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一般2022年06月08日 特殊詐欺被害5743億円 高齢者中心、03~21年 小規模県の予算上回る 提供:共同通信社

 高齢者を中心に深刻な被害が続く特殊詐欺について、年間の数字が確認できる2003年から21年までの被害総額が5743億円に上ることが7日、警察庁のまとめで分かった。佐賀県の22年度一般会計当初予算や一部の地方銀行の預金量を上回る額で、「おれおれ詐欺」など電話で被害者から現金をだまし取る悪質な犯罪によって、国民の財産が組織犯罪グループの巨大な資金源になっている実態が改めて浮き彫りになった。
 日本は家計の金融資産2千兆円の約7割を世帯主が60歳以上の世帯が保有、資産の内訳は現金・預金が半分を占める。高齢化が急速に進展し被害が生じやすい構造になっている。
 被害を届け出ないケースなども含めると実際の被害は倍との指摘もあり、社会全体で危機意識を共有し、当局には一層の対応強化が求められる。昨年の被害者の約9割が高齢者だった。
 警察庁によると、5743億円のうち類型別では、息子や孫を装い金銭を詐取するおれおれ詐欺が2522億円と最も多く半分近くを占めた。
 他に多いのは、架空の未払い料金を口実にする「架空請求詐欺」が1419億円、虚偽の未公開株などを名目にする「金融商品詐欺」が677億円。この3類型だけで全体の8割となる。
 個人の最大被害は、大阪府の会社経営の80代女性が16年、名義貸しを巡るトラブル解決名目などで二十数回にわたってだまし取られた5億6900万円だった。
 警察庁は03年、おれおれ詐欺が社会問題化したことから初めて被害を調べ、総額43億円に上ることが判明。04年には6倍以上の283億円と爆発的に増え、08年までは250億円程度の横ばい状態で推移。摘発強化や犯罪ツール対策などで09年には3分の1に減少するが、10年から再び増加し14年には過去最高の565億円に達した。
 その後は減少傾向だが高止まり状態。21年は282億円で、1日平均7700万円に上る。

「ビジネス」に特効薬なし 特殊詐欺被害

 【解説】特殊詐欺のこれまでの被害が5743億円もの膨大な額になったのは、この組織犯罪が首謀者にとってローリスクハイリターンな「ビジネス」として確立されたからだ。ビジネスを破綻させるには首謀者の摘発と被害防止が最重要で、この2本柱を強力に推し進めるしかないが、特効薬はないのが現状だ。
 特殊詐欺の犯罪グループは「首魁(しゅかい)」と呼ばれる首謀者をトップにしたピラミッド状の組織。メンバーは「受け子」「出し子」「かけ子」などの役割に分かれ、互いに素性を隠している。
 特殊詐欺を担当する捜査2課は受け子など末端の逮捕からの「突き上げ捜査」が中心的な手法だが、組織の特性に阻まれこれまで首魁にたどり着くのはまれだった。
 そのため警察庁は昨年4月、特殊詐欺の担当を捜査2課から組織犯罪対策部の暴力団対策課に移管。首謀者について情報収集し組織上層部から解明する手法も加え、複合的に特殊詐欺組織を攻めるためだが、効果が表れるのはまだ先だろう。
 被害防止では相手に通話録音を知らせるメッセージが流れる防犯機能付き電話が最も有効とされるが、特殊詐欺の認知件数は2020年から21年にかけて増加しており、電話対策も不十分だ。
 子や孫を心配する情につけ込まれた高齢者を中心に、今も毎日8千万円近い資産が奪われ続けている。警察や関係機関に任せるだけではなく、国民一人一人がこの卑劣な犯罪から家族を守るという意識が必要だ。(共同通信編集委員=甲斐竜一朗)

