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図解 不動産担保紛争事例便覧

編集/不動産担保事例研究会 代表/伊藤正義(弁護士)

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◆不動産担保をめぐる数多くの紛争事例の中から、重要判例を厳選して紹介していますので、必ず実務にお役立ていただけます。
◆判例の事実関係を図表化し、また、争点や結論を要領よくまとめてありますので、複雑でわかりにくい事例も容易に理解できます。さらに、巻末には判例年次索引やキーワード索引を掲載してあり、検索に便利です。

商品情報

商品コード
0488
サイズ
B5判
巻数
全2巻・ケース付
ページ数
2,010
発行年月
1999年12月

目次

第1章 抵当権設定契約

 第1 抵当権設定契約の成立
〇特定物引渡請求権を保全債権として詐害行為取消権が認められた事例(最判昭36・7・19)
〇他人の権利を自己の権利であるとして処分した場合でも権利者の追認により有効とされた事例(最判昭37・8・10)
〇共有者全員の同意を欠くため共有物についての抵当権設定が無効であっても、同意した共有者の持分については有効と解する余地があるとされた事例(最判昭42・2・23)
〇危殆に瀕した会社が唯一の不動産を譲渡担保に供した理由が従業員への給料債権支払いのためであっても、それだけでは否認権の行使を否定する理由にはならないとされた事例(最判昭43・2・2)
〇同族会社代表者による会社債務の保証または担保提供は無償行為として否認された事例(最判昭62・7・3)
〇物上保証人の主債務者に対する事前求償権の行使は認められないとされた事例(大阪高判平2・2・28)
〇法定代理人である親権者の権限濫用行為にも民法93条但書が類推適用されるとした事例(最判平4・12・10)
〇取締役会の決議を欠く代表取締役の借入れおよびこの担保のための会社所有不動産についての抵当権設定登記が有効とされた事例(福岡高那覇支判平10・2・24)
〇受託保証人からの主債務者に対する事前求償金請求が、民法461条1項に基づく債権を原因とする抵当権設定登記手続を行うことを条件に認められた事例(東京地判平12・12・18)
〇詐害行為として取り消される売買により不動産を取得した受益者から抵当権の設定を受けた転得者に対する関係でも売買契約が取り消された事例(東京地判平15・12・25)
〇法人がその代表者の権限濫用行為を理由として相手方および第三者に対して求めた登記抹消請求が民法93条但書、94条2項の類推適用により認められた事例(東京地判平16・1・22)
〇都市計画法に基づく開発行為の工事完了公告後、開発行為に伴う公園用地の市への所有権移転登記手続を市長が怠っている間に根抵当権が設定された事例(東京高判平16・2・4)
〇金銭消費貸借契約における増担保条項に基づきなされた清算会社に対する増担保の応諾請求等が認められなかった事例(東京高判平21・11・28)

 第2 対抗要件
〇抵当権設定登記が登記官の過誤により抹消された場合でも抵当権者は第三者に対して従前の抵当権をもって対抗できるとした事例(大判大12・7・7)
〇被担保債権が弁済消滅していれば抵当権登記が抹消されていなくても新たな債務の担保として残存登記を流用することはできないとした事例(大判昭8・11・7)
〇登記されない抵当権であっても当事者間においては権利実行の要件を備える限り抵当権の実行による競売手続を行い得るとした事例(最判昭25・10・24)
〇被担保債権成立後その成立の日を遡及してなされた抵当権設定登記も同一の消費貸借を表示するものである以上有効とした事例(最判昭27・12・4)
〇抵当権の仮登記後に所有権の移転があった場合の本登記義務者は新所有者であるとした事例(最判昭35・7・27)
〇抵当権付債権の債務完済後に発生した新たな債権担保のため先の抵当権設定登記を流用する合意をした債務者は流用登記の無効を主張できないとした事例(最判昭37・3・15)
〇抵当権設定登記をする前に被担保債権につき一部弁済があっても債権者はその債権全額についてその登記を請求することができるとした事例(最判昭39・12・25)
〇競落建物について賃借権を主張する者が、執行妨害により経済的利得を得る目的の背信的悪意の第三者であり建物競落人に賃借権を対抗できないとした事例(東京地判平10・1・28)
〇抵当権が不法に抹消された後に当該不動産を譲り受けた現登記名義人は、抵当権回復登記手続についての登記義務者ではないとした事例(東京高判平10・7・16)
〇抵当権の物上代位の目的債権について、転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が差し押えなければ転付命令の効力は妨げられないとした事例(最判平14・3・12)
〇抵当権設定登記後に目的不動産について賃借権を時効取得しても、公売により当該不動産を取得した者に対抗できないとされた事例(最判平23・1・21)
〇不動産の時効取得完成後、所有権の移転登記未了の間に第三者が原所有者から抵当権の設定・登記を了した場合、占有者が時効取得に必要な期間占有を継続したときは第三者の抵当権は消滅するとされた事例(最判平24・3・16)

 第3 付随契約
〇代物弁済予約形式等の方法による担保権者に清算義務が認められ、担保権者が換価処分するまでは債務を弁済して不動産所有権を受け戻すことができるとされた事例(最判昭43・3・7)
〇貸金債権担保のため流担保、当然帰属型の譲渡担保契約がなされた場合、債権者に清算義務があり、清算金の支払いと引換えに目的物引渡しないし明渡しを求めることができるとした事例(最判昭46・3・25)
〇代物弁済予約形式の債権担保契約の場合に民法374条の準用はなく、債権者は元本と口頭弁論終結時までの利息・損害金につき優先弁済を受けることができるとした事例(最判昭47・10・26)
〇仮登記担保権者が本登記後その所有権を善意の第三者に譲渡して所有権移転登記をした場合は、債務者に対して清算手続未了でも第三者は目的不動産について所有権を取得するとした事例(最判昭51・10・21)
〇根仮登記担保権の極度額について特段の定めがない場合は、極度額は目的不動産の適正評価額と同額と解するのが相当であり根抵当権が併用されている場合でも同様とした事例(最判昭52・3・25)
〇貸金債権担保のため売買形式による所有権移転登記を得た債権者に清算義務が認められ、債権者が清算金を支払うまでは債務者は元利金を提供して目的物を取り戻せることができるとした事例(名古屋高判昭53・2・16)
〇買戻特約付売買が債権担保の目的でなされた場合には売主は買戻期間経過後であっても、清算前は買主に債務を弁済して目的物を取り戻すことができるとした事例(横浜地判昭55・10・9)
〇物上保証人は民法457条2項の類推適用により被担保債権の債務を消滅させる限度で債務者が抵当権者に対して有する債権を自働債権として自ら相殺できるとした事例(大阪高判昭56・6・23)
〇農地所有権の移転請求権仮登記後になされた抵当権設定登記等の処分行為について、詐害行為に当たらないとした事例(東京高判昭62・10・14)
〇保証人が債権者に対し担保保存義務を免除する旨の特約は有効であり、債権者が特約を主張することは信義則に反しないとして保証人の免責主張を否定した事例(最判平2・4・12)
〇抵当権者は抵当権設定者との間で抵当不動産の原状変更、占有移転等をしない旨の特約をした場合でも、抵当不動産の占有移転禁止等の仮処分を求めることはできないとした事例(大阪高決平3・6・12)
〇債権者が物上保証人に対し担保保存義務免除特約を主張でき、その後物上保証人から担保物件を譲り受けた第三取得者は債権者に対し民法504条による免責主張はできないとした事例(最判平7・6・23)
〇債権の一部弁済を受けた債権者が共同担保の不動産の一部に対する根抵当権を放棄しても担保保存義務免除特約を主張できるとした事例(最判平8・12・19)
〇根抵当権者による担保保存義務免除特約の主張が信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした事例(東京地判平14・10・23)
〇金銭消費貸借契約の「増担保」条項に基づく増担保請求が認められなかった事例(東京高判平19・1・30)

 第4 被担保債権
〇民法374条にいう「最後の2年分」とは配当日を基準としてこれより前2年分と解すべきとした事例(名古屋高判昭33・4・15)
〇仮差押登記後に設定された抵当権でも被保全額を超える部分については抵当権をもって対抗できるが本件では配当異議申立ての利益はないとした事例(最判昭35・7・27)
〇被担保債権の一部不発生の場合でも特約その他特別の事情がない限り抵当権は影響を受けないとされた事例(最判昭42・5・19)
〇無効な員外貸付けを受けた借主兼抵当権設定者は競落により担保不動産を取得した者に被担保債権、抵当権の無効を主張できないとした事例(最判昭44・7・4)
〇担保不動産の第三取得者は民法374条の適用は受けないとされた事例(京都地判昭59・10・30)
〇物上保証人が被担保債権の存在を承認しても被担保債権について時効は中断しないとされた事例(最判昭62・9・3)
〇抵当権に基づく賃料債権に対する物上代位の場合にも民法374条の適用があるとされた事例(東京高判平8・9・26)
〇物上保証人が届出に係る破産債権の一部を弁済した場合でも破産債権者は届出債権全額について権利行使できるとした事例(最判平14・9・24)
〇貸金業者が借主から支払いを受ける抵当不動産の調査費用がみなし利息とされた結果、利息制限法による再計算により被担保債権は消滅しているとされた事例(東京高判平15・7・31)
〇信用保証協会との保証委託契約について根抵当権を設定した場合の被担保債権には、根抵当債務者が信用保証協会の根抵当債務者でない者に対する債権について保証したことによる同協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれないとした事例(最判平19・7・5)

