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最新事例にみる 婚姻関係の破綻原因-モラルハラスメント、別居、有責配偶者からの離婚請求など-
著/赤西芳文(弁護士・元大阪高等裁判所部総括判事)
概要
離婚可否の判断基準をアップデート!
◆婚姻関係の破綻原因のうち、従来あまり見られなかったものや裁判所の判断が変わってきたものを元裁判官の視点からピックアップしています。
◆当事者の主張および裁判所の判断を示したうえで、当該裁判例のポイントを解説しています。
商品情報
- 商品コード
- 81260532
- ISBN
- 978-4-7882-9471-4
- ページ数
- 246
- 発行年月
- 2025年2月
目次
第1章 新しい離婚原因
(人格否定・罵詈雑言)
【1】妻が「犬は我慢させられないが、夫は我慢すべき」として同居を拒否し、犬の死亡後も同居しないことなどから、離婚請求が認められた事例
【2】「極貧貧乏」などと妻から侮辱的で横暴な態度をとられたことなどを理由とする離婚請求が、夫の不貞行為にかかわらず認められた事例
【3】婚姻関係の破綻は、妻の、夫の作った料理を捨てる、子供を巻き込んで夫を孤立させるなどのモラハラ的行為及び夫からの威圧的言動等によって惹起されたものであるとして、双方の離婚請求が認められた事例
(人格否定・経済的虐待)
【4】有責配偶者からの離婚請求であるが、クレジットカードを取り上げる、携帯電話やメールを使えなくするなどのことをした相手方配偶者にも破綻の責任があるとして、離婚請求が認められた事例
(共感性欠如・価値観押し付け)
【5】同居期間が短く、妻が、夫の帰宅の際には、ズボンの裾を床に触れさせないで衣服を脱いで入浴しなければならないなどの異常な清掃習慣を押し付ける、支配的な金銭管理などを理由とする離婚請求が認められた事例
【6】夫が仕事や家事をせず、堕胎を求めたことなどを理由とする妻からの離婚請求が認められた事例
(威嚇・脅迫)
【7】妻の夫に対する「あなたが死にますように」「呪いをかけてやる」等の執拗で苛烈な脅迫的メール送信で婚姻関係が破綻したと認められた事例
【8】包丁を持ち出し、「子どもを殺して私も死ぬ」などと妻が発言したことから別居に至った夫の妻に対する離婚請求が認められた事例
(嫉妬・束縛・常時監視)
【9】夫の妻に対する暴力もあったが、妻が夫の仕事用背広をハサミで切る、無断でGPS機器を設置するなどのことがあり、長年の不仲から、根深い相互不信状態にあり、婚姻関係が破綻していると認められた事例
【10】妻に不貞の疑いをかけ、ボイスレコーダーやGPS機器設置による監視をし、攻撃的追及・非難をしたことにより婚姻関係が破綻したことを理由として離婚及び妻の慰謝料請求が認容された事例
(自尊心を傷付ける行為)
【11】高齢になり生活力を失ってきた夫に対し、妻が先妻の位牌を取り除いて親戚に送り付け、夫の思い出の品を焼却処分するなどの配慮を欠く行為により、婚姻関係が破綻したとして離婚請求が認められた事例
(メンタルヘルス不調)
【12】双極性障害を患い、奇行を行う妻に対する夫の離婚請求が認められた事例
(認知症)
【13】長年別居している高齢の夫から認知症になった高齢の妻に対する離婚請求が、夫婦としての実際的な協力義務を果たせる状況にはないが、婚姻関係が破綻に瀕しているとはいえないとして棄却された事例
(精神的・心理的不適合(性格・価値観相違))
【14】夫婦は、考え方の相違や性格の不一致から互いに不満や苛立ちを募らせ、別居時点で互いに強固な離婚意思を有し、婚姻関係が破綻していたとされ、妻の離婚請求が認容された事例
【15】妻から夫に対するキャリアアップの意識がない、家事を妻に頼る、妻の収入を頼りに生活しているなどを理由とする離婚請求が、夫婦には経済的協力関係や仕事と私生活のバランスの取り方等について考え方の相違はあるが、調整不可能な程度ではないとして、離婚請求が棄却された事例
