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行政2025年03月27日 SNS選挙規制、検討明記 偽情報、2馬力防止に対策 改正公選法成立 提供:共同通信社

 選挙ポスターに品位保持規定を新設する改正公選法が26日、参院本会議で自民、立憲民主両党などの賛成多数により可決、成立した。法律の付則には、交流サイト(SNS)上の偽情報拡散や、他候補の当選目的で立候補する「2馬力」行為の防止を念頭に、対策を検討し「必要な措置」を講じると明記した。ポスター規制は公布から1カ月後に施行され、6月の東京都議選や夏の参院選に適用される見通しだが、付則部分の具体化は今後の課題となる。
 ポスター規制は昨年7月の都知事選で、同一ポスターが選挙掲示板に多数張られた問題を受け「民主主義の手続きが損なわれた」として、与野党内で危機感が高まり、法改正に着手した。
 11月の兵庫県知事選では、真偽不明の情報拡散や2馬力行為といった新たな問題も表面化。規制の在り方を協議したが、憲法21条の「表現の自由」に抵触しかねないとの懸念もあり、引き続き検討すると付則に記した。
 自民は都議選と参院選までに偽情報と2馬力対策の中間報告を取りまとめ、方向性を示す考えだ。SNS運営事業者に対し、選挙を巡る誹謗(ひぼう)中傷などの投稿を迅速に削除するよう求める提言を26日に公表。選挙中の偽情報拡散に関し「民主主義の危機」と懸念を表明した。
 林芳正官房長官は記者会見で与野党協議の議論を注視すると強調した。
 改正公選法は、ポスターに他人や他の政党の名誉を傷つけ、品位を損なう内容を記載してはならないと定め、候補者氏名の明記を義務付けた。ポスターを使い特定商品を宣伝した場合は100万円以下の罰金を科す。
 参院本会議の採決では、れいわ新選組と参院会派「NHKから国民を守る党」が反対した。
 ポスター規制とは別に、選挙ごとに異なっていたポスターの規格を「長さ42センチ以内、幅40センチ以内」とする改正公選法が全会一致で成立した。

改正公選法ポイント

 改正公選法のポイントは次の通り。
 一、選挙ポスターに品位保持規定を新設。候補者氏名の明記義務付け。
 一、ポスターを使い特定商品を宣伝した場合は100万円以下の罰金。
 一、ポスター規制は公布から1カ月後に施行。6月の東京都議選や夏の参院選に適用される見通し。
 一、交流サイト(SNS)上で拡散する偽情報や「2馬力」行為を念頭に、対策を検討し「必要な措置」を講じると付則に明記。具体化は今後の課題。

改正公選法要旨

 改正公選法の要旨は次の通り。
 【ポスター規制】
 一、公職の候補者は、掲示板に張る選挙運動用ポスターに、他人や他の政党、その他の政治団体の名誉を傷つけ、善良な風俗を害し、特定商品の宣伝をするなど品位を損なう内容を記載してはならない。
 一、ポスターには、ポスターを使用する公職の候補者の氏名を有権者に見やすいように記載しなければならない。
 一、ポスターを使って特定商品の広告、その他の営業に関する宣伝をした場合は100万円以下の罰金を科す。
 【付則】
 一、公布から1カ月経過した日から施行。
 一、選挙に関するインターネット利用や、候補者間の公平の確保など最近の選挙を巡る状況に対応するための施策の在り方について、引き続き検討を加え、結果に基づき必要な措置を講じる。
 【ポスター規格】公職の候補者が選挙運動のため使用するポスターの規格は、全ての選挙で長さ42センチ以内、幅40センチ以内に統一する。2026年1月1日から施行。

「表現の自由」と均衡課題 改正公選法成立

 【解説】公選法改正は、昨年露呈した選挙上の問題への対応に一歩踏み出した。しかし交流サイト(SNS)上の偽情報拡散や「2馬力」行為への規制を具体的に検討するのはこれからだ。憲法21条が保障する「表現の自由」や「政治活動の自由」とバランスを取れるのか、難しい課題となる。
 憲法21条は「集会、結社および言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」とうたう。昨年、他陣営への妨害行為があったとして政治団体「つばさの党」の代表らが公選法違反(自由妨害)容疑で逮捕された一方、偽情報や2馬力行為は従来想定していない事態だった。昨年7月の東京都知事選や11月の兵庫県知事選で新たに問題提起された形だ。
 SNSの急速な普及で表面化した選挙への影響。今春には情報流通プラットフォーム対処法が施行されるが、選挙に関連した悪質な投稿があっても即日削除できるわけではない。
 公選法1条は、公明で適正な選挙の実施により「民主政治の健全な発達を期する」と明記している。表現の自由を守りながら、公正な選挙をいかに担保するのか。国会の論議に託される。