 第5 効力の及ぶ範囲
〇抵当権の効力は、目的土地の構成部分にはもちろん従物に対しても及び、抵当権の設定登記をもって対抗力を有するとされた事例(最判昭44・3・28)
〇抵当権の効力(物上代位)は、抵当不動産に代わる仮差押解放金の取戻請求権に及ぶとされた事例(最判昭45・7・16)
〇抵当権の効力は、抵当権設定後に附加された従物にも及ぶとされた事例(東京高判昭53・12・26)
〇土地の賃貸人は、土地賃借人に対すると同様に、借地上の建物の抵当権者に対し、地代の催告をなしたり、地代延滞の事実を告知すべき信義則上の義務を負うものではないとされた事例(東京高判昭56・9・24)
〇抵当権設定後に第三者が抵当地上に建物を築造した場合であっても、その第三者がその後抵当土地の譲渡を受けた場合には、抵当権者は民法389条により一括競売ができるとされた事例(名古屋高決昭60・1・24)
〇不動産の共有持分に抵当権を設定した者が、ほかの共有持分全部を取得して不動産の単独所有者となった場合でも、抵当権の効力は当然に新たに取得した共有持分にまで及ぶことはないとされた事例(東京高判昭60・9・30)
〇抵当権に基づく物上代位権が抵当不動産を後に借り受けた賃借人の賃料債権(転貸料債権)にも及ぶとされた事例(東京高決昭63・4・22)
〇1 既存建物に増築された建物が、既存建物に附合したものと認められた事例
 2 既存建物に隣接して築造された作業所が、既存建物の附属建物と認められた事例(東京高判昭63・12・15)
〇抵当不動産が賃貸された場合、抵当権者は、賃借人が供託した賃料の還付請求権についても抵当権を行使でき、また抵当権を実行し得る場合でも物上代位権を行使し得るとされた事例(最判平元・10・27)
〇ガソリンスタンドに設置された地下タンク・計量機・洗車機などの諸設備は、ガソリンスタンドの店舗用建物の従物であり、同建物に設定された抵当権の効力が及ぶとされた事例(最判平2・4・19)
〇抵当権の目的不動産が抵当権設定後に賃貸されさらに転貸されている場合、原賃貸借が短期賃貸借としての要件を満たすと否とにかかわりなく抵当権者はその転貸料債権に対しても物上代位できるとされた事例(仙台高決平5・9・8)
〇抵当権者は、抵当権の物上代位権を抵当不動産の転貸賃料に対して行使するについて、競売開始決定や差押えの効力が生じていることを要するものでないとされた事例(東京高決平7・3・17)
〇抵当権に基づく物上代位権が抵当不動産の賃借人の賃料債権(転貸料債権)に及ばないとされた事例(大阪高決平7・5・29)
〇抵当権に基づく物上代位権が抵当不動産の転貸料債権に及ぶか否かにつき、所有者(賃貸人)と賃借人(転貸人)が実質的に同一の会社であるとして肯定した事例(大阪高決平7・6・20)
〇将来の債権について、債権譲渡(対抗要件具備)がなされた後、抵当権の物上代位による差押えがなされた場合、どちらが賃料債権を取得するかにつき物上代位が優先するとされた事例(大阪高判平7・12・6)
〇他人の建物に抵当権が設定された場合、真実の所有者には、物上代位による差押命令に対する執行抗告の利益はないとされた事例(東京高決平8・3・28)
〇抵当権者は、抵当権の物上代位の目的となる債権が譲渡され対抗要件が具備された後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるとされた事例(最判平10・1・30)
〇賃料債権に対する差押えの効力が生じた後、当該不動産が譲渡され移転登記がされた場合、賃貸借契約は譲受人に引き継がれるが差押えの効力は継続し、新賃貸人を拘束するとされた事例(東京高判平10・3・4)
〇抵当権の目的建物の賃借人が、保証金返還請求権を自働債権とし、物上代位に基づく差押えにかかる賃料債権を受働債権としてなした相殺が、物上代位権に優先するとされた事例(東京地判平10・6・25)
〇抵当権設定者が抵当不動産につき、第三者に対して賃貸権限を付与し、この第三者が賃貸をした後においても、抵当権者は、自らその賃料債権を差し押さえることができるとされた事例(東京高判平11・3・31)
〇買戻特約付不動産に買主が設定した抵当権に基づいて、買戻権の行使後、その買戻代金債権に対して、物上代位権を行使できるとされた事例(最判平11・11・30)
〇抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視できる場合を除き、賃借人が取得すべき転貸賃料債権について物上代位権を行使することができないとされた事例(最決平12・4・14)
〇件外建物とされた車庫が、建物の従物であるとともに土地の一部となっていると認められ、土地建物に設定された抵当権の効力は車庫にも及ぶとされた事例(最判平12・11・7)
〇抵当権が設定されている土地が収用された場合、土地所有者に支払われる残地補償金債権に対し抵当権に基づく物上代位が及ぶとされた事例(東京地判平13・4・27)
〇更生担保権確定訴訟において借地上の担保建物につき借地権価格が存在しないとされた事例(東京高判平13・12・20)
〇抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する執行抗告において、被差押債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることができるか(最決平14・6・13)
〇抵当権の目的建物の賃借人が、賃貸人に対して有する未収金債権を自働債権として将来の賃料債権と相殺した場合、自働債権が抵当権設定登記後に取得したものである場合は、相殺の意思表示が抵当権者による物上代位に基づく差押えより先になされていても、相殺をもって抵当権者に対抗できないとされた事例(東京地判平16・3・25)
〇1 抵当権付債権者と債務者の間で合意された、債務者の抵当不動産を任意売却してその代金を分配する旨の合意の効力が認められた事例
 2 破産債権者が、破産者が「支払不能」であることを知って破産者に対する債務を負担したときは、破産債権者は、その債務を受働債権として破産債権と相殺することは、旧破産法104条2号本文の類推適用により許されないとされた事例(名古屋地判平16・5・24)
〇弁済の代位に関し、保証人と物上保証人間では「頭数」に応じて代位するとされているが、保証人と物上保証人を兼ねる者は一人と扱われるとされた事例(仙台高判平16・7・14)
〇民事再生手続において抵当権に基づく物上代位による賃料債権の差押えの中止命令が認められなかった事例(大阪高決平16・12・10)
〇1 ホテル営業の収益が担保不動産収益執行の対象となる収益としての法定果実であるとされた事例
 2 担保不動産収益執行において給付義務者が執行債権や収益給付義務の有無を争って執行抗告を申し立てることは許されないとされた事例(福岡高決平17・1・12)
〇貸金債権を自働債権、将来の賃料債権を受働債権とし、受働債権につき期限の利益を放棄しないでした相殺の意思表示が、期限付き相殺の意思表示として無効とされた事例(大阪高判平19・3・23)
〇抵当不動産の賃借人を所有者と同視しうるとして、賃借人が取得すべき転賃貸料債権について物上代位権を行使できるとされた事例(濫用型)(福岡地小倉支決平19・8・6)
〇担保不動産収益執行において管理人が取得するのは、当該不動産の収益に係る給付を求める権利(本件では賃料)自体ではなく、その権利を行使する権限にとどまり、その権利自体は、担保不動産収益執行の開始決定が効力を生じた後も、当該不動産の所有者に帰属するとされた事例(最判平21・7・3)
〇船舶に対する抵当権及び根抵当権の効力は再編整備等推進支援事業における不要漁船処理対策助成金に係る請求権には及ばないとされた事例(山口地下関支決平24・1・10)

第2章 抵当権の管理・処分

 第1 抵当目的物の変動
〇抵当権者は、抵当不動産に対する競売開始決定の前後を問わず、債務者の抵当不動産に対する事実上の侵害行為の排除を請求することができるとされた事例(大判昭6・10・21)
〇抵当目的建物の改造が、建物の通常の用法を越える行為であるとされ、抵当権がこの改造によって侵害されているとされて、抵当権に基づいて改造部分の収去請求が認められた事例(東京地判昭60・9・18)
〇抵当目的の借地上建物が損壊された場合、抵当権者の損害額算定に当たり、建物敷地に対する借地権の存否に争いがある場合の算定方法を示した事例(東京地判昭62・3・30)
〇抵当目的土地上の地上権者による建物建築が権利の濫用であるとされ、抵当権者による建築工事禁止の仮処分が認められた事例(名古屋高金沢支決昭62・11・30)
〇根抵当権設定登記を受けた登記簿上の建物が実は既に滅失していて実在するのは新建物であり、これに保存登記がされた場合、根抵当権者は根抵当権設定登記請求ができるとされた事例(東京高判平11・10・21)
〇民法504条の適用につき、同条にいう喪失・減少された担保権が設定されるよりも以前に連帯保証人となっていた者も、同条の保護を受けるとされた事例(福島地会津若松支判平12・5・30)

 第2 被担保債権・当事者等の変動
〇数口の貸金債権を2口の債権にまとめた合意が、更改ではなく、債権の変更契約であり、債権は同一性を有するとされた事例(仙台高秋田支判平4・10・5)
〇外国為替予約付インパクトローンにおける外貨建債券とこれを履行するために新たに貸し付けた円建債権の同一性が否定された事例(最判平10・12・8)

 第3 抵当権の処分
〇根抵当権設定契約の基本である与信契約に基づき発生した債権を、根抵当権の被担保債権額として確定することを停止条件に抵当権付債権として質入れすることが有効とされた事例(大阪高決昭35・9・1)
〇抵当権の順位を譲渡した者が、その後右抵当権より後順位にある代物弁済予約による代物弁済を受けても、順位の譲渡を受けた抵当権はこれがため侵害されるものではないとされた事例(最判昭38・3・1)
〇不動産に関する代物弁済一方の予約においては、当該不動産の所有権が第三者に移転されたときでも、代物弁済予約権利者はその完結の意思表示を当初の予約の当事者に対してすることを要するものとされた事例(最判昭44・10・16)
〇抵当権と代物弁済予約が併用されていて抵当権が転抵当に供された場合、原抵当権者による代物弁済の予約完結権行使の許否を判断した事例(最判昭44・10・16)
〇抵当権が転抵当に供されている場合、転抵当の被担保債権額が原抵当権の被担保債権額より少額の時は、原抵当権者は原抵当権に基づき競売申立てができるとされた事例(名古屋高決昭52・7・8)
〇原抵当権が虚偽表示である場合、これにつき善意で設定を受けその登記をした転抵当権者は、民法376条所定の対抗要件を具備していなくても、原抵当権抹消手続に関して承諾義務はないとされた事例(最判昭55・9・11)
〇債権の一部代位により、債権者と抵当権を共有するに至った代位弁済者の、債権者に対する抵当権の順位譲渡の合意およびこれに基づく順位譲渡の登記が有効とされた事例(東京高判昭60・9・26)
〇債権者が、共同抵当権の抵当権の一つを放棄したとき、それ以外の抵当不動産の譲受人は、民法504条に基づく免責の効果を主張できるとされた事例(最判平3・9・3)
〇抵当権が被担保債権の弁済によって消滅した後、その債権が譲渡され債務者が異議なき承諾をした場合であっても、第三取得者との間では、抵当権は復活しないとされた事例(最判平4・11・6)

 第4 代位弁済による抵当権の移転
〇保証人は、後順位抵当権者等の利害関係人に対し、債務者との間の求償権の内容に関する特約及び物上保証人との間の代位の割合に関する特約の効力をそれぞれ主張できるとされた事例(最判昭59・5・29)
〇一部代位弁済者の債権が消滅した場合に原根抵当権者は抵当権実行による売却代金の配当について後順位抵当権者に優先するとされた事例(最判昭62・4・23)
〇抵当不動産の買受人が右不動産を転売し、その転買受人が売買代金の支払に代えて債権者に対し被担保債務を弁済した場合に、右転売人は債権者に法定代位しないとされた事例(東京高判平2・6・28)
〇抵当権付債務を代位弁済したことで、債務者に対する求償権とともに抵当権付債権を取得した後、民事再生手続が開始され、求償債権が減額され、減額後の求償債務を完済した場合、既払額を控除した限度で抵当権を行使することができるとされた事例(千葉地決平23・12・14)

 第5 抵当権の侵害
〇建物収去土地明渡しの強制執行が抵当権に対する違法な侵害とみられる場合には、建物の抵当権者は第三者異議の訴えを提起できるとした事例(東京高判昭41・10・13)
〇抵当権者が抵当目的物件について賃借権不存在の確認を求めることができるとされた事例(東京地判昭62・2・26)
〇特段の事情が存在する場合には抵当権(ないしは抵当権付債権)侵害を理由とする不法行為が成立するとされた事例(横浜地判昭62・11・25)
〇根抵当権者から抵当目的物の占有者に対する根抵当権に基づく妨害排除請求としての明渡請求が否定された事例(東京高判平3・9・26)
〇登記を違法に消滅された根抵当権者は、右登記処分の無効確認を求めることができるとされた事例(京都地判平3・11・27)
〇根抵当権者のなした強制執行停止の申立てにつき過失があったとすることはできないとされた事例(東京地判平5・12・22)
〇第三者による根抵当権の目的建物の占有が、民事執行法55条の「不動産の価格を著しく減少する行為」に該当するとされた事例(東京地判平10・3・30)
〇抵当権者から抵当目的物の占有者らに対する抵当権に基づく妨害排除としての明渡請求が肯定された事例(東京高判平13・1・30)
〇抵当不動産の賃借人が抵当権設定登記後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできないとされた事例(最判平13・3・13)
〇競売手続において配当要求の前提となる抵当権付債権の差押えに対して、差押債権者の債務名義に係る債権の不存在を主張して、その取立権および配当受領権限を争う場合は、配当異議訴訟ではなく請求異議訴訟によるべきであるとされた事例(名古屋高判平13・6・14)
〇抵当権者が物上代位権の行使として差し押さえた賃料債権が敷金の充当によりその限度で消滅するとされた事例(最判平14・3・28)
〇抵当権者から抵当目的物の占有者らに対する抵当権に基づく妨害排除としての明渡請求が肯定された事例(最判平17・3・10)
〇根抵当権者から抵当目的物の占有者らに対する損害賠償請求において、抵当目的物の最低売却価額の下落額に相当する額を損害として認めた事例(福岡高判平17・6・14)
〇根抵当権に基づく妨害排除としての所有権保存登記の抹消登記手続請求権を被保全権利として、プレハブ式建物について処分禁止仮処分命令を発した事例(東京高決平20・2・28)
〇担保権の実行としての競売は、刑法96条の2にいう「強制執行」に該当するとされた事例(最決平21・7・14)
〇土地賃借権付建物の根抵当権者は建物所有者の敷地所有者に対する賃借権確認請求を代位行使することができるとされた事例(東京高判平23・8・10)

