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一般2020年08月30日 特集「『18、19歳』実名報道の是非」 実名報道解禁案に賛否 「18、19歳」厳罰化へ 提供:共同通信社

 少年法の適用年齢を議論してきた法制審議会の部会が8月、「18、19歳」の起訴後の実名報道を解禁する案をまとめた。2022年4月から民法上の成人年齢が18歳に引き下げられるのに合わせるためで、「大人の責任として当然だ」と歓迎の声が上がる。だが、立ち直りの妨げになると反対する意見も依然根強い。法制化に向けた議論には曲折もありそうだ。
 適用年齢を引き下げるかどうかが法制審に諮問されたのは17年2月。意見が分かれ、長らく結論が出なかったが、自民、公明両党が今年7月末、20歳未満を維持しつつも、少年の中で18、19歳を別扱いし厳罰化する方針で一致。政治に誘導される形で、法制審部会もほぼ同様の案をまとめた。今秋にも法相へ答申する見通しだ。
 部会案は、全ての事件で18、19歳を家裁に送致し、家裁調査官らが生い立ちなどを調べる仕組みは維持。一方で、原則検察官に送致(逆送)する範囲を、現行の殺人など「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」から、強盗や強制性交を含む「短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」に広げた。さらに検察官が起訴した時点で、実名など本人を特定する「推知報道」を可能とした。
 現行の少年法61条は、氏名、年齢、職業、住居、容貌などで本人を推知できる報道を禁止。発達段階では更生の可能性が十分にあるのに、実名が公表されると阻害され、社会全体の利益にもならないとの考え方に基づくとされる。部会案に対し、日弁連会長が「社会復帰を極めて困難にし、許容できない」との声明を発表するなど反発の動きも出ている。

大人と同様、犯罪抑止力に 「少年犯罪被害当事者の会」代表の武るり子さん

 私たちの会は、少年事件によって子どもや親ら大切な人を亡くした家族の集まりだ。たくさん加害少年を見てきたが、少年法に守られ、顔や名前が報道されず、処分も軽く済むと知った上で犯行に及んでいる子が多いと感じる。実際に警察の取り調べで、そのように供述した少年もいた。
 少年法が改正され名前が出るようになれば、どこかで犯行に歯止めがかかるのではないか。今回の案で、原則逆送に加わる強盗や強制性交も再犯する人が多い犯罪。大人と同様に扱えば、抑止力になると思う。
 就職や進学がしにくくなり、社会復帰の弊害になるという意見があるが、それを「更生できない」という言い訳にしてはならない。悪いことをしたのだから、名前が出るのは当然だ。人一倍努力して更生しなければならない。
 1996年11月、少年事件で長男を亡くし、少年法は加害者のための法律だと知った。事件の記録は何も見せてもらえない。少年審判で意見も言えない。人が死んでいるのに刑事裁判にならず処分は軽い。一方、ベールに覆われている分、被害者にも非があると誤解され、誹謗(ひぼう)中傷される。「不良同士」「けんかだった」と間違った報道もあった。加害者と比べたら、被害者にとっては「ゼロ以下」の法律だった。
 「人を殺した少年並みの権利がほしい」と法改正を訴えてきた。きちんと捜査し、刑事裁判で犯罪に見合った刑罰が少年に与えられることが大事。長い時間がかかったが、だいぶ被害者の権利が入った法律になった。でも、まだ平等とは思っていない。
 今回の案も、民法では18歳以上が成人になるのに、18、19歳は全件家裁送致を維持するなど犯罪を起こしたときだけ特別扱いしている。私たちが訴えているのは、少年犯罪の厳罰化ではなく適正化。「名前を出せ」とだけ言っているのではない。民法で成人となるのであれば、少年法ではなく、大人と同様の責任を取るべきだ。被害者に向き合った上で、更生を考えてほしい。
 × × ×
 たけ・るりこ 65歳。暴行事件で長男を失い、97年に少年犯罪被害当事者の会を立ち上げた。鹿児島県出身。

世間から批判、更生難しく 元浪速少年院長の菱田律子さん

 少年院に長く勤務したが、18、19歳は就職や進学に関わる微妙な年齢だ。この年代の子を見ると、間違って罪を犯し、実名報道されて世間からバッシングされたとき、更生に向けてやり直すのは難しく感じる。「自分なんて」と進学や就職を諦め、どんどん落ちるところへ落ちる可能性があり、刑務所を出たり入ったりする人生になりかねない。
 ある18歳の少女は、両親の関係が悪く、耐えられなくなって家出した。その後、暴力を振るう同居男性をナイフで刺し殺人未遂を犯してしまった。母親は自分のせいで、娘が事件を起こしてしまったと思ったのだろう。慣れない車を運転して、定期的に少年院に面会に来た。少女はなかなか心を開かなかったが、少しずつほぐれていった。立ち直りには親子関係も重要だ。実名報道されれば、親は地域にいられなくなり、子どものサポートどころではない事態に追いやられる。
 もう一つ重要なのは「起訴イコール有罪ではない」ということ。今回の案は、起訴後の実名報道を可能とするが、裁判で無罪もあり得る。また、少年法55条では、裁判所が保護処分が相当と判断した場合は、少年を再度家裁に移送しなければならないと規定している。
 無罪や再移送となっても、一度実名報道されれば、取り返しが付かず更生へのマイナスは計り知れない。仮に実名報道を解禁する場合も、有罪確定後が相当だ。
 今回の案が全事件で18、19歳を家裁送致する仕組みを維持した点は評価できる。しかし、将来罪を犯す恐れがある虞犯(ぐはん)を送致対象から外した。こういった子は虐待や貧困など、さまざまな家庭的な背景があり、これまでと同様に家裁が関与して立ち直りの支援に手を差し伸べるべきだ。
 さらに有罪が確定した場合、国家資格などの取得制限が20歳以上と同様に厳しくなる。更生の機会を奪うことのないよう、実名報道解禁とともに慎重に再検討してほしい。
 × × ×
 ひしだ・りつこ 68歳。愛光女子学園長(東京都)や浪速少年院長(大阪府)を歴任。龍谷大の矯正・保護課程講師を2013年から務める。富山県出身。

少年事件厳罰化の動き

 1949年1月 少年法施行
 97年6月 神戸の連続児童殺傷事件で14歳の少年逮捕
 2001年4月 刑罰の対象年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げる改正法施行。故意に被害者を死亡させた16歳以上の少年は原則検察官送致(逆送)に
 04年6月 長崎県佐世保市の同級生殺害事件で11歳の少女を補導
 07年11月 少年院送致できる年齢の下限を14歳から「おおむね12歳」へ引き下げる改正法施行
 08年12月 重大事件で犯罪被害者や遺族に少年審判の傍聴を認める改正法施行
 14年5月 少年に言い渡す有期刑(懲役・禁錮)の上限を15年から20年に引き上げる改正法施行
 17年2月 少年法の適用年齢引き下げを法制審議会に諮問
 20年7月30日 自民、公明両党が適用年齢を20歳未満のまま維持する案で合意。一方で18、19歳の原則逆送の範囲を拡大し、起訴後は本人特定の報道も可能とした
 8月6日 法制審の部会が与党の合意内容にほぼ沿った案を提示

(2020/08/30)

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