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事例にみる 法人格なき団体

編著/大場民男(弁護士)

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概要


法人格なき団体をめぐる様々な裁判例を収載!

◆法人格なき団体に関する71件の裁判例について、団体性の有無、財産の帰属、課税関係といった論点ごとに分類・整理して、詳細に解説しています。
◆各事例には、判決要旨を明示するとともに、事例紹介、裁判所の判断を簡潔にまとめ、類似の裁判例の要旨を参考判例として掲げています。

商品情報

商品コード
50768
ISBN
978-4-7882-7505-8
JAN
9784788275058/1923032033008
サイズ
A5判
巻数
1
ページ数
332
発行年月
2012年2月

目次

第1章 概 説
 第1 法人格なき団体の意義
  1 法人格なき団体の意義
  2 法人格なき団体の成立要件
  3 法人格なき団体の権利義務の帰属
  4 法人格なき団体の能力
 第2 法人格なき団体の内部関係
  1 法人格なき団体内部の法律関係
  2 法人格なき団体の規約
  3 法人格なき団体の意思決定
  4 代表機関
  5 代表機関以外の役員
  6 構成員(社員)
 第3 法人格なき団体の外部関係
  1 法人格なき社団の外部関係
  2 法人格なき団体の代表者及び構成員の債務ないし責任
  3 法人格なき団体の不法行為責任
  4 不動産の権利関係の公示と強制換価
  5 法人格なき団体の税務

第2章 事例解説
 第1 団体性の取得
  1 一般的な成立要件
   〔1〕 外地引揚者の更生に必要な各種の経済的行為をする目的の下に杉並区内に居住する引揚者によって結成された団体が権利能力のない社団としての実体を備えていたと認められた事例(最判昭39・10・15民集18・8・1671)
   〔2〕 遺言による寄附行為がなされた財団法人の設立を目的とする設立中の財団が法人にあらざる財団として訴訟上の当事者能力を認められた事例(最判昭44・6・26民集23・7・1175)
  2 地域を中心とした互助団体等
   〔3〕 普通地方公共団体の区域に属する特定地域住民により結成された任意団体が権利能力のない社団に当たるとされた事例(最判昭42・10・19民集21・8・2078)
   〔4〕 小笠原島及び硫黄島の旧島民の帰郷促進運動等を行うことを目的として、各島に生活の本拠を有した旧島民によって結成された団体に訴訟上の当事者能力が認められた事例(東京地判昭44・10・6判時593・55)
   〔5〕 宗教法人として法人格を取得する以前の水神を権利能力なき財団として認め、その後成立した宗教法人との間に法主体としての連続した同一性を認めた事例(宮崎地判昭47・1・24判時658・5)
   〔6〕 沖縄における血縁団体である門中が権利能力なき社団に当たるとされた事例(最判昭55・2・8民集34・2・138)
   〔7〕 江戸時代からの水利全般を管理する伝統的水利団体が権利能力なき社団であると認められた事例(高松高判昭55・11・27判時998・73)
   〔8〕 鹿児島市平川町内の通称五位野部落と呼ばれる一部落が権利能力なき社団に当たるとされた事例(鹿児島地判昭60・10・31判タ578・71)
  3 教育機関を中心とした親睦団体等
   〔9〕 日本大学文理学部後援会と称される団体が権利能力なき社団と認められなかった事例(東京地判昭49・9・9判時776・72)
   〔10〕 大学のサークルの権利能力なき社団性が否定され、その構成員が建物を占有していると認められた事例(東京地判平18・4・26判タ1244・195)
  4 労働組合・事業団体等
   〔11〕 沈没船の引揚げを事業としていた団体が人格なき社団ではなく民法上の組合であるとされた事例(東京地判昭44・7・3判時573・71)
   〔12〕 労働組合の下部組織である分会について、権利能力のない社団に当たるとして補助参加が許可された事例(東京地決平17・10・6判タ1195・140)