第3章 抵当権の実行・消滅
 第1 抵当権実行の要件
〇共有地上に設定された根抵当権につき、その後、共有者の一人が右土地上に建物を築造した場合でも、民法389条の拡張解釈により、根抵当権者は一括競売を申し立てることができるとされた事例(名古屋高決昭53・2・17)
〇抵当証券に基づく抵当権の実行において、抵当証券上の弁済期が未到来の場合に、法定文書以外の証拠資料により弁済期の到来を主張立証することができるとされた事例(東京高決平4・3・30)
〇配達証明付内容証明郵便でなされた抵当権実行通知が滌除権者たる第三取得者不在のため返送された場合でも、その通知が通常到達すべかりしときに、民法381条の通知としての効力を生じるとされた事例(東京地決平4・4・21)
〇抵当権設定者から業務委託を受けた第三者が抵当目的物を賃貸している場合に、抵当権者は物上代位により右賃料債権を差し押さえることができるとされた事例(東京高決平8・4・15)
〇抵当権の物上代位に基づく差押えの効力が相殺に優先するとされた事例(大阪地判平8・10・31)
〇抵当権に基づく物上代位が債権譲渡に優先するとされた事例(東京高判平9・2・20)
〇二重競売開始決定がされた不動産競売手続の後行事件において、抵当不動産の取得者に対し抵当権実行通知をすることを要しないとした事例(東京高決平10・9・14)
〇物上代位に基づく賃料債権差押えが滞納処分による賃料債権差押えに優先するとされた事例(東京地判平11・3・26)
〇抵当不動産の賃借人が抵当権設定登記後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺については、敷金返還請求権を自働債権とする場合であっても、抵当権者に対抗することはできないとされた事例(大阪地判平13・12・20)
〇第三取得者が郵便局に対し転送届を提出していたにもかかわらず、抵当権実行通知が郵便局の手違いにより転居先不明として抵当権者に返却されて第三取得者に到達しなかった場合でも、競売申立ては違法ではないとされた事例(東京高決平14・3・29)

 第2 競売の開始
〇物上保証人に対する抵当権の実行により、債務者の被担保債権の消滅時効が中断するとされた事例(最判昭50・11・21)
〇不動産競売手続において、差押えの効力発生前に不動産の所有権が移転されても、その旨の登記を備えていない者は、売却代金の剰余金の交付を受けるべき者としては取り扱われないとされた事例(東京地判昭61・6・24)
〇債権の一部執行が申し立てられた場合において、残債権につき配当要求をすることができるとされた事例(大阪高決昭62・10・22)
〇後順位抵当権者申立てによる先行競売事件が無剰余の場合であっても、先順位抵当権者申立てによる後行競売事件につき競売開始決定がなされているときは、先行競売手続を続行することができるとされた事例(東京高決平7・8・8)
〇物上保証人に対する抵当権の実行による被担保債権の消滅時効の中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずるとされた事例(最判平8・7・12)
〇連帯保証債務の物上保証人に対する担保権の実行によって主債務の消滅時効は中断しないとされた事例(最判平8・9・27)
〇別件訴訟の証人尋問手続における債務者の証言により、根抵当権の被担保債権の消滅時効が中断するとされた事例(最判平9・5・27)
〇物上保証人所有の不動産に対する競売手続において、競売開始決定正本の債務者への送達が公示送達によりされた場合に、被担保債権について消滅時効の中断の効力が生ずるとされた事例(最決平14・10・25)
〇建物の区分所有等に関する法律59条1項の競売請求に対する認容判決に基づく競売手続について、優先債権との関係では、民事執行法63条の規定は適用されないとされた事例(東京高決平16・5・20)
〇マンションの管理費等不払の事案について、建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく競売請求が認められた事例(東京地判平17・5・13)
〇区分所有者の子が専有部分内において騒音・振動・叫び声等の迷惑行為に及んだ事案について、建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく競売請求が認められた事例(東京地判平17・9・13)
〇受刑者の所有不動産に対する競売開始決定および引渡命令の送達が公示送達の方法でなされたことを違法とした国家賠償請求が棄却された事例(名古屋高判平20・11・27)
〇差押債権者による担保不動産競売の請求債権を拡張する二重競売の申立ては、配当要求の終期までにしなければならないとした事例(名古屋高判平20・12・19)
〇建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく競売請求訴訟において、管理費等を滞納した区分所有者に対する競売請求が認容された事例(東京地判平22・11・17)
〇競売申立請求事件の認容判決に基づく不動産競売開始決定申立事件において、不動産の一部を譲り受けた者に対する競売申立てが、共有持分権に関する確定判決等が提出されていないことを理由として不適法であるとされた事例(東京高決平23・1・7)
〇建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく競売請求訴訟において、口頭弁論終結後に区分所有権の譲渡が行われた場合、その譲受人に対し同訴訟の判決に基づき競売を申し立てることはできないとされた事例(最決平23・10・11)

 第3 売却手続
〇土地賃借権付の建物に対する抵当権実行により建物所有権を取得した競落人は、土地賃借権も取得するとされた事例(最判昭48・2・8)
〇順位を異にする複数の抵当権が設定されている不動産について後順位の抵当権が実行された場合、最先順位の抵当権設定後右後順位の抵当権設定前に成立した不動産賃借権をもって競落人に対抗できないとされた事例(最判昭59・2・14)
〇民事執行法63条1項(いわゆる無剰余取消)の優先債権には、執行債権と実質上同一である抵当権の被担保債権は含まれないとされた事例(仙台高決昭62・10・14)
〇短期賃貸借が濫用的なものの場合に抵当権者からの短期賃貸借契約の解除請求が棄却された事例(東京地判平4・10・13)
〇執行妨害目的の価格減少行為があったとして、競売土地の所有者と所有者から競売土地の占有移転を受けた第三者に対し、売却のための保全処分が認められた事例(高松高決平5・10・15)
〇土地および建物が甲乙の共同所有の場合に、甲の土地の共有持分に対する強制競売による法定地上権の成立が否定された事例(最判平6・4・7)
〇土地の抵当権設定者が抵当地上に建物を建築したうえ第三者に譲渡した場合、抵当権者は民法389条により土地と建物を一括して競売することが許されるとされた事例(東京高決平6・8・9)
〇土地およびその上にある建物に共同抵当権が設定された後に、当該建物が取り壊され、第三者が建物を再築した場合に、再築建物についての法定地上権の成立が否定された事例(東京地判平6・7・25)
〇担保権の実行としての不動産競売手続において、担保権の不存在または消滅は、売却許可決定に対する執行抗告理由とはならないとされた事例(東京高決平7・1・23)
〇1 不動産競売の一括売却後、土地・建物の個別価額を変更することはできず、かかる理由をもって配当異議訴訟において配当表の変更を求めることができるとされた事例
 2 建物を目的とする一番抵当権設定当時建物と土地(敷地)の所有者が異なっていたが、後順位抵当権設定当時同一の所有に帰していた場合には、法定地上権が成立するとされた事例(名古屋高判平7・5・30)
〇民法389条による一括競売手続において土地の最低売却価額を更地として評価すべきであるとした配当異議の訴えが却下された事例(大阪地判平10・7・16)
〇物件明細書の作成、最低売却価額の決定に重大な誤りがあるとして、売却許可決定が取り消された事例(東京高決平11・11・26)
〇不動産競売における対抗問題は抵当権の設定時に生じるのであり、その後に借地上の建物が滅失していても買受人に対抗することができるとされた事例(東京高判平12・5・11)
〇1 借地上建物の表示登記後、増改築により構造、床面積に変動が生じた場合でも、当該表示登記のままで対抗力を有するとされた事例
 2 対抗力ある表示登記が抵当権設定後に閉鎖されても当該建物所有の借地権は競売に係る買受人に対抗することができるとされた事例(東京高決平13・2・8)
〇抵当権の不存在・消滅は売却許可決定に対する執行抗告の理由には当たらないとされた事例(最決平13・4・13)
〇不動産競売の入札が入札書の入札価額欄の不備により無効とされた事例(最決平15・11・11)
〇競売建物の一部が件外土地にはみ出して存立しているところ、件外土地の所有権移転登記を経由した第三者が明渡を求める訴訟を提起しているとしても、本件不動産の買受け後に生じた損傷ということはできないとして売却許可決定取消申立が却下された事例(千葉地決平17・4・19)
〇競売対象建物の関係者の中に暴力団幹部がいることを執行裁判所が把握しながらその点を物件明細書や現況調査報告書に記載しなかったことが物件明細書の作成および売却手続の重大な誤りに当たるとして、抗告審において売却許可決定が取り消された事例(東京高決平17・8・23)
〇民法389条による抵当土地と建物の一括競売において、建物に設定された賃借権の処遇は当該建物に設定された抵当権等を基準に決すべきであるとされた事例(大阪地堺支決平18・3・31)
〇競売物件にシロアリ被害が生じていることを理由として売却許可決定が取り消された事例(東京高決平19・12・7)
〇中古マンションの競売の評価において、5年を超える滞納管理費等の消滅時効を考慮することができるとされた事例(千葉地決平20・5・26)
〇不動産競売事件において、目的建物を買い受けた後に、白蟻被害を受けていて居住不可能であることが発覚した場合、現況調査を担当した執行官・評価人に注意義務違反があるかどうかについて否定した事例(大分地判平20・12・25)
〇執行官が現況調査報告書に自殺物件である旨の記載をしなかった場合において、執行官の注意義務違反を認めなかった事例(さいたま地判平21・1・30)
〇買受人が物件明細書に記載された買受人に対抗できる賃借人を清算結了した同名他社であると誤解したとしても物件明細書の記載に重大な誤りはないとして売却許可の取消しを認めなかった事例(東京高判平21・5・8)
〇担保不動産収益執行手続が、配当等に充てるべき金銭が生じる見込みがないとして、取り消された事例(大阪高決平21・5・14)
〇無剰余取消決定に対する執行抗告の手続中に優先債権者の同意を得たことの証明がなされたことにより競売事件の続行が認められた事例(福岡高那覇支決平21・5・20)
〇担保不動産収益執行の手続が開始されている不動産について担保不動産競売の開始決定前の保全処分の申立てがされた場合に、担保不動産収益執行の管理人に使用を許すことを命ずることはできないとされた事例(東京高決平21・9・8)
〇更地であった目的不動産に建物を建築することが価格減少行為であるとして売却のための保全処分が認められた事例(東京高決平21・9・16)
〇物件内での事故死を理由とする買受人の売却許可決定の取消申立てを再評価書の記載から不動産の損傷を知り得たとして認めなかった事例(東京高決平21・9・25)
〇借地上の建物の競売において、地主からの建物収去土地明渡訴訟が係争中である場合に、物件明細書の記載や売却基準価格の決定手続に重大な誤りはないとして売却許可決定の取消しを認めなかった事例(東京高決平21・10・8)
〇差押債権者が代払いの許可を得て未払賃料全額を供託した場合に、賃料の滞納を理由とする賃貸借契約の解除を認めなかった事例(名古屋高判平21・10・28)
〇競売物件の室内で腐乱死体が発見されたことを理由として売却許可決定が取り消された事例(名古屋高決平22・1・29)
〇敷地利用権について係争中の建物の売却許可決定について、民事執行法71条6号および7号に該当する瑕疵があったとして、同法75条1項本文の類推適用により売却許可決定の取消しが認められた事例(東京高決平22・4・9)
〇執行官の誤りにより買受人になれなかった最高価格での入札人に売却許可決定に対する執行抗告の申立てを認めた事例(最決平22・8・25)
〇共有不動産の競売を命ずる判決に基づく競売手続において、民事執行法59条及び63条が準用され、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たない場合、競売申立人の競売手続が取り消されることになるとした事例(最決平24・2・7)
〇不動産競売の入札手続において、入札書に記載された入札価額欄の記載内容からみて、入札価額が一義的に明確であると認められないとして、入札が無効とされた事例(東京高決平24・9・25)
〇借地権付き建物の競売において、敷地所有者が物権明細書では国(財務省)とされていたが、買受けの申出時に他の者に所有権が移転した場合、民事執行法75条1項の類推適用を否定し、売却不許可とした原決定を取り消し、売却許可決定が認められた事例(東京高決平24・9・28)

