裁判官検索
Judges search
Judges search
2024年09月11日 更新
判決日 2024年08月22日 令和6(う)5
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反
高松高等裁判所 第1部
判示事項
結果
裁判長裁判官 佐藤正信 裁判官 田中良武 裁判官 荒井智也
(原審) 松山地方裁判所 令和4(わ)51
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2021年02月26日令和2(わ)175号
殺人,現住建造物等放火,銃砲刀剣類所持等取締法違反,窃盗被告事件
奈良地方裁判所
判示事項
結果
裁判長裁判官 岩﨑邦生 裁判官 田中良武 裁判官 白石大樹
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2019年11月06日令和1(行ケ)1号
選挙無効請求事件
広島高等裁判所 松江支部
判示事項 (1) 従前の最高裁判例についての当裁判所の理解 ア 基本的な判断の枠組み 投票価値の平等は,憲法上の要請であるが,唯一絶対の基準ではなく,正当に考慮することができる他の政策的目的・理由との関連において調和的に実現されるべきである。国会の定めた選挙制度が裁量権の行使として合理性を有する限り,憲法違反とはいえない。 参議院議員選挙法(昭22)・公職選挙法(昭25)の制定時の立法措置は,裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったとはいえない。しかし,その後の人口変動の結果,投票価値の著しい不平等状態が生じ,相当期間継続しているにもかかわらず是正措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には,憲法違反に至る。 憲法は,二院制の下で,両議院にほぼ等しい権限を与えつつ,参議院議員の任期をより長期とすることなどによって,多角的・長期的な視点からの民意を反映させ,衆議院との権限の抑制・均衡を図り,国政の運営の安定性・継続性を確保しようとしている。このような憲法の趣旨を実現し,投票価値の平等の要請と調和させていくためにいかなる選挙制度を採るかは,参議院の性格,機能,衆議院との異同をどのように位置付け,これを選挙制度にいかに反映させていくかを含め,国会の合理的な裁量に委ねられている。 イ 過去3回の選挙についての最高裁の判断 最高裁は,平22選挙(選挙時の選挙人数の最大較差約5.00倍,最高裁判決は平24)・平25選挙(選挙時の選挙人数の最大較差約4.77倍,最高裁判決は平26)について,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったが,合理的な期間内に是正されなかったことが裁量権の限界を超えるとは認められないとした。その際,参議院の選挙区が都道府県単位であることなどは,数十年間にもわたり5倍前後の大きな較差が継続することを正当化する理由として十分といえなくなっているなどと指摘したが,都道府県という単位を用いること自体が許されないとしたわけではない。 最高裁は,平28選挙(選挙時の選挙人数の最大較差約3.08倍,最高裁判決は平29)について,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえないとした。その際,選挙の前年の平27改正法では,定数の増減にとどまらず,複数県の合区も導入し,これにより較差を縮小しており(改正時の人口比で約2.97倍,選挙時の選挙人数比で上記の約3.08倍),また,改正法の附則において,次回通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得るとしているなどと指摘した。 (2) 本件選挙について特に問題とされている点 本件選挙の前年の平30改正法によって,較差は,選挙時の選挙人数比で縮小したが,大幅な縮小ではない。手法をみても,更なる合区や定数減をせず,定数増のみをして,その分だけ全体の定数を増すなどしており,抜本的な見直しと評価し難い側面がある。平27改正法附則のような規定もない。 このような平30改正法をいかに評価するかが問題となる。 (3) 主に上記(2)の点を中心とする当裁判所の判断 較差は定数配分問題の出発点であり,較差の解消は問題解決の最終目標であって,較差縮小の程度は,その手法と並んで,重要な観点となる。