経営・総務2025年05月07日 中小苦戦、問題意識強く トランプ関税に懸念 日銀賃金調査 提供:共同通信社

日銀が独自に企業の賃金調査を始める。賃金と物価がそろって上昇する好循環の実現を日銀が目指す中、労組がなく連合による集計の対象から外れている中小企業の賃上げが弱いとの強い問題意識がある。地方からは賃上げに苦戦する声も上がっており、トランプ米政権の関税強化により業績が悪化すれば、賃上げの抑制につながる懸念もある。日銀はきめ細かく賃金動向を把握した上で、金融政策を慎重に判断する構えだ。
▽格差拡大
「世間で言われているような高めの水準の賃上げを継続的に行っていくことは難しい」「大都市圏の企業との賃金格差はむしろ拡大を続けている」。日銀が4月に発表した地域経済報告(さくらリポート)では、原料価格や人手不足による人件費の高騰を受け、地方の企業などから賃上げに苦慮する声が相次いだ。
賃上げ水準は企業の立地や規模のほか、労働組合の有無にも左右される。厚生労働省によると、労組のある企業の2024年の賃上げ率は4・5%で前年比1・1ポイント増加。一方、労組のない企業は3・6%で0・5ポイント増にとどまった。
賃上げ率の差は1ポイント近くとなり、内閣府によると比較できる1999年以降で最も差が大きく、労組がない企業が賃上げの波に乗り遅れている実態が浮き彫りとなった。大企業と比べ、労組がないことが多い中小企業も賃上げ率が低い傾向にある。
▽価格転嫁
米国の関税強化策も賃上げへの冷や水となりかねない。企業が米国への出荷を維持するために関税分を自社で被ったり、仕入れ先などに広く負担を求めたりすれば、人件費にしわ寄せが及ぶ恐れがある。
日銀の植田和男(うえだ・かずお)総裁は1日の金融政策決定会合後の記者会見で、関税によって企業収益にマイナスの影響が出れば「冬のボーナスや来年の春闘に影響を及ぼす可能性がある」と指摘し、警戒感を示した。
内閣府が2月に公表した24年度の国内外経済に関する報告書では、「中小企業が賃上げを進めやすい環境を整備することが重要だ」と指摘。デジタル化や自動化などの投資によって生産性を向上させるとともに、人件費上昇分の価格への上乗せをさらに進めていくべきだとしている。
(2025/05/07)
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