 第4 買受人の権利・義務
〇土地賃借人が賃借土地上に所有する建物について抵当権を設定し、競売がなされると、建物と共に土地賃借権も建物競落人に移転するとして、旧土地賃借人から建物競落人に対する建物収去土地明渡請求が否定された事例(最判昭40・5・4)
〇土地の賃貸人がその賃貸借契約の合意解約をもって地上建物の抵当権実行による競落人に対抗することができるとされた事例(最判昭47・3・7)
〇不動産登記簿の記載から賃借権の消滅を信頼した建物の競落人について民法94条2項の類推適用がないとされた事例(最判昭47・2・24)
〇土地賃貸人が建物競落人に対する土地賃借権取得を承諾しても、建物抵当権設定登記後に土地賃借人の承諾を得て土地賃借権のみを譲り受けた者に対し債務不履行とはならないとされた事例(最判昭52・3・11)
〇建物競落人の土地競落人に対する法定地上権が成立しないとされた事例(最判平4・4・7)
〇強制競売開始決定による差押え前より占有している短期賃借権者から差押え後に建物を転使用貸借した占有者に対し、債務者(旧所有者)または買受人による転貸借の承諾がないことを理由に、引渡命令が認容された事例(高松高決平6・5・23)
〇執行妨害目的の短期賃貸借は保護に値せず、法定地上権の主張も権利の濫用に当たるとされた事例(大阪地判平8・10・28)
〇所有者が土地および地上建物に共同抵当権を設定した後建て替えた新建物に土地と同順位で共同抵当権を設定した場合でも、新建物についての抵当権の被担保債権に優先する国税が存在するときは法定地上権は成立しないとされた事例(最判平9・6・5)
〇実行抵当権以外の被担保債務者が引渡命令に対し長期賃借権を主張することは許されないとされた事例(東京高決平11・1・29)
〇新旧所有者間で賃貸人の地位を旧所有者に留めると合意しても賃貸人の地位は新所有者に移転するとされた事例(最判平11・3・25)
〇抵当権実行による競売申立て以外の債権の被担保債務者は抵当権設定登記前に抵当不動産を賃借使用する場合であっても賃借権を買受人に対抗できないとされた事例(東京地判平11・7・27)
〇競売の対象とされた土地上に競売の対象外建物が存在する場合に当該土地の引渡命令が認められた事例(最判平11・10・26)
〇不動産競売手続における建物買受人が民法94条2項、110条の法意により建物所有権を取得してもその敷地の賃借権を取得しないとされた事例(最判平12・12・19)
〇最先順位の抵当権者に対抗することができる賃借権により競売不動産を占有し、当該不動産の抵当権の債務者である抵当債務者兼賃借人について、引渡命令が認められなかった事例(最決平13・1・25)
〇不動産を取得した者に対し、元の所有者による当該不動産の固定資産税および都市計画税相当額の不当利得返還請求が認められなかった事例(東京高判平13・7・31)
〇賃貸借契約の保証金につき、賃料の10か月分の範囲に限り敷金としての性質を有するものとして競売による買受人に保証金返還債務の承継を認めた事例(東京地判平13・10・29)
〇賃借人が前賃貸人に預託していた保証金について、敷金と同様の性質を有することを理由として、競売による買受人に保証金返還債務の承継を認めた事例(東京地判平13・10・31)
〇商業ビルの店舗及び倉庫の賃貸借契約の敷金、保証金名義で授受された高額な金員について、競売の買受人に承継される範囲が定められた事例(東京高判平14・11・7)
〇保証金債務が建物の競落人に承継されないとされた事例(東京地判平16・6・30)
〇競売中に目的建物の従物である未登記の附属建物について所有権保存登記を経由して第三者に所有権移転登記がなされても、附属建物の所有権は目的建物の買受人に帰属するとされた事例(東京地判平16・9・10)
〇借地権付建物競落後に借地借家法20条の土地賃借権譲渡許可の申立てをしなかった買受人に対する建物収去土地明渡請求が認容された事例(東京高判平17・4・27)
〇不動産競売により取得した借地上の建物について、借地権譲渡の承諾が認められず、建物買取請求権行使により建物買取価格が具体的に判示された事例(東京高判平17・6・29)
〇商業ビルの賃借人が前賃貸人に差し入れていた賃料の55か月分の金員全額について、敷金であると認定して競売による買受人に敷金返還債務の承継を認めた事例(大阪地判平17・10・20)
〇抵当不動産の占有者である債務者会社の取締役らに対して、買受人に対抗することができる占有権原を有するものとして引渡命令が認められなかった事例(東京高決平18・9・11)
〇建物の競落人は建物に付合した給水装置の所有権を取得するとされた事例(千葉地判平19・9・28)
〇賃借権の目的である土地と他の隣接土地とにまたがって建築されている建物について、借地権設定者が借地借家法20条2項、19条3項に基づき、自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受けることが認められなかった事例(最判平19・12・4)
〇民法395条の建物明渡猶予制度の保護を受ける賃借人から建物を転借している者であっても、前所有者からの建物明渡しを拒絶できない者についてはその保護の対象としないとされた事例(東京高決平20・4・25)
〇借地権付き建物に対する不動産競売手続において借地権が存在しなかった事案につき、民法568条1項、2項及び566条1項、2項の類推適用による瑕疵担保責任が否定された事例(大阪高判平21・5・28)
〇短期賃貸借に関する経過措置の適用を受ける賃貸借には建物明渡猶予制度の適用はないとされた事例(東京高決平21・12・16)
〇競売の差押登記後の建物の占有者は善意の第三者であるか否かにかかわりなく建物明渡猶予制度の対象にはならないとされた事例(東京高決平21・9・3)
〇不動産競売の買受人が民法568条1項、566条1項、2項に基づき売買契約を解除し、民法568条2項に基づいて、配当金を受領した者に対して求めた配当金に対する代金納付日の翌日から配当金を買受人に返還した日の前日までの民法545条2項による「利息」は、法定利息であると判示した事例(大阪地判平22・1・29)
〇抵当権実行による不動産競売において、土地を競落した者が、抗告人に対し、高く買い取らせようとして社会通念上許容される限度を大きく逸脱した買取交渉をし、その延長線上のものとして不動産引渡命令の申立てをした場合、この申立ては申立権の濫用に当たるとされた事例(東京高決平22・3・8)
〇建物の賃貸人と賃借人の間の減額合意による賃料額が、民法395条2項にいう「建物の使用の対価」の額とは認められないとして同条1項による建物明渡猶予を否定し、不動産引渡命令を認めた事例(東京高決平22・11・9)
〇土地および建物を競落した買受人が、建物を取り壊して再築しようとしたところ、その土地は公法上の規制により建物の再築ができない土地であった場合、買受人による当該土地建物の売却代金から配当を受けた債権者に対する、代金の一部の返還請求が認容された事例(名古屋高判平23・2・17)
〇担保不動産競売手続による買受人が、固定資産税等の買受日以降の日割精算額の負担を免れても不当利得にはならないとされた事例(大阪高判平23・6・30)
〇破産財団から放棄された区分所有建物の管理費等につき、その管理費等を支払った競売手続の買受人から、区分所有者であり破産手続を経て免責許可決定を得た者に対する求償請求の一部が認められた事例(東京高判平23・11・16)
〇通行地役権者が承役地の買受人に対して通行地役権を主張することができるか否かは、最先順位の抵当権の設定時の事情によって判断するとされた事例(最判平25・2・26)

 第5 配当手続
〇民法391条の優先費用償還請求権を有する抵当不動産の第三取得者からの抵当不動産の競売代金を取得した抵当権者に対する不当利得返還請求が認められた事例(最判昭48・7・12)
〇担保権者が被担保債権の一部について不動産競売申立てをしたときは、後に債権計算書によって請求債権の拡張を図ることは許されないとされた事例(名古屋地判昭61・11・27)
〇不動産競売手続における配当金が同一担保権者の有する数個の被担保債権のすべてを消滅させるに足りない場合と弁済充当の方法(最判昭62・12・18)
〇第三者所有の不動産に設定された抵当権が不存在であるにもかかわらず、右抵当権の実行により債権者に対してなされた弁済金の交付が不当利得となるとされた事例(最判昭63・7・1)
〇競売手続において抹消された所有権に関する仮登記の権利者から仮登記の後に登記を経由した抵当権者に対する代価の不当利得返還請求が認められなかった事例(最判昭63・12・1)
〇競売申立債権者の抵当権またはその被担保債権の消滅したことをもって、配当異議の訴えの原因とすることが認められた事例(最判平元・6・1)
〇債権または優先権を有しないのに配当を受けた債権者に対する抵当権者からの不当利得返還請求権が認められた事例(最判平3・3・22)
〇同一の申立てに係る複数の不動産競売における先行する配当手続で国税徴収法26条の規定による調整が行われた場合において配当を受けることができなかった国税、地方税等を後行の配当手続で私債権に優先するものとして取り扱うことが認められた事例(最判平11・4・22)
〇共有物分割のための競売の目的不動産上に設定された根抵当権の被担保債務に係る保証債務を弁済したが代位による優先権を考慮されなかった保証人の配当異議請求が棄却され、他の債権者に対する不当利得返還請求が認容された事例(東京地判平11・5・27)
〇1 配当異議の申出をしなかった抵当権者も他の債権者に対して不当利得の返還を請求することができるとされた事例
 2 同順位の根抵当権者に対する配当は被担保債権額に按分して行うとされた事例(東京地判平12・9・14)
〇(根)抵当権者は、債権差押事件に対して物上代位権の行使に基づく配当要求の申立てをすることはできず、配当を受くべき債権者に含まれないと判断された事例(東京高判平12・10・25)
〇抵当権者である租税債権者が抵当不動産以外の不動産から配当を受ける場合に他の私債権者がした民法394条2項但書に基づく供託請求が認められなかった事例(東京地判平12・11・15)
〇主債務者に対する時効中断の効力が抵当不動産の第三取得者に及ぶとされた事例(東京地判平13・6・8)
〇1 遅延損害金額を誤記した申立債権者が債権計算書で増額訂正したことが否定された事例
 2 複数の物上保証人所有の不動産に別々の共同抵当権が設定され、そのうちの1つの不動産につき同順位である場合の配当計算の方法(東京高判平13・7・17)
〇被担保債権の一部を請求債権と記載し競売の申立てをしたときは、後に債権計算書により請求債権を拡張することは許されないとされた事例(東京高判平13・10・30)
〇配当期日後に自己の根抵当権付私債権に優先する公課債権を第三者納付した場合、当該納付の事実を配当異議訴訟において異議原因として認められた事例(大阪高判平13・12・20)
〇サービサーが債権回収の委託を受けた債権につき不動産競売手続における配当に関する不当利得返還請求権を行使することができるとされた事例(東京地判平14・9・20)
〇1 競売申立書の明白な誤記、計算違いを後の手続で是正することが許されるとされた事例
 2 共同抵当の代価の同時配当に当たりその共同抵当に係る抵当権と同順位の抵当権が存在する場合の配当額の計算方法(最判平14・10・22)
〇配当異議の訴えにおいて、競売申立書における被担保債権の記載が錯誤、誤記等に基づくものであること等が立証されたときは、配当表の変更を求めることができるとされた事例(最判平15・7・3)
〇先順位担保権者の債権額を誤認して被担保権の一部について競売を申し立てた根抵当権者が、配当を受けた後順位担保権者に対し、被担保債権の残部にかかる優先弁済請求権を主張して、不当利得返還を求めることは許されないとされた事例(大阪高判平16・9・2)
〇不動産を目的とする1個の抵当権が数個の債権を担保し、そのうちの1個の債権のみについての保証人が当該債権に係る残債務全額につき代位弁済した場合において、当該抵当不動産の換価による売却代金が被担保債権のすべてを消滅させるに足りないときの上記売却代金からの弁済受領額(最判平17・1・27)
〇第1順位と第3順位の根抵当権者が物上代位に基づく賃料の債権差押による取立てを行った後、当該不動産の担保権実行による競売において、当該取立金は第3順位の根抵当権による取立てであることの主張が認められなかった事例(大阪高判平17・2・25)
〇数個の債権を担保する根抵当権の1個の被担保債権全額につき代位弁済された場合、根抵当権の実行による売却代金の配当について、債権者は代位弁済者に優先するとされた事例(福岡高判平19・3・15)
〇配当異議の訴えにおいて執行対象不動産の所有権の帰属を争うことは許されないとされた事例(千葉地判平19・9・6)
〇競売申立書に被担保債権の一部を請求債権として記載した根抵当権に基づく不動産競売の申立人による配当異議訴訟において、請求債権の記載に関する錯誤、誤記等の主張が認められなかった事例(東京高判平19・11・7)
〇私債権に優先する公債権に対する配当を受けた公債権庁が、配当金を私債権に優先しない別の公債権に充当した後、改めて当該私債権に優先する当該公債権に基づいて優先的に配当を受けることはできないとされた事例(大阪高判平21・10・30)
〇債権執行事件について、仮差押命令は、当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても、これが上記被保全債権と請求の基礎を同一にするものであれば、その実現を保全する効力を有するとされた事例(最判平24・2・23)