平30改正は,較差縮小としては一つの成果を挙げており,特に,本件選挙時の選挙人数の較差は約3.00倍で,平成28選挙時よりも縮小した。 改正に至る検討の過程をみると,平29最高裁判決前から協議され,更なる合区以前の問題として,既存の合区の廃止を求めるなど,合区に対する問題点の指摘や反対の意見も寄せられる中で,合区に代わるブロック単位の選挙区等も提案され,参議院の役割にも立ち入った議論がされるなど,従前よりも更に抜本的な選択肢をも対象とし,より広汎な見地からの議論がされた。結果的に抜本的な見直しに至らないまま,まずは翌年に迫った本件選挙における較差是正を急ぐ見地から,定数増をもって臨むなどしているが,そのような結果に至ったことの一事をもって,今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が放棄されたものと評価するのは,なお,いささか早計というべき段階にあると考えられる。立法府として決意を放棄していないことは,参議院の委員会の附帯決議で明らかにされている。 このように,平成30年改正法は,本件選挙時の較差を約3.00倍にまで縮小したものであり,投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性や立法府の決意が放棄されたものでもなく,再び大きな較差を生じさせることのないよう配慮されている状態もなお損なわれていないとみるのが相当である。 以上のような事情を総合すれば,本件選挙当時の投票価値の不均衡は,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。
結果 棄却
裁判長裁判官 金子直史 裁判官 三島琢 裁判官 田中良武
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2018年07月24日平成27(ネ)77 号
国家賠償請求控訴事件
広島高等裁判所 松江支部
判示事項 【事案の要旨】 1 控訴人は,平成8年4月1日に廃止されたらい予防法(昭和28年法律第214号)11条所定の国立療養所に入所していなかったハンセン病(以下「非入所者」という。)の元患者(以下「母親」という。)の子であり,相続人である。 2 控訴人は,国会議員,内閣,厚生大臣及び被控訴人鳥取県の知事が,平成8年まで,非入所者及びその家族に対する偏見・差別を除去するために必要な行為をしなかったこと,また,これらの者が,非入所者及びその家族を援助する制度を創設・整備するために必要な行為をしなかったことは,国家賠償法上の違法行為に当たる旨主張し,これらの者の違法行為により,母親及び控訴人が,新法の存在及びハンセン病政策の遂行によって作出・助長された偏見・差別にさらされ,あるいは非入所者及びその家族を援助する制度が創設・整備されなかったことによって適切な援助を受けられず生活が困窮するなどし,精神的苦痛を受けたとして,被控訴人らに対し,国家賠償法に基づき,損害金1925万円(①母親に生じた損害賠償請求権のうち控訴人の相続分以下である250万円・②控訴人固有の損害賠償請求権1500万円・③弁護士費用175万円)及びこれに対する被控訴人らに対するそれぞれの訴状送達の日の翌日(被控訴人国については平成22年5月18日,被控訴人県については同月15日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の(数額の重なり合う範囲で連帯)支払を求めた。 3 原審は,要旨,控訴人の主張する被控訴人国の責任のうち,①新法の患者に対する隔離規定は,遅くとも昭和35年には,その憲法適合性を支える根拠を欠くに至っており,その違憲性は明白であり,国会議員が,遅くとも昭和40年以降平成8年まで上記隔離規定を改廃する法律を制定するのを怠ったことは,母親を含む非入所者との関係においても国家賠償法1条1項の適用上違法であり,過失も認められる,②厚生大臣が,遅くとも昭和35年以降患者に対する隔離政策を継続し,患者が隔離されるべき危険な存在であるとの社会認識を放置したことは,母親を含む非入所者及び控訴人を含む非入所者の家族との関係においても,国家賠償法上の違法性があり,過失も認められると判断したが,③控訴人の主張する被控訴人県の責任は否定した。その上で,原審は,被控訴人国の上記違法行為による輝代の精神的損害を認めたが,控訴人固有の損害を認めず,また,母親に生じて控訴人の相続した被控訴人国に対する損害賠償請求権は時効により消滅したと判断し,控訴人の請求をいずれも棄却したのに対し,控訴人は,原判決を不服として控訴した。 