【16】ピアニストの妻から会社を退職して税理士試験の勉強をしている夫に対する精神的不一致等を理由とする離婚請求が、いまだ婚姻関係を破綻させるものではないとして、棄却された事例
【17】夫から妻に対する家事への不満や価値観の相違を理由とする離婚請求が、夫が自らの価値基準によってのみ妻の行動を評価し、不満、不快感を増幅させ、一方的に婚姻継続を拒否するに至ったから、婚姻関係の破綻は主として夫の責任によるとして棄却された事例
【18】別居は、性格や価値観の相違が大きな要因であり、婚姻関係は破綻していないとして、離婚請求が棄却された事例
【19】夫が、妻が家事育児を担うという婚姻当初の役割分担を変更する必要を認めることができず、流産の際の冷淡な対応、無配慮な言動、育児に対する非協力等から、妻と夫の気持ちは大きくすれ違うようになったとして、離婚請求が認められた事例
【20】子は持たず、婚姻は互いに人格的、知的に高め合うものとの認識で結婚した夫婦につき、夫が、妻は自分を高める努力を怠るようになったと感じ、自らも、妻に子供を持ち、長男の嫁としての役割を期待する感情を有するようになった場合、そのような人生観、結婚観等の相違は、決定的なことであり、それを理由とする同居拒否は不法行為とはいえないとされた事例(双方離婚請求)
(思想・信条)
【21】婚姻関係の悪化は、夫が休日にも家庭を顧みることなく、市民活動に多くの時間を費やし、遂には教員の職を失うに至ったこと、また、長女への対応や妻の心情に理解を示さないことにあるのに、夫がこれを認識せず、かえって自己の意見や価値観を妻や長女に押し付けたことなどによって婚姻関係が破綻したとして、妻からの離婚請求が認められた事例
【22】夫婦間でも信仰の自由は尊重されねばならないが、夫が妻から子供らに教義を教え込まれたくない、家族一緒に正月を祝いたい、先祖供養のために墓参りしたいと考えても、間違っているとして非難できず、夫の考えや気持ちを無視する妻にも責任があるとして、夫からの離婚請求が認められた事例
(訴訟提起)
【23】夫が、虚偽の事実を作り出して妻に対する離婚訴訟を提起し、印鑑証明書の不正取得やマンションの分割について別訴を提起して妻に応訴を求めたため、妻が離婚を決意したから、妻に対する慰謝料額としては300万円が相当であると認められた事例
(夫婦共同生活を築く前の破綻)
【24】夫婦の婚姻関係は、家事分担のあり方や妻が主に担当することになった家事(特に清掃)に関して、婚姻当初から双方に意見の相違があり、諍いが絶えなかったことによって、夫婦としての安定した信頼関係を形成する間もなく破綻に向かったものであるが、夫の暴力、妻のツイッター書き込みなどがあり、婚姻関係の破綻には双方に責任があるとされた事例
【25】夫婦は、インターネットの出会い系サイトを通じて知り合い、1か月余りで婚約し、その約3か月半後には婚姻の届出をし、その後、わずか2週間余り同居しただけで別居に至ったというのであり、その婚姻関係は、通常の夫婦と比較すると、さほど強固なものとして形成されていなかったとして、離婚が認められた事例
【26】婚姻関係は、実家や親族を重視する夫と夫婦関係を大事に考える妻との考え方の隔たりや金銭感覚の違いなどが要因になって次第に亀裂が深まり、破綻したものと認められるから、本件婚姻の破綻原因は基本的に夫婦双方にあるものというべきであるが、どちらかといえば、婚姻関係の破綻について夫に非があるとされた事例
【27】国際結婚に伴う諸々の障害とりわけ相互理解を深めることについて互いの性格、能力が十分でなく、両者の関係は深刻となっていたが、関係改善の努力はされず、率直な気持ちの交換の機会を持たないまま、関係は悪化していった。妻は信頼感あるいは愛情の深さを夫に対して実感できなかったことが婚姻関係の破綻事由であるとされた事例
(夫婦関係が一旦修復された後の離婚請求)
