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2020年05月15日 更新
判決日 2020年01月17日平成31(ラ)48号
伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
広島高等裁判所 第4部
判示事項 発電用原子炉施設である伊方発電所(本件発電所)から約三十数km又は約四十数kmの距離に住む抗告人らが,本件発電所3号機の原子炉(本件原子炉)及びその附属施設(本件原子炉施設)には地震,火山の噴火等に対する安全性に欠けるところがあるとして,人格権に基づいて本件原子炉の運転の差止めを命ずる仮処分命令を申し立てた事案において,次のとおり判断して,申立てを却下した原決定を取り消し,本案訴訟の第一審判決の言渡しまでの間,本件原子炉の運転の差止めを命じた事例。 1 抗告人らは,本件原子炉施設について放射性物質が外部へ放出される事故が起こったときに,その生命,身体等に直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域に居住する者であるから,当該発電用原子炉施設の設置運転の主体である相手方において,原子炉の運転によってその生命,身体等に対する侵害が生ずる具体的危険が存在しないことについて相当の根拠,資料に基づき,主張・疎明を尽くさない場合には,上記の具体的危険の存在が事実上推定されるというべきである。ただし,相手方は規制委員会から本件原子炉施設が新規制基準に適合するとして発電用原子炉設置変更許可を受けており,この適合性の審査において,多方面にわたる極めて高度な最新の科学的,専門技術的知見に基づく総合的判断が必要であることなどに照らすと,①現在の科学技術水準に照らし,当該具体的審査基準に不合理な点のないこと,及び②当該発電用原子炉施設が上記審査基準に適合するとした規制委員会の判断について,その調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落がないなど,不合理な点がないことを相当の根拠,資料に基づき主張,疎明すれば,上記の主張・疎明を尽くしたということができる。 2 中央構造線断層帯長期評価(第二版)には,本件発電所敷地沿岸部における活断層の有無に関する相手方の海上音波探査が不十分であることを前提とした記載があり,また,本件発電所敷地から2km以内の距離にあると考えられる地質境界としての中央構造線が活断層である可能性をうかがわせる事情が認められるのに,本件発電所敷地沿岸部における活断層の有無についてそれ以上の調査を行わずに活断層はないと判断して,活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価を行わず,規制委員会はこれを問題ないと判断したものであるから,上記規制委員会の判断には,その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ず,相手方は,上記の点につき上記1の具体的危険の不存在についての主張・疎明を尽くしたとはいえない。 3 新規制基準のうち,火山事象の影響による危険性に関する内規である火山ガイドは,検討対象火山の噴火の時期及び程度が相当前の時点で予測できることを前提とする点において不合理であり,したがって,阿蘇カルデラの破局的噴火により,阿蘇カルデラからの火砕流が本件発電所敷地に到達する可能性が十分に小さいとはいえず,また,本件原子炉の運用期間中に阿蘇カルデラの破局的噴火が発生する可能性が十分に小さいともいえないけれども,そのことのみをもって本件原子炉を立地不適とすることは社会通念に反する。しかし,阿蘇カルデラの破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火(噴出量数十km3)の可能性は考慮すべきであって,そうすると,相手方による降下火砕物の想定は過小であり,これを前提として算定された大気中濃度の想定も過小であって,このような過小な想定を前提としてなされた本件原子炉に係る原子炉設置変更許可等の申請及びこれを前提とした規制委員会の判断も不合理であって,相手方は,上記の点につき上記1の具体的危険の不存在についての主張・疎明を尽くしたとはいえない。
結果 その他
裁判長裁判官 森一岳 裁判官 鈴木雄輔 裁判官 沖本尚紀
(原審) 山口地方裁判所 岩国支部 平成29(ヨ)5号 却下
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判決日 2019年03月28日平成30(ネ)203号
損害賠償請求控訴事件
広島高等裁判所 第4部
判示事項 拘置所の職員が,拘置所に勾留中の被告人と接見中の弁護人に対し,①再生しようとするビデオテープ等の内容を申告させる行為は,憲法34条前段,刑訴法39条1項が保障する弁護人等の秘密交通権を侵害する違法な行為であるが,平成19年に発せられた法務省矯正局成人矯正課長による通知に基づいて行われたものであるとして過失を否定し,②上記申告に応じない弁護人に対し,再生中の音声の一時中断を求めた行為は違法であり,過失も認められるとして,国家賠償請求を一部認容した事例。
結果 その他
裁判長裁判官 森一岳 裁判官 鈴木雄輔 裁判官 沖本尚紀
(原審) 広島地方裁判所 平成27(ワ)866号 棄却
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判決日 2018年02月09日平成27(行コ)19 号
原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件,同附帯控訴事件
広島高等裁判所 第4部
判示事項 被爆者援護法11条1項の規定による原爆症認定申請を却下する旨の処分に対して,その取消しと国家賠償を求めた事案であり,争点は,①原爆症認定における放射線起因性の判断基準,②原爆症認定要件該当性,③本件各却下処分についての国家賠償責任であるところ,争点①について,当該被爆者の放射線への被曝の程度と,統計学的・疫学的知見等に基づく申請疾病等と放射線被曝との関連性の有無及び程度とを中心的な考慮要素としつつ,これに当該疾病等の具体的症状やその症状の推移,その他疾病に係る病歴,当該疾病等に係る他の原因の有無及び程度等を総合的に考慮して,原子爆弾の放射線への被曝の事実が当該申請に係る疾病若しくは負傷又は治癒能力の低下を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が認められるか否かを経験則に照らして判断するのが相当であると判示し,争点②について,控訴人X1は,放射線被曝の影響との関係を,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る程度の高度の蓋然性があると認めることは困難であるため,白内障の放射線起因性が認められないとし,控訴人X2は,放射線の影響によって発症した面があるとする合理性,高度の蓋然性があるため,白内障の放射線起因性が認められ,控訴人X2に対する医師による定期的な経過観察は,白内障の治療のためには,悪化の状況に応じて的確に積極的な治療行為を行うために必要不可欠な行為であり,要医療性があると認められると判示し,争点③について,控訴人X1の却下処分は,原爆症の認定要件の判断に誤りはなく,国家賠償法1条における違法とも認められない,控訴人X2の却下処分は,放射線起因性に対する判断を誤ってされた違法なものであるが,同処分は,厚生労働大臣が疾病・障害認定審査会の意見を聴いた上で,その意見に従ってされたものであり,その意見が関係資料に照らして明らかに誤りであるなど,答申された意見を尊重すべきではない特段の事情が存在したとは認めるに足りる証拠はないから,国家賠償法1条における違法とは認められないと判示した。
結果 棄却
裁判長裁判官 森一岳 裁判官 小野瀬昭 裁判官 増田純平
(原審) 広島地方裁判所 平成23(行ウ)2 号
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