   〔13〕 宅地建物取引業保証協会が都道府県ごとに設置した地方本部の一つである社団法人不動産保証協会A本部の支部の一つであるY支部は、A本部の内部機関にとどまらず、A本部とは別個に当事者能力を有する権利能力のない社団であるということができるとされた事例(東京地判平20・4・24(平19(ワ)29890)ウエストロー)
  5 特定財産の管理を目的とした団体
   〔14〕 マンション建物の共用部分及びその敷地の維持管理等を目的として、建物の区分所有者によって結成された管理組合につき、管理規約により団体としての組織を持ち、代表者の定め、各区分所有者の意思決定機関である集会の運営等団体としての主要な点は確定しており、かつ現実に管理業務を行っていることを理由に、権利能力なき社団として、当事者能力を有するとされた事例(大阪地判昭57・10・22判時1068・85)
   〔15〕 倒産会社の残余財産を各構成員に公平に配分することを目的として組織された債権者委員会につき、民法上の組合契約によって結成された団体であって、民事訴訟法46条(現29条)の定める法人にあらざる社団として訴訟当事者能力を有するとされた事例(東京高判昭59・7・19訟月30・12・2744)
   〔16〕 18棟315戸の居住者により結成された町会につき、対象地域の住民あるいは所有者各人とは別組織体として意思決定がされ、その決定に基づいて活動していることが認められるとして、町会は民事訴訟法46条(現29条)に定める「社団」としての要件を具備し、当事者能力が肯定されるとした事例(東京地判平元・6・28判時1343・68)
  6 政治・市民団体
   〔17〕 情報公開を求める市民の権利を実現し、擁護し、発展させることを目的とし、この目的に賛同し、協力する個人を会員とする市民オンブズマンの会が、民事訴訟法29条にいう「法人でない社団」に当たり、その名において訴えることができるとした事例(岡山地判平16・1・14判自263・103)
  7 趣味・研究団体
   〔18〕 野球チーム相互の親睦を図るのを目的とする野球連盟につき、構成員自体の成員が不特定であることや、構成員による総会の組織運営方法も明定されていないこと等を理由に、いわゆる法人にあらざる社団たる実質を有しないとした事例(大阪高判昭45・2・16判時602・62)
   〔19〕 預託金会員制のゴルフクラブについて、法人でない社団に当たるというためには、必ずしも固定資産ないし基本的財産を有することは不可欠の要件ではなく、そのような財産を有していなくても、団体として、内部的に運営され、対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され、かつ、その収支を管理する体制が備わっているなど、他の諸事情と併せ、総合的に観察して、法人でない社団として当事者能力が認められると判断した事例(最判平14・6・7民集56・5・899)
  8 宗教関連団体
   〔20〕 設立準備中の財団について、財団法人の設立許可を受けていなかったとはいえ、個人財産から分離独立した基本財産を有し、その運営のための組織を有していたものといえるとして、いわゆる権利能力なき財団の設立を認めた事例(最判昭44・11・4民集23・11・1951)
   〔21〕 宗教法人の寺院本堂の再建を目的として、壇徒のうち趣旨に賛同して寄付をした者を構成員として結成された団体について、法人にあらざる社団又は財団に当たらないとした事例(横浜地判平元・2・8判時1321・144)
  9 その他の団体
   〔22〕 中小企業等協同組合法に基づき設定された商業協同組合の組合員のうち、一定地区内にたばこ自動販売機を設置しようとする者をもって会員として、たばこ自動販売機について共済事業を行うことを目的とする団体が、権利能力なき社団であるとされた事例(東京地判平10・10・21金判1066・43)
   〔23〕 基地の差止訴訟を提起した「原告」らを中心とする基地周辺の住民らを構成員とする団体について、民事訴訟法29条にいう「法人でない社団」に当たるとされた事例(東京高判平17・5・25判時1908・136)
 第2 団体の行為能力
  1 手形行為能力
