建設・運輸2025年06月10日 海外館建設、未払い相次ぐ 業者悲鳴「被害者の会」も 協会、関与に及び腰 提供:共同通信社

大阪・関西万博で、海外パビリオンの建設を請け負った国内の下請け業者に、発注元から工事費用の一部が支払われていない事例が相次いでいる。日本国際博覧会協会(万博協会)や大阪府は「民間同士の契約」として関与に及び腰。業者からは悲鳴が上がり「被害者の会」をつくる動きまで表面化した。
「一見単価が良い仕事に見えたが、絵に描いた餅だった」。欧州のある国のパビリオン建設を請け負った関西地方の業者担当者はため息をつく。
元請けの外資系イベント企業から、毎日のように追加工事や、素材や工法の変更を求められ、新たに特注品を発注したり、建築確認審査のやり直しで工事を待たされたりした。だが元請けは、工期遅れは「ペナルティー」だと主張。金額交渉が長引き、約1億円の支払いが遅れている。その影響で自社の下請けへの入金も滞っている状態だ。
もともと中堅ゼネコンが辞退したため依頼された工事だといい「大手がリスクを回避し、中堅がさじを投げた仕事が中小に回ってきた」と嘆く。
別の欧州海外館の1次下請け業者も、元請けの海外企業と未払い金の交渉中だ。メンテナンスや解体を含む契約をしていたが「だまされた気分だ」とこぼす。
万博協会によると、海外館建設に関する未払いの相談は少なくとも3件寄せられている。高科淳(たかしな・じゅん)副事務総長は2日の記者会見で「強制的に捜査する権限がなく、当事者間の解決が一番」と説明。情報収集や対話の場の設置により支援する考えを示したが、問題解決を主導できるかどうかは見通せない。
海外館は万博開幕前、施工業者との契約難航が響き、建設遅れに直面していた。建設経済研究所の木下茂(きのした・しげる)専務理事は、下請け業者は突貫工事をせざるを得ない状況で、海外企業相手に公平な契約交渉をすることは難しいと強調。「万博協会が契約書のひな型を作るなどの働きかけをすべきだった」と指摘する。
アンゴラ館を巡っては、4次下請け業者の男性が5月30日に府庁で記者会見し、内装工事の発注を受けた大阪市の業者から4千万円超が未払いだとして、協力会社と「被害者の会」を設立したと明らかにした。開幕に間に合わせるため昼夜問わず働いたといい、男性は「民間同士の問題だと突き放されると胸が痛い」と涙ぐみ、府や万博協会に救済を求めた。
(2025/06/10)
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