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医療・薬事2019年10月25日 孫揺さぶり死、逆転無罪 69歳祖母、暴行認められず 大阪高裁、虐待立証に警鐘 提供:共同通信社

 生後2カ月だった孫の女児を揺さぶって暴行し死亡させたとして、傷害致死罪に問われた祖母の山内泰子(やまうち・やすこ)被告(69)の控訴審判決で、大阪高裁(村山浩昭(むらやま・ひろあき)裁判長)は25日、「死亡に結び付く暴行は認められない」として、懲役5年6月とした一審大阪地裁の裁判員裁判判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
 一審判決は、孫に急性硬膜下血腫など「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」の兆候がみられたことから被告による虐待と判断。しかし村山裁判長は、暴行ではなく病死の可能性を指摘した上で「SBSの理論を単純に適用すると極めて機械的で画一的な事実認定を招く」と一審の判断を批判した。
 弁護側によると、乳幼児の虐待事件はSBSの理論に基づき立件されるケースが多いが、こうした立証に警鐘を鳴らす初の司法判断とみられ、警察や検察の捜査に影響しそうだ。
 村山裁判長は判決理由で、一審判決について、孫にSBSの兆候があったことにより「近くにいた被告が揺さぶって虐待したと推定し、消去法的に犯人と特定した」と指摘した。
 その上で、控訴審で出廷した脳神経外科医らの証言から、孫は頭部の血管に血の塊ができる「脳静脈洞血栓症」を発症し、脳機能不全に陥って病死した可能性が否定できないと判断。被告は孫の顔を見に行きたいと思い世話を引き受け、動機もなく、1秒間に3往復という速さで揺さぶることは「被告の年齢、体力を考えても相当不自然だ」とし、暴行による外傷とは認められないとした。
 2017年10月の一審判決は小児科医らの証言を基に、女児の頭部に成人が全力で揺さぶる程度の衝撃を与え、急性硬膜下血腫などの傷害が生じたと認定していた。
 山内被告は16年4月6日午後、娘一家が住む大阪市東淀川区の集合住宅で、孫の頭部に強い衝撃を与え、同7月23日に脳機能不全で死亡させたとして起訴された。

「あなたが暴行」は間違い 裁判長の言葉に祖母頭下げ

 「あなたが暴行を加えたというのは間違いだ」。孫の女児を揺さぶり死亡させたとして傷害致死罪に問われた祖母山内泰子(やまうち・やすこ)被告(69)に逆転無罪を言い渡した25日の大阪高裁判決。村山浩昭(むらやま・ひろあき)裁判長が判決理由を読み上げた後、直接そう語り掛けると、証言台にいた山内被告は「ありがとうございました」と述べ、深々と頭を下げた。
 「被告人は無罪」。この日の公判の冒頭で村山裁判長が主文を告げると、スーツ姿の山内被告は泣きながら何度もお辞儀をした。法廷からは安堵(あんど)のため息や家族らのすすり泣きが。最後に村山裁判長が「だいぶつらい思いをしたと思う」と声を掛けると、改めて感謝の意を伝えた。
 判決後、大阪市内で開かれた記者会見で、弁護人の秋田真志(あきた・まさし)弁護士は「医学的所見のみで虐待と決めつける判断の在り方そのものが裁かれた」と検察側を批判。その上で「ステレオタイプな考えに依拠した捜査機関や児童相談所、厚生労働省の根本的な見直しが必要だ」と話した。
 山内被告はこれまで無実を訴え続けたが、一審の裁判員裁判の結論は実刑判決。8月30日の控訴審の公判で孫への思いを聞かれ「今でも思い出して悲しい。人生で一番つらい出来事だった」と振り返り「代われるものなら代わりたかった」と言葉を紡いだ。

SBS、3兆候で論争 「非科学的」と批判も

 乳幼児を激しく揺さぶることで脳に傷害が生じる「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」を巡っては、兆候とされる三つの症状が見られた上、高所からの転落などの原因が証明できない場合は、虐待とみなされ立件されるケースが多い。だが専門家からは「非科学的だ」と批判も相次ぎ、理論の正当性について論争となっている。
 SBSでは、揺さぶりで頭部の血管が切れて(1)硬膜下血腫(2)網膜出血(3)脳浮腫―の3兆候が生じるとされる。英国の医師の提唱で1970年代以降、欧米で広がり、この理論に基づく刑事訴追が相次いだ。
 だがSBS理論に批判的な弁護士や学者らでつくる「SBS検証プロジェクト」(大阪市)によると、近年は脳神経外科医ら専門家の間で「低位からの落下でも似た症状が起きうる」などと医学的な根拠を疑問視する声が出ている。
 一方、欧米や日本の小児科学会などは昨年、世界中で広く認知されており「医学的な論争はない」とSBS理論への批判を打ち消す声明を発表している。
 司法判断も揺れており、国内では、3兆候によりSBSと疑われ立件された事件で、今回の大阪高裁判決以外に、少なくとも9件の無罪判決が出ているという。
 事務局長の川上博之(かわかみ・ひろゆき)弁護士は、公判で弁護側も積極的に専門医を証人申請するようになったとし「法廷では高度な医学論争となり、3兆候だけで容易に揺さぶりと認定されなくなった」と話している。

判決内容を精査し対応 関係者談話

 大阪高検の田辺泰弘(たなべ・やすひろ)次席検事の話 重要な証人請求が却下されたこともあり、判決内容を精査し適切に対応したい。

乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)

 乳幼児が激しく揺さぶられ、未発達で軟らかい脳が頭蓋骨に打ち付けられ傷つくことで生じる症状。嘔吐(おうと)やけいれん、意識障害を引き起こし、失明や言語障害といった重大な後遺症となったり、死亡したりする可能性もある。厚生労働省は、症状を招く暴力的な揺さぶりを虐待と位置付けている。弁護士などからは、医学的所見のみに基づいて虐待と判断することは冤罪(えんざい)を引き起こす恐れがあるとの批判もある。

(2019/10/25)

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