
2023年10月1日から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されました。インボイス制度の導入に伴い、消費税の仕入税額控除の金額の計算が変わります。売り手(インボイス発行事業者)は、買い手からインボイスを求められた時には交付する義務があります。買い手は仕入税額控除の適用を受けるため、売り手であるインボイス発行事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。
以下は、中小事業者の実務対応の留意事項です。
インボイス発行事業者の登録は任意ですので、売り手側はインボイス発行事業者にならないことができます。売り手がインボイス発行事業者の登録をしなかった場合、買い手が免税事業者(一般消費者を含む。)のみであればよいのですが、買い手が消費税の課税事業者である場合には、買い手側で消費税の仕入額控除ができず、その分買い手の消費税の納付額が増加することになります。ただし、免税事業者との取引がある課税事業者の急激な負担を軽減するため、インボイス制度導入後6年間の仕入税額控除の経過措置が設けられていますので、すぐには大きな影響は出ることはありません。買い手は、インボイス発行事業者の登録申請を行わなかった売り手に対し、状況をみながら、仕入価格の減額を依頼するか、仕入先自体をインボイス発行事業者に変更するかなどの検討をする可能性があります。(ただし、一方的な行為は法律に抵触するおそれがあります。)
免税事業者である売り手がインボイス発行事業者の登録をした場合、消費税の納税義務が発生しますので、業績に重大な影響を及ぼしかねません。それではどのように対応すればよいかということですが、売り手は、免税事業者であっても買い手と取引を継続できるのか、現状の取引価格でよいのかなどについて、買い手側の意向を確認することです。その上で、業績への影響を考慮して課税事業者になるのか、免税事業者のままでよいのかについて検討する必要があります。
売り手である免税事業者がインボイス発行事業者の登録申請をした場合、再び免税事業者に戻るためには、インボイス発行事業者の登録を取り消す必要があります。その場合、取り消したい課税期間の初日から起算して15日前までに「適格請求書発行事業者の登録の取り消しを求める旨の届出書」を提出しなければなりません。
通常消費税の届出書は、「課税期間の末日」が提出期限ですが、インボイス発行事業者の取消しの届出書は注意が必要です。
インボイス制度において、買い手は適格請求書(インボイス)のみが仕入税額控除の対象となり、インボイスを保存(7年間)する必要があります。経理業務においては、仕入先の登録番号・インボイスの要件の確認、登録事業者・非登録事業者、複数税率の区分で税額計算や記帳方法を分けるなどインボイス導入前に比べて業務量が増えます。
また、2024年1月1日からの電子帳簿保存法の改正により、電子取引情報の保存ルールが変わりました。この改正に伴い、電子インボイスは電子保存が義務化されました。買い手の業務は、インボイス制度の導入のみではなく、改正電子帳簿保存法も加わり、業務量も増え、煩雑になりました。電子インボイスの対応や会計システムの入力などを効率よく処理するためには、新規システムの導入や現状のシステムのカスタマイズなどが必要になります。業務システムや経理システムへの対応をする際にIT導入補助金(業務改善補助金)を活用することによって導入コストを削減することもできます。
インボイス制度の導入に伴い、電子帳簿保存法と一体化した業務処理の効率をいかに図れるかが今後の経理実務のポイントになりそうです。
<プロフィール>
鈴木早人
税理士(税理士法人Bricks&UK沖縄事務所)・行政書士(行政書士法人Bricks&UK)
平成28年4月 税理士法人Bricks&UK 名古屋事務所 入社
令和3年7月 税理士登録
令和3年8月 税理士法人Bricks&UK 沖縄事務所へ所長として移籍
令和4年9月 行政書士登録
現在に至る。税理士・行政書士として、中小企業の経営サポートに従事している。

当ページの閲覧には、加除式・WEB連動型商品のご購入、
新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
加除式・WEB連動型商品のご案内
新日本法規WEB会員
人気記事
人気商品
関連カテゴリから探す
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.