自治2025年12月03日 ふるさと納税、控除に上限 「金持ち優遇」批判で 政府与党が検討 提供:共同通信社

 政府、与党は、ふるさと納税制度で寄付した際に、住民税から差し引かれる控除額に新たな上限を設ける方向で検討に入った。現在は高所得者ほど控除額が大きく、高額の返礼品を受け取れるため「金持ち優遇」との批判がある。与党税制調査会で議論し、2026年度税制改正大綱に盛り込む方向だ。関係者が2日、明らかにした。
 ふるさと納税は、故郷などの自治体に寄付すると、2千円を除いた額が税から差し引かれる。控除額の範囲内であれば自己負担2千円で、返礼品を受け取れる仕組み。
 控除の対象となる寄付額は、年収や家族構成などに応じて変わる。政府の試算によると現在、年収300万円の場合は年2万8千円の寄付まで。1千万円では18万円、1億円では438万円、10億円では4524万円までとなっており、恩恵が右肩上がりで拡大する。
 高所得者を狙った返礼品も増加。関係者によると、寄付額500万円以上が対象の純金製小判や、3千万円以上のスーツ仕立券もあるという。政府、与党内では「金持ちの節税対策になっている」として、一定の額で歯止めをかけることが必要だとの声が強い。
 都市部の自治体は税収の流出を理由に、控除に上限を設けるよう主張。全国の政令指定都市でつくる指定都市市長会は10月、政令市の住民税の場合は10万円を上限にすることを政府、与党に提案した。
 政府、与党は、ふるさと納税の寄付の半分近くが、返礼品の調達費や事務費になっている点も問題視。募集費用の上限見直しなども検討する方向だ。

寄付拡大で都市の税収流出 対策求める声高まる

 海産物、ブランド牛といった各地の名産品が返礼品として手に入るふるさと納税。寄付総額は右肩上がりで拡大を続けているが、それに伴って大都市からの税収流出も深刻化し、対策を求める声が高まっている。政府、与党が控除額の上限規制の検討に入ったのも、こうした声を踏まえての対応だ。
 総務省によると、2024年度の寄付総額は1兆2728億円で、5年連続で過去最高を更新した。一方、人口が多い大都市では、他の地域への寄付に伴う税収減が大きい。減収幅が最も大きい横浜市は343億円。名古屋市198億円、大阪市192億円と続いた。
 政令指定都市でつくる指定都市市長会は10月、政府、与党に提出した要望書の中で、ふるさと納税に伴う政令市の減収は、全国の市町村の3分の1超を占めていると指摘。「もはや看過できない」として、過度な返礼品競争の是正を訴えた。
 ただ、上限規制を実施した場合は、高額の返礼品を設定できなくなるため、一部の自治体では収入減につながる可能性もある。具体的な上限額については、与党税制調査会が今後議論していく方針だ。

ふるさと納税

 故郷などの自治体に寄付すると、自己負担額2千円を除いた額が、住民税や所得税から差し引かれる制度。2008年度に始まった。24年度の寄付総額は過去最大の1兆2728億円となった。本来の趣旨は地域に貢献するための寄付だが、自治体間で豪華な返礼品による寄付の獲得競争が過熱。総務省は過度な競争を抑えるため、ルール改正を繰り返している。

(2025/12/03)

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