• 相続・遺言
  • 単行本

判例にみる 遺言解釈のポイント-趣旨が不明確、多義的、不記載・誤記、実態との相違、抵触など-

編著/赤西芳文(弁護士・元大阪高等裁判所部総括判事)

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価格
4,180 (税込)
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概要


相続トラブルを防ぐ遺言書作成のために!

◆遺言解釈が争点となった裁判例から重要なものを5つの類型に分類・整理し、遺言の記載内容に対する裁判所の判断や裁判例の意義、特徴等を解説しています。
◆遺言解釈のポイントを理解することにより、適切な遺言書作成に役立ちます。
◆元大阪高等裁判所部総括判事が裁判官の目線で編集しています。

商品情報

商品コード
81260461
ISBN
978-4-7882-9226-0
ページ数
336
発行年月
2023年7月

目次

第1章 遺言文言の趣旨が争われたもの
1 趣旨が不明確な記載
 【1】 「一切の財産は○○にゆずる」との文言を遺贈の趣旨と解し、養女○○に「後を継す事は出来ないから離縁をしたい」の文言を相続人廃除の趣旨と解することが相当であるとされた事例
 【2】 「相続人を選定し○○家の再こうをお願いします。」との遺言文言について、相続人にならない者に対し遺産を遺贈する趣旨ではなく、相続人を指定する趣旨であって無効であるとされた事例
 【3】 「私の現在の財産年金の受給権は○○にわ一切受取らせないようお願ひします」との遺言文言の趣旨は○○を推定相続人から廃除する意思を表示したものと解すべきであるとされた事例
 【4】 遺言書の「G FにBの面倒をたのみます 私のけん利の土地をゆずります」との記載が、G及びFに被相続人A死亡後長女Bの世話をすることを依頼するとともにA所有土地を2分の1ずつの持分割合で死因贈与するとの趣旨であるとされた事例
 【5】 「金員の全ては3人の子供の養育の為にのみに使用して下さい。」「私の自宅は、○○の姓を名のり、又○○家の血脈を継承する人間のみが出入りし、使用して下さい。」「金員の管理は、○○家によって行われるものとして下さい。」等の遺言文言が、子に財産を遺贈し、母の管理権を奪い、管理人を指定するものと解された事例
 【6】 「吾亡きあと妻及び遺財のことにつき申し残すもの也」「財は妻Xの志思によりて処分するものなり 吾が財は子のものにあらす孫のものにあらず吾と妻のものなるによる也」(第1遺言)「財の処分はXの意志に任せること」(第2遺言)との各遺言文言につき、全ての遺産を妻Xに相続させるとの趣旨と解された事例
2 「相続させる」との文言
 【7】 「建物の存在する土地を4分割し、西から順に4名の相続人に相続させる」との遺言文言について、相続による当然承継を妨げる特段の事情はないとされた事例
 【8】 「財産のすべてを相続人○○に相続させる」との遺言がされたが、上記相続人○○が被相続人よりも先に死亡した場合に遺言の当該部分は失効するとされた事例
 【9】 「財産全部を相続させる」旨の遺言に対し、遺留分減殺請求がされた場合に請求者の相続債務を加算することはできないとされた事例