【判決要旨】 1 国に対する請求 (1) 非入所者である母親分について ア 厚生大臣の政策転換義務 公務員の公権力の行使に当たる行為が国家賠償法1条1項の違法であるといえるためには,当該公務員が職務上の法的義務に違反したことだけではなく,その法的義務について当該公務員が当該被害者個人に対して負うものであることが必要となる。 厚生大臣としては,遅くとも昭和35年の時点において,隔離政策の抜本的な転換をする必要があったというべきであり,少なくとも,新たに患者を収容することをやめるとともに,すべての療養所の入所者に対し,自由に退所できることを明らかにする相当な措置を採るべきであった。 厚生大臣は,母親を含む非入所者個人に対して,療養所外でのハンセン病医療を妨げる制度的欠陥を取り除き,在宅医療制度を構築するための相当な措置を採るべきであった。 これらを怠って,隔離政策を継続した厚生大臣の行為は違法であり,厚生大臣に過失がある。 イ 厚生大臣の偏見・差別除去義務 ハンセン病患者に対する偏見・差別は,国の隔離政策の以前から極めて深刻であり,国は,偏見・差別を創出したとはいえず,偏見・差別の創出を先行行為として,その除去のために相当な措置をとるべき法的義務があるとはいえない。 全ての患者がハンセン病の感染源と全くなり得ないとまでいうことはできないから,厚生大臣において,患者が社会内で生活することは公衆衛生上何ら問題がないことを市民に広く周知徹底する義務を負っていたとまでいうことはできない。 国の隔離政策の継続により,患者に対する差別・偏見が助長されたことは否定し難いから,偏見・差別の助長を先行行為として,その除去のために相当な措置をとるべき法的義務があるところ,厚生大臣は隔離政策の継続により国が助長した偏見・差別の除去義務を怠った。 ウ 国会の立法義務 国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合や,法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては,国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして,例外的に,その立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受ける。 らい予防法の文言からみると,患者が一律に隔離等の対象とはされておらず,隔離政策の継続を義務付けているわけではなく,隔離の必要性の判断権を行政機関に付与している。隔離の必要性に関する行政機関の判断が変更され,隔離政策の転換がなされ,ハンセン病の治療が受けられる医療機関が広がる余地も,新法の解釈上は残されていた。そうすると,非入所者に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり,それが明白であるとはいえないし,また,らい予防法の規定について憲法上保障され又は保護されている非入所者の権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反することが明白であるとはいえない。したがって,本件立法不作為は,非入所者である母親との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。 エ 内閣の法案提出義務 立法について固有の権限を有する国会ないし国会議員の立法不作為につき,国家賠償法1条1項の適用上違法性を肯定することができないものである以上,国会に対して法律案の提出権を有するにとどまる内閣のらい予防法廃止の法律案不提出についても,同項の適用上違法性を観念する余地がない。 オ 母親の損害 母親は,隔離政策の転換が遅れたため,ハンセン病への偏見及び差別を恐れてその病歴を隠しながら生活していたこと,在宅医療制度を構築するための相当な措置をとらなかったために,ハンセン病の治療を受ける機会が極めて制限されたことによって,精神的損害を被ったと認められる。 カ 消滅時効 控訴人は,平成10年後半以降に国が国際的な批判に耳を貸さずに隔離政策を推進していたものと認識し,平成11年から平成15年7月24日に別件刑事事件を敢行する直前まで,鳥取県の職員に対して,再三,ハンセン病の治療に国民健康保険が使えなかった旨述べ,鳥取県の職員からは訴訟を勧められ,同日頃までの間に,本件で控訴人訴訟代理人となる弁護士にも同様のことを話し,別件刑事事件の控訴審において,弁護人らから患者に対する隔離政策の違法性に関して,論理的かつ明確な説明を受けている。