   〔24〕 法人格なき社団の振り出した約束手形上の債務につき、組合員等に対して、手形金の各均一部分を請求することは認められず、また、法人格なき社団もそれ自体独立の一個の組織体として社会的に存立する点においては法人と同様であり、訴訟法が所定の要件を備える非法人社団に対して当事者能力を認めていることに照らしても、法人に関する私法上の取扱いは、その性質に反しない限り、訴訟上の当事者能力を有する法人格なき社団に対しても推及されるべきであるとして、法人格なき社団であることをもって、その手形上の責任を否定すべき理由はないとされた事例(神戸地洲本支判昭36・12・20下民12・12・3075)
  2 農地(農業用施設)買収申請権
   〔25〕 団体が農業用施設の買収申請をなしうるためには、旧自作農創設特別措置法施行令24条1号に特定された団体又は市町村農地委員会が指定した団体であることを要するが、上記団体が法人格を有しなければならないと解する理由はないとして、法人格なき社団も農業用施設の買収申請をなしうるとされた事例(奈良地判昭43・2・23訟月14・4・401)
  3 慰謝料請求権
   〔26〕 法人格なき社団が名誉を毀損されたとしても、自然人と異なり精神上の苦痛というものを考えることはできないし、金銭による賠償によって慰謝することも不可能であるほか、名誉を毀損されたことにより財産上の損害を受けたことについては、これを認むべき証拠がないので、慰謝料の請求を認めることはできないとされた事例(仙台地判昭38・5・22下民14・5・1011)
  4 人格権
   〔27〕 権利能力なき社団Xが人格権に基づいて、ごみ焼却場・処分場として使用されてきた土地の水質及び土壌調査をなすこと等を求めた仮処分の申立てについて、Xが主張する人格権の内容が生命・身体・健康という性質上自然人に特有のものであることから権利能力なき社団が享有主体となりうるものではないとして、Xの仮処分申立てを却下した事例(大津地決平11・9・24判自197・66)
  5 登記請求権
   〔28〕 権利能力なき社団が所有する不動産の登記名義が当該団体の前代表者の個人名義となっている場合に、主位的に権利能力なき社団への所有権移転登記手続を請求し、予備的に現代表者名への所有権移転登記手続を請求したのに対し、主位的請求及び予備的請求のいずれについても、権利能力なき社団は登記請求権がなく、原告適格を有しないとして訴えが却下された事例(東京地判昭41・3・30判時459・56)
  6 公正証書の作成嘱託能力
   〔29〕 法人格のない頼母子講の落札者に対する講掛戻金の取立て、支払について一切の権限を有する総代が選任されている場合は、総代は、自己を債権者と表示し、その名において、公証人に対し、公正証書の作成を嘱託することができるが、作成された公正証書の嘱託人の表示欄に債権者として総代個人の住所氏名等が記載され、本文中に債権者として総代の肩書を付してその氏名が記載されていても、本文中の総代である旨の肩書の記載は、公正証書記載の債権が講関係の債権であって、嘱託人の個人的債権ではないことを明らかにしておく趣旨のものにすぎないとみるべきであり、上記の記載があるというだけでは、本文中の債権者の表示と嘱託人の表示との間に齟齬があるとすることはできないとされた事例(最判昭56・1・30判時1000・85)
  7 訴訟当事者能力
   〔30〕 一定の地域に居住する住民により、その福祉のための事業を営むことを目的として結成された任意団体であって、区長、区長代理者、評議員、組長等の役員の選出役員会及び区民総会の運営(多数決による)、財産の管理、事業の内容等につき規約を有し、これに基づいて存続・活動しており、権利能力なき社団として実体を有する以上、訴訟当事者能力を認めることができるとされた事例(最判昭42・10・19民集21・8・2078)
 第3 団体の運営
  1 正会員の資格を男子孫に限るとする会則の効力
   〔31〕 林野の入会権を有していた部落住民によって林野の管理・処分等を行うために設立された権利能力なき社団の会則が旧慣に従い、その正会員たる資格を各世帯の代表者としての世帯主に限る世帯主要件については不合理とはいえず、公序良俗に反するものとはいえないが、払下げがなされた当時の住民の男子孫に限る男子孫要件は、専ら性別のみによる差別であって、遅くとも本件で補償金の請求がなされている平成4年以降においては、民法90条により無効であるとされた事例(最判平18・3・17民集60・3・773)
