厚生・労働2024年09月08日 保育士不足、解消遠く 賃上げや働き方改革必要 待機児童最少 提供:共同通信社
希望しても認可保育所などに入れない待機児童は、4月時点で過去最少の2567人だった。前年比113人減で、7年連続の減少となった。少子化や保育の受け皿整備が進んだためだ。今後は保育の質の向上に課題が移る中、現場を支える保育士は不足したままで解消への道は遠い。賃金引け上げや負担軽減に向けた働き方改革が必要となる。
▽命に関わる
「人員の補充はない」。東京都内の認可保育所で働く30代の女性保育士は職場の内情を打ち明けた。うつなど心の病で同僚の休職が相次いでいる。
仕事はシフト制で、1人当たりの仕事は増加。食事などアレルギーのある子どもへの対応や、乳幼児突然死症候群のリスクが高まるうつぶせで昼寝をしていないかなどの観察―。「命に関わる業務は多く、負担は大きい」。ぎりぎりの人員で気が抜けないと話す。
2026年度から全国で「こども誰でも通園制度」が始まる。6カ月~3歳未満の保育所などに通っていない子どもが対象。親の就労に関係なく、必要なときに預けてもらおうという仕組みで保育サービス拡充の柱だ。
東京都にある別の認可保育所「はぁもにぃ保育園」の山下真由美(やました・まゆみ)園長(45)は「毎日登園するわけではないので、子どもの様子や特徴をつかむのが大変そうだ」と話す。現場にとっては、仕事の負担が増える。
▽3・54倍
全国の待機児童は、ピーク時の17年の2万6081人から10分の1以下に減少。受け皿の整備が進み、17年の計3万2793カ所から24年には7012増の計3万9805カ所と大幅に増えた。
一方、保育士不足の解消は進んでいない。政府によると、仕事を探す1人に、求人が幾つあるかを示す有効求人倍率は、17年から全職種平均が1倍台であるのに対し、保育士は2~3倍台程度で推移。24年1月は3・54倍となった。
背景には、責任の重さや多岐にわたる業務に加え、それに見合わない賃金が指摘される。役職者を除いた全産業の平均月収(23年)は36万9千円で、保育士は32万1千円にとどまる。政府は処遇改善策を進めてきたものの、依然差は大きい。
人手が足りず心身共に保育士に余裕がなくなれば、子どものけがや事故のほか暴力など「不適切保育」を招きかねない。
▽潜在107万人
政府が当て込むのは、資格はあっても保育所などで働いていない「潜在保育士」。資格を持つ登録者約173万人(21年)のうち、潜在保育士は約107万人に上る。
24年度から潜在保育士の復職支援を強化。クラス担任を持たずに保育士の業務をサポートする「保育補助者」として雇用した場合、保育所に補助金を支給する。補助者として慣らし期間を経て、本来の保育士として働いてもらいたい考えだ。
「保育園を考える親の会」顧問の普光院亜紀(ふこういん・あき)さんは「不規則なローテーション勤務などが原因で、結婚や出産を機に辞める保育士は多い」と指摘。「人材確保や保育の質の向上には、賃上げや働き方改革を両輪で進めることが必須だ」と話す。
(2024/09/08)
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