カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

一般2020年05月19日 検察定年延長、今国会断念 政府、批判受け異例の転換 首相「国民の理解必要」 法案取り下げず継続審議 提供:共同通信社

 政府、与党は18日、検察官の定年を延長する検察庁法改正案の今国会成立を断念した。世論の強い批判を受け、安倍政権が法案採決方針を転換するのは異例。新型コロナウイルス対策にも影響しかねないと判断した。安倍晋三首相は官邸で自民党の二階俊博幹事長と会い「国民の理解なしに前に進められない」と伝達。自民、公明両党は幹事長会談で継続審議を決めた。今国会の注目法案が成立見送りに追い込まれたことで、首相の政権運営への打撃となった。
 「束ね法案」として一本化している国家公務員法改正案と共に、秋の臨時国会で議論する考えだ。法案の取り下げや検察庁法改正部分の分離はしない。首相は18日の党役員会で「国会で丁寧に対応してほしい」と協力を要請。記者団に「国民からさまざまな批判があった。国民の理解を得て進めることが肝要だ」と釈明した。
 自公幹事長は、内閣や法相が認めれば幹部ポスト留任を認める「役職定年制」の特例規定の要件が政府から示されないまま採決するのは困難だとの認識で一致した。
 特例規定を巡っては、ツイッター上で著名人らが「政権の検察への介入につながる」と相次ぎ非難。元検事総長らも反対表明し、世論の反発が広がっていた。政府は1月、従来の法解釈を変更して国家公務員法の適用により黒川弘務(くろかわ・ひろむ)東京高検検事長(63)の定年延長を決めており、疑念は引き続き残る。
 自民党の森山裕国対委員長は、法改正見送りを立憲民主党の安住淳国対委員長に伝達。野党側は、15日提出した武田良太行政改革担当相の不信任決議案を取り下げた。
 立民の枝野幸男代表は党会合で「大きな一歩だが相手は諦めていない。国民の声を力に変え、恣意(しい)的に役職延長できる仕組みをやめさせるゴールへ頑張りたい」と述べ、追及姿勢を強調した。
 首相と二階氏は、今国会では新型コロナ対策を最優先とし、2020年度第2次補正予算の速やかな成立を図ることも確認した。
 野党は15日の衆院内閣委員会審議を踏まえ、公務員制度を所管する武田氏の答弁が不誠実だとして不信任案を衆院に提出。森雅子法相の答弁にも、特例要件を示していないと反発していた。

反対世論、政権揺るがす 検察定年延長断念

 【解説】安倍晋三首相が検察官の定年を延長する法改正案の今国会成立を見送ったのは、世論の抗議を無視できなくなったためだ。政治と一定の距離が必要な検察の人事に政権が介入できるようになるとの懸念が深まる中、著名人の反対表明などで勢いづいた世論が政権を揺るがした。ただ政権は秋の臨時国会で法案を同じ内容のまま審議する姿勢を崩していない。疑念を払拭(ふっしょく)できなければ、法案撤回や修正を決断すべきだ。
 野党は安倍政権に近いとされる黒川弘務(くろかわ・ひろむ)東京高検検事長の定年延長を正当化するものであり、検事総長に就任させる布石だと批判。首相は「恣意(しい)的な人事が行われることは全くない」と繰り返し、今国会で法案成立へ押し切ろうとしていた。検察の独立性を脅かす重大問題だとの認識が欠けていると猛省する必要がある。
 検事長らの役職延長を可能にする基準を示すよう迫る野党議員の質問に、森雅子法相は国会で答弁したが、明確さを欠いた。「後で政府が定めるから、白紙委任してほしい」というのに等しく、到底受け入れられない。
 森友学園の国有地売却問題を巡る決裁文書改ざん、安倍首相が支援者らを招く「私物化」が指摘された桜を見る会―。安倍政権は政策決定を巡り、たびたび問題視された経緯がある。「安倍1強」の下、今も目立つ政権の「おごり」体質が改めて問われている。

元特捜部長ら新たに意見書 OB38人「将来に禍根」

 検察庁法改正案について、東京地検特捜部に在籍し、リクルート事件やゼネコン汚職などの捜査に当たった元検事ら38人が18日、「将来に禍根を残しかねない改正を看過できない」として、再考を求める連名の意見書を、森雅子法相に宛てて法務省に提出した。元特捜部長の熊崎勝彦(くまざき・かつひこ)弁護士(78)や中井憲治(なかい・けんじ)弁護士(73)のほか、最高検次長検事を務めた横田尤孝(よこた・ともゆき)元最高裁判事(75)や特捜部副部長を務めた元衆院議員の若狭勝(わかさ・まさる)弁護士(63)が名を連ねた。
 意見書では、改正案は「民主的統制と検察の独立性・政治的中立性確保のバランスを大きく変動させかねず、検察権行使に政治的な影響が及ぶことが強く懸念される」と指摘。
 過去に幹部検察官の定年を延長させる必要性が顕在化したことは一度もないとした上で「法改正は不要不急と言わざるを得ない。改正を急ぐことは検察に対する国民の信頼をも損ないかねない」と強調した。
 熊崎氏は取材に「政治犯罪の捜査に携わった者として、検察の事件捜査や処理に対する疑念を、国民に抱かせることになりかねないと憂慮した」と理由を説明。現役の検察幹部に近い年代の元検事が賛同したことに意義があると話した。
 中井氏も「捜査は国民の信頼と協力がないとできない」とし、制度設計を再考するよう求めた。
 熊崎氏は1972年に検事任官。特捜部でリクルート事件や金丸信元自民党副総裁の脱税事件などを担当し、96年12月から部長を務めた。退官後はプロ野球コミッショナーを務めた。中井氏は98年6月から特捜部を率い、防衛庁(当時)を巡る背任・汚職事件などの捜査に当たった。
 15日にはロッキード事件の捜査に従事した経験を持つ松尾邦弘(まつお・くにひろ)元検事総長(77)らも意見書を提出しており、呼応する形になった。

審議継続ではなく撤回を 弁護士有志が声明

 弁護士有志でつくる「法の支配の危機を憂う弁護士の会」は18日、政府が検察庁法改正案の今国会成立を断念したことに対し「歓迎するが、継続審議は重大な禍根を残す。改正案の撤回を求めて引き続き声を上げる」との声明を出した。
 同会は4月下旬から改正案への反対を呼び掛け、今月18日までに呼び掛け人を含め、全国の弁護士2966人の賛同を得たという。声明は「検察への政治介入を制度化する悪法の今国会での成立を阻止できたこと自体は重要な成果だ」とした。

(2020/05/19)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

ここから先は新日本法規WEB会員の方のみ
ご覧いただけます。

会員登録していただくと、会員限定記事の閲覧のほか、様々なサービスをご利用いただけます。登録は簡単・無料です。是非ご利用ください。

ログイン新規会員登録

  • 書籍以外の商品
  • 法苑
  • 裁判官検索