  2 構成員の資格要件の定めを改正する規約改正の効力
   〔32〕 権利能力なき社団の規約において定められた改正手続によって、構成員の資格要件の定めが改正された場合、改正後の規定は、特段の事情のない限り、改正決議について承諾をしなかった構成員を含むすべての構成員に適用されるとされた事例(最判平12・10・20判時1730・26)
  3 脱 退
   〔33〕 権利能力なき社団である県営住宅の入居者を会員とする自治会に関し、退会を自由になしうるとされた事例(最判平17・4・26判時1897・10)
  4 入会の取消しと会員たる地位の確認請求
   〔34〕 公衆電話の受託業務の円滑な運営と公衆に対するサービスの向上を図り、かつ会員相互の親睦の増進を目的として、横浜市中区等に居住等する公衆電話の受託者を会員として設立された権利能力なき社団の会員たる地位の確認を求める訴えの利益があるとされた事例(横浜地判昭62・11・27判時1276・68)
  5 除名処分無効を理由とする地位確認の訴と司法審査権
   〔35〕 権利能力なき社団である部落解放同盟がなした同盟員の除名につき、除名処分の無効を理由とする同盟員としての地位確認請求の訴えが一般市民法秩序と直接関係しない内部規律の問題にとどまり、団体としての自主性及び自律性を尊重して団体の自主的、自律的な措置に任せるのが適当であるとして、裁判所の司法審査の対象にはならないとされた事例(東京地判平6・12・6判時1558・51)
  6 会計帳簿閲覧請求権
   〔36〕 権利能力なき社団において、その構成員に対し、会計帳簿等の閲覧請求権を認めるか否かについては、本来権利能力なき社団の自治にゆだねられていると解するのが相当であるが、規則にこれを認める明文の規定がない場合であっても、当該規則がその内容からみて閲覧請求権を排除していないと認めるときには、会計帳簿等の閲覧請求権を認める余地があるとされた事例(東京地判平14・9・26判タ1156・148)
  7 団体の業務執行
   〔37〕 地域居住者で構成される権利能力なき社団である自治会の会則に、役員会の定めがあるほか、通常の業務の決定については会長に一括して委任する旨の定めがある場合、会長にゆだねられている業務執行の範囲は通常の事務に限定されているから、総会の決議事項として定められていない事項であっても、自治会の所有地や会員の生活環境に重大な影響を及ぼす事項については、役員会の承認決議を要するとされた事例(神戸地判平10・6・8判タ1066・256)
  8 決議無効確認の訴
   〔38〕 権利能力なき社団たる私立学校の父母の会の会則において会則の改正は出席会員の賛否によると定められているにもかかわらず、書面回答方式によってなされた決議及び単に会則改正の件とのみ記載された招集通知によって招集された総会でなされた追認決議は、いずれも無効とされた事例(大阪高判昭52・1・25判時870・104)
  9 団体の解散
   〔39〕 大学によって設立が承認され、大学の全学生を正会員、学長を会長、教官その他の有志職員を特別会員等とする権利能力なき社団たる大学の学友会につき、団体の運営が設立の承認の趣旨に反するものになり、その改善が困難であるとして、大学が設立の承認を取り消して解散を決定することができるとされた事例(最判平16・4・20民集58・4・841)
  10 合 併
   〔40〕 法人格のない社団(宗教団体)及びその上位団体の規則に当該団体の合併ないし解散の手続に関する規定がない場合において、その団体が他の団体と合併しようとするときは、民法69条を類推適用して信徒総会の解散決議を経ることを要するとされた事例(最判昭41・6・17裁集民83・789)
 第4 財産の管理
  1 財産の帰属
   〔41〕 法人格のない労働組合を脱退した組合員が、組合に対する財産分割請求権を被保全債権として、組合の第三者に対する債権に対し債権仮差押命令の申立てをして、地方裁判所で債権仮差押決定を得たため、同組合が高等裁判所に脱退組合員を相手に当該仮差押決定の取消しを求め、被保全債権の存否が最高裁判所まで争われた事例(最判昭32・11・14民集11・12・1943)
