相続・遺言2026年01月21日 「デジタル遺言」創設へ PC、スマホで作成可能 法制審部会が要綱案 提供:共同通信社

遺言制度の見直しを議論する法制審議会(法相の諮問機関)部会は20日、パソコンやスマートフォンで作る「デジタル遺言」を創設する要綱案を取りまとめた。法務局へのデータ送信や本人確認の手続きもオンラインで完結可能とした。こうした新方式の「保管証書遺言」を導入し、利便性向上や負担軽減を図り利用を促進するのが狙い。手書きを原則とする現行の自筆証書遺言なども含め押印は一律不要とする。
法務省は2月にも法制審から答申を受け、衆院選後の国会に民法改正案を提出する方針。高齢化が進展する中、制度の多様化で終活ニーズの高まりに備える。
要綱案によると保管証書遺言は、生前に作成したデータかプリントアウトしたものを法務局に提出する。法務局職員による本人確認や、職員に対する全文の読み上げを経た上で保管。本人の死後、事前に指定した対象者に通知があり、相続手続きが始まる。
職員と本人とのやりとりは対面だけでなく、必要と認められればウェブ会議を利用できるため、自宅にいながら全ての手続きを済ませられる。法務局が関与するため、遺言の内容に家裁がお墨付きを与える現行の「検認」は不要とした。
昨年7月の中間試案では、遺言のデータとともに、複数の証人の前で内容を朗読する様子を録音・録画で残す案も記載された。だが、偽の動画が作成されたり、保存先が不明になったりするリスクが考慮され、要綱案には盛り込まれなかった。
死の間際を想定した「死亡危急時遺言」もパソコン作成を認め、作成状況を録音・録画した場合は証人を3人から1人に緩和する。「船舶遭難者遺言」は、対象に大規模地震などの天災を追加し、録画などがあれば証人を2人から1人とする。両制度とも、証人がウェブ会議で立ち会うことを認める。
要綱案のポイント
遺言制度を見直す法制審議会部会の要綱案のポイントは次の通り。
一、本人がパソコンで作成し、法務局が保管する「保管証書遺言」を新設。
一、法務局職員に全文を読み上げ。
一、データ送信やウェブ会議を利用可能。手続きはオンラインで完結。
一、いずれの制度も押印不要。
利便性向上、国民に周知を 識者談話
相続問題に詳しい伊与田寅彦(いよた・とらひこ)弁護士の話 新設される「保管証書遺言」はパソコンで作成可能で、法務局職員への読み上げもオンラインで完結でき、利便性が向上する。遺言を朗読する様子を動画で残しておく方式など、一層デジタル化する選択肢も検討されていたが、人工知能(AI)による偽動画の作成技術は急速に発達しており、要綱案は妥当だ。制度見直しに伴い、政府が既存の遺言との相違点などを国民に丁寧に周知し、活用促進につながることを期待したい。
遺言
死後に財産を誰にどれだけ残すかを、生前に意思表示しておく制度。民法が方式や効力を定めている。15歳以上で意思能力があれば作成可能で、法定相続よりも優先される。本文を手書きする自筆証書遺言は、本人の死後に家裁で内容を確認する「検認」が必要。各種統計によると2024年の検認件数は2万3436件で、公証人が関わる公正証書遺言の作成件数は12万8378件だった。公正証書遺言は25年10月からオンラインで作成可能になった。
(2026/01/21)
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