金融・証券2025年04月03日 地銀再編交付金、延長へ 金融庁、5年軸に検討 存続支援、コロナで創設 提供:共同通信社

金融庁が、地方銀行や信用金庫が合併を含めた再編をした際に利用できる交付金の申請期限について、延長する方向で調整していることが2日、分かった。2021年に新型コロナウイルス禍で打撃を受けた地域経済を支えるために創設し、既存の制度の申請期限は26年3月末となる。延長期間は5年を軸に検討する。来年の通常国会で関連法案の提出を目指す。
地銀の経営環境が厳しくなる中、地域での存続や成長に向けた取り組みを継続的に支援する考えだ。
交付制度は地域金融機関が経営統合や合併などに踏み切る際、必要な費用を政府が一部負担する仕組み。金融機関の計画に基づき、政府系の預金保険機構を通じて再編に必要な費用全体の3分の1を支給する。上限は30億円。
制度の延長に向けては、交付上限額の引き上げなども視野に入れる。近く既存の制度を活用した地銀からの意見を聞くほか、自民党の金融調査会などと調整して詳細を詰める。金融機能強化法を改正するとみられる。
足元では地域の人口減少に加えて、日銀の金融政策の正常化に伴い金利が上昇傾向にある。金融庁は今後も金融機関が経済環境の変化に対応して、経営基盤を強化する動きがあると想定する。
交付制度は創設以降、地銀の大型再編に活用されている。金融庁がこれまでに交付金対象として認定したのは、青森県を地盤とする青森銀行とみちのく銀行、愛知県が地盤の愛知銀行と中京銀行(行名はいずれも認定当時)の再編計画などがある。計150億円以上の交付金を決定している。
人口減、相次ぐ合従連衡 経営トップの決断後押しも
地方銀行業界では合従連衡が相次いでいる。地域の人口減少が背景にあり、単独ではなく他社と協業することで生き残りを図る考えだ。ただ、合併などの大きな再編は多大な労力がかかり、踏み出しにくい側面がある。交付金の制度が延長、拡充されれば、地銀トップの決断を後押しする可能性がありそうだ。
足元では競合他社の株式を取得したり、隣り合う地域で業務提携を結んだりする地銀が目立つ。千葉銀行は3月、ライバルだった千葉興業銀行の株式約20%を投資会社のありあけキャピタル(東京)から取得したと発表。比較的、人口減少の懸念が小さい首都圏であっても、足場を固める必要性が増している。
資本が交わらない提携もある。長野県を地盤とする八十二銀行と、静岡銀行、山梨中央銀行は包括業務提携を締結。3行で相乗効果を創出し、実利を追求する。
ただ、3行のトップは現時点での経営統合については否定した。3月に開いた記者会見で八十二銀の松下正樹(まつした・まさき)頭取は「(これまでの経験から)合併や統合は大変だ」と説明。互いのシステムが異なるといった課題もあり、効果を出そうとしても時間がかかるという。
交付金制度は、合併に伴うシステムの整備などでも利用できる。政府支援が充実すれば、業界再編の呼び水としての効果をもたらすとみられる。
金融機能強化法
経営統合や合併などを行う金融機関に交付金を出す制度を盛り込んだ法律。金融機関が機能の維持に向けた「実施計画」を金融庁に提出、認定を受けると預金保険機構から統合・合併といった費用の一部の交付を受けられる。金融庁は計画の履行状況を定期的にモニタリングする。同法律では交付金制度とは別に、金融機関への公的資金の注入についても定めている。
(2025/04/03)
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