【28】夫が妻の不貞行為を一旦宥恕した場合、その後夫婦関係が破綻するに至った時は、夫が既に宥恕した不貞行為をもって有責配偶者からの離婚請求と主張することは許されないとして、妻からの離婚請求が認められた事例
【29】長期間の単身赴任等による別居を理由とする夫からの離婚請求であるが、一旦、夫が関係修復を申し入れたことで夫婦関係は実態を取り戻しており、改めて夫が離婚を申し入れた以降の別居期間は2年7か月にとどまり、それほど長期には及んでいないことなどを理由として、破綻が否定された事例
第2章 別居の期間・理由・態様
(別居期間)
【30】共働きの夫婦において、家計を管理していた夫に対する妻からの、デリヘル利用やゲーム課金が浪費であること等を理由とする離婚請求について、これらは浪費であるが、離婚事由として評価するほどのものではなく、別居期間も2年程度であることなどを理由として、破綻が否定された事例
【31】3年を超える別居期間があり、双方に有責行為はないが、妻が一貫して離婚を求め、夫の側も妻を関連会社の登記簿上の代表者から外し、妻名義の生命保険契約等の名義を変更し、子らのパスポート更新手続への協力を拒絶するなどしたことで信頼関係が喪失したとして、妻の離婚請求が認められた事例
【32】別居期間は4年10か月余りと長期に及んでおり、それ自体として、婚姻関係の破綻を基礎付ける事情である。そして、妻は一貫して離婚を求め続けており、夫は、審判で命じられた婚姻費用分担金の支払を十分にしないなど婚姻関係の修復意思を有していることに疑念を抱かせるとして、妻からの離婚請求が認められた事例
【33】8年を超える別居は婚姻関係の破綻を十分に基礎付ける事情であるところ、妻の離婚意思は固く、一方、夫には自己の価値観と相容れない意見を許容することができない姿勢が強く認められるから、夫婦関係を修復することも困難であるとして、妻の離婚請求が認められた事例
(別居理由)
【34】18年の別居にもかかわらず、別居生活の発端は夫婦間の不和というよりも、夫が自由な生活を望んだことにあり、少なくとも当初においては、別居は婚姻関係の破綻の表れと認めることはできないとして夫から妻への離婚請求が棄却された事例
【35】妻による業務妨害等を理由とする夫の離婚請求について、婚姻関係は30年以上にわたり、共に協力して事業を発展させてきたものであり、夫婦関係の絆は決して弱いものではないこと、別居期間3年6か月は同居期間と比較すれば、さほど長いとはいえないこと、そもそも夫が別居に至ったのは、自らの不貞行為を断ち切りたくないという独善的な動機に基づくものであることなどを理由として、婚姻関係の破綻が否定され、離婚請求が棄却された事例
(別居態様)
【36】夫が妻に離婚を通告後、別居し、妻との接触を避け、一切の話合いを拒絶し7年以上経過したが、このような場合、別居期間が長期化したとしても、婚姻を継続し難い重大な事由があるとすることはできない。仮に、同事由があるとしても、本件では、離婚を認めた場合、妻は精神的苦境及び経済的窮境に陥るし、未成年の子らの監護・教育・福祉に悪影響が及ぶとして、離婚請求が棄却された事例
第3章 有責配偶者
(比較的短期間の別居期間)
【37】夫は有責配偶者であり、別居期間は約2年8か月であるが、同居期間が約1年9か月であることや双方の年齢(30代前半)を考慮すると、別居期間が相当の長期間に及んでいるということができるなどとして、離婚請求が認められた事例
【38】夫は有責配偶者であるところ、転居してから約4年10か月が経過したにすぎない上、転居後も相当期間、妻や長男と会食や家族旅行をするなど、勤務の都合で一時的に別居を余儀なくされた夫婦と同様の関係を継続していたことから、別居期間は相当の長期間にわたっていないとして、離婚請求が棄却された事例
【39】別居期間が6年以上の有責配偶者である夫からの離婚請求であるが、もともと会話の少ない意思の疎通が不十分な夫婦であったところ、妻と外国人男性との不倫疑惑で夫婦の溝が大きく広がり、互いに夫婦としての愛情を喪失して別居に至った経過等から、離婚請求が信義則に反するものではないとされた事例
