解説記事2007年11月12日 【ニュース特集】 わが国証券取引所における新興市場の現状を探る(2007年11月12日号・№234)
マザーズ、ヘラクレス、JASDAQを中心に
わが国証券取引所における新興市場の現状を探る
NOVAの経営破綻が社会的にも注目されるなか、ビービーネットが第三者割当増資の実施困難を受けた会計監査人の意見不表明により定時株主総会の延期、有価証券報告書の提出遅延に至ったのは記憶に新しいところである。いずれも新興市場の上場会社。金融審議会では金融・資本市場のあり方を見直すべく、わが国証券取引所の取扱商品の多様化やプロに限定した取引の活発化に向けて検討を開始し(本誌233号40頁参照)、東京証券取引所ではロンドン証券取引所(LSE)との合弁会社設立による新市場の創設を打ち出している昨今であるが(同号20頁参照)、今回のニュース特集では、現行新興市場の現状を探ることとした。
わが国証券取引所の世界的位置付け、その規模など 金融審議会金融分科会第一部会(部会長:池尾和人慶應義塾大学経済学部教授)では、わが国金融・資本市場の問題として「ETF、債券、商品先物を含む派生商品等、我が国証券取引所の取扱商品は少なく、市場の『厚み』や利便性等の点で諸外国に遅れをとっている」「新興市場においては、個人投資家のシェアが大きく、機関投資家などのプロが中心的な役割を果たしていない。結果として、海外企業や国内新興企業の資金調達ニーズに十分に応えられていない」という指摘を紹介している。また、これを裏付ける海外市場等のデータも示しているところである(下掲コラム参照)。
新興市場に焦点をあてる前に、わが国における5つの全国証券取引所およびジャスダック証券取引所の概要を表1にまとめたので、参照されたい。「証券取引所」と同様に称されていても、各取引所の組織形態・体制、市場規模には相当の差異が存在することがわかるだろう。
なお、金融審や東証がモデルとして取り上げるLSEの新興企業向け市場(登録制度を採用)AIMは時価総額23.8兆円、上場会社数1,682社(今年9月末現在)。投資者の約57%が機関投資家とされている。
わが国新興市場の利用状況は…… わが国のいずれの証券取引所においても新興市場が開設されているが(ジャスダック証取におけるJASDAQ市場は従前店頭登録市場であったことからすべてを新興市場分として扱っている。NEO市場においては11月13日、第1号銘柄が上場される予定)、時価総額が1兆円を超す新興市場はJASDAQ、東証マザーズ、大証ヘラクレスのみとなっている。
これらの市場におけるある1日の取引量を売買代金ベースでみると(表2参照。ヘラクレスはさらに2つに分類されている)、とりわけ東証2部・大証2部と比較した場合、上場会社数の割には繁盛な取引が行われているようだ。
新興市場は、成長可能性の高い企業等への早期の資金供給を目的として既設の市場とは異なる独自の基準で上場・上場廃止を決定(後掲・参考資料参照。大証では、上場審査の観点からはヘラクレススタンダードをさらに3分類している)。一方、投資者保護の観点からは手厚い情報開示が求められるのが通例となっている。
いずれの市場も創設から10年は経過していないことを考慮すると、発行会社・投資者のニーズが一定程度合致し、市場として確実な成長を遂げたといえるだろう。
市場の「質」はどうか ただし、最近の例をみると、これら新興市場の上場会社の破綻等が目にとまるところである。
冒頭に掲げたNOVA株式(証券コード:4655)はジャスダック証券取引所が10月26日、同社の会社更生手続申立てを受け、翌27日から11月26日までの整理ポスト割当てと11月27日の上場廃止を公表。ビービーネット株式(2318)は同株式が上場されるヘラクレススタンダード市場を開設する大阪証券取引所が10月29日、同日から「(大証が)上場廃止基準に該当するかどうかを認定した日まで」の監理ポスト割当てを公表している。
NOVAでは様々の不祥事報道等により既にその株価も2ケタに低迷していたが、ビービーネット株式は年初来高値7,930円、10月中も2,000円台を付けていたところ、一連の発表等を受け急落。会社側が定時総会開催・有価証券報告書提出予定日をその夜に公表した11月5日の終値は672円となっており、投資者の損失も少なくなかろう。
