税務ニュース2023年10月06日 新たな株価算定ルールで会計実務に混乱(2023年10月9日号・№998) 上場日設定でも「権利確定日が合理的に予測不能」と言えるか巡り両論
国税庁が7月に公表した「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)等の一部改正により、財産評価基本通達に基づく1株当たりの価額算定が認められたことで、税制適格ストックオプション(SO)の行使価格を1円に設定することが可能となった。ただし、会計上は、SO会計基準により原則として費用計上が必要になる。
会計上の費用は、基本的には「権利確定日」までの期間に渡って按分して計上していくことになるが、上場を目指す企業が発行するSOには、行使条件として「上場後に権利行使可能になる」といういわゆる“上場縛り要件”が入っているのが一般的だ。この場合、「権利確定日」をどう判断すべきなのか不明確であるため、企業会計基準委員会(ASBJ)は7月7日、「税制適格ストック・オプションに係る会計上の取扱いについて照会を受けている論点に関する解説」を公表し、その中で「権利確定日が合理的に予測不能であれば、付与日において一括費用計上すればよい」との考え方を示している。
ただ、この点について、株式上場を目指す顧問先を抱える税理士や公認会計士等の間では、「上場を目指す企業においては、上場日予定日を具体的に設定した上で、事業計画や資本政策を立案するのが通常であり、このような場合でも果たして『権利確定日が合理的に予測不能』と言えるのかは疑問」との声とともに、「権利確定日は合理的に予測可能」として、上場予定日の前日をもって権利確定日と捉えるべきではないか」との意見も聞かれる。
その一方で、「上場予定日」とは言っても、それは企業側の“希望的観測”であり、現実には延期となるケースの方が一般的であるため、「権利確定日が合理的に予測不能」として付与日に一括費用計上でよいのではないかとの意見もあり、実務家の間でも両論がある状況だ。
これまで、上場を目指す企業においては、税制適格SOの費用計上は不要とされていたためこのような議論は存在しなかった。ASBJ等からの見解の表明が待たれるところだ。
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