3 「まかせる」との文言
 【10】 「いさんそうぞくの指定としっこうを○○にいたくする」との遺言が相続分の指定と遺産分割方法の指定を委託した趣旨であると解された事例
 【11】 「○○家の財産は全部○○にまかせる」との遺言が遺贈とは認められなかった事例
 【12】 「家屋と借地権を自由に裁量処分することを相続人○○に委任する」との条項は「相続させる」との趣旨に解すべきであるとされた事例
 【13】 「○○名義の物にはXにまかせる」との遺言文言が包括遺贈の趣旨ではないとされた事例
 【14】 「全部Xちゃんにおまかせです よろしく整理して下さい」との遺言文言が遺産全部の遺贈と解された事例
 【15】 「財産については私の世話をしてくれた長女のXに全てまかせます」との遺言文言が包括遺贈の趣旨と解された事例
 【16】 「Aは○○にすべてまかせる」との遺言が包括遺贈の趣旨であると解された事例
 【17】 「不動産の相続は、夫のX1にすべてまかせます」との遺言文言が当該不動産を夫に相続させる趣旨であると解された事例
 【18】 「預貯金、身の周りの物の整理を○○さんにすべて委託します。」との遺言文言が預貯金の遺贈の趣旨であるとされた事例
4 条件付きの記載
 【19】 妻に全財産を相続させる旨の遺言が停止条件を付したものとは認められないとされた事例
 【20】 遺言者とその妻の同時死亡が遺言の効力発生の停止条件とされており、遺言者が死亡し、妻が生存したことにより、同遺言が無効であるとされた事例
 【21】 内縁の妻に対して財産を遺贈する旨の公正証書遺言について、同遺言が遺言者と内縁の妻との内縁関係の継続を前提又は条件としてなされたものであるとは認められなかった事例
 【22】 「長男Yを遺言者の経営するd(株)の後継者と定め、会社の株を含む後の1/2をYに相続させます。」との遺言について、遺言者の真意は、業種や事業規模を問わずYに遺言者が経営していたd社を委ねる趣旨であり、「会社としての実体のある金物業としてのd社の跡を継ぐこと」が相続の停止条件であったと認めることはできないとされた事例
 【23】 遺言書本文が封入された封筒の裏面記載の「◎私がBより先に死亡した場合の遺言書」との記載も遺言の内容に含まれ、遺言が被相続人が死亡した際にBが生存していることを停止条件とするものであるとされた事例
5 遺言の抵触
 【24】 終生扶養を受けることを前提として養子縁組したうえその所有する不動産の大半を養子に遺贈する旨の遺言をした者が、その後、協議離縁した場合には、上記遺贈は後の協議離縁と抵触するものとして民法1023条2項の規定により取り消されたものとみなさざるをえないとされた事例
 【25】 高齢の夫がその妻に遺産をすべて譲るとの遺言を作成した後、妻の死後、土地家屋の処分代金を子供らに一定の割合で与える旨の遺言を作成した場合、右二通の遺言の内容に抵触がないとされた事例
 【26】 相続させる旨の公正証書遺言とその後に作成した自筆証書遺言の内容に抵触はなく、両遺言は一体となって遺産全体についての処分が定められたものと解された事例
 【27】 遺言の一部がそれと抵触する後の遺言により取り消されているからその限度で無効となるとされた事例