 第6 各種の強制換価手続との関係
〇共同根抵当権が先順位に存する場合における後順位担保権者の更生担保権の範囲は、民法392条1項を類推適用して定めるべきとされた事例(東京地判昭57・7・13)
〇建物収去土地明渡しの強制執行に対し建物の根抵当権者からの第三者異議の訴えが適法とされた事例(東京地判平元・5・30)
〇不動産強制競売手続において催告を受けた抵当権者がする債権の届出は、その届出にかかる債権に関する裁判上の請求、破産手続参加またはこれに準ずる時効中断事由に該当しないとされた事例(最判平元・10・13)
〇根抵当権の極度額を超える被担保債権の部分につき、破産法277条後段〔平16法75改正前〕の不足額の証明があったとはいえないとされた事例(東京地決平9・6・19)
〇滞納処分による差押え後強制競売等の開始決定前に賃借権が設定された不動産が強制競売手続等により売却された場合に右不動産の占有者に対して引渡命令を発することが認められた事例(最決平12・3・16)
〇旧会社更生法の更生担保権確定訴訟において、競売手続における評価方法を参考にして正常価格から50%ないし70%の減価を相当と認めた事例(福岡地判平14・4・10)
〇破産財団から放棄された不動産に係る別除権につき破産会社の破産宣告当時の代表取締役に対してした別除権放棄の意思表示が無効とされた事例(名古屋高決平16・11・30)
〇ゴルフ場の土地建物を目的とする更生担保権の目的物の価額決定手続において、評価人が収益還元法(いわゆるDCF法)により採用して定めた評価に基づく価額決定が維持された事例(東京高決平17・9・14)
〇破産者が義務無くして他人のためにした根抵当権の設定が破産法160条3項にいう無償行為に該当するとして否認された事例(東京地判平18・12・22)
〇主債務者の破産事件に関し、物上保証人財産の任意売却による主たる債務の弁済について、破産法104条の開始時現存額主義の適用が問題となった事例(肯定)(大阪高判平20・4・17)
〇担保不動産競売手続において、不実の登記により競売対象不動産の所有者と扱われた者の当該共有持分権および売却代金剰余金交付請求権を差し押さえた者は、民法94条2項、110条の「第三者」に該当するとされた事例(東京高判平20・5・21)
〇連帯保証人の破産事件に関し、別除権行使(任意売却)による主たる債務の弁済、物上保証人財産の任意売却による主たる債務の弁済について、破産法104条の開始時現存額主義の適用が問題となった事例(否定)(大阪高判平20・5・30)
〇会社更生事件に関する担保権変換契約に基づく根質権について、変更前の抵当権設定契約に関する抵当権設定登記充足行為が会社更生法88条所定の対抗要件の否認に該当するとして、当該担保権変換契約に基づき変更後の根質権の効力が否定された事例(大阪地判平21・4・16)
〇主債務者の破産事件に関し、物上保証人財産の任意売却による主たる債務の弁済について、破産法104条の開始時現存額主義の適用を肯定した原判決が法令違反により破棄された事例(上告審)(最判平22・3・16)
〇複数の債権の全部を消滅させるに足りない弁済を受けた債権者が、上記弁済を受けてから1年以上が経過した時期に初めて、弁済充当の指定に関する特約に基づいて充当指定権を行使することは許されないとされた事例(上告審)(最判平22・3・16)
〇再生債務者が親会社のために行った抵当権設定行為について無償行為否認が認められた事例(東京地判平23・3・1)
〇1 事業再生ADRの利用申請を予定した金融機関に対する支払猶予の申入れが支払の停止には該当しないとされた事例
 2 根抵当権の対抗要件具備行為は、債権者を害する行為として、会社更生法86条1項1号に基づく否認の対象となり得るとした上で、否認を認めなかった事例(東京地決平23・8・15)
〇否認権の行使を受けた悪意の転得者は、破産管財人による否認権の行使に基づく価額償還請求を受けた場合であっても、その請求に応じるまでは、否認権の行使により破産財団に復した権利を行使することはできないとされた事例(東京地判平23・9・12)
〇民事再生手続において、支払不能発生前30日以内になされた担保権設定行為が非義務偏頗行為として否認された事例(東京高判平23・10・27)
〇1 金融機関に対する支払猶予の申入れが、事業再生ADRの利用申請を予定したものであり、支払の停止には該当しないとされた事例
 2 根抵当権の対抗要件具備行為は、債権者を害する行為として、原因行為とは独立して、会社更生法86条1項1号に基づく否認の対象となり得るとした事例(東京地決平23・11・24)
〇再生手続中に締結された別除権協定における被担保債権額の減額の合意は、再生債務者について破産手続が開始された場合でも失効せず、担保権実行による競売手続における別除権者への配当額は、別除権協定によって減額された被担保債権額から既払額を控除した額を上限とするとされた事例(高松高判平24・1・20)
〇別除権不足額の確定がなかったものとして配当を行った破産管財人に善管注意義務違反に基づく損害賠償責任が認められた事例(札幌高判平24・2・17)
〇別除権協定上の別除権受戻しの対価を被担保債権とする債権者代位訴訟が不適法却下された事例(東京地判平24・2・27)

 第7 滌除・増価競売
〇抵当権実行通知後の第三取得者には改めて抵当権実行通知をする必要がないとされた事例(東京高決昭33・7・19)
〇1 所有権仮登記権利者は滌除権行使までに本登記を経由しない限り、滌除権を行使できないとされた事例
 2 無効な滌除申出に対する増価競売請求に通常の競売申立ての効力を認めた事例(広島高岡山支決昭61・3・4)
〇第三取得者に対する滌除権行使の禁止と、根抵当権者に対する根抵当権の実行禁止の仮処分が認められた事例(東京高決平2・4・10)
〇1 共同担保の目的となる複数の物件について滌除金額を一括して示した滌除の請求が無効とされた事例
 2 無効な滌除を前提とする増価競売の申立ては、申立人が望む場合に限り、担保権実行としての開始決定をすべきであるとした事例(大阪地決平3・8・28)
〇滌除申立て後に建物が二つの区分所有建物とされたことを理由に滌除申立てが無効とされた事例(東京地決平5・3・1)
〇法定期間後の到着であっても、通常法定期間内に到達すべき時期に発送していれば、増価競売請求は有効であるとした事例(東京高決平6・3・16)
〇建物の共有持分の第三取得者による当該持分の滌除が無効とされた事例(最判平9・6・5)
〇増価競売の取下げには他の担保権者の同意が不要であるとされた事例(東京地判平15・3・27)

 第8 抵当権の消滅
〇根抵当権が免責的債務引受けにより消滅するとされた事例(最判昭37・7・20)
〇物上保証人は被担保債権の消滅時効を援用できるとされた事例(最判昭43・9・26)
〇占有の目的物件に抵当権が設定されていることを知っていても、短期取得時効の要件を満たすとされた事例(最判昭43・12・24)
〇債務の弁済と抵当権設定登記の抹消登記手続は同時履行の関係にはないとされた事例(最判昭57・1・19)
〇抵当権者は妨害排除請求権に基づき不法な滅失・表示・保存登記の抹消請求ができるとされた事例(京都地判平元・7・12)
〇旧建物に設定されていた抵当権は、旧建物がほかの建物と合体して新建物となった場合でも存続するとされた事例(最判平6・1・25)
〇抵当権者は公売処分により抵当権が消滅した後も消滅前の換地処分によって発生した清算金に対し物上代位権を行使できるとされた事例(大阪高決平9・12・15)
〇後順位抵当権者は先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用することができないとされた事例(最判平11・10・21)
〇司法書士事務所の職員に登記済証の真否および登記意思の確認を怠った過失があるとして司法書士に対する損害賠償請求が認められた事例(東京地判平17・11・29)
〇再生債務者の戸建住宅分譲事業において販売用財産である土地が事業継続不可欠要件を充たすとされた事例(東京高決平21・7・7)

第4章 抵当権と用益権の調整
 第1 〔欠〕

 第2 法定地上権
〇抵当権者が建物の築造を承認した場合でも法定地上権は成立しないとされた事例(最判昭36・2・10)
〇土地建物の両方が同時に抵当権の目的となっている場合にも法定地上権が成立するとされた事例(最判昭37・9・4)
〇共有である仮換地上の建物が競落された場合に法定地上権が成立するとされた事例(最判昭44・11・4)
〇建物共有者の一人が敷地を単独所有する場合に土地競落による法定地上権が成立するとされた事例(最判昭46・12・21)
〇建物競落人の法定地上権が土地競落人に対抗できないとされた事例(最判昭47・4・7)
〇先順位抵当権設定当時に建物が存在しなかった場合には法定地上権は成立しないとされた事例(最判昭47・11・2)
〇所有者が建物の登記名義を取得していなくても法定地上権が成立するとされた事例(最判昭48・9・18)
〇抵当権設定後に建物を築造した場合には抵当権者の承認があっても法定地上権は成立しないとされた事例(最判昭51・2・27)
〇土地と建物の所有者が親子・夫婦の関係にあっても法定地上権は成立しないとされた事例(最判昭51・10・8)
〇建替え後の堅固建物の所有を目的とする法定地上権の成立が認められた事例(最判昭52・10・11)
〇所有者が土地の登記名義を取得していなくても法定地上権が成立するとされた事例(最判昭53・9・29)
〇建物の仮登記担保権が実行された場合に法定地上権は成立しないとされた事例(東京地判昭60・8・26)
〇抵当権設定時に存在した建物が再築された場合に新建物に関して法定地上権が成立するとされた事例(京都地判昭60・12・26)
〇土地に対する1番抵当権設定時に土地と建物の所有者が異なる場合には後順位抵当権設定時に同一人に帰していても法定地上権は成立しないとされた事例(最判平2・1・22)
〇旧地上権者の未払地代支払債務は新地上権者に承継されないとされた事例(最判平3・10・1)
〇共同担保権設定後に建物が再築された場合に新建物につき法定地上権は成立せず一括競売を申し立てることができるとされた事例(大阪高決平5・6・11)
〇共同抵当権設定後に建物が再築された場合でも新建物に同様の抵当権が設定されていれば法定地上権が成立するとされた事例(東京高判平5・8・25)
〇土地抵当権設定後に第三者所有の旧建物が取り壊され土地所有者が新建物を建築した場合に法定地上権は成立しないとされた事例(東京高判平6・2・23)
〇建物共有者の1人である土地共有者を債務者とする抵当権を土地共有者全員の各持分について設定していただけでは法定地上権は成立しないとされた事例(最判平6・12・20)
〇共同担保権設定後に建物が再築された場合に新建物につき法定地上権は成立せず一括競売を申し立てることができるとされた事例(大阪高決平7・9・13)
〇共同担保権設定後に建物が再築された場合は特段の事情のない限り新建物について法定地上権は成立しないとされた事例(最判平9・2・14)
〇共同担保権設定後に建物が再築された場合において根抵当権者の承諾を得て旧建物の根抵当権設定契約が解除されていたとしても新建物について法定地上権は成立しないとされた事例(東京地判平10・10・9)
〇根抵当権設定当時に土地建物が同一人の所有であった場合には、建物の増築部分について更正登記手続が経由されていたか否かにかかわらず法定地上権が成立するとされた事例(最判平11・4・23)
〇1 実体法上の事由は売却不許可事由に当たらないとされた事例
 2 一部の区分所有建物が売却されて敷地所有者と別の所有に帰することになった場合に法定地上権が成立するとされた事例(東京高決平14・11・8)
〇敷地に抵当権を設定し新建物には抵当権設定を予定していた場合に特段の事情のない限り新建物について法定地上権は成立しないとされた事例(東京地判平15・6・25)
〇土地(共同相続)について共有物分割のための形式競売がなされた場合、同土地上の建物(単独相続)に抵当権が設定されていても、法定地上権は成立しないとされた事例(福岡高判平19・3・27)
〇甲抵当権(先順位)が設定契約の解除により消滅した後、乙抵当権(後順位)の実行により土地と地上建物の所有権を異にするに至った場合において、当該土地と建物が乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立するとされた事例(最判平19・7・6)
〇地代確定訴訟による場合でも法定地上権成立時から毎月末までに地代を支払う義務を負うとされた事例(大阪地判平20・7・14)

