解説記事2025年09月01日 未公開判決事例紹介 二段階買収を巡る株主の損害賠償等請求控訴事件(2025年9月1日号・№1088)
未公開判決事例紹介
二段階買収を巡る株主の損害賠償等請求控訴事件
スクイーズアウト不実施も株主の損害認めず
今号4頁で紹介した損害賠償等請求控訴事件の判決について、一部仮名処理した上で紹介する(なお、原審の判決は1061号26頁掲載)。
〇非上場会社を二段階で買収する際において、一段階目の取引の際に買収者から株主に対し「一段階目の取引に応じなかった株主のスクイーズアウトが計画されている」旨の説明がなされていたにもかかわらず、実際には一段階目の取引完了後にスクイーズアウトが実施されなかったことから、一段階目の取引に応じなかった株主(控訴人)が対象会社(被控訴人)と買収者(被控訴人)に対し損害賠償を求めた控訴審(令和6年(ネ)第5883号)。東京高等裁判所(小出邦夫裁判長)は令和7年7月16日、一審に続き株主の請求を棄却した。
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して6億3822万5000円及びこれに対する令和3年7月28日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要(以下、新たに定義したもののほかは、略称は、原判決の例による。また、引用する書証の枝番号は省略する。)
1 被控訴人G社は、電気自動車及びその部品の製造及び販売等を業とするいわゆるベンチャー企業の非公開会社(日本法人)であり、控訴人及び被控訴人F社は、いずれも被控訴人G社の株式を保有する香港法人である。被控訴人G社が、平成29年、控訴人を含む本件株主に対し、同被控訴人が香港の上場企業の完全子会社となる本件二段階買収の計画について、上記香港の上場企業として被控訴人F社が想定されていることを示唆しつつ説明をするなどしたところ、本件株主の大半は、一段階目の取引として、被控訴人F社に対してその保有株式を譲渡(本件株式譲渡)したが、控訴人は、二段階目の取引に相当するスクイーズアウト(本件スクイーズアウト)によって投下資本の回収を図ることを企図して本件株式の譲渡に応じなかった。その後、本件スクイーズアウトは実施されなかった。
本件は、控訴人が、被控訴人らは、本件スクイーズアウトが確実に実施されるという誤信を惹起させるような説明等を行ってはならないという信義則上の注意義務を負うところ、不適切な本件説明を行ってこれを怠ったため、控訴人は本件株式譲渡に応ずることができず投下資本を回収できないという損害を被ったと主張し、被控訴人らに対し、被控訴人G社に対しては不法行為(共同不法行為)、会社法350条若しくは民法715条1項又は債務不履行を根拠に、その余の被控訴人らに対してはいずれも不法行為(共同不法行為)を根拠に、本件株式譲渡に応じた場合に得られたであろう対価に相当する6億3822万円余の損害賠償金及び民法所定の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である(なお、遅延損害金の起算日は、被控訴人らに対する各訴状送達日のうち最も遅い日の翌日である。)。
なお、本件の準拠法について検討するに、控訴人は、被控訴人らの加害行為により本件株式譲渡に応じた場合に得られたであろう対価を得られなかった(本件株式を所有し続ける結果となった)と主張していることから、加害行為による直接の法益侵害の結果が発生した地は本件株式の所在地である日本と解される。また、この点を措いても、本件の加害行為は、日本の株式である本件株式譲渡に係る合意に関連して行われたものであり、本件スクイーズアウトも日本の会社法によって規律されるから、日本が本件の不法行為に最も密接に関係する地というべきである。さらに、控訴人と被控訴人らは共に、本件訴訟手続において、日本法である旨の認識を示していることから、両当事者間において準拠法の合意があったということもできるから、いずれにしても、本件の不法行為に基づく損害賠償請求権の準拠法は、日本法である(法の適用に関する通則法17条、20条、21条)。
2 原審は、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人がこれを不服として本件控訴をした。
