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一般2024年06月23日 「原点確認する判決」 玉串料違憲27年、不安も 「生きざま×憲法」安西賢二さん 提供:共同通信社

 東京・九段の靖国神社は「国家のために尊い命をささげられた人々の霊を慰め、その事績を永く後世に伝えること」を目的に創建され、太平洋戦争などで戦死した軍人ら約250万人を祭っている。戦前は軍直轄で、戦後は一宗教法人となった。
 東京裁判で戦争責任を問われたA級戦犯14人を1978年に合祀(ごうし)したことから、首相らが参拝すると、中国や韓国が「侵略戦争を正当化する」と反発し、安倍晋三首相の参拝時には、米国も「失望」を表明した。
 ▽自衛隊が集団参拝
 昨年5月17日。海上自衛隊練習艦隊司令官の今野泰樹(こんの・やすしげ)海将補と初級幹部ら計165人が航海に先立って参拝し、社報「靖国」の昨年7月号には、制服姿で社殿へ上がり、頭を下げている集団の写真が掲載された。
 今年1月9日には、陸上自衛隊の小林弘樹(こばやし・ひろき)陸上幕僚副長(陸将)ら22人の参拝も明らかに。一団は、小林氏が委員長を務める陸自航空事故調査委員会の関係者という。
 防衛省・自衛隊はどちらも「私的な参拝」と釈明する。しかし「政教分離」を定める憲法20条の3項は国やその機関の宗教的活動を禁止し、自衛隊は74年の防衛事務次官通達で、宗教上の礼拝所に部隊参拝することや隊員への参加強制は厳に慎むよう求められている。
 こうした自衛隊と靖国神社との結びつきを見聞し、松山市の中心部にある真宗大谷派の専念寺僧侶、安西賢二(あんざい・けんじ)さん(77)は眉をひそめた。
 「真宗の教えでは、死者は仏となるので『霊』を慰めることはない。軍が管理した靖国神社は、戦死者の霊への信仰によって生きている人を従わせ、国家を絶対化していった。靖国と自衛隊が結びつけば、再び戦前のようになりかねない」と危機感を募らせたからだ。
 また慰霊には、その人がなぜ死んだのかということから目を背けさせる効果があるという。「事故の加害企業は早く慰霊祭をしたがるでしょう」
 安西さんはかつて、新聞報道をきっかけに、靖国の祭事への公費支出を巡り、約15年も裁判闘争を続けた。
 ▽高裁で逆転敗訴
 共同通信から記事の配信を受ける新聞は82年1月30日の朝刊で青森、岩手、山形、栃木、愛媛、熊本、鹿児島の7県が長年にわたり、公費で靖国神社に玉串料などを支出し、自治省(現総務省)が「憲法上問題がある」と一部の県に再考を求めたと報じた。玉串料は、神前にささげる玉串(サカキの枝に紙や麻を付けたもの)の代わりに納めるお金のことをいう。
 翌2月、愛媛県では、安西さんや弁護士、学者らが「靖国の国家護持に反対する愛媛県民の会」を結成。靖国神社の玉串料などに加え、愛媛県護国神社の祭事への公費支出も、憲法20条3項と89条でそれぞれ禁止された宗教的活動と宗教団体への公金支出に当たり違法として、県に監査請求したものの、退けられた。
 そこで同年6月、安西さんらが原告となって白石春樹(しらいし・はるき)知事らに対し、81年以降に両神社へ支出した公費を県に賠償するよう求める訴訟を起こす。「愛媛玉串料訴訟」と呼ばれる。原告団長には安西さんが就いた。
 愛媛以外の6県が靖国神社などへの公費支出を取りやめたのに対し、白石知事は続けたため、賠償請求額は86年までの計16万6千円となった。
 提訴後は「遺族のつらさや苦しさが分かるか」「坊さんは英霊を慰めるものだ」「松山から出て行け」などと専念寺に抗議電話が相次ぐ。安西さんはまじめに対応し、議論が数十分に及んだこともしょっちゅうだった。
 一方で励ましの電話もあった。また真宗が戦争に協力し、専念寺でも戦死した軍人の法名に「顕忠院」「殉国院」「忠勲院」などの院号を与えていたことを知り「真宗が戦争に加担した責任を取りたい」と考えていた。
 一審松山地裁は89年3月の判決で支出を違憲と認め、白石氏に16万6千円の賠償を命じたが、92年5月の二審高松高裁判決で逆転敗訴となった。
 ▽宗教目的と効果認定
 安西さんら原告が上告し、終審の最高裁へ。ただ最高裁大法廷は77年7月の判決で、憲法20条3項が禁じる国や自治体の宗教的活動は「目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為」とする政教分離の判断基準を示していた。
 「目的効果基準」と呼ばれ、判決は神式で行われた津市体育館の起工式(地鎮祭)への公金支出は違憲か合憲かが争われた「津地鎮祭訴訟」の上告審で言い渡された。
 白石氏ら玉串料訴訟の被告は二審判決と同様、両神社への県費支出は、戦没者の慰霊と遺族の慰謝という世俗的な目的の社会的儀礼とし、目的効果基準の宗教的意義を否定した。
 一方、安西さんたちは「戦没者の霊は靖国にいると考えること自体が信仰であり、宗教的意義を持つ。遺族の慰謝を名目とした公金支出は他の宗教には与えられない援助だ」などと主張した。
 97年4月の最高裁大法廷判決は「違憲」。明治以来の国と神道の密接な結びつきによる弊害に言及した上で、玉串料などへの公金支出は宗教的意義を持ち、両神社への援助、助長、促進になると認めた。白石氏に対する県への賠償命令は確定したが、判決の3日前に死去していた。
 寺に生まれ、保守的な雰囲気の中でボーイスカウトに入っていた安西さん。大谷高校、大谷大学・大学院へと進み、真宗の教えとともに、戦争に加担したことや靖国の問題を学んだ。裁判中に門徒120軒のうち数軒を失ったが、最高裁判決後の会見で「憲法の原点を確認するような歴史的判決が出たことをうれしく思う」と胸を張った。
 勝訴から約27年。77年から続けてきた専念寺の住職を2018年に長男に譲った。「私たちが目指す浄土は、多様性を認め合う世界。それには共感が集まるが、自衛隊が靖国に集団で参拝しても反応が弱く不安だ」と話す。(共同通信編集委員 竹田昌弘)

原告敗訴も違憲判断2件 小泉首相の靖国参拝訴訟

 2001~06年に小泉純一郎首相は毎年1回、靖国神社に参拝した。このため、全国各地で「政教分離」を定める憲法20条3項と89条に反する違法な参拝で精神的損害を被ったなどとして、賠償請求訴訟が起こされた。
 原告に「法律上保護される利益の侵害がない」などとして憲法判断に踏み込まない訴訟も多かったが、福岡地裁は04年4月の判決で「目的効果基準」に基づいて検討。参拝は「一般人から宗教的意義を持つものと捉えられ…靖国神社を援助、助長、促進する」として違憲と判断した。
 05年9月の大阪高裁判決も、参拝は「祭神を畏敬崇拝する宗教的意義の深い行為」「国が靖国神社との間にのみ意識的に特別の関わり合いをもったというべきで…特定の宗教に対する助長、促進になる」としてやはり違憲と認定した。
 ただ福岡地裁と大阪高裁は利益の侵害を認めず、原告は敗訴している。

(2024/06/23)

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