第2章 財産に関する記載が争われたもの
1 不明確・多義的な記載
 【28】 「青桐の木より南方地所はXニXニ譲ル」という記載が特定土地の遺贈の趣旨であるとされた事例
 【29】 「普通口座のひとつ」を贈与するとの記載について、定期預金口座をも贈与する趣旨と解するのが相当であるとされた事例
 【30】 住居表示で表示された不動産の遺贈につき、同所にある土地及び建物のうち建物のみを目的としたものと限定して解することは相当でないとされた事例
 【31】 遺言書の「遺産金の十分の七」という記載につき、現金・預貯金の10分の7ではなく、相続財産全部の10分の7と解釈された事例
 【32】 「財産の全て(現金・預貯金を含む。)」の「財産」が消極財産である債務を含むとまでは認められないとされた事例
 【33】 「此の家と地上権はD子に上げてください。」という記載は、自宅建物とその敷地の借地権について遺産分割方法を指定したものであると解釈された事例
 【34】 不動産及び預託財産以外の「一切の財産」とは少額の財産を意味するとされたほか、葬儀費用の負担者について判断された事例
 【35】 「右各金融機関における遺言者名義の金融債権及び有価証券の全部」に遺言者所有の株式が含まれないと解された事例
 【36】 遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況を考慮してもなお「物品(金その他)すべて一切」の意味を確定し難い本件では、その文言の通常の意義に従って解釈することが相当であるとされた事例
 【37】 「○○寺に郵便局・銀行の有価証券を遺贈する」との遺言について、有価証券が遺産に存在しなかったが、預貯金債権を遺贈する趣旨であるとされた事例
 【38】 「別紙資料のとおり不動産のすべてを現住所世田谷区(以下省略)Y2に無償で譲与する」との遺言が「別紙資料」の添付がなくとも、遺贈目的物の特定を欠くとはいえないと解された事例
 【39】 「動産」は、不動産以外の有体物のみならず、金融機関に預け入れた有価証券等や預貯金も示すと解釈された事例
 【40】 「残ったお金は全部Xにあげます」との遺言文言につき、被相続人の有する損害賠償請求権も上記遺言中の「お金」に含まれるとした事例
 【41】 遺言は香港における財産のみを対象とし、「私の遺産に関する私の債務」に日本における債務は含まないと解釈された事例
2 不記載・誤記
 【42】 遺言書に、「土地」、「建物」、「定期預金」、「株券」は記載されているものの、「普通預金」、「投資信託」、「国債」、「出資金」、「現金」、「動産」という記載がない場合に、相続財産すべての遺贈が認められた事例
 【43】 Xに旧建物を取得させるとした遺言について、遺言作成後に旧建物が取り壊され、同敷地上に新建物が築造され、所有権保存登記が経由された場合、遺言書に記載のない新建物についても、Xに単独で相続させる趣旨であると解釈された事例
 【44】 「本件区分所有建物をYに相続させる」との遺言には、同建物の敷地利用権を付与するとの意思表示が含まれていると解された事例
 【45】 遺言書に明示的な記載のない遺産につき、遺言の対象となっていないものと解された事例
 【46】 遺言書には株式についてXに相続させる旨の記載があるが、投資信託についての記載がない場合に、投資信託についてもXに相続させる意思であったと解されなかった事例
 【47】 遺産中の積極財産の大半を取得するXに、相続税の負担を除き、遺言者の債務を全額負担させる趣旨であったと解された事例
 【48】 遺言中には、法定相続分に応じて法定相続人らに相続させる趣旨の文言がないことなどから、遺産中の不動産について、遺産分割前の遺産共有の状態にあると解された事例
 【49】 本件遺言書における本件記載⑦は、本件記載①ないし⑥に記載がされなかった東京都内に所在する不動産を包括的に長女X1に取得させる意思を表示したものと読むことが被相続人Aの真意に合致すると解釈するとともに、本件記載⑥につき、Aの夫が死亡している現在においては、第2物件目録記載に係る不動産を長女の子X2に取得させるものとして解釈することが相当であるとした事例
3 実態と相違のある記載
 【50】 第1遺言、第2遺言と異なる内容の遺言(第3遺言)がされたが、同遺言は、被相続人の心情を記載したものであり、遺言の趣旨ではないと解された事例
 【51】 「駐車場に使用中の場所を相続するものとする」との遺言の対象が駐輪場として使用されていた土地を含むと解された事例

