民事2025年12月10日 「社会実験」渦巻く賛否 子ども保護か権利侵害か 豪SNS禁止法施行 提供:共同通信社

オーストラリアが16歳未満の交流サイト(SNS)の利用制限という「社会実験」(地元紙)に乗り出した。友人との交流から情報収集、事務連絡まで人々の生活に浸透したSNS。世界各地で有害コンテンツから子どもを守る取り組みの模索が続く中、政府主導で対象を線引きした。歓迎の声が上がる一方、「つながりを絶たれる」「権利の侵害だ」といった批判も渦巻く。
▽とんとん拍子
「アルゴリズム(計算手法)に追い詰められることなく、より良い自分を目指しやすくする」。ウェルズ通信相は3日の講演で「法律は完璧ではない」と認めながらも導入する意義を強調した。
依存症、いじめ、性被害、自殺―。SNSが若年層に広がるにつれ、誘発される問題は深刻化していった。「嫌な情報、触れたくない内容が多い」。タスマニア島のフロッシー・ブロドリブさん(12)のように規制に理解を示す子どもも出た。
法整備はとんとん拍子で進んだ。議論は2024年に全国で活発になり、連邦議会で可決後の同12月に法律が成立した。
南東部メルボルンのトリスタンさん(13)は自分のアカウントが削除されることを見越し、つながりを保つための自衛策として、これまであまり使っていなかった携帯電話の番号を友だちと交換した。「みんな交換していた」という。
娘と「SNSは1日2時間まで」と決めている東部ニューサウスウェールズ州の女性は「毎度延長をせがまれるが今後は『違法』を理由に断れる」と笑顔を見せた。
▽企業イメージ
「この法律はオンライン上の子どもの安全を高めることにはならない。むしろ低下させる」。禁止対象に指定されたユーチューブを運営する米グーグルは今月の声明で、法律を順守すると表明しつつも「拙速な規制だ」と批判した。インスタグラムを運営する米メタも4日から16歳未満のアカウントの削除を始めたが「解決策にはならない」と不満を隠さない。
16歳未満のアカウント取得を阻止しなかった場合、事業者に科される制裁金は最大4950万豪ドル(約50億円)。巨大IT企業には「はした金」(専門家)だが、欧州やアジアで複数の国が同種の規制を検討しており「企業イメージを優先」(規制当局)して従ったとみられている。
▽差し止め請求
10代の多くは失望する。南部アデレードのエバ・ジョーンズさん(12)は「自分を表現する権利を奪われる。16歳まで使えないと、世界の同世代に後れを取る」と心配。サライ・アデスさん(14)は英紙に「オンライン上の偏見や差別、誤情報といった根本的な問題に対処せず、若者を標的にした」と憤った。
シドニー近郊に住むノア・ジョーンズさん(15)は原告の一人として、インターネットがあることが当たり前の環境で育った「デジタルネーティブ世代」を一律に排除する行為だとして最高裁に法律の差し止めを請求。政府に対しデジタルリテラシーを高めるようなプログラムに投資するよう求めた。(シドニー共同=尾崎雅子)
アカウント保有できず 「交流狭まる」不満も Q&A「豪SNS禁止法」
オーストラリアで10日、16歳未満の交流サイト(SNS)利用を禁じる法律が施行されました。
Q 内容は。
A 16歳未満は禁止対象に指定された10のSNSでアカウントを保有できなくなりました。年齢確認は運営事業者に任され、違反した事業者には罰金が科されます。子どもや保護者への罰則はありません。国レベルで禁止するのは初めてです。
Q なぜ規制するの。
A SNSのやりとりでいじめや性被害に遭って命を絶つ子どもが増え、昨年12月に法律が成立しました。有害なコンテンツから子どもを守ることも目的です。
Q 有害なコンテンツとは。
A SNS事業者は独自のアルゴリズム(計算手法)を用いてユーザーを引きつける動画や画像を表示させており、性的なものや犯罪に関連した内容も出てきます。オーストラリアのインターネット規制当局によると、同国の10~17歳の7割以上がネット上で心や体に重大な悪影響を及ぼすようなコンテンツを見聞きしたと回答。2割近くが自殺方法に関する情報を見たと答えています。
Q 16歳未満のアカウントはどうなりますか。
A 一部事業者は12月に入り16歳未満とみられる利用者のアカウントを閉鎖し始めました。保護者の同意があっても16歳未満はアカウントを取得できません。
Q 反応は。
A 賛同や理解を示す人がいる一方で「交流関係の輪が狭まる」「自己表現ができなくなる」と反対する人もいます。政府ではなく各家庭で決めるべきだとの意見もあります。(シドニー共同)
(2025/12/10)
(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)
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