- 相続・遺言
- 単行本
実務家が陥りやすい 相続・遺言の落とし穴
編集/遺言・相続実務問題研究会 編集代表/野口大(弁護士)、藤井伸介(弁護士)
概要
落とし穴に気がついていますか!?
◆遺言書作成や遺産分割などに際し、実務家が誤解・誤認しやすい事項を具体的な「誤認例」に基づき解説しています。
◆民法(相続関係)改正に言及した最新の内容です。
◆実務に精通する弁護士の研究会が、相続・遺言分野に携わる専門家向けに執筆しています。
商品情報
- 商品コード
- 81260260
- ISBN
- 978-4-7882-8471-5
- ページ数
- 338
- 発行年月
- 2018年10月
目次
第1章 相続人・法定相続分
【1】相続人の範囲及び法定相続分の落とし穴
POINT・相続開始時期によって相続人の範囲は異なる
・相続開始時期によって法定相続分の割合は異なる
【2】養子の子に養親の代襲相続権はあるのか?
POINT・養子縁組前に出生した養子の子に養親の代襲相続権はあるのか
・養子縁組後に出生した養子の子に養親の代襲相続権があるのか
【3】養子には、実方の父母及びその血族の相続について相続権はあるのか?
POINT・特別養子には養子縁組後に生じた実方の父母及びその血族の相続について相続権はあるのか
・普通養子には養子縁組後に生じた実方の父母及びその血族の相続について相続権はあるのか
【4】夫婦の一方のみと養子縁組をしている場合の落とし穴
POINT・夫婦の一方とのみ養子縁組をしている養子に、養親の配偶者の相続について相続権はあるのか
【5】嫡出子・嫡出でない子の相続分の落とし穴
POINT・最高裁大法廷平成25年9月4日決定は過去の相続に影響するのか
・被相続人の死亡が平成13年8月である場合はどうか
・被相続人の死亡が平成13年5月である場合はどうか
【6】廃除しても代襲相続があるのか?
POINT・廃除は代襲原因である
【7】遺言書に記載すれば相続人の廃除が必ず認められるのか?
POINT・遺言書に記載しても相続人廃除が必ず認められるというものではない
・廃除したい根拠・資料について遺言執行者に引き継いでおくべき
【8】相続人廃除について調停申立てはできるのか?
POINT・家事審判法では、推定相続人廃除は、乙類事項として調停申立てをすることも認められていた
・家事事件手続法においては、推定相続人廃除は、別表第1事件として位置付けられたため、調停申立てはできず、審判申立てしか認められなくなった
【9】「一切相続させない」という遺言文言の落とし穴
POINT・遺言の解釈に当たり、遺言執行者は遺言者の真意を探求する必要がある
・遺言執行者に無用の時間・労力をかけさせないためにも、遺言の作成に当たっては、意味内容が一義的に明確となる文言を使用すべき
【10】遺言書の検認申立てをしない相続人は相続欠格となるのか?
POINT・遺言書の検認申立てをしないだけで相続欠格となるか
・公正証書遺言の場合にも遺言書の隠匿による相続欠格はあり得るか
【11】遺言書破棄で相続欠格を主張する場合、相続欠格となる相続人のみを被告とすればよいか?
POINT・相続権不存在確認の訴えの提起の当事者適格
第2章 相続放棄・限定承認
【12】賃借物件を引き払うと相続放棄できなくなるのか?
POINT・相続人から被相続人の賃貸借契約を解約しても相続放棄できるか
・大家からの賃貸借契約解約に基づく明渡請求に応じても相続放棄できるか
・家財を処分しても相続放棄できるか
【13】債務超過ではあるが自宅や事業用資産を取得できるのか?
POINT・限定承認後の先買権行使により特定の遺産を確実に取得することができる
【14】相続人が相続放棄をしつつ遺贈により遺産を取得できるのか?
POINT・相続放棄をしつつ遺贈は受けるということは可能なのか
・包括遺贈の場合と特定遺贈の場合で違いはあるのか
【15】包括遺贈の放棄の落とし穴
POINT・包括遺贈の放棄は、家庭裁判所に対する包括遺贈放棄の申述が必要
・熟慮期間経過後は包括遺贈の放棄は認められないのか
【16】限定承認の落とし穴
POINT・限定承認するとみなし譲渡所得課税が発生する
・限定承認に伴う譲渡所得税の申告は準確定申告で4か月以内に行う必要がある
【17】相続放棄すると相続税の基礎控除で不利となるのか?
POINT・相続税の基礎控除は、相続人1人当たり600万円だが、相続人の数が減ると控除額も減るか
第3章 遺言書
【18】一生身の回りの世話をして生活費をくれるなら、自宅土地建物をやるという死因贈与契約の落とし穴
POINT・死因贈与契約を取り消すことはできるのか?
・どのような事例であれば取り消すことができるのか?
【19】無効な遺言は相続において何の意味も持たないのか?
POINT・無効な遺言でも死因贈与契約として効力が認められる場合がある
・無効な遺言でも持戻し免除の意思表示を認定する根拠となる場合がある
【20】改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)の落とし穴
POINT・改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)が30点満点中13点の場合、遺言能力が認められるのか
・改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)が30点満点中5点の場合、遺言能力が認められないのか
・改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)の点数だけで遺言能力が判断できるのか
【21】未分割の不動産の持分を遺贈する場合の落とし穴
POINT・そもそも未分割の不動産の持分を遺贈できるのか
・「相続させる」遺言で相続人が取得した場合と、「遺贈」で第三者が取得する場合で、取扱いに差異はあるのか
【22】母親の面倒を見ることを条件とする遺贈の落とし穴
POINT・そもそも負担付遺贈といえるのか
・受贈者が約束に反して母親の面倒を見ない場合、遺贈の効力はどうなるのか
・どのような場合であれば、遺贈の取消しが認められるか
【23】遺言に預貯金残高は記載しておいた方がよいのか?
POINT・遺言に預貯金残高まで記載するべきではない
【24】相続人でない受遺者の情報としては氏名・住所を記載しておけば十分なのか?
POINT・相続人でない受遺者については、氏名・住所と共に本籍地も記載しておくべき
【25】「相続させる」旨の遺言と代襲相続の落とし穴
POINT・「相続させる」旨の遺言については、基本的には代襲相続を認めないのが実務上の趨勢であるが、具体的事情によって認める場合も想定される
・解釈に疑義が生じそうな場合には、予備的条項を入れるなどの工夫が必要
【26】受遺者が先に死亡した場合の処理はどうなるか?
