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2023年12月06日 「年収の壁・支援強化パッケージ」~企業の実務対応とは?~ 執筆者:柳井一輝

人手不足が叫ばれる昨今、パート、アルバイト社員は貴重な戦力となっている企業も多いのではないでしょうか?その一方で、最低賃金の上昇や社会保険加入対象者の拡大への対応に頭を悩ませている企業も多いと思います。
今回は、政府より発表された「年収の壁・支援強化パッケージ」への企業対応について解説します。
支援策の対象となる「年収の壁」と支援強化パッケージの概要
税制上または社会保険上では、一定の収入を超えると扶養から外れ、税金や社会保険料がかかるようになります。この収入基準がいわゆる「年収の壁」です。その中でも、今回発表された支援策の対象となるのは、社会保険上の「年収の壁」(年収換算で106万円及び130万円)です。具体的には、主に従業員数101人(2024年10月以降は51人)以上の企業においては、年収106万円を超えると社会保険に加入対象となる可能性があります(厳密には月額8.8万円以上であり、その他要件があります。)。また、年収見込みが130万円以上になると、社会保険の扶養から外れ、当該従業員自身が社会保険に加入する必要があり、それぞれ社会保険料が発生します。各支援策の概要は以下の通りです。
・「106万円の壁」
(1)キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の新設
 【対象企業】雇用保険に加入している全企業
(2)社会保険の算定対象外となる手当(以下、社会保険適用促進手当と言います)の新設
 【対象企業】社会保険に加入している全企業
・「130万円の壁」
収入が一時的に増加した場合に事業主がその旨を証明することで連続2年まで引き続き扶養に入れる措置の開始
 【対象企業】健康保険の扶養に入っているパート従業員等を雇用している全企業
当該措置を実施する場合の企業対応と実務上の注意点
大々的に公表された本支援策ですが、概要を見ると人事労務に関する横断的な知識が必要となっており、個人的には助成金を除いて、実際に利用する企業はあまり多くないのではないかと思います。
特に実務上注意が必要なのは、「社会保険適用促進手当」と「扶養の継続加入」です。
まず、「社会保険適用促進手当」について公表されているQ&A(https://www.mhlw.go.jp/content/001163156.pdfを見ると、当該手当を支給する際に社会保険の算定外となるのは、標準報酬月額が10.4万円以下の従業員へ支給する場合のみです。このため、従来社会保険の算定から除外されていた対象者が、月額変更等で標準報酬月額が10.4万円を超えるようになった場合は、その月から社会保険の算定に含める必要があります。また、社会保険の算定から除外できる期間は労働者ごとに最大2年間となっており、詳細は就業規則等で定めておく必要があるため、事前に検討が必要です。
また、「一時的な収入増の場合も扶養に継続して加入できる措置」については、あくまで残業などによる一時的な収入増の場合に限られますので、基本給が昇給した場合や手当が新設された場合は対象となりません。本件について今後パート社員から問い合わせも増えると思いますが、協会けんぽと健保組合で取り扱いが異なる可能性がありますので、まずは当該パート社員の加入している健康保険を確認し、必要に応じて扶養に入っている家族の勤務先へ問い合わせるよう促すとよいでしょう。
いずれの措置を実施する場合も、社内に各制度を十分理解している人材が必須です。トラブルを避けるためにも、企業はまずQ&Aなど公表されている資料を確認する必要があるでしょう。
【参考資料】
厚労省HP「年収の壁・支援強化パッケージ」
首相官邸HP「年収の壁、突破へ」
厚労省:キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コース(2023年10月新設)  
〈プロフィール〉
柳井一輝
社会保険労務士(社会保険労務士法人テトラ)
広島県出身 3児の父親。
大学卒業後、不動産会社での営業パーソンに従事し、中小企業での勤務を経験。
2018年に社労士登録後、2020年に前代表より事業承継すると同時に事務所を法人化する。
現在は、役員のみの小規模企業から上場企業まで、労働法・社会保険関係の手続代行、労務相談、給与計算代行、助成金申請、人事評価制度構築支援などクライアントが安心して成長できるように人事労務全般の支援を行う。個人としては、働き方改革アドバイザーや自治体による労務監査員等に従事。また、自身も事業承継を体験した経験をもとに、M&Aの労務デューデリジェンスなど事業承継のサポートも行っている。
趣味はアウトドアと読書、子どものソフトボール観戦。

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