服がある場合は行政不服審査法に基づく審査請求又は行政事件訴訟法に基づく処分取消しの訴え提起をする必要があるなど、私人間の契約とは性質が異なることに留意しなければなりません。
5.最後に
このように、公用財産を使用したい場合は、私人所有の場合のように契約等によって対応することができないため、使用許可制度を活用する必要があります。
許可形式で制度が定められているのは、行政財産の本来の用途又は目的に沿った管理を行いつつ、効率的運用も行うことによって、国民の財産である行政財産を最大限活用することを実現するためです。
この許可を受けないまま行政財産を使用収益すると、不法占拠等の法的問題の発生も考えられるため、注意が必要です。過去には、適切な使用許可がなされておらず、使用料徴収不足があったとして、会計検査院が指摘をした事例も存在します。そのため、対象不動産が行政財産でないかを確認することに加え、行政財産だった場合は適切な手続を踏むことが、法的リスク回避のために重要といえるでしょう。

【参考文献】「行政財産の実務」比護正史 飯島健司 共編

(2021年4月執筆)

執筆者

髙松 佑維たかまつ ゆうい

弁護士

略歴・経歴

早稲田大学高等学院 卒業
早稲田大学法学部 卒業
国土交通省 入省
司法試験予備試験 合格
司法試験 合格
弁護士登録(東京弁護士会)
惺和法律事務所

大学卒業後、約7年半、国土交通省の航空局に勤務。
国土交通省本省やパイロット養成機関の航空大学校などに配属され、予算要求・予算執行・国有財産業務などに従事。

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