SNSで動画拡散、デマも 視聴者注目、結果に影響

 選挙戦で交流サイト(SNS)の存在感が強まっている。昨年の東京都知事選や兵庫県知事選では長さ数十秒ほどの「ショート動画」や「切り抜き動画」が拡散し、デマ情報も飛び交った。投稿者は視聴者の注目を引くため、内容と関係のないタイトルを付けることもあると証言。識者は選挙結果に与える影響を踏まえ、SNS利用について法改正が必要だと指摘した。
 「実際にはない発言や過度に対立をあおる文言を、動画のタイトル画面や見出しに入れることは珍しくない」。切り抜き動画をユーチューブに投稿している男性は話す。
 男性によると、街頭演説や議会答弁を取り上げる「政治系」の動画は2023年ごろから人気に。公開された動画から機転の利いたやりとりや攻撃的な発言を抜き取り、「サムネ」と呼ばれる見出しを付ける。男性は「100万回近く再生されると数十万円を得ることもある」と明かす。
 SNSの運営会社は再生回数に応じ、投稿者に広告収益を配分する。視聴者が多くの時間をSNSで費やすほど、広告収入が増えて収益が膨らむためだ。再生回数が増えるかどうかが優先され、情報の質は二の次になりがちだ。
 選挙情報サイト「選挙ドットコム」が兵庫県知事選関連のユーチューブ動画の再生回数を調査すると、計1億8千万回以上となり、約3割が政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志(たちばな・たかし)氏と関連の切り抜き動画だった。サイトを運営するイチニ(東京)の高畑卓(たかはた・すぐる)社長は「動画は選挙結果に影響を与えた」とみる。一方で100万回以上再生された動画を投稿している人はごく一部だと指摘。「収益化目的以外に、注目を集めたいとか自分の主張を知ってほしいという理由で投稿している人が多いのではないか」と分析する。
 インターネットと選挙の関係に詳しい明治大の湯浅墾道(ゆあさ・はるみち)教授(情報法)は「閲覧回数を増やすため過激な内容や真偽不明の情報をSNSに投稿することを放置すると、有権者の投票行動に大きな影響を及ぼす恐れがある。SNSの利用拡大に合わせて公選法も改正する必要がある」と指摘している。

偽情報対策の検討急ぐ 与野党、活動制約に配慮

 選挙ポスターに規制を設ける改正公選法の成立を受け、与野党からは26日、課題として残る交流サイト(SNS)上の偽情報対策について、規制を含めた検討を急ぐべきだとの声が相次いだ。選挙活動を制約しないよう、配慮を求める意見も上がった。
 自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長はインターネットがデマや中傷の拡散に使われる状況にあり「公正な選挙が保たれ、民主主義に資する在り方を実現しなければならない」として、SNSの適正な活用を訴えた。
 立憲民主党の重徳和彦政調会長は「選挙活動の自由度をどこまで制約できるものなのか」としながら、偽情報や他候補の当選を目的として立候補する「2馬力」行為対策の必要性に言及した。
 国民民主党の川合孝典幹事長代行は今回の改正は緊急的な措置だとした上で「選挙関連のSNS発信で、収益を得られないようにする縛りが大事だ」と主張した。
 公明党の岡本三成政調会長は表現の自由を守りつつ、偽情報対策などで必要な法整備があれば対応する考えを表明した。日本維新の会の岩谷良平幹事長も選挙活動の自由とのバランスを考慮しながら、対策を議論する意向を示した。
 参政党の神谷宗幣代表は選挙でネットを活用してきたとして「過度な規制をかけられると困る」と語った。