  2 不動産の扱い
   〔42〕 法人格なき社団の資産たる不動産につき、登記上所有名義人となっていた代表者が交替したことにより、新代表者が旧代表者に対して所有権移転登記手続請求の訴えを提起した事例(東京地判昭42・8・7判時503・45)
   〔43〕1 法人格なき社団の所有する不動産の登記名義が旧代表者名義のままになっている場合、現代表者Xが原告になって、旧代表者Yを被告に、原告Xへの所有権移転登記手続を請求することができるとされた事例
       2 原告Xが控訴審の訴訟係属中に死亡した場合、新代表者Zによって訴訟が承継されるとされた事例(最判昭47・6・2民集26・5・957)
   〔44〕 法人格なき社団の資産である不動産につき、登記簿上所有名義人となっていた代表者が死亡等で交替した場合、その登記名義人を旧代表者から新代表者に変更するために、実体上何ら権利変動がないからとして登記名義人表示変更登記申請をしたところ、法務局がその申請を却下したため、その法務局登記官の却下決定の取消しを求めた事例(岐阜地判昭52・11・30訟月23・13・2242)
   〔45〕 法人格なき社団が、その資産である建物について代表者個人名義で登記しておいたところ、代表者個人の債権者が当該建物を仮差押えした場合、法人格なき社団は代表者個人名義の登記でその仮差押債権者に対抗できるとした事例(東京地判昭59・1・19判時1125・129)
   〔46〕 権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を有する債権者が、当該社団のために第三者がその登記名義人とされている社団構成員の総有不動産に対して、仮差押命令の申立てをした事例(最決平23・2・9民集65・2・665)
  3 団体の債権
   〔47〕1 法人格なき社団構成員の結社権侵害行為に対する社団構成員の損害賠償請求を認容した事例
      2 法人格なき社団及び社団構成員の名誉権侵害行為に対する社団及び社団構成員の損害賠償請求をいずれも認容した事例(東京地判昭43・1・31判時507・7)
  4 知的財産
   〔48〕 法人格なき社団Xが分裂する際に、同社団分裂時の役員Y1が、同社団の承諾を得ることなく同社団の名称を商標登録し、分裂後に同社団の名称を使用していたので、分裂前の社団Xが分裂後に立ち上がった社団の代表者である会長Y1と副会長Y2を被告に、社団の名称及び同社団役員の名称の使用の差止めを求め、その差止めが認容された事例(東京地判平20・5・21判時2025・76)
  5 遺産の取得
   〔49〕 法人格のない養老院からの相続財産分与の申立てに対し、同養老院へ特別縁故者としての相続財産分与の審判をした事例(長崎家審昭41・4・8判時460・43)
   〔50〕 登記簿表題部所有者欄が代表者B名義のままになっていた法人格なき社団であるX部落の墓地についてBの相続人Yが相続を理由にしてY名義に保存登記を了してしまったため、XがYを相手に所有権保存登記の抹消登記手続等を求めた事例(鹿児島地判昭60・10・31判タ578・71)
 第5 責任の所在
  1 団体の不法行為責任
   〔51〕 違法争議による会社の損害の賠償を労働組合幹部に対して賠償を命じたほか、法人格のない労働組合に対しても組合の機関の不法行為による損害を賠償すべき義務があるとされた事例(長野地判昭42・3・28判時480・11)
   〔52〕 権利能力のない社団である「市民オンブズマン」の配布したビラにより旅行業者が名誉を毀損されたとの理由により損害賠償請求した事案において、権利能力なき社団について不法行為責任を認めた事例(大阪高判平11・5・21判時1707・131)
   〔53〕 法人格のない社団である関東鹿児島県人会連合会の第31回大会を「健康鹿児島ふれあい交流博」とするイベント等に関し、大会誌の製作、チラシ・チケットの印刷、大会の運営等を請け負い、これらを完成して納品したとして、広告の代理、イベントの運営等を業とする原告の請負契約による報酬請求が認められた事例(東京地判平21・12・25(平20(ワ)16469)ウエストロー)
