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2025年01月24日 更新
判決日 2021年03月18日 令和2(ウ)4号
保全異議申立事件
広島高等裁判所 第4部
判示事項 発電用原子炉施設である伊方発電所(本件発電所)の周辺に住む債権者らが,人格権に基づいて本件発電所3号機の原子炉(本件原子炉)の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案において,次のとおり判断して,本件原子炉の運転の差止めを命じた抗告審決定を取り消し,債権者らの抗告を棄却した事例。 1 現在の科学的知見からして,本件原子炉の運転期間中にその安全性に影響を及ぼす大規模自然災害の発生する可能性が具体的に高く,これによって債権者らの生命,身体又は健康が侵害される具体的危険があると認められなければ,本件原子炉の運転差止めを命じることはできない。この疎明責任は債権者らが負うべきであり,福島事故による影響の甚大性等を考慮しても,独自の科学的知見を有しない裁判所において,本件原子炉の存在及び債権者らの居住状況から直ちに債権者らの生命等が侵害される具体的危険があると事実上推認するなどということは相当でない。 2 債務者が行った海上音波探査の結果,本件発電所敷地の2km以内に活断層はないとした債務者の評価に不合理な点があるとは認められない。また,債権者らが指摘するSPGAモデル及び「不均質モデル」を,将来発生する地震動の予測に用いることの当否は明らかでなく,債務者による基準地震動の算定が不合理であるとは認められない。 3 阿蘇が本件原子炉の運転期間中その安全性に影響を及ぼすような規模の噴火を引き起こす具体的危険の有無については,専門家の間でもそれぞれの分析結果等に基づいて意見が分かれている。このような現在の科学的知見からして,阿蘇が上記のような噴火を引き起こす可能性が具体的に高いと認めることはできない。 4 債権者らのその余の主張を検討しても,上記具体的危険が疎明されたとは認められない。
結果 その他
裁判長裁判官 横溝邦彦 裁判官 鈴木雄輔 裁判官 沖本尚紀
(原審) 山口地方裁判所 岩国支部 平成29(ヨ)5号 却下
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2020年09月16日令和1(ネ)365号
損害賠償請求控訴事件
広島高等裁判所 第4部
判示事項 【事案の概要】 本件は,夫となるべき者と共に,夫婦それぞれの氏を称するものとして婚姻届を提出したところ,民法750条及び戸籍法74条1号(以下「本件各規定」という。)を理由に受理されなかった控訴人が,本件各規定は憲法14条1項,憲法24条,市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)並びに女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(以下「女子差別撤廃条約」という。)に違反するものであり,本件各規定を改廃して夫婦別氏という選択肢を新たに設けない立法不作為は違法であると主張して,国家賠償法1条に基づき,50万円の賠償を求めた国家賠償請求訴訟 【理由の要旨】 1 本件では,昭和22年の民法改正後の社会情勢の変化等によって,本件各規定が定める夫婦同氏制が合理性を欠くことになり,憲法24条2項や憲法14条1項に反する状況に至っているというべきか否かが問われている。 夫婦同氏制は,長く我が国の社会に定着してきたものであり,夫婦同氏制を定めた本件各規定が憲法24条や憲法14条1項に直ちに違反するものということはできないし,本件と同様の事案について同様の判示をした平成27年最高裁判決後も,夫婦同氏制を定める本件各規定が,憲法24条や憲法14条1項に反する状態に至っているというまでの社会情勢の変化等があったとはいえない。 2 本件各規定が自由権規約あるいは女子差別撤廃条約に違反する旨の控訴人の主張は採用できない。
結果 棄却
裁判長裁判官 横溝邦彦 裁判官 鈴木雄輔 裁判官 沖本尚紀
(原審) 広島地方裁判所 平成30(ワ)505号 棄却
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2020年01月17日平成31(ラ)48号
伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
広島高等裁判所 第4部
判示事項 発電用原子炉施設である伊方発電所(本件発電所)から約三十数km又は約四十数kmの距離に住む抗告人らが,本件発電所3号機の原子炉(本件原子炉)及びその附属施設(本件原子炉施設)には地震,火山の噴火等に対する安全性に欠けるところがあるとして,人格権に基づいて本件原子炉の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案において,次のとおり判断して,申立てを却下した原決定を取り消し,本案訴訟の第一審判決の言渡しまでの間,本件原子炉の運転の差止めを命じた事例。 1 抗告人らは,本件原子炉施設について放射性物質が外部へ放出される事故が起こったときに,その生命,身体等に直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域に居住する者であるから,当該発電用原子炉施設の設置運転の主体である相手方において,原子炉の運転によってその生命,身体等に対する侵害が生ずる具体的危険が存在しないことについて相当の根拠,資料に基づき,主張・疎明を尽くさない場合には,上記の具体的危険の存在が事実上推定されるというべきである。