第5章 共同抵当

〇共同抵当権者は、共同抵当の一部である物上保証人所有の不動産に対する抵当権を放棄した場合でも、全額につき次順位抵当権者に優先するとされた事例(最判昭44・7・3)
〇共同抵当物件のそれぞれに後順位抵当権者があるとき、物上保証物件が先に競売されると、物上保証人は債務者所有物件の1番抵当権を取得するが、自己の物件の後順位抵当権者には優先し得ないとされた事例(最判昭53・7・4)
〇共同抵当物件のそれぞれに後順位抵当権者があるとき、先に競売された物上保証物件の後順位抵当権者は、債務者所有物件の後順位抵当権者に優先し、このことは物上保証人と1番抵当権者との特約に左右されないとされた事例(最判昭60・5・23)
〇共同抵当の目的不動産の売却が詐害行為として取り消された場合、財産の返還は価格賠償とされ、その価格は民法392条の趣旨から各不動産の割付額によって算定すべきものとされた事例(最判平4・2・27)
〇共同抵当の目的たる不動産がいずれも物上保証人の所有に属する場合にも、民法392条2項後段の後順位抵当権者による代位の規定の適用があるとされた事例(最判平4・11・6)
〇A・Bが共有する不動産全体に抵当権を設定した後、Aのみがその共有持分に2番抵当権を設定し、その共有持分が競売されて1番抵当権者が全額の弁済を受けた場合、2番抵当権者は同人のBの持分上の抵当権に代位できるとされた事例(東京高判平5・10・21)
〇物上保証人同士が所有する不動産甲乙丙に共同抵当権を有する先順位抵当権者が、乙不動産の一部の抵当権を放棄した場合には、甲不動産の配当において、先順位抵当権者は、かかる放棄がなければ後順位抵当権者が乙不動産の抵当権に代位し得た限度で、後順位抵当権者に優先できないとされた事例(大阪地判平14・3・15)
〇共同担保の一部につき民事再生手続における担保権消滅請求がなされた場合に、残された担保物の担保価値が著しく減少するとして権利濫用とされた事例(札幌高決平16・9・28)
〇共同抵当の目的不動産を複数の組に分けた上で、各組の不動産ごとに被担保債権を分割した割付額を定めることを内容とする更生計画が認可された場合において、抵当権が各組の不動産ごとに割付額を被担保債権額とするものに変更された、または、執行手続上抵当権の行使が割付額の限度に制限されることになった、との主張が排斥された事例(東京地判平18・2・15)

第6章 根抵当権

 第1 根抵当権設定契約
〇根抵当権設定登記の被担保債権として「手形取引もしくは手形割引契約に基づく債権」と表示されていても、被担保債権の範囲に属するものとして第三者に対して主張できるとされた事例(最判昭50・8・6)
〇根抵当権設定と同時にその極度額を限度としてなされた保証の範囲は、利息、損害金を含む主債務すべてについてその極度額に制限されるとされた事例(最判昭62・7・9)
〇特定の債権のみを担保する目的で設定された抵当権は、通常の抵当権であって、これに対して根抵当権設定登記がなされたとしても登記どおりの効力を認めることはできないとされた事例(盛岡地判平元・9・28)
〇所有権移転請求権保全の仮登記前に設定登記を経た根抵当権者は、たとえその担保権実行としての競売開始決定による差押登記が右仮登記後であっても、「登記上利害ノ関係ヲ有スル第三者」 に該当しないとされた事例 (東京地判平4・6・30)
〇被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」として設定された根抵当権の被担保債権には、信用金庫の根抵当債務者に対する保証債権も含まれるとされた事例(最判平5・1・19)
〇根保証の極度額が明示されなかった場合にその極度額は同時に設定された根抵当権の極度額と同額であり、かつ、両者が併せてその範囲内で支払いを保証し担保するものとされた事例(最判平6・12・6)
〇被相続人から抵当権の設定を受けた相続債権者が相続財産法人に対して設定登記手続を請求することはできないとされた事例(最判平11・1・21)
〇銀行と不動産所有者の代理人との間で締結された根抵当権設定契約につき民法109条の表見代理の成立が認められなかった事例(東京地判平11・6・10)
〇先天的聴覚障害者が手話通訳者を介さず銀行との間で締結した保証契約、根抵当権設定契約につき契約の不成立および錯誤無効の主張がいずれも否定された事例(東京地判平14・5・20)
〇金銭消費貸借契約・根抵当権設定契約が公序良俗違反を理由に無効とされたうえ、交付された金員の返還請求が不法原因給付を理由に否定された事例(東京高判平14・10・3)
〇信義則により根保証責任および担保責任が制限された事例(東京高判平13・12・18)
〇一人暮らしの老婦人が自宅の土地建物についてした根抵当権設定契約が、そこに出入りしていた訪問販売業者らの詐欺によるものとして取り消された事例(東京高判平14・12・12)
〇被担保債権である貸付金債権が実在しないとして根抵当権抹消登記手続請求が認容された事例(東京地判平14・12・25)
〇主たる建物について設定・登記された根抵当権の効力はその附属建物(従物)に及び、附属建物が未登記でもその譲受人に対抗できるとされた事例(東京高判平15・3・25)
〇意思無能力であったとして連帯保証契約および根抵当権設定契約が無効とされた事例(東京地判平17・9・29)
〇民事再生手続開始前に生じた登記原因に基づき、手続開始決定後に根抵当権者が再生債務者に根抵当権設定登記手続を求め、監督委員にその同意を求めた請求がいずれも棄却された事例(大阪地判平20・10・31)
〇不動産の売買契約が、売主に意思能力がないことを理由として無効とされ、その不動産の買主との間で根抵当権設定契約を締結した根抵当権者について、民法94条2項を類推適用すべきではないとされた事例(東京地判平20・12・24)
〇抹消予告登記のある不動産の所有(共有)名義人から根抵当権の設定を受けた者が、真実の所有者に対し、民法94条2項の類推適用の保護を主張することができないとされた事例(名古屋高判平21・2・19)
〇1 一般的に弁済ができない状態で、個別の貸付に対する支払が遅延したからといってその後に支払を行っていることは、「支払不能」とはできず、借入れが困難となった時点をもって「支払不能」に当たるとした事例
 2 会社代表者の倒産を示唆する発言があったとしても、個人的な弱音を吐いた域を超えるものとまでは認められないことから「支払停止」とは認められないとした事例(高松高判平22・9・28)

 第2 根抵当権実行の要件・効力
〇根抵当権者は、抵当債務者に不履行がある場合には根抵当権を実行することができ、あえて基本契約を解除することを要しないとされた事例(東京高決昭48・3・20)
〇根抵当権者は後順位の配当受領権者がなく、競売代金に余剰を生じた場合でも、極度額を超える部分について配当を受けることはできないとされた事例(最判昭48・10・4)
〇物上保証人は保証人とは異なり、債務者の委託を受けて自己の所有物に抵当権を設定した場合でも、事前求償権を有しないとされた事例(最判平2・12・8)
〇一般債権者による建物賃料債権に対する差押えが、その後に同建物に設定され登記された根抵当権による物上代位に優先するとされた事例(東京高判平6・4・12)
〇一般債権者による建物賃料債権に対する差押えが、その後に登記された根抵当権による物上代位に優先するとされた事例(上告審)(最判平10・3・26)
〇土地賃貸人が地上建物の根抵当権者に対し、賃貸借を解除する際は事前に通知する旨の承諾書を差し入れていても、通知を怠った解除が有効とされた事例(東京地判平11・6・29)
〇根抵当権の実行により極度額を超える被担保債権にも消滅時効中断の効力を生ずるが、競売取下げによりその効力は失われるとされた事例(最判平11・9・9)
〇根抵当権の登記のほかに譲渡担保を原因とする根抵当権者への所有権移転登記が記載されている登記事項証明書は民事執行法181条1項3号文書であるとした事例(最決平17・11・11)
〇根抵当権の目的不動産に再生債務者と第三者所有の不動産が含まれ、全体としてぱちんこ遊技場として利用されている場合、全不動産について担保権実行の中止命令を発令するのは相当でないとされた事例(福岡高決平18・2・13)
〇物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に、保証人が代位弁済をした上で差押債権者の承認を執行裁判所に申し出た場合における求償権の消滅時効の中断の有無(最判平18・11・14)
〇根抵当権に基づく競売停止の仮処分が故意による不法行為に該当するとされ、違法な競売停止の仮処分による損害として、下落した売却価額相当額および売却代金の運用利益相当額の損害が認定された事例(盛岡地判平20・9・2)

 第3 被担保債権・当事者等の変動
〇根抵当債務者が死亡した場合は、特段の事情のない限り、根抵当取引は終了し根抵当権は確定するとされた事例(名古屋高判昭54・6・27)
〇根抵当権に基づく競売手続の途中で、競売開始決定中の請求債権の表示を変更する更正決定が請求債権の同一性が維持されると否とにかかわらず、適法であるとされた事例(東京高決昭59・7・19)
〇根抵当債務者変更の合意後、その登記前に債務者が死亡した場合、6か月内に存続の合意の登記がなされなかったときは、債務者変更の登記をなしてもその効力は生じないとされた事例(東京地判昭60・12・20)
〇同順位根抵当権者に対する配当の按分計算の際、被担保債権の一部を請求債権とした申立債権者については請求債権額を基礎として計算すべきとされた事例(大阪高判平14・10・31)
〇「金8億円 但し、債権者が債務者に対して有する下記債権のうち、下記債権の順序にしたがい上記金額に満つるまで」との不動産競売申立書の記載は被担保債権の一部について担保権を実行する趣旨ではないとされた事例(最判平17・11・24)

 第4 根抵当権の処分
〇根抵当権の設定登記と共に代物弁済予約の仮登記を経由した債権者が、その後に右根抵当権を転抵当としている場合でも、予約完結権の行使を妨げられないとされた事例(東京地判昭42・1・31)
〇旧法下における根抵当権の順位譲渡において、順位譲渡人と順位譲受人との中間に担保権者が存する場合、順位譲受人は順位譲渡人の優先配当額を限度に順位譲渡の効力を受けるにすぎないとされた事例(最判昭57・6・8)
〇設定者の無権利ゆえに根抵当権が無効であった場合において、根抵当権譲渡契約の譲受人の譲渡人に対する不法行為および瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求が否定された事例(東京地判平6・5・27)
〇根抵当権譲渡前に処分禁止の仮処分が発令されていた場合において、右譲渡について根抵当権設定者がする承諾は、右の仮処分で禁止された処分には当たらないとされた事例(大阪高決平7・10・9)
〇破産管財人が根抵当権付の不動産を第三者に譲渡しても、当該破産債権は別除権付債権として不足額責任主義の制約を受けるとされた事例(大阪地決平13・3・21)
〇根抵当権設定契約は要素の錯誤により無効であるとして、その有効を前提として作成された配当表に対する配当異議が認められた事例(東京地八王子支判平13・10・23)
〇根抵当権設定仮登記につき、権利者に無断で同仮登記根抵当権移転の仮登記がされたところ、同仮登記の申請に際し提出された委任状の委任者欄に押捺された委任者の記名印の印影において、その住所が誤っていたことを看過して、仮登記根抵当権移転の仮登記をした登記官の過失を理由とする国家賠償請求が棄却された事例(東京地判平20・4・22)
〇元本確定前の根抵当権の譲渡は、元本確定前に登記しなければ、その効力を主張することができないとされた事例(東京高判平20・6・25)
〇1 根抵当権者に無断で同登記の移転仮登記及び根抵当権設定仮登記の抹消登記がされたとして、同根抵当権者がした登記官の登記処分の無効確認請求に理由がないとされた事例
 2 根抵当権設定仮登記についての移転仮登記や抹消登記の手続について、現行の不動産登記法制に立法の不備があるとしてされた国家賠償請求に理由がないとされた事例(東京地判平21・12・11)