  2 代表者の責任
   〔54〕 権利能力なき社団の事務局長が権限がないのに会長名義をほしいままに冒用して作成振り出した約束手形であると認められる以上、会長にその支払義務はないとした事例(東京高判昭32・4・26金法140・3)
   〔55〕 権利能力なき財団であるシー・イー・オー財団事務総局の事務総長の肩書を有し、同財団事務総局の代表者として活動している者が、約束手形を同財団事務総局の代表者としての資格において振り出している場合、その個人がその責任を負うことはないとされた事例(最判昭44・11・4民集23・11・1951)
   〔56〕 いわゆる「権利能力なき社団」としての性質を有する労働組合の執行委員長らが、組合大会において組合員の過半数の賛成を得たことを根拠に、組合員から納入された組合費によって形成された組合固有の財産である闘争積立金会計及び青婦部会計の金員を組合員らに分配したことが、組合に対する不法行為を構成するとして、労働組合から執行委員長らに対する損害賠償請求が認容された事例(徳島地判昭62・4・27労民38・2・148)
   〔57〕 財団法人に批判的立場をとる一般市民が市民団体を結成し、入手可能な新聞記事や国会審議等を集積し、ホームページ上でこれを公開して、併せて意見表明をした場合、その市民団体について権利能力なき社団としての実態を備えているとされ、その社団としての行為について代表者個人に対する不法行為請求が認められないとされた事例(東京地判平15・6・18(平14(ワ)23680)ウエストロー)
  3 構成員の責任
   〔58〕 権利能力なき社団であることを認定し、同社団に譲渡禁止の物資購入券を用いて缶詰の配給を受けたことについて責を任ずべきとされたが、同社団の構成員については同社団の取引について債務を負担すべきものではないとされた事例(東京高判昭34・10・31判タ99・21)
   〔59〕 権利能力のない社団の取引上の債務について社団構成員各自は取引の相手方に対し、直接には個人的債務ないし責任を負わないとした事例(最判昭48・10・9民集27・9・1129)
   〔60〕 権利能力なき社団の構成員がチェンバロ(楽器)を運搬中にそれに損傷を与えた場合において、運搬に関与して楽器を損傷した者と、運搬関与者が事業の執行につき行った不法行為として権利能力なき社団は使用者責任を負うとされた事例(東京地判平20・12・10(平19(ワ)11642)ウエストロー)
   〔61〕 原告住所地所在の建物(マンション)の区分所有者によって構成される権利能力なき社団である原告マンション管理組合が、その構成員である被告に対し、建物の区分所有等に関する法律8条及び管理規約に基づき、平成12年8月分から平成21年9月分までの管理費及び修繕積立金並びにこれに対する各弁済期の翌日から支払済みまで年14%の割合による約定遅延損害金の支払を求めるとともに、管理規約に基づき、上記滞納に係る違約金34万5,750円の支払を求めた事案において、その請求を認めた事例(東京地判平22・3・23(平21(ワ)33073)ウエストロー)
 第6 団体の活動と税金
   〔62〕 会社Xと他の契約当事者の間で締結された「金銭消費貸借契約書」と記載された本件の各契約は、購入不動産が特定されていること及びその利用方法が当該契約に定める一定の範囲に限定されているほかは、X自身の計算によりされる場合と何ら異ならず、X以外の各契約当事者は何らこれに関与することはないのであるから、本件各契約に共同事業性及び組合財産の共有を認めることはできず、本件各契約を民法上の組合契約と認めることはできないとされ、さらに、本件各契約は商法上の匿名組合契約(商法535条)に該当し、租税特別措置法63条(土地譲渡等の特別税率)の適用上、民法上の組合と同視することはできないとされた事例(名古屋高判昭61・7・16税資153・119)