この9月以降、経営破綻を理由とする上場廃止決定が相次ぐ形となっており、①クレディア(8567。東証9月14日発表、10月15日上場廃止)、②みらい建設グループ(1792。東証9月27日発表、10月28日上場廃止)、③マキ製作所(6304。ジャスダック証取9月27日発表、10月28日上場廃止)、④クインランド(2732。大証10月18日発表、11月9日上場廃止予定)にNOVAを加えると、5社にのぼることとなる。
①・②はいずれも東証1部上場、④はヘラクレススタンダード上場であり、5社中3社が新興市場の所属銘柄であったということになる。
column
データでみる海外市場の動向 金融庁の取りまとめによると、2006年の主要株式市場の時価総額は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が15.4兆ドル、東証が4.6兆ドル、ナスダック証券取引所(ナスダック)が3.9兆ドル、LSEが3.8兆ドル、ユーロネクストが3.7兆ドル、大証が3.1兆ドルとなっている。
また、上場会社数(2006年末)は、NYSE2,280社、ナスダック3,133社、LSE本則市場1,606社。今年7月末のETFの上場状況は、NYSEが198、LSEが129、ユーロネクストが283に対し、東証は11。
なお、新興市場の投資主体別の個人投資家による売買シェアは、東証マザーズ77.7%(今年1月~9月末)、大証ヘラクレス85.0%(2006年)、JASDAQ78.8%(2006年)である。この割合は、東証1部では28.2%(2006年)、大証1部では24.5%(2006年)にとどまる。
新興市場における最近の上場廃止状況、監査意見 そこで、実際にこの1年間になされた上場廃止について、その数と上場廃止理由をまとめてみた(表3参照)。なお、新興市場に多くみられる上場廃止理由のうち「上場廃止申請」とは、たとえばJASDAQ上場会社がその上場市場を東証2部に替えようとする際に、JASDAQについてなされるもの。また、JASDAQにおける「事業活動の停止」4社のうち、3社は合併関連、1社がMBO関連の事案である。
まず、今年11月1日現在の上場会社数を仮に分母として上場廃止割合を算出すると、本表左から1.5%、9.8%、1.3%、5.3%、参考として掲げた東証・大証の1部・2部市場(以下「既設市場」という)で2.1%、4.3%、3.1%、3.2%となり、大証ヘラクレススタンダードとJASDAQの数値が若干高いこととなる。
しかしながら、いわゆる経営破綻事例として「会社更生・民事再生手続」等を理由とする上場廃止を仔細にみると、新興市場で計2社、既設市場で計3社となり、新興市場においては当然割合的に高くなるものの、実際の上場廃止数として有意な差はないことがわかる。
また、先に大証ヘラクレススタンダードおよびJASDAQにおける上場廃止割合が若干高いことに触れたが、前者においては企業グループの再編成(完全子会社化)と上場市場の変更(上場廃止申請)が上場廃止数の8割弱を、後者においてもこれらが4分の3を占めており、いわば新興市場の上場会社として内在する上場廃止。上場廃止割合の高さは、新興市場における上場会社の経営内容と直接には結びついていないといえるだろう。
ただし、①東証マザーズでは2社の「監査意見不表明」、②大証ヘラクレススタンダードでは1社の「上場契約について重大な違反」、③JASDAQでは1社の「有報等の虚偽記載」をそれぞれ理由とした上場廃止がみられるところである。
①は、今年6月24日に上場廃止となったインターネット総合研究所(4741)と10月13日に上場廃止のフレームワークス(3740)。インターネット総合研究所は東証マザーズの第1号上場会社であったが、連結子会社であったアイ・エックス・アイ(東証2部上場)の経営破綻に伴い、インターネット総合研究所の半期報告書について監査法人トーマツが意見不表明としたことから、東証は5月23日、上場廃止を決定し、公表したものである。フレームワークスの上場廃止も監査法人トーマツの意見不表明に基づく。
