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企業法務2021年04月17日 「東芝迷走の波紋」 提供:共同通信社

産業界に課題投げ掛け

 東芝の経営が迷走している。「物言う株主」や経済安全保障のリスクとどう向き合うか。日本の産業界に投げ掛けた課題を追った。

ファンド、高まる存在感 名だたる企業対象に

 唐突な買収提案から社長辞任の混迷を経て、東芝がなお世界の投資ファンドから熱視線を送られるのはなぜなのか。浮かび上がるのは「カネ余り」を背景に一段と高まったファンド群の存在感だ。新型コロナウイルス禍の昨年来、武田薬品工業や日立製作所など名だたる企業が欧米ファンドの投資対象となっている。どの日本企業であれ、もはやこの流れから無縁だとは言い切れない。

投資リターン

 「社会インフラは安定的に稼げる。原発と半導体が何より魅力的だ」。投資銀行の幹部は英CVCキャピタル・パートナーズから買収提案を受けた東芝をこう分析する。米ファンドやカナダ系資産運用会社も関心を寄せ、争奪戦の様相だ。
 原発事業は海外から撤退、国内も新規建設を見込めないが、今後、廃炉ビジネスが本格的に立ち上がってくる。半導体はスマートフォンなどのデータ保存に使うNAND型フラッシュメモリーで世界シェア2位のキオクシアホールディングスの株式を4割持つ。第5世代(5G)移動通信システムの普及で需要が増すのは確実視される。
 こうした潜在力に目を付けるのが、数年後の売却を前提に買収を狙うCVCなど「プライベートエクイティファンド」だ。海外ファンドの関係者は「日本企業は欧米に比べて投資リターンが大きい」と指摘。「古い体質が残っているので企業価値を高める余地が大きいからだ」と明かす。
 一方、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントなど既存の東芝大株主は「物言う株主」に分類される。CVCのように経営に関与するのではなく、経営陣にさまざまな注文を付けて株価向上を目指すスタイルだ。

緩和マネー

 昨年来、ファンドが絡んだ企業の合併・買収(M&A)が後を絶たない。武田薬品の大衆薬子会社売却、資生堂の日用品事業売却はいずれも相手が海外ファンドだ。今月に入り、日立製作所が日立金属の売却に向け、米ベインキャピタルなどに優先交渉権を与えたことも明らかになった。
 こうした動きを支えるのは、市場にあふれた金融緩和マネーだ。ファンド関係者は「『もっと金を出す』と言う投資家が増え、案件が大型化している」と解説する。
 ファンド主導のM&Aは、株式の非公開化で経営の透明性が失われるリスクもはらんでいる。東芝の場合、2兆円超の買収資金が投じられても会計上、1兆円程度は東芝に負債として残る仕組みだ。取引銀行の中堅幹部は「これで東芝の企業価値が上がると言えるのか」と、巨額買収の効果に懐疑の目を向けた。

国、戦略技術流出を警戒 経済安保の審査ハードル 

 原発、ミサイル、半導体―。経済政策や企業活動が国の安全保障に直結すると考える「経済安全保障」の世界では、東芝が持つこうした戦略技術の海外流出は最も警戒すべき問題とされる。「注目しないわけにいかない」。政府関係者はそう語り、英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる東芝買収の是非を巡り議論を始めた。

政治判断

 東芝は1875年に創業し、家電製品で飛躍を遂げた。現在は防衛産業の一角を担い、日本の半導体製造をリードする存在だ。半導体はスマートフォンなどの身近な製品から軍事兵器まで幅広く使われる。米国と中国が繰り広げる覇権争いの鍵を握る技術でもある。
 今回の買収案件は、日本企業に対する外国資本の関与を厳しく規制する外為法に基づいた国の審査がハードルとなる。2008年には電源開発(Jパワー)の株式取得を目指した海外投資ファンドに対し、電力の安定供給を懸念した政府が中止を命じた例がある。
 政府は「国の安全確保に与える影響の程度」などを考慮して審査。加藤勝信官房長官は東芝には「事業を安定的に継続できる経営体制が重要」とくぎを刺した。東芝の経営陣はCVCの提案を拒む方向だが、関係者は「仮にわれわれが買収を容認しても政治判断が必要になり、すんなりと決まるはずがない」と語る。

危機感

 経済安保と企業を巡る懸念は東芝以外でも指摘される。LINE(ライン)は3月、通信アプリの個人情報が中国にある関連会社から閲覧できる状態になっていた問題が発覚し、謝罪に追われた。人工知能(AI)の活用が広がるデジタル社会では個人情報などのデータは「21世紀の石油」と呼ばれ、死活的に重要な資源と見なされる。
 中国は事業者から強権的に情報を吸い上げる「国家情報法」を持つ。中国IT大手の騰訊控股(テンセント)は子会社を通じ、楽天グループに出資。これにも自民党内では「データが奪われる」と危惧する声が上がる。
 同志社大大学院の村山裕三(むらやま・ゆうぞう)教授(経済安全保障)は「企業の経営方針に安全保障の視点を入れないといけない時代になった」と指摘する。財界関係者は日本の産業界が国際情勢の急変に追い付いていないことを認め「政府が率先してルールをつくるべきだ」と訴える。
 自民党は昨年、米中対立を念頭に技術開発の強化や機密保全を徹底する経済安保戦略の策定を政府に求めた。「官民で危機感を持たないといけない」。問題意識が希薄な現状に、党関係者の焦りは募る。

(2021/04/17)
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