控訴人は,国の隔離政策の継続が非入所者との関係でも違法であると判断するに足りる事実について,遅くとも別件刑事事件の控訴審の判決が宣告された平成16年7月26日には認識していたとみるのが相当である。そうすると,控訴人が相続した母親の国に対する国家賠償請求権の消滅時効は,遅くとも同日から進行するというべきであり,本件訴訟提起時には3年の消滅時効期間が経過していた。 国の時効援用権の濫用,信義則違反,公序良俗違反は認められない。 (2) 控訴人固有分について ア 厚生大臣の政策転換義務 隔離政策の遂行により,療養所に収容されて隔離されたのは患者であって,その家族ではない。隔離政策の下で,ハンセン病の治療が受けられる療養所以外の医療機関が限られ,在宅医療制度が構築されなかったが,その結果として,ハンセン病の治療を受けられる機会が極めて制限され,入所せずに治療を受けることが容易でなかったことに基づく損害を被ったのは,患者であって,その家族ではない。控訴人は,母親の治療のために,極めて多額の経済的負担を強いられて,その生活が困窮したとは認められないし,母親のために控訴人の仕事の選択肢などが制約されたとも認められない。厚生大臣が,患者の子である控訴人に対して,隔離政策を転換し,在宅医療制度を構築するために相当な措置をとるべき法的義務を負っているとはいえない。 イ 厚生大臣の偏見・差別除去義務 ハンセン病患者の家族に対する偏見・差別は,国の隔離政策の以前から存在しており,国は,偏見・差別を創出したとはいえず,偏見・差別の創出を先行行為として,その除去のために相当な措置をとるべき法的義務があるとはいえない。 隔離政策の遂行により患者と接触する機会の多い患者の子その他の家族に対する偏見・差別が助長されたことは否定し難いが,隔離政策自体は患者を対象とするものであり,患者自身に対するものと比較すると,患者の家族に対する偏見・差別の内容・程度も様々であって控訴人に対してその主張するような具体的な偏見・差別を受けたとは認められないから,厚生大臣が,患者の子である控訴人に対して,偏見又は差別の除去のために相当な措置をとる法的義務を負っているということはできない。 ウ 国会の立法義務 (1)ウと同旨 エ 内閣の法案提出義務 (2)エと同旨 2 鳥取県に対する請求 (1) 費用負担者 控訴人の主張に係る母親又は控訴人自身に対する加害行為のうち国会議員の立法不作為,内閣の法案提出義務違反及び厚生大臣の政策転換義務違反における加害公務員は,国会議員,内閣構成員又は厚生大臣などであって,県知事や職員ではあり得ず,鳥取県は,これらの加害公務員に対して給与を負担していない。したがって,鳥取県は,国会議員の立法不作為,内閣の法案提出義務違反及び厚生大臣の政策転換義務違反について,国家賠償法3条1項に基づく損害賠償義務を負わない。 (2) 鳥取県独自の責任 隔離政策遂行などのハンセン病対策事業は,国の機関委任事務とされ,県知事及び職員は,同事業に関する事務について厚生大臣の指揮監督下にあり,日本国憲法下における鳥取県による隔離政策の遂行及び無らい県運動の推進も,国の機関として厚生大臣の包括的な指揮監督の下で実施されたものであって,鳥取県独自の政策であるとはいえない。したがって,鳥取県は,①患者に対応,接触する県関係職員や県民に対し,ハンセン病の知識の普及や教育を行い,患者が地域社会で生活しても公衆衛生上問題がないことを社会一般に周知徹底すべき義務,②患者が適切な治療・介護を受けられるための医療体制・福祉体制を整備した上でその情報を周知する義務を,患者に対して負わない。 同様に,鳥取県は,①患者及びその家族に対応,接触する県関係職員や県民に対し,ハンセン病の知識の普及や教育を行い,患者の家族が地域社会で生活しても公衆衛生上問題がないことを社会一般に周知徹底すべき義務,②患者の家族の偏見・差別に対する恐怖心を軽減するため,その家族に対する相談体制を整備・充実させるべき義務,③患者が適切な治療・介護を受けられるための医療体制・福祉体制を整備した上でその情報を周知する義務を,患者の家族に対して負わない。
結果 棄却
裁判長裁判官 栂村明剛 裁判官 光吉恵子 裁判官 田中良武
(原審) 鳥取地方裁判所 平成22(ワ)110 号 棄却
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2018年02月21日平成29(行ケ)1 号
選挙無効請求事件
