民事2025年07月26日 1票の価値、一生かけ是正 弁護士の久保利英明さん 戦後80年インタビュー 提供:共同通信社

第2次世界大戦の最中である1944年に生まれ、71年に弁護士登録した。株主総会にはびこった総会屋対策などの企業法務に取り組んできた。かつては総会に関心が持たれず、総会屋が株主としての権利を振りかざして議事進行を妨害するなどし、不当に金銭を企業側に要求していた。その資金は暴力団に流れるため、警察としても取り締まる必要が生じた。
80年代の総会屋との闘いで生み出したのが「一括上程・一括審議方式」だ。事前質問に一括回答し、総会でも株主からの質問に応じる。その際、議案ごとではなく全ての質問を一括して受ける。こうすれば説明義務を果たした上で民主的な運営を実現でき、2時間程度で終えられると考えた。
90年代後半の商法改正による厳罰化もあって総会屋が鳴りをひそめ、普通の株主が総会で発言できるようになった。それはいいことだが、コーポレートガバナンス(企業統治)とは別の問題だ。企業の業務執行者を監督者である取締役会が監視するのが企業統治だ。
日本企業は取締役会が最高経営責任者(CEO)ら経営陣をしっかりコントロールできていない。本来は重要な役割を担うはずの社外取締役の存在感が乏しいためで、株主が実力ある人物を社外取締役に入れるよう求めていく必要がある。
いまアクティビスト(物言う株主)が活動を活発化させているが、企業が恐れる理由が理解できない。アクティビストは収益を上げて高い株価を実現してほしいと求めており、他の株主も同様の望みを持っている。
経営者はアクティビストの要求の前に、自分たちで株価向上に向け先手を打つべきだ。外圧によってしか経営が変わらないなら、アクティビストの存在は大いに結構だ。ただアクティビストの提案通りに経営して、よい会社になったというモデルが少ないのが問題だ。
企業法務に取り組む一方で、国政選挙の「1票の格差」是正に向け、2009年に「一人一票実現国民会議」を立ち上げ訴訟を続けてきた。国のガバナンスとして1人が持つ1票の価値が違うのはおかしい。株式会社で1単元株につき1議決権の原則が崩れたら総会は無効だ。現状の国政選挙は民主制を毀損(きそん)している。1票の価値を同一にすることを目指し、一生をかけて取り組んでいく。
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くぼり・ひであき 1944年埼玉県生まれ。71年弁護士登録。企業法務を専門とし、第二東京弁護士会会長などを歴任。
(2025/07/26)
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