POINT・民法994条により先死者への遺贈は無効となり遺贈財産は民法995条によって相続人に帰属するのが原則
・ただし、遺言書に「その他一切の財産」についての記述がある場合はその内容に従うこととなる
【27】遺言執行者に清算権限を与えて各相続人に分配させるという方法の登記上・税務上の落とし穴
POINT・清算型遺贈の効力
・清算型遺贈による不動産の売却に必要な登記手続
・清算型遺贈と譲渡所得税
【28】「その余の一切の……」の遺言文言に潜む落とし穴
POINT・「その余の一切の……」という遺言文言を入れておけば常に遺産分割は不要か?
【29】受遺者の意思を確認しておくことは重要なのか?
POINT・遺贈であれば本当に一方的な意思表示のみで足りるのか
【30】包括遺贈があるが債務を免れたい場合の落とし穴
POINT・相続人資格者全員の相続放棄申述申立てが受理されても、通常の相続放棄とは別に包括遺贈放棄の申述申立てをして受理されない限り包括受遺者は相続債務を免れない
【31】遺言による認知の落とし穴
POINT・遺言による認知であればDNA鑑定は必要ないか
・DNA鑑定の結果を誰かに知らせておくべきか
【32】固定資産評価証明書に基づいて不動産を特定するのか?
POINT・固定資産評価証明書と不動産登記簿の記載が異なる場合がある
【33】遺産の中に私道がある場合でも遺言書に書かなくてもよいか?
POINT・私道について遺言書に記載がない場合にはどうなるのか
【34】遺言書に「有価証券」「預金」「株式」と記載する場合の落とし穴
POINT・遺言書の「有価証券」に預金は含まれると解釈できるか
・遺言書の「株式」に投資信託等は含まれると解釈できるか
・誤解がないようにするにはどのように特定すればよいのか
【35】遺言書に「金融資産」と記載する場合の落とし穴
POINT・遺言書に記載した「金融資産」に現金が含まれるか否かで争いになるのか
【36】貸金庫開扉権限を記載する場合の落とし穴
POINT・貸金庫開扉権限を記載してかえって紛争となる場合もある
【37】在外資産がある場合の遺言の落とし穴
POINT・日本の遺言だけでは、在外資産の引渡しや名義変更がスムーズにいかないことがある
【38】特定物件を遺贈する遺言が包括遺贈とされることがあるのか?
POINT・遺言書に包括遺贈と記載されていなくても、遺言書全体の趣旨から包括遺贈と解釈できる場合もある
【39】遺言書に遺言執行者の報酬が定められていない場合はどうするのか?
POINT・遺言書に遺言執行者の報酬が定められていない場合でも、常に家庭裁判所の審判が必要なわけではない
・むしろ、第一次的には相続人等との協議により、報酬の合意を形成することが実務的
【40】生前贈与後に遺言を作成する場合の落とし穴
POINT・将来遺留分減殺請求されない遺言書を作成せよ
・特別受益に当たる贈与は、遺言書に目的物価額や贈与金額を明示しておけ
【41】不動産の特定が不十分で登記できない場合はどうするか?
POINT・被相続人名義の倉庫及び敷地につき相続を原因とする所有権移転登記を求める際の訴えの種類は、所有権移転登記手続請求か所有権確認請求か
<他項目参照>
○次の内容は第1章に掲載しています。
【7】遺言書に記載すれば相続人の廃除が必ず認められるのか?
【10】遺言書の検認申立てをしない相続人は相続欠格となるのか?
【11】遺言書破棄で相続欠格を主張する場合、相続欠格となる相続人のみを被告とすればよいか?
第4章 遺言執行
【42】相続人の処分権限が制限される旨記載した就職通知を出すべきなのか?
POINT・遺言執行者は相続人に就職通知を発送すべきか否か
・遺言執行者が就職通知を発送しない間に相続人が勝手に遺産を処分した場合、遺言執行者が責任を問われることはないのか
【43】遺留分減殺請求がされている場合であっても、遺言書の記載に従い遺留分を無視して執行してよいか?
POINT・遺留分減殺請求権の法的性質につき物権的効果を生ずるか否かによって、執行の可否が変わる
【44】遺言執行者が葬儀費用を相続財産から支出してよいのか?
POINT・遺言執行者の権限が及ぶ範囲は、遺言の執行に関する事項であるところ、葬儀費用の支出は、同人の生前債務の弁済とも、遺言執行の費用ともいえず、相続財産から葬儀費用を支出することは、理論上は困難である
・意見の対立が予想されるような場合には、葬儀費用の額や、その精算方法について事前に相続人等と協議し、同意を受けておくなどの対応が必要
【45】遺言執行者の提起した訴訟が遺言無効で却下された場合の訴訟費用は誰が負担するか?
POINT・遺言無効を理由に訴え却下がされた場合には、無権代理行為として遺言執行者個人が訴訟費用を負担することになる
・遺言無効のリスクが予想されるような場合には、事前に相続人等と協議し、無権代理行為と評価された場合の最終的な費用負担者を定めておくこと等が必要となる
【46】遺言執行者は、遺留分のない相続人に対しても相続財産目録等の交付義務を負うのか?
POINT・遺言執行者は、相続財産目録の交付義務、遺言執行状況の報告義務を負う
・遺言執行者は、遺留分を有しない相続人に対してもこれらの義務を負う
・遺言執行の余地がない場合にはこれらの義務を負わないとした審判例もある
【47】遺言の無効を主張する相続人がある場合、遺言執行者はどう処理するのか?
POINT・遺言の有効性の検討は遺言執行者の義務か
・遺言能力の検討のため遺言執行者がするべき調査は何か
・遺言の無効を主張する相続人がある場合に遺言執行者は執行義務を免れられないか
【48】遺言執行者たる弁護士は遺留分減殺請求を受ける相続人の代理人となれるのか?