3 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、以下のとおり補正し、後記4で当審における当事者の主張を加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要等」の2から4に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決2頁14行目の「法人であり」から15行目の末尾までを「腕時計、宝飾品の取引を中心的に行う投資持株会社であり」に、15行目の「(弁論の全趣旨)」を「(甲5、6及び弁論の全趣旨)」にいずれも改める。
(2)原判決3頁1行目の「ア」の後に以下を加えて改行し、「イ」を加え、13行目の「イ」を「ウ」に改める。
「 平成29年7月の時点の本件株主は、その当時被控訴人G社の代表取締役を務めていたK(以下「K」という。)を始めとする役員及び従業員数名のほか、法人投資家及び個人投資家併せて30名程度であった。(甲6及び弁論の全趣旨)」
(3)原判決6頁10行目から11行目にかけての「(被告G社の代表取締役であったK(以下「K」という。)」を「K」に改める。
(4)原判決12頁9行目の「本件二段階買収後」を「被控訴人G社の買収後」に改める。
4 当審における当事者の主張
〔控訴人〕
(1)争点2の1について
二段階買収の実務と本件の経緯全体や被控訴人らが行った一連の行為を踏まえ、その実質的な意味内容を考慮すれば、本件説明は、控訴人の正当な信頼を惹起させるものであり、控訴人に対する不法行為を構成するというべきである。
ア すなわち、経済産業省が公表するMBO指針やジュピターテレコム事件決定(最一小決平成28年7月1日民集70巻6号1445頁。以下「平成28年最決」という。)にも表れているとおり、二段階買収の実務では、対象会社の株主において、投下資本回収の機会を喪失することを懸念して一段階目の取引に応じざるを得なくなるという、株主への強圧性を回避することが要請されており、かかる強圧性とスクイーズアウトの実施の確実性とは表裏一体の関係にある(スクイーズアウトの実施の確実性が確保されて初めて強圧性が回避され公正な手続といい得ることとなる。)。控訴人のスクイーズアウトの確実な実施に対する信頼を法的保護に値しないとして否定することは、強圧性の存在を是認することにほかならない。現に、二段階買収で一段階目の取引が成立したのに二段階目の取引(スクイーズアウト)が実施されないという例は前代未聞である。
このような実務を背景にすると、元々、本件株主間契約によって投下資本回収の機会確保が堅固なものとして保障されていた控訴人に対し、我が国で一般的な内容の二段階買収を提案すること自体がスクイーズアウトの確実性への信頼を惹起するものである。
イ 加えて、本件の具体的事実関係をみても、❶本件提案書は被控訴人F社が被控訴人G社を完全子会社化する意思を有する旨を明確に表明するもので、全株主に確実に投資利益が提供される旨の記載を含み、控訴人に本件提案書を送信した際のメールには、全株主から何らかの方法で株式を取得することを前提とする旨の記載もあった。また、❷本件Tメール①の内容は本件株式譲渡と本件スクイーズアウトという2つの選択肢を優劣なく提示するものであり、本件Tメール②で、行われた説明の内容は、本件スクイーズアウトによる投下資本回収の確実性を契約書の形にしたいと望む控訴人に対し、本件スクイーズアウトが確実に実施されることを示しつつ契約書の形にすることを断るものといえる。そして、❸被控訴人F社の平成29年7月7日付けのプレスリリース(以下「7月7日付けプレスリリース」という。)の内容は、1株当たり36万4700円という対価及び資金調達方法の具体的金額にまで言及して本件スクイーズアウトの実施及び内容につき具体的に説明するものであった。上場会社である被控訴人F社のプレスリリースに虚偽の内容が含まれることはおよそ考えられないことである。
これらの❶〜❸の説明等は、いずれも本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する控訴人の信頼を強く惹起するものであったといえる。
ウ 控訴人が投資取引において極めて重要な権利である共同売却権を放棄したのは、本件スクイーズアウトが確実に実施されると信じたからこそである。被控訴人G社は、本件株式投資契約及び本件各株主間契約に基づき、第三者からの買収の提案があった場合には速やかに控訴人を含む本件株主に提示し、その対応につき十分協議し、控訴人を含む本件株主の意向を最大限尊重して決定、実施する義務を負い、本件二段階買収の提案は被控訴人G社の上記義務の履行として行われたものであることも踏まえると、かかる信頼は保護されるべきである。被控訴人らは、共同売却権を放棄させるためには控訴人に対して別途投下資本回収の機会を確保すべきであった。
