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医療・薬事2020年03月14日 新型コロナ特措法成立 首相が「緊急事態」判断 外出自粛、休校要請など 私権制限に懸念 提供:共同通信社

 新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が13日午後、参院本会議で、自民、公明両党と立憲民主、国民民主、日本維新の会、社民各党などの賛成多数で可決、成立した。14日に施行。全国的かつ急速なまん延で、国民生活や経済に甚大な影響を及ぼすと首相が判断すれば緊急事態宣言を出し、都道府県知事が外出自粛や休校措置を要請できる。野党内には宣言すれば、国民の私権制限につながりかねないとの懸念も出ている。
 共産党、れいわ新選組は採決で反対した。政府は専門家の意見を踏まえ、感染拡大の状況を見極めて緊急事態宣言の必要性を判断する方針。与野党は付帯決議に、宣言する場合は原則として国会へ事前報告するとの項目を盛り込んだ。
 菅義偉官房長官は記者会見で、緊急事態宣言について「現時点では、直ちに出すような状況ではない」と説明。改正法成立を受け、安倍晋三首相は14日夕に官邸で記者会見する。
 成立に先立ち、13日の参院内閣委員会で、参考人として出席した同志社大の川本哲郎教授(刑事法)は緊急事態宣言の発令要件が不明確だと指摘した。
 改正法は、2013年施行の特措法の適用対象に新型コロナウイルス感染症を暫定的に追加する内容。期間は政令により施行日から2年を経過する日までの間で定める。政府は21年1月末までと決めた。
 緊急事態が宣言されれば(1)興行施設の利用制限の要請・指示(2)土地や建物を臨時医療施設に強制使用(3)緊急物資の輸送の要請・指示―も可能となる。生活関連物資の価格安定措置を促す規定や、ワクチンが開発された場合に公費負担による予防接種の仕組みもある。
 政府は世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症を「パンデミック(世界的大流行)」と表明した後も発令する状況にないとの立場を維持している。

改正特措法の要旨

 改正新型インフルエンザ等対策特別措置法と付帯決議の要旨は次の通り。
 ▽目的
 新型インフルエンザなどに対する対策の強化を図り、国民の生命、健康を保護し、国民生活と経済に及ぼす影響を最小にする。
 ▽対象
 新型インフルエンザなどを対象と規定する特措法に、新型コロナウイルス感染症を暫定的に追加。期間は施行日から2年を経過する日までの間で、政令で定める。
 ▽行動計画
 国や自治体は行動計画を、公共機関は業務計画を作成する。
 ▽備蓄
 行政機関や公共機関は必要な医薬品、物資などを備蓄する。
 ▽体制
 首相は政府対策本部を設置し、行動計画に基づいた基本的対処方針を作成する。
 ▽緊急事態宣言
 一、政府対策本部長(首相)は全国的かつ急速なまん延で、国民生活や経済に甚大な影響を及ぼすなどと判断すれば、緊急事態を宣言できる。
 二、緊急事態宣言を受け、都道府県知事は(1)不要不急な外出の自粛要請、休校や興行施設の利用制限などを要請・指示(2)必要な物資の売り渡し、土地使用の要請―などを実施できる。医療機関が不足する場合は臨時医療施設を開設する。政府関係金融機関は特別融資を行う。
 ▽付帯決議(衆参の内閣委員会で採択)
 緊急事態宣言をするに当たっては、やむを得ない場合を除き、国会へ事前に報告する。

改憲の呼び水にするな 識者談話

 東大の石川健治(いしかわ・けんじ)教授(憲法)の話 新型コロナウイルスへの初期対応であれば、改正前の法律で可能だったはずだ。政府による休校やイベント自粛の唐突な要請に法的根拠を後付けするための改正と言える。過度の人権侵害の恐れなど緊急事態宣言の問題点は見直されず、権力の暴走に歯止めをかけるための議論はほとんどなかった。それどころか国会からお墨付きを与えられ、より宣言を発令しやすくなったのではないか。自民党は、内閣が法律に代わる政令を制定できるようにする緊急事態条項を盛り込む改憲を目指している。感染症対策とは別の話で、今回の法改正が改憲の呼び水になってはならない。

人権制約できる「劇薬」 識者談話

 東大の宇野重規(うの・しげき)教授(政治学)の話 基本的人権を制約できる緊急事態宣言は、法の支配に穴をあける「劇薬」だ。行使するのであれば、緊急事態の定義をより明確にし、権利制限の具体的な内容や期間を慎重に判断することが求められる。恣意(しい)的な運用を防ぐためには、経緯や責任の所在を事後検証する仕組みが重要だが、十分な議論がされていない。現在の自粛ムードの広がりは、疫学的根拠よりも政府の要請に基づいて横並びを求める社会的な圧力に呼応した動きに思える。国民は緊急事態宣言を漫然と受け入れず、人権が制限されることの重大性を理解する必要がある。

適正運用、監視が必要 識者談話

 感染症と人権問題の関係に詳しい川本哲郎(かわもと・てつろう)同志社大教授(刑事法)の話 世界的に感染が広がる中、法改正は有効な策と言える。ただ、緊急事態宣言は多くの私権制限を伴い、最後の手段として発動されるもの。メディアや専門家は、宣言に基づく要請や指示が適正に運用されているか監視すべきだ。政府は不服申し立てや、損害補償について具体的な制度を設ける必要がある。2012年に新型インフルエンザ等対策特別措置法の国会審議の際、こうした問題を訴えたが、今回の法改正には反映されなかった。一過性の問題という認識を改めるべきだ。

危機に対処、当然の対応 識者談話

 元外交官でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦(みやけ・くにひこ)氏の話 首相に緊急事態宣言を出す権限が与えられたことは評価できる。トップがこのような権限を持たない主要な国はなく、危機対処の観点から当然の対応と言える。改正法の成立は遅いぐらいだ。宣言には乱用の恐れも否定できないが、今回に限らず、民主主義国家には公共の福祉と基本的人権とのバランスを取ることが常に求められている。今後は、厚生労働省や医療専門家と、警察や自衛隊といった危機管理部門との役割分担、指示系統のシステムを整える必要がある。

送り手としての自覚を 佐藤卓己・京都大教授

 京都大の佐藤卓己(さとう・たくみ)教授(メディア史)の話 新型コロナウイルスに関しては専門家の意見も分かれており、正しい情報がはっきりしない中で合意形成をしなければならない。大幅な私権の制限を可能にする改正法が成立し、政府が明確な科学的根拠もないまま情報統制を強化すれば、国民の政府への不信感は高まるだろう。一方、政府の対応を批判するマスメディアや野党にも、確固とした根拠があるわけではない。不特定の人が情報発信するインターネット社会で、私たち国民は情報の単なる受け手でなく、送り手でもあるという自覚と責任を持って、曖昧な情報の中から真実を「構築」する覚悟が求められている。

(2020/03/14)

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