POINT・遺言執行終了後でも相続人の代理人となれないのか
・懲戒請求事案で最終的に非行に該当しないという結果が出れば、それでよいのか
<他項目参照>
○次の内容は第1章に掲載しています。
【9】「一切相続させない」という遺言文言の落とし穴
○次の内容は第3章に掲載しています。
【27】遺言執行者に清算権限を与えて各相続人に分配させるという方法の登記上・税務上の落とし穴
【39】遺言書に遺言執行者の報酬が定められていない場合はどうするのか?
第5章 遺留分
【49】遺留分減殺請求に関する手続選択の落とし穴
POINT・遺留分減殺請求は、調停前置主義の対象だが、必須ではない
・遺留分減殺請求調停申立書を提出しても、必ずしも減殺請求権を行使したことにはならない
【50】遺言の効力を争うときの落とし穴
POINT・遺言無効の確認請求が棄却された時に、初めて遺留分の侵害を認識したとの弁解は認められない可能性が高い
・少なくとも予備的には遺留分減殺の意思表示をしておくことが重要
【51】「現金で贈与を受けた」のか「不動産で贈与を受けた」のかでは大違いなのか?
POINT・特別受益の対象となる財産の評価は、相続開始時の評価で行われる
・現金と不動産では、相続開始時までの評価額の変動幅が大きく異なることから、これらを自覚的に整理・区別して主張することが重要
【52】相続人に対する生前贈与と遺留分減殺請求の落とし穴
POINT・特別受益は常に遺留分減殺請求の対象となるのか
・特別受益を受けた相続人が相続放棄をした場合はどうなるのか
【53】遺留分侵害額の計算の落とし穴
POINT・減殺者が受領すべき未分割遺産の取扱い
・被減殺者の遺留分をどう扱うか
・減殺対象物件の価額に応じた減殺額の割り振り
第6章 遺産分割
【54】後見人と被後見人の遺産分割協議(後見人に著しく有利な結果となった場合)の落とし穴
POINT・後見人と被後見人の遺産分割協議において、被後見人に特別代理人が選任された場合であっても、後見人に著しく有利な結果となった場合には、これをさらに取り消し得ると判断した判例がある
・未成年者との比較においても、被後見人をより強く保護しようという実務の傾向があることに注意
【55】後見人と被後見人の遺産分割協議(特別代理人が選任されなかった場合)の落とし穴
POINT・後見人と被後見人の遺産分割協議において、特別代理人が選任されなかった場合は、原則として無効
・例外的に、被後見人が全ての遺産を取得するような場合には、有効と認められる
【56】預貯金以外の賃料債権や、貸付金返還請求権等は当然分割となるのか?
POINT・遺産分割当事者全員の合意がない限り、遺産分割の対象とならない一般の可分債権
・昭和29年4月8日の最高裁判例は最高裁大法廷平成28年12月19日決定により変更されたか
【57】一部の相続人に遺産の一部を先行して渡し、相続人から切り離す場合の落とし穴
POINT・まず一部遺産分割協議を行う
・その次に相続分譲渡を行う
・相続分の放棄は推奨されない
【58】相続債務残存の可能性がある場合に相続分の譲渡を行うときの要検討事項とは?
POINT・相続分譲渡をすると相続債務はどうなるか?
・確実に債務を免れたいなら相続放棄
【59】非協力的な相続人がいる場合の裁判所選択についての誤解
POINT・任意の遺産分割協議に協力しない共同相続人がいる場合の調停の種類や管轄裁判所の選択
【60】収益物件の収益を独り占めしている相続人がいる場合の対処法とは?
POINT・不当利得の訴訟
・審判前の保全処分としての遺産管理者の選任は検討の余地あり
・どのような事案であれば保全の必要性が認められるか
【61】遺産である建物を共同相続人の一人が占拠している場合の対処法とは?
POINT・遺産である建物を占拠する相続人に対する明渡請求は可能か
・遺産である建物を占拠する相続人に対して賃料相当損害金を請求できるのか
【62】一部の遺産について先行して遺産分割する場合の落とし穴
POINT・一部遺産分割が、残余遺産の分割においてどのような影響を及ぼすのかを明確にしておくべき
・そのための具体的文言
【63】債務を負担しないという遺産分割協議に意味はあるのか?
POINT・債務を確実に免れるなら相続放棄
・相続放棄によって出現する次順位の相続人によって、かえって処理が困難となる場合もある
【64】代償金の支払を担保できるのか?
POINT・被相続人名義では相続を原因とする所有権移転登記と代償金支払を引換給付にはできない
・法定相続分の共同相続登記を具備すれば代償金支払と共有持分移転登記との引換給付が可能
【65】父の遺産分割における不公平を母の遺産分割で考慮できるのか?
POINT・父の遺産分割時にした将来の母の遺産分割に関する約束の効力
・父の遺産分割時の約束をできる限り確実に実現させるための方法とその限界
【66】代償分割を希望する場合の落とし穴
POINT・代償分割という方法は希望すれば認めてもらえるのか
【67】換価分割の場合の諸費用や税金は誰がどのように負担するのか?
POINT・遺産の売却代金は本来、遺産分割の対象外
・遺産の売却に伴い登記費用、測量費用、仲介手数料、所得税・住民税などが発生するので、それらの負担を意識した合意をする必要がある
・換価分割による譲渡所得税、住民税などの課税を意識した合意をする必要がある
【68】代償分割の場合の代償金は税務上取得費として認められるのか?
POINT・譲渡所得の計算の根拠は所得税法の規定
・代償分割で取得した財産を譲渡する際、代償金を取得費に算入できないとするのが判例
・代償分割で財産を取得する相続人が合意に当たり考慮すべき、将来の財産売却時の譲渡所得税
【69】代償分割の場合の代償金を裁判所が定める際、譲渡所得税はどのように考慮されるのか?
POINT・代償分割で不動産を取得した相続人のみが、後に譲渡所得税を負う不公平が生じ得る
・審判では、代償金額の算定の際に譲渡所得税を考慮しないのが原則
【70】遺言と異なる遺産分割はできるのか?
POINT・相続させる旨の遺言には、即時権利移転の効力あり
・一旦遺言に基づく登記をし、「贈与」などを原因として持分移転登記手続をする必要がある、相続させる旨の遺言と異なる合意
・贈与税が課税される可能性があり注意が必要な分配金
第7章 寄与分・特別受益
【71】特別受益と寄与分が問題となる場合の対象財産評価の落とし穴
・特別受益・寄与分が認められる場合の具体的相続分の評価の基準時は、相続開始時
・現実の分割における評価の基準時は、分割時
・特別受益・寄与分を主張する場合には相続開始時と鑑定現在時との2時点での評価が必要
【72】生命保険金は特別受益とならないのか?
