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2022年05月27日 更新
判決日 2020年10月01日令和1(行コ)96号
遺族補償給付等不支給処分取消請求控訴事件
大阪高等裁判所 第13民事部
判示事項 本件は,被控訴人が控訴人に対し,被控訴人の配偶者は,①過重業務が原因で免疫力が低下し,その結果劇症型心筋炎を発症し,死亡した,②そうでなくとも,被控訴人の配偶者が過重業務により治療機会を喪失したために劇症型心筋炎を発症し,死亡したと主張して,業務起因性を認めずに療養補償給付等を不支給とした労働基準監督署長の決定の取消しを求めた事案につき,①については,過重業務による免疫力の低下が心筋炎を発症させるウイルス感染を生じさせた事情の一つとなった可能性は否定できないが,その他の事実を総合すると,被控訴人の配偶者の免疫力が低下していたものとまでは認め難いし,その上,過重業務によりウイルス性心筋炎を発症し劇症化するとの経験則が存在するとも認めることもできないから,業務起因性が認められるとする主張は採用できないとし,②についても,そもそも治療機会を喪失したとは認められないし,より早い時期に治療が開始されたとしても,劇症型心筋炎の発症を防ぎ得たと認めることはできないから,業務起因性が認められるとする主張は採用できないとして,業務起因性を認めて上記労働基準監督署長の不支給決定を取り消した原審判決を取り消した事案である。
結果 その他
裁判長裁判官 木納敏和 裁判官 木上寛子 裁判官 森崎英二
(原審) 大阪地方裁判所 平成29(行ウ)34号
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
判決日 2019年11月20日平成29(ネ)2612号
損害賠償請求控訴事件
大阪高等裁判所 第13民事部
判示事項 本件は,控訴人において,通信教育事業等を営む被控訴人株式会社ベネッセコーポレーション(以下「被控訴人」という。)から委託を受けて被控訴人の顧客の個人情報を分析するシステムの開発・運用等をしていた株式会社Aの業務委託先の従業員(以下「本件従業員」という。)が,控訴人の個人情報(以下「本件個人情報」という。)を外部に漏えいした(以下「本件漏えい」という。)ことにより精神的苦痛を被ったとして,被控訴人に対し不法行為(民法719条,715条)に基づき10万円の慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件従業員は,MTPに対応したスマートフォンを業務用パソコンのUSBポートにUSBケーブルを用いて接続してMTP通信でデータを転送する方法により,被控訴人の顧客の個人情報(控訴人の本件個人情報を含む。)を不正に取得し,名簿業者に売却した。 本判決は,本件従業員による本件漏えいによって,本件個人情報が漏えいしたことにより,控訴人のプライバシーとして法的保護の対象となる利益が違法に侵害されたものとして,次のとおり被控訴人の責任を認める旨の判断をして,これを認めなかった原判決を変更した。 (1)被控訴人及び株式会社Aの本件漏えいの予見可能性の有無の点について,被控訴人及び株式会社Aは,執務室内で個人情報にアクセスし得る業務に従事する従業員が,セキュリティソフトによって書出し制御の措置を採っていたMTP非対応スマートフォン(通信方式がMSCであるスマートフォン)ではなく,このような措置の採られていないMTP対応スマートフォンを執務室内に持ち込んで業務用PCのUSBポートに接続することにより個人情報を不正に取得される可能性があることを認識し得たもので,そのリスクの有無を日常的に調査確認することで,そのリスクのあること及びこれを防止する措置を講ずる必要性があることを認識できたものと認められる。 (2)そうである以上,株式会社Aは,MTP対応スマートフォンを上記の執務室内に持ち込んで,本件個人情報に接することのないようにするなど適切な措置を採るべき注意義務を負っていたというべきであり,これを怠ったことについて過失があるというべきである。 (3)また,被控訴人は,個人情報提供者から提供を受けた個人情報を適切に管理すべき立場にあるところ,株式会社Aと同様に本件漏えいのリスクを予見できたのに,被控訴人の管理する当該個人情報の利用を認めた株式会社Aに対する適切な監督義務に違反した結果,本件従業員による本件漏えいを生じさせたものと認められるから,控訴人に対し,これによって生じた損害について不法行為責任を負う。被控訴人と株式会社Aの不法行為(及び本件従業員の本件漏えいによる不法行為)は,被控訴人が保有し,その管理を株式会社Aに委託して管理させていた本件個人情報の漏えいに関するものであり,客観的に関連するものであるから,共同不法行為に当たる(民法719条1項前段)。 本件従業員は,故意に控訴人の承諾もないまま同人の個人情報を回収不能なほどに流出させたもので,これは一般人の感受性を基準にしてもその私生活上の平穏を害する態様の侵害行為であるといえ,本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると,これによる控訴人の精神的苦痛を慰謝するためには,1000円の慰謝料が相当である。
結果
裁判長裁判官 木納敏和 裁判官 山本善彦 裁判官 木上寛子
(原審) 神戸地方裁判所 姫路支部 平成27(ワ)424号
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
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