 第5 根抵当権の確定
〇確定した根抵当権は普通の抵当権と同一に帰するので、正当な利益を有する第三者がその債務を弁済したときは、法定代位により右債権および根抵当権を取得するとされた事例(最判昭37・9・18)
〇期間の定めのない根抵当権の物上保証人は、設定当時に比して著しい事情の変更があった等正当の事由があるときは、根抵当権設定契約につき解約告知(元本確定請求)をすることができるとされた事例(最判昭42・1・31)
〇銀行取引停止処分を受けたことによる根抵当債務者の倒産・廃業が、根抵当権の元本確定事由たる「其他ノ事由」に当たるとされた事例(名古屋地判昭56・12・11)
〇根抵当権の元本確定後に被担保債権を代位弁済した者は根抵当権者に代位して、根抵当権設定者に対し元本確定登記手続を請求することができるとされた事例(浦和地判昭59・2・24)
〇根抵当権者に追加融資の意思がなく、根抵当債務者にもさらに融資を受ける意思のない状況の下で、根抵当権設定者が根抵当権者に対して今後取引関係を継続する意思がない旨通知したときは、取引は実質的に終了し、根抵当権は確定するとされた事例(東京高判昭59・9・3)
〇根抵当債務者の経営状態が悪化し、根抵当権者が新規の融資を差し控えていても、取引継続の客観的可能性も潜在していたとして「取引ノ終了」による根抵当権の確定が否定された事例(大阪地判昭61・12・26)
〇債務者の倒産による私的整理の終了が根抵当権の元本確定事由に該当するとされた事例(東京地判平元・8・23)
〇根抵当権設定者が根抵当権者による融資契約の不履行を理由にこれを解除したことにより、被担保債権が発生しないことが確定し、根抵当権が消滅したとされた事例(東京地判平4・12・7)
〇根抵当債務者の死亡による確定元本の完済にもかかわらず、根抵当権設定登記の抹消請求が信義則に反するとして否定された事例(東京地判平11・7・29)
〇根抵当権の元本確定登記手続に対して被担保債権の消滅は抗弁事由にならないとされた事例(東京高判平12・3・22)
〇根抵当権者が幽霊会社で、根抵当権設定当初から金銭消費貸借がなかった場合に、民法398条ノ20第1項1号による元本の確定を認めた事例(東京高判平12・1・26)
〇物上保証人兼保証人の相続人が、確定した被担保債権につき根保証限度額の一部を支払った後、その全額を支払った場合における不当利得の成否(東京地判平14・3・27)
〇根抵当権者は、元本確定前の根抵当権につき担保保存義務を負わないとされた事例(福岡地判平15・3・18)
〇根抵当権の元本確定前に締結された連帯保証契約に基づき、根抵当権の元本確定後に連帯保証債務を弁済して取得した連帯保証人の求償債権が、根抵当権の被担保債権に含まれるとされた事例(東京地判平19・1・31)

 第6 根抵当権の消滅
〇債権者が根抵当権の極度額を超える債権を有する場合において、抵当物件の第三取得者は、右極度額の限度で弁済したにすぎないときは、その根抵当権設定登記の抹消登記請求権を有しないとされた事例(最判昭42・12・8)
〇根抵当権において第三者弁済が行われても、右弁済により債権額が極度額以下にならない限り、弁済者は債権者に代位しないとされた事例(名古屋地判昭46・2・17)
〇現存債務額が極度額を超えるか否か不明な場合は、民法398条ノ22に基づく根抵当権消滅請求ができるとした事例(東京地判平2・12・25)
〇根抵当権の消滅請求のためにされた供託に弁済供託としての効力があるとされた事例(千葉地判平2・12・27)
〇消滅請求による根抵当権の消滅を理由とする執行異議の申立てが、信義則に反し許されないとされた事例(札幌高決平4・2・28)
〇法人について破産終結決定がされた場合、当該法人に対する債権を被担保債権とする物上保証たる根抵当権は独立して存続するとされた事例(東京高判平11・3・17)
〇再生債務者が事業継続のために処分する不動産が「事業の継続に欠くことのできないもの」に当たるとされた事例(名古屋高決平16・8・10)
〇登記義務者の意思確認義務を怠ったとして司法書士に対する損害賠償請求が認められた事例(東京地判平16・9・6)
〇会社更生法所定の否認権の行使としての根抵当権抹消登記の否認登記手続請求において、更生会社の消極財産が積極財産を超過する限度にとどまらず全部の不動産について否認登記手続請求が認容された事例(東京高判平16・10・13)
〇会社更生手続において担保権が解除された場合には、その更生担保権は、牽連破産手続において、財団債権としては認められないとされた事例(大阪高判平17・7・28)
〇再生債務者は所有権登記なくして担保権消滅許可を求めることができるとされた事例(福岡高決平18・3・28)
〇催告後6か月以内の債務承認に時効中断効を認めた事例(大阪高判平18・5・30)
〇前訴(反訴)においては相殺の抗弁が認められなかったが、後訴においては相殺の主張が認められ、根抵当権の抹消請求が認容された事例(東京地判平18・12・4)
〇農地について条件付所有権移転仮登記に後れる根抵当権者が農地法5条による所有権移転許可申請協力請求権の時効消滅の援用権者に該当しないとされた事例(東京高判平20・2・28)
〇土地の賃貸人及び転貸人が土地転貸借契約解除にあたって土地転借人(建物所有者)の地代不払を建物の根抵当権者に対して事前に通知しなかったことにより損害賠償義務を負うとされた事例(最判平22・9・9)
〇既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには受働債権につきその弁済期が現実に到来していることを要するとされた事例(最判平25・2・28)

 第7 共同根抵当、共有根抵当、共用根抵当
〇根抵当権の目的である数個の不動産の一部について後順位抵当権者が権利を実行した場合に、根抵当契約が当然に終了するとされた事例(大分地判昭36・8・29)
〇元本の確定した根抵当権が準共有されている場合において、準共有者の一人は単独で当該根抵当権を実行できるとされた事例(東京高決昭54・5・1)
〇共用根抵当権の配当金が被担保債権全額を満足させない場合、各債務者に対する債権を担保するための部分に被担保債権額に応じて按分すべきとされた事例(最判平9・1・20)
〇一部代位弁済により根抵当権の共有持分を取得した場合、その移転登記手続と代位弁済者の共有持分が債権者のそれに劣後する旨の念書の差し入れとは同時履行の関係にないとされた事例(京都地判平11・5・28)
〇債務者所有不動産と物上保証人所有不動産を共同抵当の目的とする抵当権が実行されて同時配当が実施されるときには民法392条1項は適用されないとされた事例(大阪地判平22・6・30)

第7章 工場抵当

〇工場抵当法3条の抵当物件目録の記載が具体性を欠くとされた事例(最判昭32・12・27)
〇工場財団に属する動産についても民法192条の適用があるとされた事例(最判昭36・9・15)
〇会社代表者が会社の債務を担保するため個人所有の建物と、同建物内備付けの会社所有の機械につき設定した工場抵当法2条による根抵当権の効力が機械にも及ぶとされた事例(最判昭37・5・10)
〇工場抵当法2条に基づく抵当権が、工場備付機械器具についての動産売買先取特権に優先しないとされた事例(大阪高判昭42・6・30)
〇工場抵当の目的物たる工場建物が焼失した場合でも、残存する工場備付機械器具に抵当権の効力が及んでいるとされた事例(東京高決昭44・5・30)
〇工場財団組成物件の賃貸借において、抵当権者の同意は当該賃貸借の有効要件であるとされた事例(東京高判昭44・7・17)
〇工場抵当法2条に基づく抵当権者が、工場から搬出された工場備付動産について原状回復を請求し得るとされた事例(最判昭57・3・12)
〇工場抵当法3条の抵当物件目録の記載は第三者に対する対抗要件であるとされた事例(最判平6・7・14)

第8章 抵当証券

〇抵当証券の被担保債権の弁済期の定めの登記が第三者に対する対抗要件であるとされた事例(大阪高決昭61・3・27)
〇抵当証券に記載のない期限の利益喪失約款を主張し得ないとされた事例(東京地決平3・11・18)
〇弁済期到来について、民事執行法181条所定の法定文書以外の資料による主張・立証が許されるとされた事例(東京高決平4・2・19)
〇抵当証券に記載のない期限の利益喪失約款に基づく弁済期到来を立証するためには一定の書証の提出が必要であるとされた事例(東京地決平4・4・15)
〇複数の抵当証券が発行されている場合、期限未到来の抵当証券については競売申立後に請求債権の拡張が認められた事例(大阪高判平13・6・13)
〇過大な鑑定評価を行った不動産鑑定士は抵当証券の購入者に損害賠償義務を負うとされた事例(大阪地判平16・9・15)
〇広告を掲載した新聞社に対する抵当証券被害者の損害賠償請求が認められなかった事例(名古屋地判平16・12・9)
〇抵当証券購入者の不動産鑑定士に対する損害賠償義務が認められた事例(東京地判平17・1・31)
〇詐欺的金融商品の販売を幇助したとして購入者に対して損害賠償義務を負うものとされた事例(大阪地判平17・11・14)
〇抵当証券購入者の不動産鑑定士に対する損害賠償請求が認められなかった事例(東京高判平18・7・19)
〇財務局長が抵当証券業者に対して登録拒否事由の存在を看過して更新登録をしたことを理由として抵当証券購入者からの国家賠償請求が認められた事例(大阪地判平19・6・6)
〇財務局長がした抵当証券業者に対する更新登録が本件の具体的事実関係の下では許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き違法であるとして国がこれにより被害を受けた者の財産的損害の賠償責任を負うとされた事例(大阪高判平20・9・26)

第9章 質  権

〇不動産質権者が質物の占有を取得する前に質権の設定登記をなし、後に占有を取得しても登記は有効とならないとされた事例(大判明42・11・8)
〇不動産質において質権者が占有を失っても質権の効力には影響がないとされた事例(大判大5・12・25)
〇不動産質権設定契約において、存続期間を定めなかった場合でも当該質権は成立するとされた事例(大判大6・9・19)
〇既に第三者に賃貸されている不動産(建物)に質権が設定されたとき、一定の場合には質権者と賃借人の間に賃貸借関係が生ずるとされた事例(大判昭9・6・2)
〇借地上の建物に対する不動産質権設定が敷地の譲渡転貸に当たるとされた事例(東京地判昭50・11・27)

第10章 先取特権

〇不動産工事の先取特権の登記は対抗要件にすぎず、当事者間では登記がなくても先取特権は生じるとされた事例(東京高決昭42・12・14)
〇不動産工事の先取特権は、登記をしなければ当事者間においてもそれを主張できないとされた事例(東京高決昭44・11・28)
〇不動産工事の先取特権につき架空の地番で保存登記した場合において、更正前の登記と更正後の登記の間には同一性が失われ更正登記は許されないとされた事例(最判昭50・10・29)
〇先順位抵当権者が不動産工事の先取特権の優先権を否定し配当表に異議を述べることは信義則違反・権利濫用に当たらないとされた事例(東京高判昭60・11・21)
〇先順位抵当権者が不動産工事につき同意書を交付していたとしても、請負人は登記なくして不動産工事の先取特権を先順位抵当権者らに対抗できないとされた事例(仙台高判昭62・5・28)
〇新築建物につき不動産工事の先取特権の保存の登記をした登記簿では、民事執行法181条1項の法定文書に当たらないとされた事例(広島高松江支決平5・4・26)
〇競売手続に工事の増価額が反映されていないことは不動産工事の先取特権により優先弁済を受けるべき実体的権利に影響しないとされた事例(最判平14・1・22)
〇登記された船舶についても動産の先取特権が成立するとされた事例(東京地判平15・9・30)
〇証明が不十分であるとして船舶先取特権に基づく船舶競売が認められなかった事例(仙台高決平17・11・11)
〇区分所有者に対して建物区分所有法7条1項規定の管理費等の請求権を有する管理組合は、同建物の強制競売による売却代金に対し、同請求権を被担保債権とする先取特権に基づく物上代位権を行使できるとされた事例(東京高決平22・6・25)