・特段の事情が認められる場合は生命保険金も持戻しの対象となる
・特段の事情とは例えばどのような事情か?
【73】特別受益は持戻しが原則なのか?
POINT・特別受益の持戻しが認められるのはむしろ例外的
・特別受益性の否定、持戻し免除意思の推認
・改正民法(相続法)〔1年以内施行〕による持戻し免除の意思の推定規定の新設
【74】被相続人の家に無償で居住していることは特別受益となるのか?
POINT・無償居住は特別受益だという主張は認められるのか
・親との同居でない場合はどうか
・収益物件に無償で住んでいた場合はどうか
<他項目参照>
○次の内容は第3章に掲載しています。
【40】生前贈与後に遺言を作成する場合の落とし穴
○次の内容は第5章に掲載しています。
【51】「現金で贈与を受けた」のか「不動産で贈与を受けた」のかでは大違いなのか?
第8章 遺産分割の前提問題・付随問題
【75】遺言書が作成されていない場合に葬儀費用を相続財産から支出できるのか?
POINT・葬儀費用の負担者については諸説あり、当然に相続財産から支出することが許されるわけではない
・最終的には葬儀費用が喪主負担となる可能性もあるが、実務的には、相続財産からの支出を他の相続人があえて争わないというケースが多い
【76】遺言書の記載に従い葬儀費用を相続財産から支出できるのか?
POINT・葬儀費用は法律上の遺言事項ではなく、また、そもそも遺言執行者の権限が及ばない事項であることから、相続財産から葬儀費用の支出を認める理論的な説明は簡単ではない
・遺言書の記載が実質的に死後事務委任契約であると解釈することも可能ではあるが、その場合、遺言書の中に単独行為と契約が混在することになる
・相続人間で葬儀費用について争いが予想される事案においては、別途、死後事務委任契約書を作成しておくなど、事前の対応が求められる
【77】相続放棄を予定している場合に葬儀費用を相続財産から支出してもよいのか?
POINT・費消した相続財産が僅少であったり、相続債務があることを認識せずに相続財産を費消した場合など、個別の事情が考慮されて、後の相続放棄を認めた判例はいくつかある
・個々の事案において、必ず後の相続放棄が認められるとは限らず、相続財産から葬儀費用等の支出をすることにはリスクがあることに注意が必要
【78】相続人以外の共有者も存在する不動産の処理の落とし穴
POINT・まず遺産分割か、それともまず共有物分割か?
・実務的には一般調停で相続人以外も当事者として話し合うことを目指す
【79】老親の扶養・介護をするという約束を前提とした遺産分割の落とし穴
POINT・扶養・介護の約束不履行による遺産分割協議の法定解除、合意解除の可否
・扶養・介護の実現のため、遺産分割とは別に必要な対策―居住権確保、少しずつ財産を生前贈与
・母親の財産管理のため検討余地のある手段―任意代理契約、信託の設定
【80】遺産名義が被相続人と異なる場合の処理の落とし穴
POINT・相続人名義の財産を遺産分割の対象とするためとるべき手続
・第三者名義の財産を遺産分割の対象とするためとるべき手続
・被相続人名義の財産につき相続人に帰属するという主張がある場合にとるべき手続
【81】共同相続した非上場株式の議決権については、相続分の割合に応じて行使するのか?
POINT・相続分の過半数での決定により、権利行使者を指定し、かつ会社に通知することにより権利行使しなければならない遺産分割前の相続株式
【82】公営住宅の賃借権の処理の際の落とし穴
POINT・公営住宅の入居者が死亡した場合、同居の親族は居住を継続することはできないのか
<他項目参照>
○次の内容は第2章に掲載しています。
【12】賃借物件を引き払うと相続放棄できなくなるのか?
第9章 遺産分割後のトラブル
【83】地裁や高裁で和解し遺産について不動産登記をする際の落とし穴
POINT・「〇〇は、〇〇の土地を取得する。」という和解条項で所有権移転登記ができるか
【84】遺産分割協議において不動産が一部漏れていた場合はどうなるのか?
POINT・遺産分割は無効となるのか?
・無効とならない場合、どのようにして処理するのか?
【85】遺産分割後に多額の債務があることが判明した場合はどうなるのか?
POINT・遺産の処分行為をしているので、法定単純承認として、もはや相続放棄できないのか
【86】遺産分割で取得した土地の面積が不足していた場合はどうなるのか?
POINT・土地の面積不足が数量に関する契約不適合に当たるか
・数量不足の場合の買主救済規定が不動産を対象とする遺産分割に準用される場合は限定される
・請求の具体的内容(代金減額請求、解除、損害賠償請求)
【87】遺産分割で取得した土地の隣地所有者と境界争いが発生した場合はどうなるのか?
POINT・土地の境界が明確でないことが契約(遺産分割協議)の内容に適合しないといえるか
・請求の具体的内容(代金減額請求、損害賠償請求、解除)
・錯誤無効の主張は認められるか。ただし、錯誤無効は改正民法(債権法)では、「取り消すことができる」となる
【88】遺産分割後に土壌汚染があることが判明した場合はどうなるのか?
POINT・土壌汚染が契約(遺産分割協議)の内容に適合しないといえるか
・不適合(瑕疵)の判断基準時
【89】遺産分割後に母子関係の存在を確認する判決が確定した場合はどうなるのか?
POINT・遺産分割後に母子関係の存在を確認する判決が確定した場合の遺産分割の効力
・民法910条の類推適用の可否
・遺産分割協議が無効であることを争う者がある場合に必要な遺産分割協議無効確認の訴え
【90】遺産分割で取得した土地に土壌汚染が判明した場合、相続税について更正の請求ができるのか?
POINT・国税庁の見解(原則として更正の請求はできない)
・土壌汚染を理由として物納許可が取り消された場合は、例外的に更正の請求が認められる
<他項目参照>
○次の内容は第2章に掲載しています。
【16】限定承認の落とし穴
【17】相続放棄すると相続税の基礎控除で不利となるのか?
○次の内容は第6章に掲載しています。
【65】父の遺産分割における不公平を母の遺産分割で考慮できるのか?
