カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

環境2021年03月27日 特集「問われる日本の石炭依存」 提供:共同通信社

国内外から厳しい目

 世界の多くの国が2050年に温室効果ガスの排出量をゼロにする「脱炭素」を掲げる中、石炭火力発電を全廃する動きが進んでいる。一方で、脱炭素を宣言しながら石炭火力への依存を続ける日本には内外の厳しい視線が投げかけられている。脱炭素と石炭を巡る世界の動きを見た。

世界の消費は減少 大きいCO2排出量

 「2019年、世界のエネルギー消費に石炭が占める比率は27%に低下、過去16年間で最低になった」―。英国の石油大手BPは昨年7月に発表した世界のエネルギー動向に関する報告書の中でこう指摘した。
 世界の石炭消費量は18年の158・79エクサジュール(エクサは10の18乗、ジュールは熱量の単位)から157・86エクサジュールに減少した。中国、インドネシアなどで増えたものの、経済協力開発機構(OECD)加盟国の消費が大きく減ったためだ。
 減少の背景には、各国で温暖化対策の観点から「脱石炭火力」が進んでいることが大きい。
 一定の電力を作るときに出る二酸化炭素(CO2)の量が、最新式の天然ガス火力の2倍近くと多いからだ。
 環境やエネルギーに関する国際シンクタンク、E3Gによると、既にスイス、スウェーデン、オーストリアなど10カ国が石炭火力から脱却。フランスは22年、英国は24年の全廃方針を決定し、カナダ、デンマーク、ハンガリーなどを含め計14カ国が30年までに全廃の方針。ドイツは38年、チリは40年全廃を表明した。
 米国のバイデン政権も35年に全電力を化石燃料以外のものにする方針で、先進7カ国(G7)の中で石炭依存を続ける国は日本だけ。発電量に石炭が占める比率も30%を超え、G7の中で最も高く、日本の孤立ぶりが目立つ。
 国際的な動きを加速させようと英国とカナダは17年、各国に呼び掛けて「脱石炭連合」を発足させた。連合は3月2日に「脱石炭サミット」を開催。石炭火力の早期全廃を訴えた。
 サミットでは国連のグテレス事務総長がビデオメッセージで「産業革命以降の気温上昇を1・5度に抑えるために最も重要なことは石炭火力の全廃だ。OECD加盟国に30年までに全廃するよう求める」と明言。「先進7カ国は主導的役割を担い、6月の首脳会議(サミット)までに具体的な廃止計画を示すべきだ」と述べた。
 連合にはこの日、新たにウルグアイとハンガリーが加わり、加盟国は36となった。
 「石炭中毒」とまで批判された日本政府も昨年、非効率な石炭火力発電所の廃止を打ち出した。だが、新設は進めており、30年以降、長期間利用を続ける姿勢だ。
 環境保護団体、気候ネットワークの平田仁子(ひらた・きみこ)理事は「温室効果ガスの大幅削減に最も寄与するのが石炭火力の全廃だ。G7に関する国連事務総長のメッセージは日本に向けられたものだと言っていい」と批判している。

建設進む大型発電所 相次ぎ運転開始へ

 2月半ば、冬晴れの空の下、ヨットに乗って静かな海を行くと、神奈川県横須賀市の海岸沿いに、多数のクレーンが林立する工事現場が目に飛び込んできた。
 この施設は、東京電力フュエル&パワーと中部電力が共同出資する「JERA(ジェラ)」が、小泉進次郎環境相のお膝元に建設する大型の石炭火力発電所。65万キロワット2基で2023~24年の完成を目指している。

行政訴訟も

 沖合遠くからも本体の骨組みが見える。「建設はどんどん進んでるな」と建設計画に反対する斉木貴郎(さいき・たかお)さんが言う。
 周辺住民らは国を相手取って、環境影響評価に関する決定の取り消しを求める行政訴訟を起こしており、斉木さんもその一人だ。
 この日は、原告団メンバーや地球温暖化問題に取り組む環境保護団体による、洋上からの抗議活動。発電所近くまでヨットを寄せ、横断幕を広げて建設中止を訴えた。