②は、サンライズ・テクノロジー(4830)の事案で、大証としては平成15年以来、適時開示体制等について改善報告書の提出を求めるなどしてきたが、「適時開示規則違反を繰り返し犯し」たことから、このような形で上場が廃止された。
③は、TTG(1991)の事案。昨年末の証券取引等監視委員会による勧告、金融庁による課徴金納付命令を経て今年1月7日、上場廃止となった。
「監査意見の集計結果」からはどうか それでは、会計監査人による監査意見からは何らかの差異が確認できるだろうか。
市場間の比較が可能な平成19年1月期決算~6月期決算に係る監査報告書における会計監査人の監査意見を、各取引所の集計結果からまとめたものが表4である。
対象期間における意見不表明は新興市場において1社、既設市場において1社。不適正意見は1社もみられなかった。
これらを除く全社に適正意見が付されていることとなるが、そのうち追記情報として「継続企業の前提に関する注記」が付された会社の割合を、本表では上段の括弧内に示している。
これによると、東証1部・大証1部においてはこの注記が付された割合が際立って少ないことが確認できる一方、JASDAQでは東証2部・大証2部と同程度の割合で、大証ヘラクレススタンダードではそれより少し高く、大証ヘラクレスグロースでは53社中5社、東証マザーズでは124社中12社と10%に近い会社に注記がなされたことがわかる。
当該注記は、売上高の著しい減少や継続的な営業損失の発生、新たな資金調達の困難性といった事象・状況について、これらにより継続企業の前提に重要な疑義が認められるとして当該疑義に関する事項を注記するものであるが、不適切な注記や経営者による合理的な経営計画の不提示など、場合によっては「適正意見+追記情報」としての監査意見でなく「限定付適正意見」「不適正意見」「意見不表明」につながるものである。
本表対象期間のみによる比較では一概にいえないものの、監査報告書に係る不適正意見や意見不表明自体が上場廃止の一因ともされているため、注記各社の帰趨とともに、今後、市場間のさらなる差異がみられるようになるのか、注目されるところである。
わが国証券取引所における新興市場の現状を探る
NOVAの経営破綻が社会的にも注目されるなか、ビービーネットが第三者割当増資の実施困難を受けた会計監査人の意見不表明により定時株主総会の延期、有価証券報告書の提出遅延に至ったのは記憶に新しいところである。いずれも新興市場の上場会社。金融審議会では金融・資本市場のあり方を見直すべく、わが国証券取引所の取扱商品の多様化やプロに限定した取引の活発化に向けて検討を開始し(本誌233号40頁参照)、東京証券取引所ではロンドン証券取引所(LSE)との合弁会社設立による新市場の創設を打ち出している昨今であるが(同号20頁参照)、今回のニュース特集では、現行新興市場の現状を探ることとした。
わが国証券取引所の世界的位置付け、その規模など 金融審議会金融分科会第一部会(部会長:池尾和人慶應義塾大学経済学部教授)では、わが国金融・資本市場の問題として「ETF、債券、商品先物を含む派生商品等、我が国証券取引所の取扱商品は少なく、市場の『厚み』や利便性等の点で諸外国に遅れをとっている」「新興市場においては、個人投資家のシェアが大きく、機関投資家などのプロが中心的な役割を果たしていない。結果として、海外企業や国内新興企業の資金調達ニーズに十分に応えられていない」という指摘を紹介している。また、これを裏付ける海外市場等のデータも示しているところである(下掲コラム参照)。
新興市場に焦点をあてる前に、わが国における5つの全国証券取引所およびジャスダック証券取引所の概要を表1にまとめたので、参照されたい。「証券取引所」と同様に称されていても、各取引所の組織形態・体制、市場規模には相当の差異が存在することがわかるだろう。
なお、金融審や東証がモデルとして取り上げるLSEの新興企業向け市場(登録制度を採用)AIMは時価総額23.8兆円、上場会社数1,682社(今年9月末現在)。投資者の約57%が機関投資家とされている。

