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警察2024年03月17日 「知恵比べ負けたんや」 抱える後悔、真相は闇 グリコ・森永脅迫事件40年 提供:共同通信社

 1984年3月、江崎グリコ社長誘拐に端を発したグリコ・森永脅迫事件は18日で発生から40年となる。食品会社の役員宅などに脅迫文を送りつけ、青酸入り菓子をばらまいた空前の事件に、警察は延べ130万人を投入したが真相は闇のまま。「犯人との知恵比べで負けたんや」。当時の捜査員は今も、後悔ともどかしさを抱えている。
 84年3月18日、兵庫県西宮市の住宅に押し入った犯人グループが江崎グリコ社長だった江崎勝久(えざき・かつひさ)氏(82)を誘拐した。犯人側はグリコに現金10億円などを要求。誘拐から3日後に江崎氏は監禁先の倉庫から自力で脱出した。
 「かい人21面相」を名乗る犯人は食品会社への恐喝を繰り返す。名古屋市や兵庫県の店頭では青酸が入った食品も見つかった。
 同年6月、犯人側は丸大食品に現金を要求し、受け渡しのため電車に乗るよう指示。警察が注目したのは、現金運搬役に扮(ふん)した捜査員を電車内で見張る30~40代とみられる人物だ。後にこの男が「キツネ目の男」と呼ばれるようになった。
 男は京都駅で下車した。大阪府警捜査1課の若手捜査員として追っていた男性(69)は、この男が、駅ホームから階段を下りるところを目撃。しかし「そこでまかれた」。謎に包まれたキツネ目に肉薄した瞬間だった。
 「逮捕の絶好のチャンスだった。痛恨の極み」と別の男性捜査員が振り返るのは、同年11月に起きたハウス食品への脅迫事件だ。この捜査員は、現金の受取場所として指定された滋賀県内の現場に急行。しかし、事情を知らされていなかった滋賀県警は近くで不審車両を見つけたが取り逃がしてしまう。その後、車に乗っていた男が犯人グループの一員と断定された。
 85年8月、グループは犯行終結を宣言。捜査員らはキツネ目の男に似た人物の情報を全国から集め、しらみ潰しの作業を続けた。しかし2000年、一連の事件の時効が成立した。
 「電車に乗ると、男を捜している自分がいた。悔しかった」(若手捜査員だった男性)。「退職しても、どこかにいるはずだと、街の中を行き交う人を見ていた」(70代の元府警1課係長)
 当時、1課幹部として捜査を指揮していた80代男性がつぶやいた。「やるべきことはやったが、結果が全て。わしらの策を向こう(犯人側)が上回ったんだろう」

巧妙化する「劇場型犯罪」 捜査は進歩、AI悪用も

 グリコ・森永脅迫事件は、報道機関や市民を巻き込んだ最初の「劇場型犯罪」とされている。警察の捜査手法は飛躍的な進歩を遂げる一方、インターネットの登場で手口は巧妙化し、人工知能(AI)が悪用される懸念も出てきた。識者は、新たな劇場型に備えるためには都道府県警の密接な連携が不可欠と訴える。
 「グリコの せい品に せいさんソーダ いれた」。脅迫事件では、報道機関などにタイプライターで作った挑戦状や脅迫状が送り付けられた。犯人側は子どもや女性の肉声テープを使って脅迫。警察が手を焼く一方、報道は過熱した。
 「直接マスコミに挑戦状を送る手法で火を付けた」と東洋大の桐生正幸(きりう・まさゆき)教授(犯罪心理学)。「報道が大きくなれば大打撃で、交渉に応じる企業があってもおかしくない。犯人側はマスコミをうまく使って情報戦を制した」と分析する。
 時は流れ、防犯カメラは全国に張り巡らされ、DNA型鑑定など科学捜査も向上した。しかし2012年には他人のパソコンを外部から操作し、犯罪予告を繰り返した事件が発生。「真犯人」を名乗る人物が報道機関などに手口の詳細を記したメールを送り、警察を挑発した。
 最近では、生成AIで岸田文雄首相が性的な発言をしたように見せかけた動画が拡散した。拓殖大の守山正(もりやま・ただし)名誉教授(犯罪学)は「AIを悪用した劇場型犯罪は起こりうる」と指摘。対策のためには「全国の警察で、迅速に情報共有が可能となるような体制の整備と、さらなる連携強化が求められる」と述べた。

グリコ森永事件を巡る経過

 1984年3月18日 兵庫県西宮市の住宅で江崎グリコ社長誘拐
 21日 グリコ社長が監禁場所から自力で脱出
 4月12日 警察庁が広域重要114号事件に指定
 6月28日 丸大食品に5千万円を要求した取引指定日。大阪府警の捜査員が「キツネ目の男」を目撃
 10月 兵庫、京都、大阪、名古屋で森永製菓の菓子に青酸混入
 11月7日 ハウス食品に1億円要求
 14日 ハウス食品取引現場の滋賀県で府警の捜査員がキツネ目の男を発見。滋賀県警が犯人グループの車両を発見するが見失う
 85年8月7日 ハウス事件当時の滋賀県警本部長が焼身自殺
 12日 犯行終結宣言
 2000年2月13日 一連の事件の時効が成立
 24年3月18日 グリコ・森永事件発生から40年

グリコ・森永脅迫事件

 1984年3月18日に兵庫県西宮市で発生した江崎グリコ社長だった江崎勝久(えざき・かつひさ)氏誘拐に始まり、「かい人21面相」を名乗る犯人グループが食品会社を次々と脅迫した事件。警察庁が広域重要114号事件に指定した。犯人は店頭に青酸入り菓子をばらまくなど企業を脅迫する一方で「けいさつの あほども え」などと警察を挑発する挑戦状をマスコミに送るなどして、事件は「劇場型犯罪」と称された。85年8月の終結宣言を最後に犯人の動きが止まった。一連の事件は2000年2月までに時効を迎え、未解決のままとなっている。

(2024/03/17)

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