行政2025年12月04日 「紛失防止タグ」対策強化 改正ストーカー規制法成立 警察職権で「警告」可 提供:共同通信社

スマートフォンなどで位置を特定できる「紛失防止タグ」を無断で他人の所持品に取り付けることを規制する改正ストーカー規制法と改正ドメスティックバイオレンス(DV)防止法が3日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。
衛星利用測位システム(GPS)機器の悪用は規制されていたが、タグは対象外だったため対策を強化。加害者への「警告」は、被害者の申し出がなくても警察の職権で出せるようにする。これらの規定は公布から20日後に施行。
タグは落とし物の発見などを目的として、所持品に取り付ける電子機器。近距離無線通信「ブルートゥース」信号を発信しており、タグの周囲にあるスマホが信号を検知して位置情報を取得。持ち主はスマホなどで場所を確認できる。
普及に伴い、ストーカー目的で取り付けられる被害が増加。警察庁によると、2023年の関連相談件数は196件で、24年は2倍近い370件となった。
行政指導の「警告」は、より重い行政処分の「禁止命令」に比べ手続きが簡素で早期に出せる利点がある。被害者が加害者への措置をためらっても、職権で速やかに実施することで行為のエスカレート抑止を図る。
改正ストーカー規制法には、探偵業者など第三者が、加害者に被害者の情報を提供する恐れがある場合、提供しないよう警察が求める規定を新設。被害者の学校や職場に加害者が侵入する事案も発生していることから、地域住民だけでなく被害者の勤務先や学校にも、安全確保などの援助に努めるよう明記した。
改正DV防止法には、裁判所が出す「接近禁止命令」の対象にタグの無断取り付けを加えた。
「いたちごっこ」脱却課題 加害者治療の推進求める声
埼玉県桶川市で1999年に発生した女子大学生殺害事件を受けて2000年に成立したストーカー規制法は、施行後も被害者が命を落とす痛ましい事件が続き、規制行為を加える法改正が行われてきた。専門家などからは、手口を封じるだけでは「いたちごっこ」から脱却できず、加害者を医療機関での治療につなげる施策の推進を求める声が上がる。
法改正は今回で4度目。神奈川県逗子市で女性刺殺事件が起きた翌年の13年には、執拗(しつよう)なメール送信をつきまとい行為と規定した。16年に東京都小金井市で音楽活動をしていた女性が刺傷された事件後には交流サイト(SNS)を利用した一方的なメッセージの連続送信、ブログなどへのコメント書き込みなどを新たに規制対象に加えた。21年には衛星利用測位システム(GPS)などを利用した位置情報の無断取得を規制した。
欧米では加害者に医療機関での治療を義務付ける制度もあり、改正法の国会審議では日本でも踏み込んだ対策が必要との指摘が相次いだ。
警察では昨年3月から同法に基づく「禁止命令」の対象となった加害者全員に連絡し、治療やカウンセリングを受けるよう働きかけを始めた。昨年は全国の警察で3271人に働きかけたが、任意であり、受診した人は184人で全体の約5%にとどまる。治療費の公費負担や、引受先となる医療機関の確保も課題だ。
加害者治療に取り組む「性障害専門医療センター」(東京)の福井裕輝(ふくい・ひろき)代表理事は「警察などが加害リスクを的確に見極め、治療につなぐ体制を整える必要がある。加害者と向き合い、予防的な視点で対策を進めるべきだ」と強調した。
ストーカー規制法
埼玉県桶川市で起きた女子大学生刺殺事件を機に2000年に施行。恋愛感情や恨みの感情を満たす目的で付きまとったり、面会を要求したりする行為を規制する。行為を反復した場合は罰則を科す。警察は同法に基づく行政措置の「警告」や「禁止命令」を実施できる。禁止命令は加害者の聴聞が必要で、命令に反して繰り返した場合はより罰則が重い。17年施行の改正法で警告を経ずに禁止命令を出せるようになり、21年には衛星利用測位システム(GPS)機器を利用した位置情報の無断取得を規制した。
(2025/12/04)
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