【67】換価分割の場合の諸費用や税金は誰がどのように負担するのか?
【68】代償分割の場合の代償金は税務上取得費として認められるのか?
【69】代償分割の場合の代償金を裁判所が定める際、譲渡所得税はどのように考慮されるのか?
○次の内容は第8章に掲載しています。
【79】老親の扶養・介護をするという約束を前提とした遺産分割の落とし穴
【1】相続人の範囲及び法定相続分の落とし穴
POINT・相続開始時期によって相続人の範囲は異なる
・相続開始時期によって法定相続分の割合は異なる
【2】養子の子に養親の代襲相続権はあるのか?
POINT・養子縁組前に出生した養子の子に養親の代襲相続権はあるのか
・養子縁組後に出生した養子の子に養親の代襲相続権があるのか
【3】養子には、実方の父母及びその血族の相続について相続権はあるのか?
POINT・特別養子には養子縁組後に生じた実方の父母及びその血族の相続について相続権はあるのか
・普通養子には養子縁組後に生じた実方の父母及びその血族の相続について相続権はあるのか
【4】夫婦の一方のみと養子縁組をしている場合の落とし穴
POINT・夫婦の一方とのみ養子縁組をしている養子に、養親の配偶者の相続について相続権はあるのか
【5】嫡出子・嫡出でない子の相続分の落とし穴
POINT・最高裁大法廷平成25年9月4日決定は過去の相続に影響するのか
・被相続人の死亡が平成13年8月である場合はどうか
・被相続人の死亡が平成13年5月である場合はどうか
【6】廃除しても代襲相続があるのか?
POINT・廃除は代襲原因である
【7】遺言書に記載すれば相続人の廃除が必ず認められるのか?
POINT・遺言書に記載しても相続人廃除が必ず認められるというものではない
・廃除したい根拠・資料について遺言執行者に引き継いでおくべき
【8】相続人廃除について調停申立てはできるのか?
POINT・家事審判法では、推定相続人廃除は、乙類事項として調停申立てをすることも認められていた
・家事事件手続法においては、推定相続人廃除は、別表第1事件として位置付けられたため、調停申立てはできず、審判申立てしか認められなくなった
【9】「一切相続させない」という遺言文言の落とし穴
POINT・遺言の解釈に当たり、遺言執行者は遺言者の真意を探求する必要がある
・遺言執行者に無用の時間・労力をかけさせないためにも、遺言の作成に当たっては、意味内容が一義的に明確となる文言を使用すべき
【10】遺言書の検認申立てをしない相続人は相続欠格となるのか?
POINT・遺言書の検認申立てをしないだけで相続欠格となるか
・公正証書遺言の場合にも遺言書の隠匿による相続欠格はあり得るか
【11】遺言書破棄で相続欠格を主張する場合、相続欠格となる相続人のみを被告とすればよいか?
POINT・相続権不存在確認の訴えの提起の当事者適格
第2章 相続放棄・限定承認
【12】賃借物件を引き払うと相続放棄できなくなるのか?
POINT・相続人から被相続人の賃貸借契約を解約しても相続放棄できるか
・大家からの賃貸借契約解約に基づく明渡請求に応じても相続放棄できるか
・家財を処分しても相続放棄できるか
【13】債務超過ではあるが自宅や事業用資産を取得できるのか?
POINT・限定承認後の先買権行使により特定の遺産を確実に取得することができる
【14】相続人が相続放棄をしつつ遺贈により遺産を取得できるのか?
POINT・相続放棄をしつつ遺贈は受けるということは可能なのか
・包括遺贈の場合と特定遺贈の場合で違いはあるのか
【15】包括遺贈の放棄の落とし穴
POINT・包括遺贈の放棄は、家庭裁判所に対する包括遺贈放棄の申述が必要
・熟慮期間経過後は包括遺贈の放棄は認められないのか
【16】限定承認の落とし穴
POINT・限定承認するとみなし譲渡所得課税が発生する
・限定承認に伴う譲渡所得税の申告は準確定申告で4か月以内に行う必要がある
【17】相続放棄すると相続税の基礎控除で不利となるのか?
POINT・相続税の基礎控除は、相続人1人当たり600万円だが、相続人の数が減ると控除額も減るか
第3章 遺言書
【18】一生身の回りの世話をして生活費をくれるなら、自宅土地建物をやるという死因贈与契約の落とし穴
POINT・死因贈与契約を取り消すことはできるのか?
・どのような事例であれば取り消すことができるのか?
【19】無効な遺言は相続において何の意味も持たないのか?
POINT・無効な遺言でも死因贈与契約として効力が認められる場合がある
・無効な遺言でも持戻し免除の意思表示を認定する根拠となる場合がある
【20】改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)の落とし穴
POINT・改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)が30点満点中13点の場合、遺言能力が認められるのか
・改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)が30点満点中5点の場合、遺言能力が認められないのか
・改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)の点数だけで遺言能力が判断できるのか
【21】未分割の不動産の持分を遺贈する場合の落とし穴
POINT・そもそも未分割の不動産の持分を遺贈できるのか
・「相続させる」遺言で相続人が取得した場合と、「遺贈」で第三者が取得する場合で、取扱いに差異はあるのか
【22】母親の面倒を見ることを条件とする遺贈の落とし穴
POINT・そもそも負担付遺贈といえるのか
・受贈者が約束に反して母親の面倒を見ない場合、遺贈の効力はどうなるのか
・どのような場合であれば、遺贈の取消しが認められるか
【23】遺言に預貯金残高は記載しておいた方がよいのか?
POINT・遺言に預貯金残高まで記載するべきではない
【24】相続人でない受遺者の情報としては氏名・住所を記載しておけば十分なのか?
POINT・相続人でない受遺者については、氏名・住所と共に本籍地も記載しておくべき
【25】「相続させる」旨の遺言と代襲相続の落とし穴
POINT・「相続させる」旨の遺言については、基本的には代襲相続を認めないのが実務上の趨勢であるが、具体的事情によって認める場合も想定される
・解釈に疑義が生じそうな場合には、予備的条項を入れるなどの工夫が必要
【26】受遺者が先に死亡した場合の処理はどうなるか?
