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2022年10月05日 更新
判決日 2020年10月16日 平成30(ネ)2347号
損害賠償請求控訴事件
大阪高等裁判所 第12民事部
判示事項 子を殺害したとして有罪判決を受け,20年の除斥期間経過前に子の死亡を原因とする損害賠償請求権を行使することができなかった母親が,再審公判における無罪判決確定後6か月以内に損害賠償請求訴訟を提起した事案について,除斥期間の経過により損害賠償請求権が消滅することを定めた民法724条後段(平成29年法律第44号による改正前のもの)は,加害者が権利者の権利行使を意図的に妨害した場合など,これを適用することが著しく正義・公平の理念に反するときはその適用が制限されるが,本件では,被告とされた会社の従業員等が母親の刑事事件や再審開始決定に対する即時抗告審において母親の権利行使を意図的に妨害したなどと認めるには足りないと判断し,除斥期間の経過を理由として損害賠償請求を棄却したもの
結果
裁判長裁判官 石井寛明 裁判官 和久田斉 裁判官 河野申二郎
(原審) 大阪地方裁判所 平成29(ワ)724号
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2019年10月29日令和1(行ケ)4号
選挙無効請求事件
大阪高等裁判所 第12民事部
判示事項 1 最高裁大法廷判決の判断 平成29年大法廷判決は,参議院の創設以来初めての合区を行い,これによって,選挙区間の最大較差がそれまでの5倍前後で推移していた状態から2.97倍(平成28年選挙当時で3.08倍)に縮小した平成27年改正法について,合区というこれまでにない手法を導入し,それまでの最高裁大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができる上,附則において,次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得ると定めることで,投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されているなどとして,憲法に違反するとはいえないと判示した。 平成29年大法廷判決は,参議院の通常選挙における投票価値の較差の憲法適合性に関し,それまでの最高裁大法廷判決で示されてきた判断と同一の基本的な考え方に立つものである。本件選挙に関しては,平成29年大法廷判決の判断対象となった旧定数配分規定と同様の合区を維持したままの定数配分規定について,その憲法適合性に関する判断が求められているから,本件では平成29年大法廷判決を踏まえた判断をするのが相当である。 2 定数配分規定の憲法適合性に関する判断枠組み 憲法は,選挙権の内容の平等,すなわち投票価値の平等を要求している。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り,それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても,憲法に違反するとはいえない。また,二院制の下での参議院の在り方や役割を踏まえ,参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し,国民各層の多様な意見を反映させて,参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも,選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものであり,政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるものでもない。 以上の判断は,平成29年大法廷判決が示す判断枠組みに沿ったものである。 3 本件選挙当時の投票価値の不均衡が違憲状態にあるか 平成30年改正法は,平成27年改正法における合区を踏襲した上で,参議院(選挙区選出)議員の定数を2人増加し,これを埼玉県選挙区に割り振ることによって,選挙区間の最大較差を平成28年選挙当時の3.08倍から2.985倍(本件選挙時の最大較差は3.00倍)に縮小したものである。また,国会においては,平成30年改正法の成立までに,参議院の選挙制度に関して様々な立場に基づく幅の広い意見交換がされ,複数の法律案が提出・審議されるなどしている。一方で,投票価値の較差の更なる是正を図りながら,他の政策的目的ないし理由との調和を実現し,多くの国民によって支持され得るような具体的な選挙制度の仕組みを見いだすことは容易ではない。 これらの事情,とりわけ平成30年改正法により最大較差が平成28年選挙当時より更に縮小されたことからすると,本件選挙当時,選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえず,現行の定数配分規定が憲法に違反するということはできない。 4 選挙制度の抜本的な見直しについて 平成27年改正法附則には,本件選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得るとの規定が置かれており,そのことが平成29年大法廷判決の合憲判断の根拠の一つにもなっていたが,その後,平成30年改正法では,定数を2人増加してこれを埼玉県に配分するなどの改正がされたにとどまっており,およそ選挙制度の抜本的な見直しがされたとはいえない状況にあることが明らかである。 しかし,平成30年改正法における定数配分規定は,平成27年改正における合区を踏襲した上で上記の改正を行うことによって,選挙区間の最大較差を平成28年選挙当時から更に縮小したものであることに加え,この間,国会において選挙制度の抜本的な見直しに向けて様々な立場に基づく幅の広い意見交換がされてきたこと,平成30年改正法の成立に当たり,今後の参議院選挙制度改革については憲法の趣旨に則り引き続き検討を行うことを内容とする附帯決議がされたこと,投票価値の較差の更なる是正を図りながら,他の政策的目的ないし理由との調和を実現し,多くの国民によって支持され得るような具体的な選挙制度の仕組みを見いだすことは容易でなく,選挙制度の抜本的な見直しが実現されるまでには相応の年数を要することもやむを得ないと考えられることからすると,選挙制度の抜本的な見直しがされていないからといって,直ちに現行の定数配分規定が憲法に違反するということはできない。 5 結論 本件選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するということはできず,原告らの請求はいずれも理由がない。
結果 棄却
裁判長裁判官 石井寛明 裁判官 和久田斉 裁判官 上田賀代
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2019年05月23日平成30(行コ)50号
戒告処分取消等請求控訴事件
大阪高等裁判所 第12民事部
判示事項 (1) 大阪府の国旗国歌条例,同条例に基づき府教委の教育長が発した,学校行事における国歌斉唱の際に式場内の教職員に起立斉唱を命じる旨の通達,v高校のh校長を除き,各府立学校の校長らが教職員に対して発令した上記同旨の各職務命令は,憲法の諸規定や関係法令,国民主権原理,自由権規約等に反するものでなく,教育長の上記通達及び各校長の職務命令に違反して,入学式あるいは卒業式における国歌斉唱の際に着席し,起立斉唱しなかったことを理由に,控訴人gを除く控訴人らに対して府教委がした戒告処分は,いずれも裁量権を逸脱・濫用するものではなく,適法である。 (2) v高校の職員会議におけるh校長の言動や同校長と控訴人gとの面談内容等からすると,同高校の平成26年度の入学式における国歌斉唱に関し,同校長が控訴人gに対して国歌斉唱時に起立斉唱すべき旨の職務命令を発したとは認められない。 控訴人gに対して府教委がした戒告処分は,教育長の上記通達及び校長の職務命令に違反して,国歌斉唱時に着席し,起立斉唱しなかった行為が地方公務員法に規定する上司の職務上の命令に従う義務に違反したことを理由とするものであるところ,校長の職務命令があったと認められない以上,その懲戒事由の一部に誤りがある。また,上記戒告処分当時,教育長の通達のみに違反したことを理由に懲戒処分を受けた事例があったとは認められず,当時の府教委の指導方針ないし運用も,教育長の通達のほかにこれを踏まえた校長等の職務命令が存在する場合において,これらに従わないときに初めて懲戒処分の対象となるとの認識・予測を教職員らに抱かせるものであったと認められることに照らせば,上記戒告処分は,府教委の裁量権を逸脱・濫用してされた違法なものと認められる。 もっとも,府教委は,必要な調査を経た上で,校長による職務命令の発令があったことを前提に上記戒告処分を行ったものであり,職務上尽くすべき注意義務を尽くさなかったとは認められないから,同処分に国家賠償法1条1項にいう違法があったとはいえない。 ※参考のため,別紙として原判決を添付した。
結果
裁判長裁判官 石井寛明 裁判官 林潤 裁判官 小倉真樹
(原審) 大阪地方裁判所 平成27(行ウ)224号
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
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