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2025年02月03日 更新
判決日 2019年11月13日令和1(行ケ)2号
選挙無効請求事件
広島高等裁判所
判示事項 主 文 1 原告らの各請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 理 由 の 要 旨 1 本件は,令和元年7月21日の参議院議員通常選挙について,広島県選挙区及び山口県選挙区の選挙人である原告らが,公職選挙法の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 投票価値の著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超える場合には,定数配分規定は憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 3 今回の選挙は,平成30年7月の公職選挙法改正後,初めて行われた通常選挙であるところ,同改正は,平成27年8月の公職選挙法改正法附則7条や平成29年最高裁判所大法廷判決を踏まえ,選挙区間の最大較差が平成25年選挙以前のような約5倍もの大きな較差を生ずることのないよう配慮したものであるといえる。 そして,今回の選挙は,平成30年7月の公職選挙法改正後に初めて施行されたものであり,今回の選挙当時の選挙区間の最大較差は3.002倍であったところ,この較差は,それ以前の約5倍の較差を大きく縮小した平成28年選挙当時の選挙区間の最大較差3.08倍に比べて縮小したものとなっていた。 さらに,参議院特別委員会において,参議院選挙制度改革について,憲法の趣旨にのっとり,参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行う旨の附帯決議がされており,引き続き投票価値の較差を含めた改善が行われることが期待される。 以上のような事情を考慮すると,今回の選挙当時において,定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態,すなわち違憲状態に至っていたとまでは認められない。 平成30年7月の公職選挙法改正は,平成27年8月の公職選挙法改正法附則7条でいうところの「抜本的な見直し」に当たるとはいい難いが,国会内部での意見統合を図ることが困難であったことなどの事情を踏まえると,そのことから直ちに違憲状態であるということはできない。 4 もっとも,選挙区間の最大較差は約3倍であり,投票価値の不均衡はなお大きなものであり,現状のような選挙区間の最大較差が継続するときは,違憲状態に至る可能性が高いといわざるを得ない。国会においては,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえ,選挙制度について,迅速に,真摯かつ適切な検討を行い,最大較差の更なる縮小を実現することが求められているというべきである。その場合,合区を活用することも考えられるが,合区による解決が困難であれば,従来の選挙制度にとらわれない検討が行われるべきであり,立法府の主体的な意志と叡智が期待されるところである。 5 以上によれば,原告らの各請求は,いずれも理由がないからこれを棄却すべきである。
結果
裁判長裁判官 金村敏彦 裁判官 絹川泰毅 裁判官 近藤義浩
判決文判決文は裁判所ウェブサイトへのリンクです。
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