【40】別居期間が7年余りの有責配偶者による離婚請求について、婚姻期間は30年を超えており、その別居期間が相当の長期間に及んでいるとはいえない。妻は精神的に多大な負担を強いられており、離婚により精神的に極めて苛酷な状態に置かれることが明らかであるとして、離婚請求が棄却された事例
(未成熟子の存在)
【41】別居から既に6年以上が経過しているから、婚姻関係は、既に破綻している。しかし、夫は有責配偶者であり、離婚により長男がパニックを起こすおそれがあるなど障害を有する未成熟子への影響が大きいなどとして、離婚請求が棄却された事例
【42】有責配偶者である夫からの再度の離婚請求であるが、同居期間は約3年11か月であるのに対し、別居期間は9年1か月に及んでおり、離婚によって妻子が母子家庭となるとしても、妻を経済的、社会的、精神的に過酷な状況に置くとはいえない。また、夫と交際相手及びその間の子との新たに形成された生活関係に対する配慮も必要であるなどとして、離婚請求が認容された事例
【43】有責配偶者からの離婚請求だが、婚姻期間が9年6か月であるところ、別居期間は8年5か月であり、相当な長期間に及び、また、小学3年の長男は妻の努力等により良好な教育環境が保たれていること、妻の医師という職業からすると今後も相当程度の収入があると予測されること等から、離婚請求が信義則に反するとまではいえないとされた事例
(過酷要件)
【44】別居してから既に12年以上経過後の、有責配偶者である夫からの離婚請求であるが、妻は、現在、資産も安定した住居もなく、離婚が認容されると経済的苦境に陥る。長男は、成人しているが、身体的障害・成育歴等から、妻が独力でその生活の援助を行わざるを得ないのであり、妻を精神的、社会的、経済的に極めて過酷な状況に置くことになるとして、離婚請求が棄却された事例
【45】別居期間が9年近くに及ぶ有責配偶者である夫からの離婚請求について、離婚すれば、婚姻費用の支払がなくなり、妻が経済的に過酷な状況に置かれ、精神疾患にり患している三男の監護・福祉に著しい悪影響が及ぶ、夫の離婚給付の提案は不確実であるなどとして、離婚請求が棄却された事例
索 引
○判例年次索引
(人格否定・罵詈雑言)
【1】妻が「犬は我慢させられないが、夫は我慢すべき」として同居を拒否し、犬の死亡後も同居しないことなどから、離婚請求が認められた事例
【2】「極貧貧乏」などと妻から侮辱的で横暴な態度をとられたことなどを理由とする離婚請求が、夫の不貞行為にかかわらず認められた事例
【3】婚姻関係の破綻は、妻の、夫の作った料理を捨てる、子供を巻き込んで夫を孤立させるなどのモラハラ的行為及び夫からの威圧的言動等によって惹起されたものであるとして、双方の離婚請求が認められた事例
(人格否定・経済的虐待)
【4】有責配偶者からの離婚請求であるが、クレジットカードを取り上げる、携帯電話やメールを使えなくするなどのことをした相手方配偶者にも破綻の責任があるとして、離婚請求が認められた事例
(共感性欠如・価値観押し付け)
【5】同居期間が短く、妻が、夫の帰宅の際には、ズボンの裾を床に触れさせないで衣服を脱いで入浴しなければならないなどの異常な清掃習慣を押し付ける、支配的な金銭管理などを理由とする離婚請求が認められた事例
【6】夫が仕事や家事をせず、堕胎を求めたことなどを理由とする妻からの離婚請求が認められた事例
(威嚇・脅迫)
【7】妻の夫に対する「あなたが死にますように」「呪いをかけてやる」等の執拗で苛烈な脅迫的メール送信で婚姻関係が破綻したと認められた事例
【8】包丁を持ち出し、「子どもを殺して私も死ぬ」などと妻が発言したことから別居に至った夫の妻に対する離婚請求が認められた事例
(嫉妬・束縛・常時監視)