第3章 相続人・受遺者等に関する記載が争われたもの
 【52】 「法的に定められたる相續人」との文言について、法定相続人ではなく、実子ではないが嫡出子として出生届の出されている戸籍上唯一の相続人を指す余地があるとされた事例
 【53】 「次弟を継承する者が受次ぐこと」との遺言文言について、家業を営んでいた被相続人の長男が相続する意味であると解された事例
 【54】 財産を相続人でないFに遺贈するとの遺言について、Fが遺言者と同時に死亡した場合についても、遺言者は、相続人のXには自己の財産を一切相続により取得させない意思を表示したものと解された事例
 【55】 「遺産の全部を二男Yまたは妻Bが相続する」との遺言について、Bが遺言者より先に死亡した場合は、Bに対して指定した相続分をYの相続分に加えるとの趣旨であると解された事例
 【56】 「遺言者が有する一切の財産を甲山Y男(生年月日、住所記載)に包括遺贈する。」「遺言執行者として甲山Y男を指定する。」との遺言において、「甲山Y男」が甲山Y夫であることを認めた事例

第4章 遺産の分割方法に関する記載が争われたもの
1 分割方法が不明確な記載
 【57】 「Xに遺贈する」「○○の不動産は、材木店経営中は一応其儘して」「X死亡後は、Y1、Y2、……に2、2、……の割合で権利分割所有す。但し、右の者らが死亡したときは、その相続人が権利を継承す」などの遺言文言が、Xに対する負担付遺贈、X死亡を停止条件とするYらに対する所有権移転の趣旨などと解する余地があるとされた事例
 【58】 「右以外一切の財産は○○に譲渡する。」との遺言が、特定財産を取得させる趣旨であって、遺産分割方法の指定であり、遺贈に関する民法994条1項及び995条ただし書の規定は適用されないと解された事例
 【59】 「○○の土地は●●の相続とする」「△△の土地について▲▲に相続させて下さい」との遺言が遺産分割方法の指定と解され、特段の事情のない限り遺贈と解すべきでないとされた事例
 【60】 「相続させる」との記載のない遺言につき、遺言の文言や被相続人の置かれていた事情から、「相続させる」遺言と解釈することができないとされた事例
 【61】 「分けて下さい」との記載のある遺言につき、遺言の文言や被相続人の置かれていた事情から、「相続させる」遺言と解釈することができるとされた事例
 【62】 「相続させない」旨の遺言につき、当該相続させないとされた者が被相続人より先に死亡した場合、その者の代襲相続人に相続させない趣旨を含むものではないとされた事例
2 特定財産の帰属先をめぐる記載
 【63】 被相続人が自己所有の財物を全て自らが設立する株式会社に遺贈する遺言をしても、当該会社の株式や会社に無関係な日常生活に関する財物までも遺贈に含まれると解するのは合理的でないとされた事例
 【64】 遺言の解釈につき文意不明であるとはいえず効力が認められた事例
 【65】 会社従業員が退職金を遺贈する旨の遺言をした場合につき、同人は、死亡退職金につき、会社の退職金規定に基づき、労働基準法施行規則43条2項にいう受取人の指定をしたものと認められた事例
 【66】 受遺者の選定を遺言執行者に委託する旨の遺言が有効であるとされた事例
 【67】 遺言による生命保険金受取人の変更は、遺言者の死亡と同時に効力を生じ、遺言のとおりに死亡保険金の受取人が変更されるものと認めるのが相当であるとされた事例
 【68】 遺産の全部を「相続させる」趣旨の遺言につき、これが第三者への遺贈又は贈与であるとの主張が排斥された事例
 【69】 遺言書に「土地はXへ」「家は二人で使うように」と記載されていた場合に、被相続人が他の共同相続人に生前、自宅購入資金を渡していたことを考慮して、当該土地を共同相続人の1人へ相続させるが、建物は共同相続人2人で使用させることにしてその公平を図ったものと理解するのが相当であるとされた事例
 【70】 「左記不動産を○○に贈与する」とした上で不動産以外の財産も列挙されていた場合であっても、当該不動産以外の財産が遺贈の対象となるとされた事例
 【71】 遺言書を隠匿したことにより欠格事由が認められる相続人が当該遺言書により取得するものとされていた財産について、当該相続人の子(遺言者の孫)に代襲相続を認めることはできないとされた事例
 【72】 真正に成立したと認められる本件書面1は、自筆証書遺言の形式的な要件は認められ、判読可能な箇所を解釈すると、本件各不動産については、いずれも養女Xに相続させる趣旨であると解されるとした上で、本件書面2は自筆証書遺言と認められず、仮に自筆証書遺言であるとしても、本件書面1を撤回したものとはいえないとされた事例

第5章 相続分・遺贈割合の指定に関する記載が争われたもの
 【73】 法定相続人でない2名への遺贈について分割割合が明示されていなくても、均等に包括遺贈する意思があったものと解された事例
 【74】 「○○に動産全額の○○%相続させる」旨の遺言は、遺産分割方法の指定をしたものとはいえないとされた事例

索 引
 ○判例年次索引

著者

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