解説記事2025年08月25日 SCOPE 船員に対する金員は外注費か給与等のどちらか(2025年8月25日号・№1087)
審判所、請求人は船員を空間的、時間的に拘束
船員に対する金員は外注費か給与等のどちらか
船舶業務に従事する船員に対して支払われた金員が外注費又は給与等のどちらに該当するかが争われた事案で、国税不服審判所は、請求人はすべての船員に対し、雇用期間、配乗予定船、休養などの条件を決めた上で、請求人が指定した船舶に乗船させることにより、各船員を乗船から下船まで空間的、時間的に拘束しており、その間においては、日々一定の時間について必要な労務を継続的に提供させ、それを継続して管理していることが認められるなどとし、各金員は外注費ではなく給与等に該当し、課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないとの判断を示した(高裁(諸)令6第5号)。
外注費も役務の提供の具体的態様に応じてその法的性格を判断
外注費と給与等の区分については、税務調査等でよく争われるポイントの1つとなっている。給与に該当することになれば、課税仕入れの対象から除かれるだけに大きな違いとなる。今回の事案も、船舶の業務に従事する船員に外注費として支払った金員が、税務調査により、当該金員は給与に該当するとし、課税仕入れに該当しないことから消費税等の更正処分が行われたものである。
船員法による雇用契約とは別個の契約
請求人は、雇入契約はあくまで船員法固有の要請に基づく雇用契約とは別個の契約であり、請求人と各船員との間に雇入契約があることを理由に、雇用契約が成立しているとはいえないなどと主張した。
審判所は、最高裁の判決を参照し、役務の提供の対価として支払われる金員が所得税法上の給与等に該当するか否かを判断するに当たっては、所得税法の趣旨、目的に照らし、役務の提供及び対価の態様等を考慮し、外注費として経理処理された金員についても、当事者が選択した私法上の法形式にかかわらず、その役務の提供の具体的態様に応じてその法的性格を判断すべきと解され、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならないとした(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁)。
請求人の従業員である船員と区別せず
その上で審判所は、請求人は①各船員と請求人の従業員である船員とを実質的に区別することなく、業務において各船員が従事すべき時間や内容を割り振っている、②各船員を含むすべての船員に対し、請求人が指定した船舶での業務を行わせるために、「採用条件について」と題する書面を交わしている、③請求人と各船員との間に成立した船員法37条に規定する雇入契約について、地方運輸局長等に対し、乗船や下船の都度、雇入契約に係る届出及び必要書類(船舶に乗船する者の氏名や労働条件等が記載された海員名簿等)の提示又は提出を行っていると指摘(表参照)。加えて、請求人は、各船員の業務に係る労働時間の状況を管理する「船内記録簿及び労務管理記録簿」を作成していることからすれば、請求人は、業務に従事する各船員を含むすべての船員に対し、業務を行わせるため、雇用期間、配乗予定船、休養などの条件を決めた上で、請求人が指定した船舶に乗船させることにより、当該各船員を乗船から下船まで空間的、時間的に拘束しており、その間においては、日々一定の時間について必要な労務を継続的に提供させ、それを継続して管理していることが認められるとした。
【表】審判所の認定事実
| ・請求人は、業務に従事する各船員を含むすべての船員について、乗船から下船までの間における1日の労働時間が8時間となるよう、それぞれの船員に、業務に従事する時間及び休息の時間(原則、4時間労働、8時間休息、4時間労働)を割り振っており、これらの時間の割り振りの状況や労働時間として..り振られた時間において、各船員が請求人に対して提供した役務の内容は、請求人の従業員である船員との間において異なることはなかった。 ・請求人は、各船員を含むすべての船員を業務に従事させるに当たり、各船員との間で「採用条件について」と題する書面を交わしていた。書面には、雇用期間、配乗予定船、職位(船長、航海士、機関長、機関士等の区分)、給与(1日単位で金額が表示されている)、乗下船時の交通費の支給、健康診断の費用の負担、船員保険の加入についてなどの記載がある。 ・請求人は、各船員を含むすべての船員を業務に従事させるに当たり、乗船や下船の都度、地方運輸局長等に対し、船員法37条に規定する雇入契約の成立等の届出を行った。 なお、届出に当たり、地方運輸局長等に対し、提示又は提出が必要な書面は、①海員名簿、②クルーリスト、③雇入(雇止)届出書、④船員手帳である。 ・請求人は、業務に従事する各船員を含むすべての船員について、各船員の従事した業務に係る労務の種類、労務開始、終了時刻、労務時間数及び休息時間などを記録した「船内記録簿及び労務管理記録簿」を作成している。 |
したがって、審判所は、各船員は、請求人が指定した船舶(空間)において、請求人に時間的な管理を受けつつ、各船員が請求人から指示された内容の役務の提供をし、各金員を得ていたといえるから、各金員は外注費ではなく給与等に該当し、課税仕入れに係る支払対価の額に該当しないとの判断を示し、請求人の請求を棄却した。
雇用契約の有無は所得区分の判断に影響なし
なお、請求人は、各船員との間には雇用契約が成立しているとはいえず、各船員と請求人の従業員との間に明確な違いがあると主張しているが、審判所は、請求人が主張する雇用契約は雇入契約以外の期間も雇用が継続していることを意味するものであるが、本件では、雇入契約に係る役務の提供の対価に係る所得区分が問題になっていることからすれば、雇用契約の有無は、各金員の所得区分の判断に影響するものではないとしている。
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