POINT・民法994条により先死者への遺贈は無効となり遺贈財産は民法995条によって相続人に帰属するのが原則
・ただし、遺言書に「その他一切の財産」についての記述がある場合はその内容に従うこととなる
【27】遺言執行者に清算権限を与えて各相続人に分配させるという方法の登記上・税務上の落とし穴
POINT・清算型遺贈の効力
・清算型遺贈による不動産の売却に必要な登記手続
・清算型遺贈と譲渡所得税
【28】「その余の一切の……」の遺言文言に潜む落とし穴
POINT・「その余の一切の……」という遺言文言を入れておけば常に遺産分割は不要か?
【29】受遺者の意思を確認しておくことは重要なのか?
POINT・遺贈であれば本当に一方的な意思表示のみで足りるのか
【30】包括遺贈があるが債務を免れたい場合の落とし穴
POINT・相続人資格者全員の相続放棄申述申立てが受理されても、通常の相続放棄とは別に包括遺贈放棄の申述申立てをして受理されない限り包括受遺者は相続債務を免れない
【31】遺言による認知の落とし穴
POINT・遺言による認知であればDNA鑑定は必要ないか
・DNA鑑定の結果を誰かに知らせておくべきか
【32】固定資産評価証明書に基づいて不動産を特定するのか?
POINT・固定資産評価証明書と不動産登記簿の記載が異なる場合がある
【33】遺産の中に私道がある場合でも遺言書に書かなくてもよいか?
POINT・私道について遺言書に記載がない場合にはどうなるのか
【34】遺言書に「有価証券」「預金」「株式」と記載する場合の落とし穴
POINT・遺言書の「有価証券」に預金は含まれると解釈できるか
・遺言書の「株式」に投資信託等は含まれると解釈できるか
・誤解がないようにするにはどのように特定すればよいのか
【35】遺言書に「金融資産」と記載する場合の落とし穴
POINT・遺言書に記載した「金融資産」に現金が含まれるか否かで争いになるのか
【36】貸金庫開扉権限を記載する場合の落とし穴
POINT・貸金庫開扉権限を記載してかえって紛争となる場合もある
【37】在外資産がある場合の遺言の落とし穴
POINT・日本の遺言だけでは、在外資産の引渡しや名義変更がスムーズにいかないことがある
【38】特定物件を遺贈する遺言が包括遺贈とされることがあるのか?
POINT・遺言書に包括遺贈と記載されていなくても、遺言書全体の趣旨から包括遺贈と解釈できる場合もある
【39】遺言書に遺言執行者の報酬が定められていない場合はどうするのか?
POINT・遺言書に遺言執行者の報酬が定められていない場合でも、常に家庭裁判所の審判が必要なわけではない
・むしろ、第一次的には相続人等との協議により、報酬の合意を形成することが実務的
【40】生前贈与後に遺言を作成する場合の落とし穴
POINT・将来遺留分減殺請求されない遺言書を作成せよ
・特別受益に当たる贈与は、遺言書に目的物価額や贈与金額を明示しておけ
【41】不動産の特定が不十分で登記できない場合はどうするか?
POINT・被相続人名義の倉庫及び敷地につき相続を原因とする所有権移転登記を求める際の訴えの種類は、所有権移転登記手続請求か所有権確認請求か
<他項目参照>
○次の内容は第1章に掲載しています。
【7】遺言書に記載すれば相続人の廃除が必ず認められるのか?
【10】遺言書の検認申立てをしない相続人は相続欠格となるのか?
【11】遺言書破棄で相続欠格を主張する場合、相続欠格となる相続人のみを被告とすればよいか?
第4章 遺言執行
【42】相続人の処分権限が制限される旨記載した就職通知を出すべきなのか?
POINT・遺言執行者は相続人に就職通知を発送すべきか否か
・遺言執行者が就職通知を発送しない間に相続人が勝手に遺産を処分した場合、遺言執行者が責任を問われることはないのか
【43】遺留分減殺請求がされている場合であっても、遺言書の記載に従い遺留分を無視して執行してよいか?
POINT・遺留分減殺請求権の法的性質につき物権的効果を生ずるか否かによって、執行の可否が変わる
【44】遺言執行者が葬儀費用を相続財産から支出してよいのか?
POINT・遺言執行者の権限が及ぶ範囲は、遺言の執行に関する事項であるところ、葬儀費用の支出は、同人の生前債務の弁済とも、遺言執行の費用ともいえず、相続財産から葬儀費用を支出することは、理論上は困難である
・意見の対立が予想されるような場合には、葬儀費用の額や、その精算方法について事前に相続人等と協議し、同意を受けておくなどの対応が必要
【45】遺言執行者の提起した訴訟が遺言無効で却下された場合の訴訟費用は誰が負担するか?
POINT・遺言無効を理由に訴え却下がされた場合には、無権代理行為として遺言執行者個人が訴訟費用を負担することになる
・遺言無効のリスクが予想されるような場合には、事前に相続人等と協議し、無権代理行為と評価された場合の最終的な費用負担者を定めておくこと等が必要となる
【46】遺言執行者は、遺留分のない相続人に対しても相続財産目録等の交付義務を負うのか?
POINT・遺言執行者は、相続財産目録の交付義務、遺言執行状況の報告義務を負う
・遺言執行者は、遺留分を有しない相続人に対してもこれらの義務を負う
・遺言執行の余地がない場合にはこれらの義務を負わないとした審判例もある
【47】遺言の無効を主張する相続人がある場合、遺言執行者はどう処理するのか?
POINT・遺言の有効性の検討は遺言執行者の義務か
・遺言能力の検討のため遺言執行者がするべき調査は何か
・遺言の無効を主張する相続人がある場合に遺言執行者は執行義務を免れられないか
【48】遺言執行者たる弁護士は遺留分減殺請求を受ける相続人の代理人となれるのか?
POINT・遺言執行終了後でも相続人の代理人となれないのか
・懲戒請求事案で最終的に非行に該当しないという結果が出れば、それでよいのか
<他項目参照>
○次の内容は第1章に掲載しています。
【9】「一切相続させない」という遺言文言の落とし穴
○次の内容は第3章に掲載しています。
【27】遺言執行者に清算権限を与えて各相続人に分配させるという方法の登記上・税務上の落とし穴
【39】遺言書に遺言執行者の報酬が定められていない場合はどうするのか?