【9】夫の妻に対する暴力もあったが、妻が夫の仕事用背広をハサミで切る、無断でGPS機器を設置するなどのことがあり、長年の不仲から、根深い相互不信状態にあり、婚姻関係が破綻していると認められた事例
【10】妻に不貞の疑いをかけ、ボイスレコーダーやGPS機器設置による監視をし、攻撃的追及・非難をしたことにより婚姻関係が破綻したことを理由として離婚及び妻の慰謝料請求が認容された事例
(自尊心を傷付ける行為)
【11】高齢になり生活力を失ってきた夫に対し、妻が先妻の位牌を取り除いて親戚に送り付け、夫の思い出の品を焼却処分するなどの配慮を欠く行為により、婚姻関係が破綻したとして離婚請求が認められた事例
(メンタルヘルス不調)
【12】双極性障害を患い、奇行を行う妻に対する夫の離婚請求が認められた事例
(認知症)
【13】長年別居している高齢の夫から認知症になった高齢の妻に対する離婚請求が、夫婦としての実際的な協力義務を果たせる状況にはないが、婚姻関係が破綻に瀕しているとはいえないとして棄却された事例
(精神的・心理的不適合(性格・価値観相違))
【14】夫婦は、考え方の相違や性格の不一致から互いに不満や苛立ちを募らせ、別居時点で互いに強固な離婚意思を有し、婚姻関係が破綻していたとされ、妻の離婚請求が認容された事例
【15】妻から夫に対するキャリアアップの意識がない、家事を妻に頼る、妻の収入を頼りに生活しているなどを理由とする離婚請求が、夫婦には経済的協力関係や仕事と私生活のバランスの取り方等について考え方の相違はあるが、調整不可能な程度ではないとして、離婚請求が棄却された事例
【16】ピアニストの妻から会社を退職して税理士試験の勉強をしている夫に対する精神的不一致等を理由とする離婚請求が、いまだ婚姻関係を破綻させるものではないとして、棄却された事例
【17】夫から妻に対する家事への不満や価値観の相違を理由とする離婚請求が、夫が自らの価値基準によってのみ妻の行動を評価し、不満、不快感を増幅させ、一方的に婚姻継続を拒否するに至ったから、婚姻関係の破綻は主として夫の責任によるとして棄却された事例
【18】別居は、性格や価値観の相違が大きな要因であり、婚姻関係は破綻していないとして、離婚請求が棄却された事例
【19】夫が、妻が家事育児を担うという婚姻当初の役割分担を変更する必要を認めることができず、流産の際の冷淡な対応、無配慮な言動、育児に対する非協力等から、妻と夫の気持ちは大きくすれ違うようになったとして、離婚請求が認められた事例
【20】子は持たず、婚姻は互いに人格的、知的に高め合うものとの認識で結婚した夫婦につき、夫が、妻は自分を高める努力を怠るようになったと感じ、自らも、妻に子供を持ち、長男の嫁としての役割を期待する感情を有するようになった場合、そのような人生観、結婚観等の相違は、決定的なことであり、それを理由とする同居拒否は不法行為とはいえないとされた事例(双方離婚請求)
(思想・信条)
【21】婚姻関係の悪化は、夫が休日にも家庭を顧みることなく、市民活動に多くの時間を費やし、遂には教員の職を失うに至ったこと、また、長女への対応や妻の心情に理解を示さないことにあるのに、夫がこれを認識せず、かえって自己の意見や価値観を妻や長女に押し付けたことなどによって婚姻関係が破綻したとして、妻からの離婚請求が認められた事例
【22】夫婦間でも信仰の自由は尊重されねばならないが、夫が妻から子供らに教義を教え込まれたくない、家族一緒に正月を祝いたい、先祖供養のために墓参りしたいと考えても、間違っているとして非難できず、夫の考えや気持ちを無視する妻にも責任があるとして、夫からの離婚請求が認められた事例
(訴訟提起)
【23】夫が、虚偽の事実を作り出して妻に対する離婚訴訟を提起し、印鑑証明書の不正取得やマンションの分割について別訴を提起して妻に応訴を求めたため、妻が離婚を決意したから、妻に対する慰謝料額としては300万円が相当であると認められた事例
(夫婦共同生活を築く前の破綻)
