紛争・賠償2026年06月07日 指紋データ削除揺れる判断 科学捜査進化、紛争予想も 識者「法整備必要な時期」 提供:共同通信社

捜査で警察に採取された指紋データを、不起訴になったから削除してもらいたい―。男性が起こしたこんな訴えを、東京地裁は5月の判決で退けた。過去には無罪が確定した人の指紋データ削除を命じる司法判断も出ている。科学捜査の進化で同様の紛争は今後も予想され、識者は「法整備が必要な時期にきている」と指摘する。
5月14日付の判決によると、男性はインターネットオークションにDVDを出品した際、落札者とトラブルになった。その後、落札者は被害届を提出。男性は2018年11月、警視庁石神井署で任意の取り調べを受け、指紋を採取された。
国家公安委員会規則は、指紋などのデータを削除するのは「保管する必要がなくなったとき」と定めている。男性は、採取を断れることや警察庁のデータベースへの登録に関する説明がなく違法だったと指摘。後に嫌疑不十分で不起訴となったため、保有し続ける必要性もないと主張した。
和久一彦裁判長は、男性が取り調べの一部を録音した内容から、警察官が説明していたとは認められないと判断。ただ、常に説明する必要はなく、男性も採取を承諾しており適法だとした。その上で、不起訴は無罪判決ではなく、指紋データ保管は別の捜査でも有用だとして請求を棄却した。
男性側代理人の袴田安則弁護士は「断れるとの説明が一言もなかったのに、承諾があったと認定するのはおかしい」と不服を述べ、控訴している。
捜査機関が保管するデータを巡っては、名古屋地裁が22年、暴行罪で無罪が確定した男性が起こした訴訟で、指紋データなどを国に削除するよう命じた。双方の控訴を受けた名古屋高裁も一審を支持し「国民的議論を経た上で憲法の趣旨に沿った立法的な制度設計が望まれる」と言及した。
情報法に詳しい東邦大の高橋和広准教授(憲法学)は、どの時点で削除するのかなど現在の運用には透明性がないと問題視。「捜査機関の権限を明確化させるためにも、制度作りに向けた議論が求められる」と述べた。
(2026/06/07)
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