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家族2025年06月11日 成年後見、終身制撤廃へ 期間設定や場面限定利用も 法制審部会が中間試案 提供:共同通信社

 認知症の人らを支援する成年後見制度の見直しを協議する法制審議会(法相の諮問機関)の部会は10日、中間試案を取りまとめた。後見人を途中でやめられない「終身制」は撤廃し、終了規定の新設や、設定期間を過ぎれば終えられる仕組みを提示。特定の場面のみ後見できる案も示した。利用者側の選択幅を広げて制度を使いやすくするのが狙い。パブリックコメントを経て要綱案をまとめ、法務省は来年の通常国会にも民法などの改正案を提出したい考えだ。
 政府の推計では、認知症の高齢者は2025年に471万人で、40年には584万人となる。一方、最高裁によると24年12月末時点の成年後見利用者は前年より約4千人増の約25万人で、伸び悩みが指摘されていた。利用控えを減らし、ニーズの高まりに備える。
 現行法では、後見される本人の死亡か、判断能力が回復するまでは原則として制度の利用が継続する。遺産分割を機にした場合だと、分割協議を終えても本人の死亡までは事実上後見が続く。親族以外に司法書士や福祉関係者が担うこともあり、報酬を支払う負担の継続や、利用者の希望に添わない行為まで代理されるなどの問題があった。
 中間試案では、運用について複数案を提示。本人の判断能力によって厳格に分けている「後見」「保佐」「補助」の3種類を柔軟に利用できる仕組みや、特定の行為に絞って代理権などを個別に付与できる方式を示した。制度利用の必要がなくなったと判断された場合に終了できるようにする規定の追加も提案した。
 期間の設定に関しては、家裁が最初に定めて更新制にする案と、後見人らに利用を続けるべき要件を定期的に報告させ、要件がなくなった場合に終了とする案を示した。
 他にも、後見人らの選任や交代、解任に当たり、本人の意向や利益を重視するとの姿勢を明確化。家裁が設定する報酬額は、本人の財産だけでなく、後見人らの事務内容も基準として明示する。

中間試案のポイント

 成年後見制度を見直す中間試案のポイントは次の通り。
 一、「終身制」を撤廃。不要になれば終了する規定。
 一、最初に期間を定めての更新制や、利用の継続要件を定期的に報告させる案。
 一、判断能力に応じて定める3類型の柔軟利用や、特定の行為に絞った代理権の付与。

後絶たぬ財産管理トラブル 制度硬直性に根強い批判

 成年後見制度を利用する際の大きな障壁とされる「終身制」の見直し方針が10日、法制審議会の部会で打ち出された。後見人による財産管理などを巡るトラブルは後を絶たず、事実上亡くなるまで利用が続く硬直性への批判は根強い。制度の柔軟化につながる方向性を、認知症の支援団体などはおおむね評価する。
 「使い勝手が悪く、極端に利用が少ない」。認知症支援団体のあるメンバーは現行制度を批判した。相続に当たって制度を利用し、手続きが完了したのにずっと後見人は付いたままで「頼ることがなくても報酬は発生し続ける」とこぼす。地方では遠方の人が選任され、めったに会わないこともあるとし「関係を築くのが難しい場合がある」。
 価値観の相違に悩む家族も多いとし、後見開始後の高齢者のために購入したシルクのパジャマについて、後見人が「高い。認められない」と文句を付けたことも。家族が飲食店で認知症の父の誕生会を開いた際、父が自らの意思で全額を支払ったのに「家族分は認められない」と指摘する後見人もいたという。
 このメンバーは「普通の感覚なら認められるはずの支出も問題視される。社会常識と法律論が合っていないのではないか」と述べた。
 NPO法人「成年後見のぞみ会」(東京)の照山忠利(てるやま・ただとし)理事長も、現行の終身制の問題点を指摘する。「後見人とウマが合わない場合でも、死ぬまで付き合わざるを得ない」。法制審部会の中間試案に対し「実現すれば利用が促進される」と期待を寄せた。

高齢化加速、支援ニーズ増 使い勝手悪く利用低迷 Q&A「成年後見制度見直し」

 法制審議会が、成年後見制度の利用促進に向けた制度見直しの中間試案をまとめました。
 Q なぜ見直しの検討が始まったのですか。
 A 成年後見制度は認知症や知的・精神障害などがある人の財産管理や福祉サービスの利用などを、専門家らが支援する仕組みです。高齢化の加速でニーズが増していますが、使い勝手の悪さが指摘されていました。
 Q 制度の利用状況は。
 A 厚生労働省によると、推計400万人超の認知症高齢者に加え、軽度認知障害の人は推計約400万人(2012年時点)、在宅の知的障害者は約96万人(16年時点)と支援が必要な人は多数に上ります。制度利用者は24年末時点で約25万人と「著しく少ない」(同省)のが現状です。
 Q 具体的な課題は。
 A 現行制度は一度開始すると基本的に中止できず「遺産分割の取り決めだけを支援」というように、特定の行為に絞った柔軟な活用が困難だとされています。利用が長期化する中で、後見人が独断で財産を処分したり、着服したりするトラブルも起きていました。
 Q 見直しの方向性は。
 A 法制審の中間試案では、一定期間で制度利用を終えられる仕組みの導入など複数の案が示されました。今後、さらに詳細を議論します。

成年後見制度

 認知症や知的・精神障害などで判断能力が十分ではない人を司法書士、福祉関係者、親族らが後見人となって支援する制度。2000年に禁治産、準禁治産制度を廃止して導入された。本人に代わって預貯金の管理や福祉サービスの利用手続きをしたり、契約を取り消したりできる包括的な代理権があり、日常生活の見守りを担うこともある。本人や家族らが利用を申し立て、家裁が後見人を選定する。身寄りがない場合は市町村長が申し立てるケースもある。

(2025/06/11)

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