厚生・労働2026年01月12日 優生思想払拭、教科書から 国策の誤り明記要望 強制不妊、補償法施行1年 提供:共同通信社

旧優生保護法下の強制不妊手術問題で、被害者側は「戦後最大の人権侵害」を起こした国策の誤りを学校教科書に明記するよう求めている。教科書が、優生思想を社会に広める土壌となった過去を踏まえ、その払拭においても教育が要になるとの考えだ。再発防止と被害の回復を目指した補償法は17日で施行から1年。専門家は、人権を守る憲法の役割を学ぶ手がかりになると指摘する。
「結婚の相手を選ぶときに劣悪な遺伝質をもっているかどうかを確かめることがたいせつである」。1960年の高校「保健体育」の教科書には、露骨な差別的記述がある。48~96年に存在した旧法下の時期だ。50年代の高校「生物」の教科書は「悪質形質の保持者に対しては断種法も考慮されなければならない」とした。
こうした教科書が生まれたのは、基準となる学習指導要領で「国民優生」を取り上げると定めていたからだ。旧法を巡る一連の国家賠償請求訴訟で、2022年3月の東京高裁判決は「教科書に優生思想を正当化する記載をするなどし、偏見・差別が社会に浸透した」と国の責任を指摘した。
30年度以降に全面実施される次期指導要領は目下、文部科学相の諮問機関の中教審で改定内容が議論され、26年度中に答申の見通しだ。そこで被害者側は、国が違法な優生政策を長年続けた「過ちと被害の実態を取り上げることを約束して」と要望している。
25年9月に開かれた政府側との定期協議では、指導要領への明記を柱とした要請書を提出。文科省担当者は協議で「この会議でいただいた意見を指導要領に反映するため、しっかり議論したい」と発言した。被害弁護団の関哉直人(せきや・なおと)弁護士は「恒久的な再発防止策の一丁目一番地と位置付けて臨み、前向きな回答が得られた」と振り返る。
ただ「教科書や教員の指導内容を縛る」(文科省関係者)指導要領に国策による人権侵害を書き込むハードルは高い。05年公表のハンセン病問題の検証報告書は「人権教育の充実化」を求めたが、ハンセン病患者の強制隔離などについて教えることを規定するには至らなかった。
人権教育に詳しい学習院大の梅野正信(うめの・まさのぶ)教授は、憲法の学習に位置付けることを提唱する。旧法問題は、違憲性がある法律を当時の国会が立法し、18年の被害者による国賠提訴を経て、24年に最高裁が憲法に照らして国の責任を認定し、補償法制定につながるという経緯をたどったためだ。
梅野教授は「数ある人権問題の一つとして教える形では埋没する恐れがある。児童生徒が『生活に関係ない』と思いがちな憲法が、最高裁によって命の尊厳を守るツールになったことを学ぶ題材にすべきだ」と語った。
旧優生保護法
「不良な子孫の出生防止」との目的で1948年に制定され、障害や精神疾患を理由に、強制不妊や人工妊娠中絶の手術を認めた。96年に差別条文を削除し母体保護法に改称。旧法下の不妊手術は少なくとも2万5千件とされる。2018年以降、国家賠償請求訴訟が起こされ、最高裁は24年、旧法を違憲と判断して国に賠償を命じた。被害者への補償法が成立し、25年1月17日施行。補償金の額は不妊手術を受けさせられた本人1500万円、配偶者500万円。中絶手術の一時金もあり、本人200万円。25年11月までの認定件数は計1560件で、被害者側は周知が不十分と指摘する。
(2026/01/12)
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