1課投入、通話録音… 警視庁の特殊詐欺対策

 全国に先駆け2004年、専従捜査員による「おれおれ詐欺」取締本部を設置した警視庁。管内の被害額は全国最多で、犯罪グループとの闘いの歴史は長い。捜査1課特殊班の投入、だまされたふり作戦、通話録音…。対策を講じるたびに手口は変わる。同庁幹部は「『私はだまされない』と思わないで」と注意を呼びかけている。
 高齢者宅を狙い、電話で息子など親族を名乗るおれおれ詐欺は、被害者に金融機関の窓口やATMから現金を振り込ませることが多かった。警視庁は08年ごろ、窓口やATMで利用者に送金先や経緯を聞き取ることなどを金融機関に要請した。
 だが、次第に振り込みではなく現金を直接受け取りに来る手口が増加。警視庁は09年、身代金の受け渡し場所が転々とする誘拐事件の捜査を担当する捜査1課特殊班経験者を特命班に起用した。このころからだまされたふり作戦も実施。不審な電話を受けた人の協力を受け、犯罪グループをおびき出し、現行犯逮捕につなげるようになった。
 警視庁犯罪抑止対策本部によると、犯人側からの最初の接触はほとんどが固定電話への架電。同庁は10年、振り込め詐欺被害防止対策電話センターの運用を始めた。民間委託したオペレーターが、不審電話があった地域の住民に注意を促す電話をかけている。「キャッシュカードを持って家を出るところだった」と話す住民もおり、昨年も149件の被害を防いだ。
 13年には自動通話録音機を開発。電話の呼び出し音が鳴る前に通話内容を録音すると相手に通知するシステムで、都が助成金を出すものも含め、これまでに高齢者宅を中心に15万軒以上に設置した。
 昨年都内では、医療費などの返還を装ってATMに誘導し電話越しに操作させて犯人の口座に送金させる還付金詐欺が増えた。このため昨年6月には全国銀行協会などの協力を仰ぎ、「ストップ!ATMでの携帯電話」運動を展開。利用者への声かけやポスターで、ATM利用中に携帯電話で通話しないよう求めている。

巧妙化する詐欺のシナリオ 神戸女子大の秋山学教授 識者談話

 特殊詐欺被害が過去最高の565億円に上った2014年以降、金融機関やコンビニで金を振り込もうとしている人に声掛けする意識が高まり、被害は半減した。ただ、これはだまされる人が半分になったのではなく、被害が起きる直前に社会の力で食い止めているに過ぎない。
 2年前、新型コロナウイルス禍で国は1人当たり10万円の給付金を出した。犯罪グループはこうした動きをよく見ていて、給付金を装った手口をだましのシナリオに入れてくる。1度もらっただけに、また給付金がもらえるかもと思ってしまう国民もいるだろう。
 犯罪グループは、身内の危機や行政手続きの不備、給与や年金が入金される口座の凍結などを口実に被害者の不安をあおる。その上で、時間的な締め切りを設定し、焦りをミックスして余裕をなくさせる。内容は変化していても、このやりとりはシナリオに埋め込んでいる。
 先日、各地の警察本部が集めた還付金詐欺の音声を聞いた。電話を受けた高齢者は、得をして喜んでいるというより行政手続きが完了していないことで迷惑をかけたと感じているようだった。そのような被害者の「申し訳ない」という気持ちにつけ込んでいる。
 犯罪グループは単に肩書を名乗るだけではなく、よどみない口ぶりで市役所職員や銀行員そのものと思わせていることが音声から分かる。いったん信じてしまうと、詐欺だと気が付くのは難しい。1日に何十、何百回と電話をかけている。ものすごい数のトライアンドエラーを繰り返して巧妙化する手口と、われわれは向き合っている。
 今後も社会に変化が起きれば、新たな手口が生まれる。周囲の声掛けで被害を減らすのには限界がある。自宅に電話がかかってきても、留守電で発信者が誰か確認してかけ直すなど、暮らしそのものを詐欺対策モードに変えなければ、さらなる被害の減少は難しい。
   ×   ×
 あきやま・まなぶ 1965年、新潟市生まれ。専門は消費者心理学。神戸学院大教授などを経て22年4月から現職。

特殊詐欺

 対面せずに電話やメールで相手を信じ込ませ、銀行口座に金を振り込ませるなどしてだまし取る犯罪の総称。2002年ごろ登場した「おれおれ」の手口が最初とみられる。03年に全国で急増して社会問題化した。「架空請求」「融資保証金」「還付金」を加えて四つに分類する振り込め詐欺のほか、「金融商品取引名目」やキャッシュカードを窃取する「カード詐欺盗」など。20年から10類型に。犯罪グループは、電話で被害者をだます「かけ子」、金を直接受け取る「受け子」、口座から引き出す「出し子」などに役割が分かれ、離合集散を繰り返すとされる。

(2022/06/08)
(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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