ただし,相手方は規制委員会から本件原子炉施設が新規制基準に適合するとして発電用原子炉設置変更許可を受けており,この適合性の審査において,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づく総合的判断が必要であることなどに照らすと,①現在の科学技術水準に照らし,当該具体的審査基準に不合理な点のないこと,及び②当該発電用原子炉施設が上記審査基準に適合するとした規制委員会の判断について,その調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落がないなど,不合理な点がないことを相当の根拠,資料に基づき主張,疎明すれば,上記の主張・疎明を尽くしたということができる。 2 中央構造線断層帯長期評価(第二版)には,本件発電所敷地沿岸部における活断層の有無に関する相手方の海上音波探査が不十分であることを前提とした記載があり,また,本件発電所敷地から2km以内の距離にあると考えられる地質境界としての中央構造線が活断層である可能性をうかがわせる事情が認められるのに,本件発電所敷地沿岸部における活断層の有無についてそれ以上の調査を行わずに活断層はないと判断して,活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価を行わず,規制委員会はこれを問題ないと判断したものであるから,上記規制委員会の判断には,その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ず,相手方は,上記の点につき上記1の具体的危険の不存在についての主張・疎明を尽くしたとはいえない。 3 新規制基準のうち,火山事象の影響による危険性に関する内規である火山ガイドは,検討対象火山の噴火の時期及び程度が相当前の時点で予測できることを前提とする点において不合理であり,したがって,阿蘇カルデラの破局的噴火により,阿蘇カルデラからの火砕流が本件発電所敷地に到達する可能性が十分に小さいとはいえず,また,本件原子炉の運用期間中に阿蘇カルデラの破局的噴火が発生する可能性が十分に小さいともいえないけれども,そのことのみをもって本件原子炉を立地不適とすることは社会通念に反する。しかし,阿蘇カルデラの破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火(噴出量数十km3)の可能性は考慮すべきであって,そうすると,相手方による降下火砕物の想定は過小であり,これを前提として算定された大気中濃度の想定も過小であって,このような過小な想定を前提としてなされた本件原子炉に係る原子炉設置変更許可等の申請及びこれを前提とした規制委員会の判断も不合理であって,相手方は,上記の点につき上記1の具体的危険の不存在についての主張・疎明を尽くしたとはいえない。
結果 その他
裁判長裁判官 森一岳 裁判官 鈴木雄輔 裁判官 沖本尚紀
(原審) 山口地方裁判所 岩国支部 平成29(ヨ)5号 却下
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判決日 2019年03月28日平成30(ネ)203号
損害賠償請求控訴事件
広島高等裁判所 第4部
判示事項 拘置所の職員が,拘置所に勾留中の被告人と接見中の弁護人に対し,①再生しようとするビデオテープ等の内容を申告させる行為は,憲法34条前段,刑訴法39条1項が保障する弁護人等の秘密交通権を侵害する違法な行為であるが,平成19年に発せられた法務省矯正局成人矯正課長による通知に基づいて行われたものであるとして過失を否定し,②上記申告に応じない弁護人に対し,再生中の音声の一時中断を求めた行為は違法であり,過失も認められるとして,国家賠償請求を一部認容した事例。
結果 その他
裁判長裁判官 森一岳 裁判官 鈴木雄輔 裁判官 沖本尚紀
(原審) 広島地方裁判所 平成27(ワ)866号 棄却
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判決日 2018年01月25日平成29(わ)55 号
過失運転致死傷
岐阜地方裁判所 多治見支部
判示事項 最高速度が50キロメートル毎時に規制された自動車道において,携帯電話機の画面を脇見したため,工事規制に気付かないまま,大型貨物自動車を漫然と時速約90キロメートルで運転して,自車を工事車両やガードレール等に順次衝突させ,その衝撃により工事車両等を押し出し,更に自車の積荷を高架下に落下させたことにより,工事作業員1名を死亡させ,工事作業員や高架下道路を走行中の車両の運転者等8名に傷害を負わせた事案。被害結果は重大で,死亡した被害者の遺族の感情が峻烈である。また,自動車道において大型貨物自動車を運転中に,携帯電話機の地図アプリケーションを起動させようとして脇見した過失も重い。他方,工事規制がされた場所にいた工事作業員や,高架下道路を走行中の車両の運転者等である被害者らに落ち度はない。
結果
裁判官 鈴木雄輔
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