わが国新興市場の利用状況は…… わが国のいずれの証券取引所においても新興市場が開設されているが(ジャスダック証取におけるJASDAQ市場は従前店頭登録市場であったことからすべてを新興市場分として扱っている。NEO市場においては11月13日、第1号銘柄が上場される予定)、時価総額が1兆円を超す新興市場はJASDAQ、東証マザーズ、大証ヘラクレスのみとなっている。
これらの市場におけるある1日の取引量を売買代金ベースでみると(表2参照。ヘラクレスはさらに2つに分類されている)、とりわけ東証2部・大証2部と比較した場合、上場会社数の割には繁盛な取引が行われているようだ。

新興市場は、成長可能性の高い企業等への早期の資金供給を目的として既設の市場とは異なる独自の基準で上場・上場廃止を決定(後掲・参考資料参照。大証では、上場審査の観点からはヘラクレススタンダードをさらに3分類している)。一方、投資者保護の観点からは手厚い情報開示が求められるのが通例となっている。
いずれの市場も創設から10年は経過していないことを考慮すると、発行会社・投資者のニーズが一定程度合致し、市場として確実な成長を遂げたといえるだろう。
市場の「質」はどうか ただし、最近の例をみると、これら新興市場の上場会社の破綻等が目にとまるところである。
冒頭に掲げたNOVA株式(証券コード:4655)はジャスダック証券取引所が10月26日、同社の会社更生手続申立てを受け、翌27日から11月26日までの整理ポスト割当てと11月27日の上場廃止を公表。ビービーネット株式(2318)は同株式が上場されるヘラクレススタンダード市場を開設する大阪証券取引所が10月29日、同日から「(大証が)上場廃止基準に該当するかどうかを認定した日まで」の監理ポスト割当てを公表している。
NOVAでは様々の不祥事報道等により既にその株価も2ケタに低迷していたが、ビービーネット株式は年初来高値7,930円、10月中も2,000円台を付けていたところ、一連の発表等を受け急落。会社側が定時総会開催・有価証券報告書提出予定日をその夜に公表した11月5日の終値は672円となっており、投資者の損失も少なくなかろう。
この9月以降、経営破綻を理由とする上場廃止決定が相次ぐ形となっており、①クレディア(8567。東証9月14日発表、10月15日上場廃止)、②みらい建設グループ(1792。東証9月27日発表、10月28日上場廃止)、③マキ製作所(6304。ジャスダック証取9月27日発表、10月28日上場廃止)、④クインランド(2732。大証10月18日発表、11月9日上場廃止予定)にNOVAを加えると、5社にのぼることとなる。
①・②はいずれも東証1部上場、④はヘラクレススタンダード上場であり、5社中3社が新興市場の所属銘柄であったということになる。
column
データでみる海外市場の動向 金融庁の取りまとめによると、2006年の主要株式市場の時価総額は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が15.4兆ドル、東証が4.6兆ドル、ナスダック証券取引所(ナスダック)が3.9兆ドル、LSEが3.8兆ドル、ユーロネクストが3.7兆ドル、大証が3.1兆ドルとなっている。
また、上場会社数(2006年末)は、NYSE2,280社、ナスダック3,133社、LSE本則市場1,606社。今年7月末のETFの上場状況は、NYSEが198、LSEが129、ユーロネクストが283に対し、東証は11。
なお、新興市場の投資主体別の個人投資家による売買シェアは、東証マザーズ77.7%(今年1月~9月末)、大証ヘラクレス85.0%(2006年)、JASDAQ78.8%(2006年)である。この割合は、東証1部では28.2%(2006年)、大証1部では24.5%(2006年)にとどまる。
新興市場における最近の上場廃止状況、監査意見 そこで、実際にこの1年間になされた上場廃止について、その数と上場廃止理由をまとめてみた(表3参照)。なお、新興市場に多くみられる上場廃止理由のうち「上場廃止申請」とは、たとえばJASDAQ上場会社がその上場市場を東証2部に替えようとする際に、JASDAQについてなされるもの。また、JASDAQにおける「事業活動の停止」4社のうち、3社は合併関連、1社がMBO関連の事案である。

