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家族2020年05月04日 特集「成年後見制度20年」 提供:共同通信社

“両輪”期待も利用低調 専門家「本人意思尊重を」

 認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人を支援する成年後見制度が始まって20年がたった。介護保険とともに高齢化社会を支える“両輪”として期待されたが利用者は伸び悩む。後見人は強い権限を持ち、当事者の生活が大きく制限される恐れもあるため、専門家は「本人の意思を尊重する運用をしていくべきだ」と指摘している。
 禁治産、準禁治産制度を廃止して2000年4月に制度は創設された。家庭裁判所が弁護士や司法書士、親族などから後見人(判断能力に応じて保佐人、補助人)を選任。判断能力が不十分な人を支援し、財産管理や福祉サービスの手続きを行う仕組みだ。
 認知症の人や貯蓄が乏しく家族の援助も得られない独居高齢者が増加する中、成年後見制度が必要な人は数百万人いるとみられる。だが、18年末時点の利用者は約22万人。内閣府の認知度調査によると、制度の内容を知っていると答えた人は半数に届かなかった。
 後見人の力が強く、原則、財産に関する全ての法律行為を代理できることも、制度利用が進まない一因だ。後見人次第では、本人の意思に反して物事が決められ、日常生活や人生に甚大な影響が生じかねないからだ。
 実際に、財産が目減りするとして住宅のバリアフリー改修を拒んだり、本人が自宅での生活を望んでいるのに状況をよく調べないまま施設に入所させたりすることが起きている。後見人は一度選ばれると解任が難しく、解任が認められるのは財産を横領した場合などごく一部に限られていた。
 こうした事態を受けて制度の見直しが進む。16年には成年後見制度利用促進法が成立。17年に厚生労働省は、家庭裁判所など関係機関同士で誰を後見人とするかを調整する「中核機関」の創設を決めた。制度を運用する裁判所も、利用者の意向や生活状況の変化に応じて後見人の交代を柔軟に認める方針に転じたほか、後見人らに支払う報酬を算出する仕組みを見直し、生活支援により多くの報酬を支払う考えを示している。

財産管理から生活支援へ 多職種連携、地域差も

 成年後見制度を巡り、自治体が中心となり、弁護士や社会福祉士など専門職と連携して高齢者の社会的孤立を防ぐ取り組みが始まっている。財産管理の制度から脱却し、生活支援を実現しようと政府も改革に乗り出したが地域差が生じている。
 「69歳女性。第2子流産後、精神状態が不安定になり離婚。現在は統合失調症に加え、認知症と診断されて寝たきりです。ご長男は母親との関わりを拒否しています」
 今年2月、山形市成年後見センターで開かれた検討会議。判断力が低下し、日常生活のサポートが必要な人に対し、誰が後見人となるかを決める。会議の冒頭、市職員が現状を説明した。
 この日議題に挙がったのは6人。いずれも身寄りはなく、認知症や重い精神疾患がある支援が難しい人ばかりだ。専門職のほか、市の社会福祉協議会が支援の難易度に応じて後見人を分担する。「資産状況は?」「家族以外に連絡が取れる人は?」。1時間余りの話し合いで、6人全員の後見人を内定した。
 山形市が成年後見センターを開設したのは2013年。独居高齢者が増えつつあり、制度のニーズが高まっていた頃だ。それまでは後見人が決まるまでに半年以上かかることも珍しくなかったが、「多職種間の連携がうまく取れるようになり、検討会議で後見人がすぐに決まるようになった」(同センター)という。
 こうした取り組みは自治体が先行していた。利用者や家族から「生活支援を受けにくい」との批判が相次いだこともあり、政府は17年、利用者の相談窓口となり、家庭裁判所など関係機関同士の調整を担う「中核機関」の創設を決定。22年3月までに、全ての自治体に設置するよう求めた。
 ただ、普及は進んでいない。昨年10月時点で設置したのは山形市のほか、長野県伊那市や愛知県日進市など160の市区町村にとどまる。予算の確保が難しい上、後見を頼める人材や団体を見つけられないことが壁になっているとみられる。
 弁護士で後見人も務める国学院大の佐藤彰一(さとう・しょういち)教授は「中核機関の多くは、制度の周知や利用相談に応じるのがやっと。困難事例を引き受けて生活支援をするにはほど遠いのが現状だ。人材を育成し、多職種が協力して業務に当たれるようになるには10年単位の時間が必要だろう」と指摘する。

(2020/05/04)

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