第11章 留置権

〇借家法5条による造作買取代金債権によって建物に対する留置権は成立しないとされた事例(最判昭29・1・14)
〇不動産の二重売買の場合の履行不能を理由とする損害賠償債権をもって留置権を主張することは許されないとされた事例(最判昭43・11・21)
〇建物賃貸借契約解除後の不法占有にも民法295条2項の類推適用があるとされた事例(最判昭46・7・16)
〇請負人が建築建物の所有者として敷地を占有している場合、民事留置権は成立しないが、商事留置権は成立するとされた事例(新潟地長岡支判昭46・11・15)
〇土地の占有者が占有権原がないことにつき善意有過失である場合にも民法295条2項の類推適用があるとされた事例(最判昭51・6・17)
〇宅地造成工事の材料供給者に当該宅地に対する商法上および民事上の留置権が認められなかった事例(東京高決昭56・12・24)
〇抵当権実行による建物競落人に対抗できない建物転借人が、抵当権実行前に支出した有益費の償還請求権に基づき、建物につき留置権を認めた事例(大阪地判昭61・4・22)
〇抵当不動産の第三取得者の有する優先償還請求権は競売手続上行使する機会を失すれば消滅するとして第三取得者の賃借人がしたこれに基づく留置権の援用を排斥した事例(京都地判昭61・10・27)
〇土地返還債務の履行不能によって発生した代償請求権を被担保債権として留置権を行使することはできないとされた事例(最判昭62・7・10)
〇留置権者は留置物の一部を債務者に引き渡した場合においても、特段の事情のない限り、債権の全部の弁済を受けるまで、留置物の残部につき留置権を行使することができるとされた事例(最判平3・7・16)
〇建物建築請負人は土地建物の双方に対して商事留置権を有するとされた事例(東京高決平6・2・7)
〇建築請負業者は当該敷地に対して商事留置権を有しないとされた事例(東京高決平6・12・19)
〇建築請負業者は当該敷地に対して商事留置権を有しないとされた事例(東京地判平7・1・19)
〇不動産の二重売買において劣後する買主は、売主に対する手付金返還請求権を被担保債権として、当該不動産を留置できないとされた事例(大阪高判平7・10・9)
〇不動産に対しては商人間の留置権は成立しないとされた事例(東京高判平8・5・28)
〇請負代金を被担保債権とする留置権の主張が認められなかった事例(東京高決平9・3・14)
〇建築請負人は建物の敷地に対して商事留置権を行使できないとされた事例(福岡地判平9・6・11)
〇商事留置権は、債務者の破産によって留置的効力は消滅し、根抵当権との優劣は商事留置権の成立要件が整った時点と根抵当権設定登記が経由された時点の先後によるとされた事例(福岡地判平9・6・11)
〇留置権者が留置物の使用等の承諾を受けた後に留置物の所有権を取得した者は、留置物の使用等を理由とする留置権消滅請求ができないとされた事例(最判平9・7・3)
〇競売で建物所有権を取得した者に対して内装工事代金債権に基づく留置権を主張した者について、関係者間で占有を転々移転させていたとして留置権が認められず、競売手続の円滑な進行を妨害したとして不法行為責任が認められた事例(東京地判平13・3・28)
〇建築業者が建築代金の担保としてマンション各室の各3本の鍵を保有して留置していたところ、そのうちの各1本を施主に交付したため施主の代理業者が一般顧客に販売してしまった場合、建築業者は信義則上当該顧客に対して占有回収請求ができないとされた事例(東京高判平14・2・5)
〇根抵当権設定登記がされた後になされた売買契約が解除された事による売買代金返還請求権を被担保債権とする民事留置権の主張が牽連性の要件を満たさないとの理由で認められなかった事例(東京高決平14・6・6)
〇根抵当権が設定された不動産について売買契約が締結されたが、その売主が根抵当権等の負担を解消できなかったため、買主が売買契約を解除した場合において、買主が根抵当権の実行としての競売による買受人に対し、留置権を主張することが認められなかった事例(東京地判平15・5・23)
〇1 再生債務者以外の者が所有する土地上に存する民事留置権は再生計画の影響を受けないとされた事例
 2 再生債務者所有の建物上に存する民事留置権は、その留置的効力は民事再生手続開始等によっても当然には失われないが、その被担保債権は再生計画によって減縮されるとされた事例(東京地判平17・6・10)
〇競売不動産の買受人は留置権の被担保債権の支払義務まで負わないとして留置権者の被担保債権の支払請求が棄却された事例(横浜地川崎支判平20・2・26)
〇建物建築工事請負人に建物の敷地に対する商事留置権を認めることはできないとされた事例(東京高決平22・9・9)
〇土地の競売手続において一括競売の対象とされた建物の所有者の土地に対する商事留置権が成立することを前提になされた無剰余取消しの決定が抗告審で取り消された事例(大阪高決平23・6・7)
〇破産管財人が土地建物についてした担保権消滅許可申立てに対抗して建物に商事留置権を有する者がした当該建物の買受けの申出が権利濫用と判断された事例(東京高決平24・5・24)

第12章 非典型担保

 第1 不動産譲渡担保
〇売渡担保の目的物返還義務不履行による損害賠償請求が認められた事例(最判昭35・12・15)
〇賃借地上の建物を債権担保を目的に買戻特約付きで譲渡しても、敷地についての無断譲渡・転貸とはならないとされた事例(最判昭40・12・17)
〇会社更生手続開始後において、譲渡担保権者による取戻権の行使が否定された事例(最判昭41・4・28)
〇貸金債権担保のため、不動産につき停止条件付代物弁済契約または代物弁済の予約を締結した形式が取られている場合に債権者の清算義務を肯定した事例(最判昭42・11・16)
〇譲渡担保が公序良俗違反(暴利行為)になるかが争われた事例(最判昭43・10・18)
〇譲渡担保権者による目的不動産の明渡請求を認容した事例(最判昭51・2・17)
〇譲渡担保権が供託により消滅した場合において供託物を取り戻しても、譲渡担保権は復活しないとした事例(最判昭53・12・22)
〇譲渡担保が詐害行為として取り消された場合において目的物自体の回復が認められた事例(最判昭54・1・25)
〇譲渡担保における受戻権が被担保債権の弁済期から20年経過しても時効消滅しないとされた事例(最判昭57・1・22)
〇譲渡担保設定者の不法占有者に対する返還請求が認められた事例(最判昭57・9・28)
〇賃借地上の建物の譲渡担保権者は、借地法9条ノ2の借地権譲渡許可申立てができないとされた事例(大阪高決昭61・3・17)
〇譲渡担保権者または所有権留保権者の取戻権行使が否定された事例(札幌高決昭61・3・26)
〇譲渡担保権者が、譲渡担保の目的物に付された先順位抵当権の被担保債権を代位弁済した場合において、その求償債権が譲渡担保の被担保債権に含まれないとされた事例(最判昭61・7・15)
〇譲渡担保の実行前に目的物を第三者に譲渡した場合、清算金の有無およびその額の確定は、譲渡のときを基準とすべきだとされた事例(最判昭62・2・12)
〇譲渡担保設定者が譲渡担保権消滅後に目的物を取得した第三者に所有権を対抗するには登記が必要であるとされた事例(最判昭62・11・12)
〇借地上の建物を譲渡担保として登記を移転した後に、敷地所有権が譲渡され、さらにその後に被担保債権が弁済され所有権移転登記が抹消された場合において、担保権設定者の土地譲受人に対する借地権の対抗が否定された事例(最判平元・2・7)
〇担保目的で不動産に仮登記を経由した場合において、その合意が仮登記担保の設定ではなく、譲渡担保の設定であると認定された事例(東京高判平元・7・25)
〇賃貸中の建物を譲渡担保に付した後に賃貸借が終了した場合において、譲渡担保権者への敷金返還請求が認められた事例(東京地判平2・11・5)
〇譲渡担保の目的物について、譲渡担保設定者、譲渡担保権者の双方に被保険利益が認められた事例(最判平5・2・26)
〇譲渡担保権者からの目的不動産の譲受人が背信的悪意者であっても、譲渡担保設定者は所有権を主張できないとされた事例(最判平6・2・22)
〇借地上の建物を譲渡担保としたが、借地契約が解除された場合において、譲渡担保権者に建物収去土地明渡義務が認められた事例(大阪高判平7・5・25)
〇譲渡担保権者による滌除が否定された事例(最判平7・11・10)
〇譲渡担保設定者が受戻権を放棄しても、清算金を請求できないとされた事例(最判平8・11・22)
〇借地上の建物についての譲渡担保権設定により、借地契約の解除が認められた事例(最判平9・7・17)
〇譲渡担保権者の一般債権者が目的不動産にした仮差押えに対して、譲渡担保権設定者がした第三者異議の訴えが認められなかった事例(東京地判平10・3・31)
〇買戻特約付売買契約の形式により締結された契約が帰属清算型の譲渡担保であると認定された事例(東京高判平10・7・29)
〇譲渡担保権者から被担保債権の弁済期後に目的物を譲り受けた第三者は、譲渡担保権設定者が譲渡担保権者に対して有する清算金支払請求権につき、消滅時効を援用し得るとされた事例(最判平11・2・26)
〇不動産に対する譲渡担保の設定が詐害行為として取り消された事例(最判平12・7・7)
〇不動産譲渡担保権に基づく賃料への物上代位が否定された事例(浦和地判平12・10・31)
〇割合的保証において、物的担保により回収できた金額を非保証部分に充当した事例(東京高判平14・8・27)
〇債務不履行の場合債務者の土地を債権者名義に変更しまたは第三者に売り渡す事を承諾した契約につき、それが仮登記担保ではなく、譲渡担保であるとされた事例(最判平14・9・12)
〇譲渡担保における精算金についての遅延損害金の発生には、目的不動産の引渡しないし明渡しの提供が必要であるとされた事例(最判平15・3・27)
〇貸金担保のために買戻特約付所有権移転登記を経由したが、その際に使用された登記済証が偽造されたものであったにもかかわらず、登記官がそれを看過したことから、国の損害賠償義務が認められた事例(大阪地判平17・12・5)
〇買戻特約付売買契約が譲渡担保契約であると解すべきであるとされた事例(最判平18・2・7)
〇不動産譲渡担保において、被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ、その旨の登記がされたときは、設定者は、差押登記後に債務の全額を弁済しても、第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできないとされた事例(最判平18・10・20)
〇譲渡担保設定契約を、詐害行為として、不動産の価格から当該不動産が負担すべき抵当権等の被担保債権額を控除した残額の限度で取り消して、価格賠償を認めた事例(東京地判平22・6・25)
〇登記原因を売買として登記されている不動産譲渡担保について、登記原因を譲渡担保に更正する更正登記手続請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分命令申立てが認められた事例(大阪高決平25・1・9)

 第2 仮登記担保
〇債権担保の目的でなされた停止条件付代物弁済契約の目的たる不動産が、清算前に債権者から善意の第三者に譲渡され所有権移転登記がされた場合には、債務者の第三者に対する右不動産の取戻権は消滅するとされた事例(最判昭46・5・20)
〇仮登記担保権の目的不動産に対して競売手続が開始されている場合には仮登記担保権者は仮登記の本登記手続またはその承諾請求ができないとされた事例(最判昭49・10・23)
〇債権担保の目的でされた代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記には民法395条の類推適用はないとされた事例(最判昭56 ・7・ 17)
〇清算金の支払のないまま仮登記担保権者から目的不動産の所有権を取得した第三者が債務者に対して右不動産の明渡請求をした場合、債務者は留置権の抗弁を主張できるとされた事例(最判昭58・3・31)
〇仮登記担保権者が仮登記担保契約に関する法律5条1項所定の通知をしなかった場合には当該後順位担保権者に対する仮登記に基づく本登記承諾請求ができないとされた事例(最判昭61・4・11)
〇仮登記担保権者が仮登記担保契約に関する法律5条1項の通知をしなかったが、後順位担保権者の請求にかかる競売手続が無剰余により取り消された場合に、当該仮登記担保権者は当該後順位担保権者に対し本登記手続の承諾請求をなし得るとされた事例(大阪地判昭62・2・18)
〇担保仮登記がされた不動産に対する参加差押えが清算金支払債務の弁済前にされた場合には担保仮登記の権利者は本登記請求ができないが、目的不動産の引渡請求はできるとされた事例(最判平3・4・19)
〇仮登記を経由した不動産譲渡担保権の実行について仮登記担保契約に関する法律が類推適用を認めた事例(東京高判平5・12・27)
〇仮登記担保権者は仮登記担保契約に関する法律5条1項所定の通知を遅滞した場合でも後順位担保権者に対して仮登記に基づく本登記承諾請求ができるとされた事例(東京高判平7・12・13)

 第3 所有権留保
〇目的建物の収去により所有権留保権者が損害賠償義務を負うとされた事例(東京高判昭54・4・19)
〇所有権留保権者の第三者への所有権主張が権利の濫用とされた事例(大阪高判昭56・5・29)
〇銀行が10年余にわたって催告をしなかったことその他の事情から、信義則に基づき、連帯保証人の責任が制限された事例(名古屋地判平16・6・18)

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