第5章 遺留分
【49】遺留分減殺請求に関する手続選択の落とし穴
POINT・遺留分減殺請求は、調停前置主義の対象だが、必須ではない
・遺留分減殺請求調停申立書を提出しても、必ずしも減殺請求権を行使したことにはならない
【50】遺言の効力を争うときの落とし穴
POINT・遺言無効の確認請求が棄却された時に、初めて遺留分の侵害を認識したとの弁解は認められない可能性が高い
・少なくとも予備的には遺留分減殺の意思表示をしておくことが重要
【51】「現金で贈与を受けた」のか「不動産で贈与を受けた」のかでは大違いなのか?
POINT・特別受益の対象となる財産の評価は、相続開始時の評価で行われる
・現金と不動産では、相続開始時までの評価額の変動幅が大きく異なることから、これらを自覚的に整理・区別して主張することが重要
【52】相続人に対する生前贈与と遺留分減殺請求の落とし穴
POINT・特別受益は常に遺留分減殺請求の対象となるのか
・特別受益を受けた相続人が相続放棄をした場合はどうなるのか
【53】遺留分侵害額の計算の落とし穴
POINT・減殺者が受領すべき未分割遺産の取扱い
・被減殺者の遺留分をどう扱うか
・減殺対象物件の価額に応じた減殺額の割り振り
第6章 遺産分割
【54】後見人と被後見人の遺産分割協議(後見人に著しく有利な結果となった場合)の落とし穴
POINT・後見人と被後見人の遺産分割協議において、被後見人に特別代理人が選任された場合であっても、後見人に著しく有利な結果となった場合には、これをさらに取り消し得ると判断した判例がある
・未成年者との比較においても、被後見人をより強く保護しようという実務の傾向があることに注意
【55】後見人と被後見人の遺産分割協議(特別代理人が選任されなかった場合)の落とし穴
POINT・後見人と被後見人の遺産分割協議において、特別代理人が選任されなかった場合は、原則として無効
・例外的に、被後見人が全ての遺産を取得するような場合には、有効と認められる
【56】預貯金以外の賃料債権や、貸付金返還請求権等は当然分割となるのか?
POINT・遺産分割当事者全員の合意がない限り、遺産分割の対象とならない一般の可分債権
・昭和29年4月8日の最高裁判例は最高裁大法廷平成28年12月19日決定により変更されたか
【57】一部の相続人に遺産の一部を先行して渡し、相続人から切り離す場合の落とし穴
POINT・まず一部遺産分割協議を行う
・その次に相続分譲渡を行う
・相続分の放棄は推奨されない
【58】相続債務残存の可能性がある場合に相続分の譲渡を行うときの要検討事項とは?
POINT・相続分譲渡をすると相続債務はどうなるか?
・確実に債務を免れたいなら相続放棄
【59】非協力的な相続人がいる場合の裁判所選択についての誤解
POINT・任意の遺産分割協議に協力しない共同相続人がいる場合の調停の種類や管轄裁判所の選択
【60】収益物件の収益を独り占めしている相続人がいる場合の対処法とは?
POINT・不当利得の訴訟
・審判前の保全処分としての遺産管理者の選任は検討の余地あり
・どのような事案であれば保全の必要性が認められるか
【61】遺産である建物を共同相続人の一人が占拠している場合の対処法とは?
POINT・遺産である建物を占拠する相続人に対する明渡請求は可能か
・遺産である建物を占拠する相続人に対して賃料相当損害金を請求できるのか
【62】一部の遺産について先行して遺産分割する場合の落とし穴
POINT・一部遺産分割が、残余遺産の分割においてどのような影響を及ぼすのかを明確にしておくべき
・そのための具体的文言
【63】債務を負担しないという遺産分割協議に意味はあるのか?
POINT・債務を確実に免れるなら相続放棄
・相続放棄によって出現する次順位の相続人によって、かえって処理が困難となる場合もある
【64】代償金の支払を担保できるのか?
POINT・被相続人名義では相続を原因とする所有権移転登記と代償金支払を引換給付にはできない
・法定相続分の共同相続登記を具備すれば代償金支払と共有持分移転登記との引換給付が可能
【65】父の遺産分割における不公平を母の遺産分割で考慮できるのか?
POINT・父の遺産分割時にした将来の母の遺産分割に関する約束の効力
・父の遺産分割時の約束をできる限り確実に実現させるための方法とその限界
【66】代償分割を希望する場合の落とし穴
POINT・代償分割という方法は希望すれば認めてもらえるのか
【67】換価分割の場合の諸費用や税金は誰がどのように負担するのか?
POINT・遺産の売却代金は本来、遺産分割の対象外
・遺産の売却に伴い登記費用、測量費用、仲介手数料、所得税・住民税などが発生するので、それらの負担を意識した合意をする必要がある
・換価分割による譲渡所得税、住民税などの課税を意識した合意をする必要がある
【68】代償分割の場合の代償金は税務上取得費として認められるのか?
POINT・譲渡所得の計算の根拠は所得税法の規定
・代償分割で取得した財産を譲渡する際、代償金を取得費に算入できないとするのが判例
・代償分割で財産を取得する相続人が合意に当たり考慮すべき、将来の財産売却時の譲渡所得税
【69】代償分割の場合の代償金を裁判所が定める際、譲渡所得税はどのように考慮されるのか?
POINT・代償分割で不動産を取得した相続人のみが、後に譲渡所得税を負う不公平が生じ得る
・審判では、代償金額の算定の際に譲渡所得税を考慮しないのが原則
【70】遺言と異なる遺産分割はできるのか?
POINT・相続させる旨の遺言には、即時権利移転の効力あり
・一旦遺言に基づく登記をし、「贈与」などを原因として持分移転登記手続をする必要がある、相続させる旨の遺言と異なる合意
・贈与税が課税される可能性があり注意が必要な分配金
第7章 寄与分・特別受益
【71】特別受益と寄与分が問題となる場合の対象財産評価の落とし穴
・特別受益・寄与分が認められる場合の具体的相続分の評価の基準時は、相続開始時
・現実の分割における評価の基準時は、分割時
・特別受益・寄与分を主張する場合には相続開始時と鑑定現在時との2時点での評価が必要
【72】生命保険金は特別受益とならないのか?
・特段の事情が認められる場合は生命保険金も持戻しの対象となる
・特段の事情とは例えばどのような事情か?
【73】特別受益は持戻しが原則なのか?