   〔63〕 みなし譲渡所得の所得税更正処分において「天下一家の会・第一相互経済研究所」(いわゆる熊本ねずみ講)について、同会の資産等はAの個人資産等と同視できるもので、その事業運営、資産や会計処理等において、個人と同会との峻別、独立性はほとんどなく、同会が社団としての基本的実態を有していたとすることはできないとして、同会の社団性が否定された事例(福岡高判平2・7・18判時1395・34)
   〔64〕 会社X等六者が協力して植栽工事等を営むために結成した企業体は、各自が出資していること、植栽工事等の履行及び責任を六者が連帯して負担していること、全構成員が業務の遂行に関与する権利を持っていること、各自の出資額が損益分配計算の基礎となっていて全構成員が事業の成功に利害関係を有していることなどから民法上の組合に当たるとされ、そして、民法上の組合は法人格を有しないから、権利義務の主体は組合員となり、本件企業体に生じた権利義務は、組合員である各構成員に直接的に帰属していることとなるとされた事例(福岡地判平11・1・26税資240・222)
   〔65〕 民法上の組合の組合員が、専従者として組合の生産作業に従事し、組合から支払を受けた収入につき、事業所得に係る収入ではなく、給与所得に係る収入に該当するとされた事例(最判平13・7・13判時1763・195)
   〔66〕 法人でない社団の要件を具備すると認定してされた法人税等の更正処分が、仮にその具備するとの認定に誤りがあるとしても、誤認であることが上記更正の成立の当初から外形上、客観的に明白であるということはできないなどとして、当然無効であるということはできないとされた事例(最判平16・7・13判時1874・58)
   〔67〕 民法上の組合を利用した航空機リース事業につき、減価償却費と損益通算による所得の減少を考慮して事業計画を策定することは、自然なことと考えられ、さらに、税制上のメリットを考慮して法形式の選択を行うこと自体は、何ら異常・不当なことではなく、民法上の組合契約の形式を採ることによって、匿名組合契約よりも出資者の利益に配慮することが可能となるなどの効果上の相違点にかんがみれば民法上の組合契約が、通常は用いられることのない法形式であるということはできないとされた事例(津地判平17・4・19税資255・10002)
   〔68〕 民法上の組合を利用した航空機リース事業につき、事業ないしは投資を行うに当たって、当該事業に係る減価償却費等を損益通算することによる課税額減少効果を織り込むことは、当然に否定されるものではなく、専ら課税額減少効果を受けることのみを目的とした事業は別として、本件の航空機リース事業については、そのような事業ではなく、課税額減少効果をも含めて事業ないしは投資の経済的合理性をみることができるとし、課税額減少効果を利用することを目的として民法上の組合という法形式が採られたからといって、直ちに組合契約としての意思表示の存在が否定されるものではないとされた事例(静岡地判平17・7・14税資255・10077)
   〔69〕 契約上所有権を取得したとされる外国映画が、法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項の減価償却資産に当たらず、その減価償却費の損金算入が認められないとされた事例(最判平18・1・24民集60・1・252)
   〔70〕 船舶賃貸事業を遂行する上で、民法上の組合契約の法形式は、通常用いられることのない法形式であるとはいえず、当該組合員らは上記事業に係る各船舶の共有持分権を有していると認められるから、上記事業による収益は不動産所得として区分されるべきであり、また、上記各船舶は上記組合員にとって所得税法49条1項にいう減価償却資産に当たると認められ、上記組合員が上記船舶に係る減価償却の利益を得ることを主目的として上記組合に参加しているのは減価償却制度を濫用するものであるとは認められないとされた事例(名古屋高判平19・3・8税資257・10647)
   〔71〕 ウェブサイトの運営主体が「Xを囲む会」という法人格のない社団等であり、本件サイト収入は「Xを囲む会」に帰属するとのXの主張が認められず、上記運営主体はXであり、上記サイト収入はXに帰属するとされた事例(東京地判平21・7・31(平19(行ウ)1)ウエストロー)

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