まず、今年11月1日現在の上場会社数を仮に分母として上場廃止割合を算出すると、本表左から1.5%、9.8%、1.3%、5.3%、参考として掲げた東証・大証の1部・2部市場(以下「既設市場」という)で2.1%、4.3%、3.1%、3.2%となり、大証ヘラクレススタンダードとJASDAQの数値が若干高いこととなる。
しかしながら、いわゆる経営破綻事例として「会社更生・民事再生手続」等を理由とする上場廃止を仔細にみると、新興市場で計2社、既設市場で計3社となり、新興市場においては当然割合的に高くなるものの、実際の上場廃止数として有意な差はないことがわかる。
また、先に大証ヘラクレススタンダードおよびJASDAQにおける上場廃止割合が若干高いことに触れたが、前者においては企業グループの再編成(完全子会社化)と上場市場の変更(上場廃止申請)が上場廃止数の8割弱を、後者においてもこれらが4分の3を占めており、いわば新興市場の上場会社として内在する上場廃止。上場廃止割合の高さは、新興市場における上場会社の経営内容と直接には結びついていないといえるだろう。
ただし、①東証マザーズでは2社の「監査意見不表明」、②大証ヘラクレススタンダードでは1社の「上場契約について重大な違反」、③JASDAQでは1社の「有報等の虚偽記載」をそれぞれ理由とした上場廃止がみられるところである。
①は、今年6月24日に上場廃止となったインターネット総合研究所(4741)と10月13日に上場廃止のフレームワークス(3740)。インターネット総合研究所は東証マザーズの第1号上場会社であったが、連結子会社であったアイ・エックス・アイ(東証2部上場)の経営破綻に伴い、インターネット総合研究所の半期報告書について監査法人トーマツが意見不表明としたことから、東証は5月23日、上場廃止を決定し、公表したものである。フレームワークスの上場廃止も監査法人トーマツの意見不表明に基づく。
②は、サンライズ・テクノロジー(4830)の事案で、大証としては平成15年以来、適時開示体制等について改善報告書の提出を求めるなどしてきたが、「適時開示規則違反を繰り返し犯し」たことから、このような形で上場が廃止された。
③は、TTG(1991)の事案。昨年末の証券取引等監視委員会による勧告、金融庁による課徴金納付命令を経て今年1月7日、上場廃止となった。
「監査意見の集計結果」からはどうか それでは、会計監査人による監査意見からは何らかの差異が確認できるだろうか。
市場間の比較が可能な平成19年1月期決算~6月期決算に係る監査報告書における会計監査人の監査意見を、各取引所の集計結果からまとめたものが表4である。
対象期間における意見不表明は新興市場において1社、既設市場において1社。不適正意見は1社もみられなかった。
これらを除く全社に適正意見が付されていることとなるが、そのうち追記情報として「継続企業の前提に関する注記」が付された会社の割合を、本表では上段の括弧内に示している。
これによると、東証1部・大証1部においてはこの注記が付された割合が際立って少ないことが確認できる一方、JASDAQでは東証2部・大証2部と同程度の割合で、大証ヘラクレススタンダードではそれより少し高く、大証ヘラクレスグロースでは53社中5社、東証マザーズでは124社中12社と10%に近い会社に注記がなされたことがわかる。
当該注記は、売上高の著しい減少や継続的な営業損失の発生、新たな資金調達の困難性といった事象・状況について、これらにより継続企業の前提に重要な疑義が認められるとして当該疑義に関する事項を注記するものであるが、不適切な注記や経営者による合理的な経営計画の不提示など、場合によっては「適正意見+追記情報」としての監査意見でなく「限定付適正意見」「不適正意見」「意見不表明」につながるものである。
本表対象期間のみによる比較では一概にいえないものの、監査報告書に係る不適正意見や意見不表明自体が上場廃止の一因ともされているため、注記各社の帰趨とともに、今後、市場間のさらなる差異がみられるようになるのか、注目されるところである。

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