POINT・特別受益の持戻しが認められるのはむしろ例外的
・特別受益性の否定、持戻し免除意思の推認
・改正民法(相続法)〔1年以内施行〕による持戻し免除の意思の推定規定の新設
【74】被相続人の家に無償で居住していることは特別受益となるのか?
POINT・無償居住は特別受益だという主張は認められるのか
・親との同居でない場合はどうか
・収益物件に無償で住んでいた場合はどうか
<他項目参照>
○次の内容は第3章に掲載しています。
【40】生前贈与後に遺言を作成する場合の落とし穴
○次の内容は第5章に掲載しています。
【51】「現金で贈与を受けた」のか「不動産で贈与を受けた」のかでは大違いなのか?
第8章 遺産分割の前提問題・付随問題
【75】遺言書が作成されていない場合に葬儀費用を相続財産から支出できるのか?
POINT・葬儀費用の負担者については諸説あり、当然に相続財産から支出することが許されるわけではない
・最終的には葬儀費用が喪主負担となる可能性もあるが、実務的には、相続財産からの支出を他の相続人があえて争わないというケースが多い
【76】遺言書の記載に従い葬儀費用を相続財産から支出できるのか?
POINT・葬儀費用は法律上の遺言事項ではなく、また、そもそも遺言執行者の権限が及ばない事項であることから、相続財産から葬儀費用の支出を認める理論的な説明は簡単ではない
・遺言書の記載が実質的に死後事務委任契約であると解釈することも可能ではあるが、その場合、遺言書の中に単独行為と契約が混在することになる
・相続人間で葬儀費用について争いが予想される事案においては、別途、死後事務委任契約書を作成しておくなど、事前の対応が求められる
【77】相続放棄を予定している場合に葬儀費用を相続財産から支出してもよいのか?
POINT・費消した相続財産が僅少であったり、相続債務があることを認識せずに相続財産を費消した場合など、個別の事情が考慮されて、後の相続放棄を認めた判例はいくつかある
・個々の事案において、必ず後の相続放棄が認められるとは限らず、相続財産から葬儀費用等の支出をすることにはリスクがあることに注意が必要
【78】相続人以外の共有者も存在する不動産の処理の落とし穴
POINT・まず遺産分割か、それともまず共有物分割か?
・実務的には一般調停で相続人以外も当事者として話し合うことを目指す
【79】老親の扶養・介護をするという約束を前提とした遺産分割の落とし穴
POINT・扶養・介護の約束不履行による遺産分割協議の法定解除、合意解除の可否
・扶養・介護の実現のため、遺産分割とは別に必要な対策―居住権確保、少しずつ財産を生前贈与
・母親の財産管理のため検討余地のある手段―任意代理契約、信託の設定
【80】遺産名義が被相続人と異なる場合の処理の落とし穴
POINT・相続人名義の財産を遺産分割の対象とするためとるべき手続
・第三者名義の財産を遺産分割の対象とするためとるべき手続
・被相続人名義の財産につき相続人に帰属するという主張がある場合にとるべき手続
【81】共同相続した非上場株式の議決権については、相続分の割合に応じて行使するのか?
POINT・相続分の過半数での決定により、権利行使者を指定し、かつ会社に通知することにより権利行使しなければならない遺産分割前の相続株式
【82】公営住宅の賃借権の処理の際の落とし穴
POINT・公営住宅の入居者が死亡した場合、同居の親族は居住を継続することはできないのか
<他項目参照>
○次の内容は第2章に掲載しています。
【12】賃借物件を引き払うと相続放棄できなくなるのか?
第9章 遺産分割後のトラブル
【83】地裁や高裁で和解し遺産について不動産登記をする際の落とし穴
POINT・「〇〇は、〇〇の土地を取得する。」という和解条項で所有権移転登記ができるか
【84】遺産分割協議において不動産が一部漏れていた場合はどうなるのか?
POINT・遺産分割は無効となるのか?
・無効とならない場合、どのようにして処理するのか?
【85】遺産分割後に多額の債務があることが判明した場合はどうなるのか?
POINT・遺産の処分行為をしているので、法定単純承認として、もはや相続放棄できないのか
【86】遺産分割で取得した土地の面積が不足していた場合はどうなるのか?
POINT・土地の面積不足が数量に関する契約不適合に当たるか
・数量不足の場合の買主救済規定が不動産を対象とする遺産分割に準用される場合は限定される
・請求の具体的内容(代金減額請求、解除、損害賠償請求)
【87】遺産分割で取得した土地の隣地所有者と境界争いが発生した場合はどうなるのか?
POINT・土地の境界が明確でないことが契約(遺産分割協議)の内容に適合しないといえるか
・請求の具体的内容(代金減額請求、損害賠償請求、解除)
・錯誤無効の主張は認められるか。ただし、錯誤無効は改正民法(債権法)では、「取り消すことができる」となる
【88】遺産分割後に土壌汚染があることが判明した場合はどうなるのか?
POINT・土壌汚染が契約(遺産分割協議)の内容に適合しないといえるか
・不適合(瑕疵)の判断基準時
【89】遺産分割後に母子関係の存在を確認する判決が確定した場合はどうなるのか?
POINT・遺産分割後に母子関係の存在を確認する判決が確定した場合の遺産分割の効力
・民法910条の類推適用の可否
・遺産分割協議が無効であることを争う者がある場合に必要な遺産分割協議無効確認の訴え
【90】遺産分割で取得した土地に土壌汚染が判明した場合、相続税について更正の請求ができるのか?
POINT・国税庁の見解(原則として更正の請求はできない)
・土壌汚染を理由として物納許可が取り消された場合は、例外的に更正の請求が認められる
<他項目参照>
○次の内容は第2章に掲載しています。
【16】限定承認の落とし穴
【17】相続放棄すると相続税の基礎控除で不利となるのか?
○次の内容は第6章に掲載しています。
【65】父の遺産分割における不公平を母の遺産分割で考慮できるのか?
【67】換価分割の場合の諸費用や税金は誰がどのように負担するのか?
【68】代償分割の場合の代償金は税務上取得費として認められるのか?
【69】代償分割の場合の代償金を裁判所が定める際、譲渡所得税はどのように考慮されるのか?
○次の内容は第8章に掲載しています。
【79】老親の扶養・介護をするという約束を前提とした遺産分割の落とし穴
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