民事2025年12月04日 戸籍は同姓維持、反発必至 別姓求める人ら「人格権」 旧姓法制化 提供:共同通信社

婚姻後の旧姓使用を法制化する法案提出に向けた検討を、政府が始めた。改姓で生じる不便さの解消が狙いだが、戸籍に夫婦で同じ姓が記載される点では現行制度と変わりはない。選択的別姓制度を求める人たちは「愛着ある姓を名乗れないのは人格権の侵害であり、根本的解決にならない」と憤る。継続審議となった別姓法案を提出した野党の反発は必至で、議論の先行きは見通せない。
▽人権侵害
「苦しんでいる当事者の気持ちを聞いて議論を進めてほしい」。東京都の黒川とう子(くろかわ・とうこ)さん(52)=仮名=は、政府の方針に絶望感を抱く。結婚の際、慣れ親しんだ名前を変えるのも、それを相手に強制するのも苦痛に感じ、夫の根津充(ねづ・みつる)さん(52)=同=とは18年間、事実婚関係だ。
昨春、別姓で婚姻できる地位確認などを求める訴訟の原告となった。根底には同姓義務づけが人権侵害だとの思いがある。「利便性だけではなく、アイデンティティーの問題だと分かってほしい」。旧姓使用の法制化実現で「『問題は解決した。別姓は少数が言っているだけ』と片付けられないか」との危惧を抱く。
▽けん制
先の通常国会では立憲民主党、国民民主党がそれぞれ選択的夫婦別姓の関連法案を提出し、衆院法務委員会で28年ぶりに審議入りした。自民党は積極派と慎重派で意見が割れて集約が難航、党としての結論を出せなかった。別姓法案は継続審議となったが、開会中の臨時国会で取り上げられる見通しは立っていない。
今回浮上した旧姓使用法制化に、立民幹部は「絶対に乗れない」と断言した。本庄知史政調会長は3日の記者会見で「旧姓使用の拡大自体は否定しない」としつつ「多様な生き方の中で結婚しても名字を選べる選択肢がある社会を目指している」と主張。「まず自民党内、与党内をまとめてもらわないと話が始まらない」とけん制した。
▽解決策
政府方針通りに法制化された場合、現行法に沿って戸籍上は夫婦同姓となる。一方、社会生活は旧姓で続けられるため、一人で二つの名前を使い分けることになる。
桃山学院大の萩原久美子(はぎわら・くみこ)教授(社会政策)は「使えない場面が残ることが想定できる上、使い分けによる悪用や海外でのトラブルのリスクもあり、通称を使用する人への監視強化につながりかねない」と指摘。さらに「改姓による個人の人格権やアイデンティティーの問題は解決しない」として、選択的別姓導入が最適な解決策だと強調した。
戸籍上は同姓、不便解消も 継続法案の審議見通せず Q&A「旧姓使用と別姓」
結婚後の旧姓使用法制化を政府が検討中です。
Q 夫婦別姓制度との違いは。
A 戸籍上の姓が、別姓制度ではそのままですが、旧姓使用の法制化だと夫婦は同じになります。
Q 現在、旧姓使用は認められていないの。
A 2019年11月に改正住民基本台帳法施行令が施行され、住民票やマイナンバーカードに旧姓を併記できるようになりました。
Q 課題は。
A 22年の国の調査によると、銀行の3割が旧姓での口座開設や維持を認めていません。女性活躍を阻む一因ともされ、経団連は選択的別姓の早期実現を求めています。
Q 旧姓使用の法制化でどんな変化が。
A 旧姓に法的効力が与えられるため、金融機関や行政手続きなどで、改姓による不便の解消が期待されます。
Q 別姓制度を求める裁判もあった。
A 最高裁は15年と21年、現行の夫婦同姓規定を「合憲」と判断する一方、いずれも国会で議論するよう求めました。
Q 国会での動きは。
A 立憲民主党などが別姓導入法案を今年の通常国会に提出し、5月に衆院法務委員会で28年ぶりに審議入りしました。現在、継続審議となっていますが、旧姓使用の法制化により、先行きは見通せなくなっています。
(2025/12/04)
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