【24】夫婦の婚姻関係は、家事分担のあり方や妻が主に担当することになった家事(特に清掃)に関して、婚姻当初から双方に意見の相違があり、諍いが絶えなかったことによって、夫婦としての安定した信頼関係を形成する間もなく破綻に向かったものであるが、夫の暴力、妻のツイッター書き込みなどがあり、婚姻関係の破綻には双方に責任があるとされた事例
【25】夫婦は、インターネットの出会い系サイトを通じて知り合い、1か月余りで婚約し、その約3か月半後には婚姻の届出をし、その後、わずか2週間余り同居しただけで別居に至ったというのであり、その婚姻関係は、通常の夫婦と比較すると、さほど強固なものとして形成されていなかったとして、離婚が認められた事例
【26】婚姻関係は、実家や親族を重視する夫と夫婦関係を大事に考える妻との考え方の隔たりや金銭感覚の違いなどが要因になって次第に亀裂が深まり、破綻したものと認められるから、本件婚姻の破綻原因は基本的に夫婦双方にあるものというべきであるが、どちらかといえば、婚姻関係の破綻について夫に非があるとされた事例
【27】国際結婚に伴う諸々の障害とりわけ相互理解を深めることについて互いの性格、能力が十分でなく、両者の関係は深刻となっていたが、関係改善の努力はされず、率直な気持ちの交換の機会を持たないまま、関係は悪化していった。妻は信頼感あるいは愛情の深さを夫に対して実感できなかったことが婚姻関係の破綻事由であるとされた事例
(夫婦関係が一旦修復された後の離婚請求)
【28】夫が妻の不貞行為を一旦宥恕した場合、その後夫婦関係が破綻するに至った時は、夫が既に宥恕した不貞行為をもって有責配偶者からの離婚請求と主張することは許されないとして、妻からの離婚請求が認められた事例
【29】長期間の単身赴任等による別居を理由とする夫からの離婚請求であるが、一旦、夫が関係修復を申し入れたことで夫婦関係は実態を取り戻しており、改めて夫が離婚を申し入れた以降の別居期間は2年7か月にとどまり、それほど長期には及んでいないことなどを理由として、破綻が否定された事例
第2章 別居の期間・理由・態様
(別居期間)
【30】共働きの夫婦において、家計を管理していた夫に対する妻からの、デリヘル利用やゲーム課金が浪費であること等を理由とする離婚請求について、これらは浪費であるが、離婚事由として評価するほどのものではなく、別居期間も2年程度であることなどを理由として、破綻が否定された事例
【31】3年を超える別居期間があり、双方に有責行為はないが、妻が一貫して離婚を求め、夫の側も妻を関連会社の登記簿上の代表者から外し、妻名義の生命保険契約等の名義を変更し、子らのパスポート更新手続への協力を拒絶するなどしたことで信頼関係が喪失したとして、妻の離婚請求が認められた事例
【32】別居期間は4年10か月余りと長期に及んでおり、それ自体として、婚姻関係の破綻を基礎付ける事情である。そして、妻は一貫して離婚を求め続けており、夫は、審判で命じられた婚姻費用分担金の支払を十分にしないなど婚姻関係の修復意思を有していることに疑念を抱かせるとして、妻からの離婚請求が認められた事例
【33】8年を超える別居は婚姻関係の破綻を十分に基礎付ける事情であるところ、妻の離婚意思は固く、一方、夫には自己の価値観と相容れない意見を許容することができない姿勢が強く認められるから、夫婦関係を修復することも困難であるとして、妻の離婚請求が認められた事例
(別居理由)
【34】18年の別居にもかかわらず、別居生活の発端は夫婦間の不和というよりも、夫が自由な生活を望んだことにあり、少なくとも当初においては、別居は婚姻関係の破綻の表れと認めることはできないとして夫から妻への離婚請求が棄却された事例
【35】妻による業務妨害等を理由とする夫の離婚請求について、婚姻関係は30年以上にわたり、共に協力して事業を発展させてきたものであり、夫婦関係の絆は決して弱いものではないこと、別居期間3年6か月は同居期間と比較すれば、さほど長いとはいえないこと、そもそも夫が別居に至ったのは、自らの不貞行為を断ち切りたくないという独善的な動機に基づくものであることなどを理由として、婚姻関係の破綻が否定され、離婚請求が棄却された事例
