税務ニュース2022年08月26日 更正請求が再調査・課税処分を誘発(2022年8月29日号・№944) 更正請求の際に添付した収支内訳書の金額が申告書と大きく相違
本件で挙げられた争点のうち、当時はメインの争点であった出品手数料の課税仕入れ該当性については、平成27年度税制改正で、国境を越える電気通信利用役務提供の内外判定基準が「原産地主義」から「仕向地主義」へと転換されたことにより、現在は論点自体が消滅している(本誌929号参照)。
一方、本件から得られる実務上の教訓として押さえておきたいのが、更正の請求のリスクだ。
本件では、課税当局から副業について申告漏れがあると指摘され、重加算税まで課されている。判決によれば、原告は平成18年頃から(会社員として勤務しながら)副業としてアマゾンへの出品を始めた。課税処分を受けた平成21年〜25年の時点では会社退職していた旨の記載はあるが、平成19年〜23年には売上高が2,000万円を超えており、ビジネスはそれなりに成功していたようだ。
しかし、原告は、消費税については課税処分対象期間において申告を一切しておらず、また、所得税についても、妻名義のアカウントを使った取引について、一部しか所得を申告していなかった。この妻名義の口座を使った取引を申告していなかったことが、重加算税の要件である「偽りその他の不正行為」とされている。
原告は、最初の税務調査が入った際、一旦は期限後申告等をしているが、その後、何故か「申告内容が過大だった」として更正請求を行っている。しかし、当該更正請求に際して添付した収支内訳書の金額が申告書に記載された金額と大きく異なっていたため、課税庁が再調査を実施し、その結果、当初の申告額を上回る税額になるとして、更正処分を受けることとなった。
要するに、原告が更正の請求をしたこと自体が更正処分の端緒となったということであり、本件については、更正の請求をしない方が良かったと言わざるを得ない。更正の請求をすると(再)調査を誘発し、かえって課税処分を打たれるリスクが高まるという説はかねてから税務界に存在しているが、本件はそれを地で行く事案と言えそうだ。
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