高まる依存度

 かつては石炭大国だった米国を含め多くの国で石炭火力発電所の閉鎖が進む中、日本では石炭火力発電所の新設が進んでいる。横須賀の発電所もその一つだ。
 日本の石炭依存は長く続いており、1990年度には約10%だった総発電量に占める石炭の比率は2010年度には28%に上昇、現在は30%を超えるまでに増えている。
 30年の石炭全廃を目指す環境保護団体の連合体「Japan Beyond Coal」によると現在、建設中または計画中の石炭火力発電所は15基。JERAの武豊火力発電所5号機(愛知県)、中国電力の三隅発電所2号機(島根県)など100万キロワット超の大型発電所が着工済みだ。
 日本政府は「石炭の脱炭素技術の開発が課題だ」(経済産業省)としながらも「エネルギーの安定供給や変動が大きい再生可能エネルギーの調整力として一定の役割を果たす」(同)との理由で、石炭火力発電の利用を当面、続ける方針。見直しが始まった30年度の電源構成でも、かなりの部分を石炭火力が担うことになる。
 海外の先進国を中心に石炭全廃の動きが加速する中、国際社会で日本が孤立し、厳しい目にさらされる可能性が高い。
 ヨットでの抗議活動に参加した気候ネットワークの桃井貴子(ももい・たかこ)さんは「50年の脱炭素を宣言しながら、今後、長期間にわたって大量の二酸化炭素を出し続ける石炭火力発電所の新設を進める日本の姿勢は多くの人から理解されないだろう」と指摘した。

日本の銀行にも批判 続く巨額の石炭関連融資

 石炭火力全廃の動きが進む中、世界の年金基金や銀行など、多くの投資家が、石炭関連産業への投融資中止を表明、資金を引き揚げる「ダイベストメント」と呼ばれる動きも進んでいる。
 日本の銀行も近年、相次いで石炭火力発電所建設の融資を行わない姿勢を表明した。だが、既決案件には融資を継続、例外規定があるといった問題点が指摘され、日本の金融機関にも厳しい目が向けられている。
 欧州や日本など25の環境保護団体は2月、世界の約380の民間銀行などが2018年10月~20年10月にかけて行った石炭産業への融資の実態調査結果を発表した。
 総額3153億ドルのうち融資額のトップは。みずほフィナンシャルグループの約222億ドル。2位が三井住友フィナンシャルグループ、3位が三菱UFJフィナンシャル・グループで、トップ3を日本の三大メガバンクが占めた。
 参加団体の一つで350.org Japanの渡辺瑛莉(わたなべ・えり)さんは「日本の三大バンクは包括的な脱石炭ポリシーを掲げ、気候危機を加速させるような行動をやめるべきだ」と訴えた。

炭素税の本格導入が重要 尚絅学院大の長谷川氏 識者談話

 長谷川公一(はせがわ・こういち)・尚絅学院大特任教授(環境社会学)の話 日本政府は2050年の脱炭素を宣言はしたものの、政策的にそれをどうやって実現するのかの議論がなされていない。脱炭素を真剣に考えるなら石炭火力の全廃を早急に進めねばならない。ドイツのように脱原発と脱石炭の双方の実現をめざすことは日本でも可能だ。既に原発をやめた米国のカリフォルニア州の電力公社は、天然ガス火力さえ全廃し、30年までに再生可能エネルギー100%の電力供給を目指している。
 日本政府の政策決定には依然として大電力会社の影響力が大きい。日本の石炭政策には、小規模分散型の再生可能エネルギーではなく、原発や石炭火力といった大規模集中型の発電設備を重視することを通じて市場の支配力を保とうとする大電力会社の利害が背景にあると言っていい。
 石炭火力のコストが安いのは、排出される二酸化炭素(CO2)が引き起こす地球温暖化の影響というコストが反映されていないだけだ。
 脱炭素を決めた多くの国のようにCO2の排出量に応じて相応の金額を課税する本格的な炭素税を導入すれば、石炭火力は市場での競争力を失うだろう。

                                                (2021/03/27)
(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

ここから先は新日本法規WEB会員の方のみ
ご覧いただけます。

会員登録していただくと、会員限定記事の閲覧のほか、様々なサービスをご利用いただけます。登録は簡単・無料です。是非ご利用ください。

ログイン新規会員登録

関連カテゴリから探す

  • bnr-購読者専用ダウンロードサービス
  • 法苑
  • 裁判官検索