自民、SNS事業者を聴取 選挙中の偽情報対策で

 自民党は26日の選挙制度調査会などの合同会議に、複数の交流サイト(SNS)運営事業者を招き、選挙期間中に偽情報の拡散を防ぐためにどのような対処をしているのか、意見聴取した。事業者は、動画投稿サイト「ユーチューブ」を運営するグーグル、X(旧ツイッター)、LINEヤフーの3社。
 逢沢一郎選挙制度調査会長は会合後、事業者側の発言内容を明らかにしなかったものの「社によって相当な違いがあるという印象を多くの議員が持ったかもしれない」と記者団に語った。
 SNS規制に関しては「表現の自由との見合いの中で、技術的にかなり難しい部分もある」と述べた。出席議員からは誹謗(ひぼう)中傷を巡り「誰の発信なのか全く分からないという状況に、強い問題意識を持っている」との意見が出たという。

SNS規制、慎重検討を 識者談話

 一橋大大学院の只野雅人(ただの・まさひと)教授(憲法学)の話 選挙ポスターの品位保持規定は内容を直接規制するものにはなっていない。今夏に東京都議選と参院選を控える中で早期に最小限の範囲で「抜け穴」をふさいだといえる。掲示に巨額の公費が投入されている点を踏まえれば、特定商品の広告や営業に関する宣伝をして収益を上げようとする行為に罰則を設けた点はやむを得ない。一方、付則の交流サイト(SNS)利用の規制は表現の自由に踏み込むことにつながりかねない。他候補の当選を目指す「2馬力」行為も、その言動が誰のためになっているかを特定することは難しい。引き続き慎重な検討が必要だ。

違憲と合憲の垣根、曖昧に 識者談話

 日本大の安野修右(やすの・のぶすけ)専任講師(選挙制度論)の話 選挙ポスターの内容が品位を損なうかどうかを判断する基準は曖昧になりがちだ。公選法による規制は判例で「国会の立法裁量の範囲内」とされてきたが、制限を加える規定自体が憲法違反に当たるのではないかとの論点は昔からある。今回の改正は違憲と合憲の垣根をさらにあやふやにするという点で望ましくない。一方、偽情報の拡散や対立候補に対する誹謗(ひぼう)中傷のような不正行為には刑法で対応するべきで、刑法犯に類する行為の罰則規定を強化することは対症療法として有効だ。候補者とのいたちごっこで制限を細かく増やしても効果はないだろう。

改正公選法を巡る経過

 改正公選法を巡る経過は次の通り。
 2024年7月 東京都知事選で、同一ポスターが選挙掲示板に多数掲示
 9月 ポスターに品位保持規定を新設する規制案に与野党5党が合意
 11月 兵庫県知事選で、他候補の当選目的で立候補する「2馬力」行為が問題化。交流サイト(SNS)では真偽不明の情報拡散
 25年1月17日 兵庫県選挙管理委員会が、2馬力行為の禁止など適正な選挙を実施するための法整備を総務省に要望
 2月20日 与野党がポスター規制の公選法改正案を衆院に提出。付則で2馬力行為や偽情報対策を念頭に「必要な措置」を講じると明記
 3月4日 公選法改正案が衆院通過
 26日 改正公選法が参院本会議で可決、成立

法律の付則

 法律の実質的な定めを書き込む条文を「本則」と呼ぶのに対し、付随的な事項を示す条文を「付則」と言う。施行期日、新制度移行への経過措置、関連法令の改廃などが規定される。「施行5年後に在り方を見直す」などと将来の検証、検討を担保する見直し条項が設けられるケースも多い。付則は本則と同様に法的拘束力を持つ一方、本則よりも特例的、暫定的な色合いが濃いとされる。国会の委員会による付帯決議は、意見や要望を表明するもので、法的拘束力がない。

2馬力選挙

 本人ではなく、他候補の当選を目的に選挙に立候補することを指す。昨年11月の兵庫県知事選で、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が、斎藤元彦氏を応援する目的で出馬した。兵庫県選挙管理委員会は、こうした行為を禁止し、適正な選挙を実施するための法整備を求める要望書を総務省に提出。19府県の知事が連名で緊急提言をまとめた。石破茂首相は2月の衆院予算委員会で「どう考えてもおかしい」と述べ、法改正の必要性に言及している。

(2025/03/27)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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