(別居態様)
【36】夫が妻に離婚を通告後、別居し、妻との接触を避け、一切の話合いを拒絶し7年以上経過したが、このような場合、別居期間が長期化したとしても、婚姻を継続し難い重大な事由があるとすることはできない。仮に、同事由があるとしても、本件では、離婚を認めた場合、妻は精神的苦境及び経済的窮境に陥るし、未成年の子らの監護・教育・福祉に悪影響が及ぶとして、離婚請求が棄却された事例
第3章 有責配偶者
(比較的短期間の別居期間)
【37】夫は有責配偶者であり、別居期間は約2年8か月であるが、同居期間が約1年9か月であることや双方の年齢(30代前半)を考慮すると、別居期間が相当の長期間に及んでいるということができるなどとして、離婚請求が認められた事例
【38】夫は有責配偶者であるところ、転居してから約4年10か月が経過したにすぎない上、転居後も相当期間、妻や長男と会食や家族旅行をするなど、勤務の都合で一時的に別居を余儀なくされた夫婦と同様の関係を継続していたことから、別居期間は相当の長期間にわたっていないとして、離婚請求が棄却された事例
【39】別居期間が6年以上の有責配偶者である夫からの離婚請求であるが、もともと会話の少ない意思の疎通が不十分な夫婦であったところ、妻と外国人男性との不倫疑惑で夫婦の溝が大きく広がり、互いに夫婦としての愛情を喪失して別居に至った経過等から、離婚請求が信義則に反するものではないとされた事例
【40】別居期間が7年余りの有責配偶者による離婚請求について、婚姻期間は30年を超えており、その別居期間が相当の長期間に及んでいるとはいえない。妻は精神的に多大な負担を強いられており、離婚により精神的に極めて苛酷な状態に置かれることが明らかであるとして、離婚請求が棄却された事例
(未成熟子の存在)
【41】別居から既に6年以上が経過しているから、婚姻関係は、既に破綻している。しかし、夫は有責配偶者であり、離婚により長男がパニックを起こすおそれがあるなど障害を有する未成熟子への影響が大きいなどとして、離婚請求が棄却された事例
【42】有責配偶者である夫からの再度の離婚請求であるが、同居期間は約3年11か月であるのに対し、別居期間は9年1か月に及んでおり、離婚によって妻子が母子家庭となるとしても、妻を経済的、社会的、精神的に過酷な状況に置くとはいえない。また、夫と交際相手及びその間の子との新たに形成された生活関係に対する配慮も必要であるなどとして、離婚請求が認容された事例
【43】有責配偶者からの離婚請求だが、婚姻期間が9年6か月であるところ、別居期間は8年5か月であり、相当な長期間に及び、また、小学3年の長男は妻の努力等により良好な教育環境が保たれていること、妻の医師という職業からすると今後も相当程度の収入があると予測されること等から、離婚請求が信義則に反するとまではいえないとされた事例
(過酷要件)
【44】別居してから既に12年以上経過後の、有責配偶者である夫からの離婚請求であるが、妻は、現在、資産も安定した住居もなく、離婚が認容されると経済的苦境に陥る。長男は、成人しているが、身体的障害・成育歴等から、妻が独力でその生活の援助を行わざるを得ないのであり、妻を精神的、社会的、経済的に極めて過酷な状況に置くことになるとして、離婚請求が棄却された事例
【45】別居期間が9年近くに及ぶ有責配偶者である夫からの離婚請求について、離婚すれば、婚姻費用の支払がなくなり、妻が経済的に過酷な状況に置かれ、精神疾患にり患している三男の監護・福祉に著しい悪影響が及ぶ、夫の離婚給付の提案は不確実であるなどとして、離婚請求が棄却された事例
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