広島高等裁判所 松江支部
判示事項 1 憲法は,投票価値の平等を要求しているが,投票価値の平等は,選挙制度の仕 組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮できる他の政策的目的な 定につき国会に広範な裁量が認められている。国会が選挙制度の仕組みについて 具体的に定めたところが,投票価値の平等の確保という憲法上の要請に反するた め,上記裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認できない場 合に,初めてこれが憲法に違反することになると解すべきである。 2 平成28年法律第49号(平成28年改正法)は,その本則において,平成3 2年以降10年ごとに行われる大規模国勢調査に基づく改定案の作成については 日本国民の人口の較差が2倍未満となるようにして,行政区画,地勢,交通等の 事情を総合的に考慮して合理的に行い,都道府県別定数配分はアダムズ方式によ ることとし,その中間年に行われる簡易国勢調査の結果,その最大較差が2倍以 上になったときは,都道府県別の選挙区数を変更せず,衆議院議員選挙区画定審 議会(区画審)が較差是正のため選挙区割りの改定案の作成及び勧告で対応する というものである(新区割基準)。新区割基準のうち人口の較差に係る部分は, 投票価値の平等と相容れない作用を及ぼすに至っているなどといえず,投票価値 の平等の要求に反しないといえる。新区割基準のうち都道府県別定数配分の方式 については,都道府県の人口を一定の数値で除した商の整数に小数点以下を切り 上げた数を都道府県別の議席数とするため,各都道府県に必ず定員1人が配分さ れるが,小数点以下の数値をすべて切り上げることは端数処理としてみると合理 的な手法の一つであり,人口に比例して各都道府県に定数を配分することに変わ りはなく,投票価値の平等と相容れない作用を及ぼすに至っているなどとはいえ ず,投票価値の平等の要求に反するものではないといえる。 平成28年改正法は,その附則において,新区割基準により選挙区が改定され るまでの特例措置として都道府県別定数配分については平成27年国勢調査人口 を基にアダムズ方式により各都道府県の定数を算定した場合に減員となる都道府 県のうち,議員1人当たり人口の最も少ない都道府県から順に6県を選択してそ の定数を1人ずつ減らすにとどめ,選挙区割改定については平成27年国勢調査 に基づき算定された人口比最大較差を2倍未満にし,平成32年見込人口に基づ き算定された人口比最大較差も2倍未満とすることを基本としている(本件区割 基準)。本件区割基準のうち都道府県別定数配分の方式については全都道府県に つきアダムズ方式に基づき定数を配分したものではないものの,平成28年改正 法制定時には約4年後に大規模国勢調査が控えていて,その実施前に全都道府県 につきアダムズ方式により都道府県別定数配分を見直せば,立て続けに都道府県 別定数配分が改定される事態に陥るため,特例措置としてアダムズ方式導入を見 合わせることも,国会の裁量権の行使として合理的であること,本件区割基準に おいては選挙区の改定に当たり平成27年国勢調査人口における較差の是正のみ ならず平成32年見込人口における較差の是正も図られていて,アダムズ方式導 入までの間も可能な限り投票価値の平等を実現しようと努めており,現に本件選 挙当日における各選挙区間の選挙人数の最大較差が,小選挙区比例代表並立制の 開始以降,最も低いことに照らせば,本件区割基準も,平成24年改正前区画審 設置法3条1項等の趣旨に沿っており,1人別枠方式の構造的な問題の解決を指 向したものであるといえる。 よって,平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙当時,本件区割基準 に従って選挙区割りが定められた選挙区間における投票価値の不均衡は,違憲の 問題が生じる程度の著しい不平等状態にあったとはいえない。 3 したがって,原告らの請求は,いずれも理由がない。
結果 棄却
裁判長裁判官 栂村明剛 裁判官 光吉恵子 裁判官 田中良武
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ
弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービスCopyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.