エ 被控訴人F社が一段階目の取引で被控訴人G社の支配権を得た後、買収直後の決算期に決算報告書上の収益を意図的に悪化させるなど同被控訴人の企業価値を損なう異常な行動をとっていることからすると、被控訴人F社が被控訴人G社の株式を取得した真の目的は、中国政府から補助金の支給を受け、同被控訴人の技術を中国に移転させることにあったとしか考えられない。被控訴人らは、控訴人に本件スクイーズアウトが確実に実施されるとの信頼を与え、共同売却権を放棄させ、控訴人に何ら対価を支払うことなく被控訴人G社の株式の大半を取得し、上記の真の目的を達成したものである。
(2)争点2の2について
本件スクイーズアウトの実施が確実なものではないことは株主の判断のために重要な事項であり、Tは、被控訴人G社の取締役として、控訴人に対し、このことを適切に開示すべきであり、適正情報開示義務違反があったというべきである。
(3)争点5について
仮に被控訴人らによる不法行為がなければ、控訴人は当然本件株式譲渡を選択し、その対価として合計6億3822万5000円(=36万4700円×1750株)を受領することができたから、被控訴人らの不法行為と上記対価との間に相当因果関係がある。
控訴人は現在被控訴人G社の株式を保有し、損益相殺の法理が適用されるが、当該株式の価値の算定基準時は口頭弁論終結時であり、その価値は0円である。仮に算定基準時を不法行為がなければ本件株式譲渡が行われたであろう時点としても、本件株式が流動性を欠く債務超過会社の少数派株式である以上評価しようがなく、やはり0円である。したがって、控訴人が現時点で被控訴人G社の株式を保有することは賠償額を減額する理由にならない。
〔被控訴人ら〕
(1)争点2の1について
争う。本件説明は本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する信頼を惹起させるものではなく、被控訴人らに控訴人が主張する信義則上の義務違反があるとはいえない。
ア MBO指針は日本の上場会社の株式について公開買付けが行われた後に非上場化を行うMBOに焦点を当てたもの、平成28年最決は、上場会社の株式について公開買付けが行われた後にスクイーズアウトが実施された事案における会社法172条1項所定の取得の価格の算定方法について判断されたものであり、いずれも本件事案と関係ない。非公開会社において二段階目のスクイーズアウトの実施が義務付けられる旨の法令上の定めや実務慣行は存在せず、非公開会社を買収しようとする者は、一定数以上の株主が一段階目の取引に応ずることが望ましくないと考えた場合には、二段階目の取引を行うことを示唆して一段階目の取引への応募を断念するよう誘導する必要はなく、端的に一段階目の取引への応募を拒絶すれば足りるから、二段階目の取引を行う意図がないのに行うかのごとくふるまう合理的理由ないし動機は存在しない。
イ 控訴人が本件株式譲渡ではなく本件スクイーズアウトを待って現金で対価を受け取ることを選択した時点で、二段階目の取引の実施の有無にかかわらず、控訴人にとって本件株主間契約上の共同売却権を行使する機会は失われるから、控訴人が共同売却権を放棄したことをもって控訴人が本件スクイーズアウトの確実な実施を信頼したことを推認することはできない。
ウ 本件提案書は、今後の計画の概要を示すものにすぎず、同提案書に本件スクイーズアウトに関する詳細な記載はなく、本件提案書が控訴人に本件スクイーズアウト実施への正当な期待を生じさせるものとはいえない。また、本件Tメール①は、本件株主に対して同メールを送信した時点における意向を調査するものにすぎず、本件Tメール②も、スクイーズアウトが行われた場合には端数株式の買取価格を本件株式譲渡の譲渡価格と一致させる旨をいうものにすぎず、本件スクイーズアウトの手続の確実な実施を約束するものではない。
なお、本件Tメール②を受け、控訴人は本件各同意書を提出したところ、本件各同意書の内容は、控訴人が本件株主間契約に基づく権利を行使せずクロージング(本件株式譲渡の手続完了)時点で同契約を解約し、また、株式投資契約書(甲1)に基づく権利を行使せずに同時点に放棄することに同意するものである。もっとも、これらの同意は、あくまで本件スクイーズアウトが実施されることを条件としたものと解され、上記権利を本件株式譲渡の手続完了時に放棄したとはいえないことからすれば、本件Tメール②を受けて、控訴人が本件スクイーズアウトの実施に必要な行為を現実にしたとみることはできない。
エ 平成29年当時、被控訴人G社が本件スクイーズアウトの実施を見合わせたのは、本件株式譲渡が行われた同年7月7日以降、被控訴人G社の事業に関連する一般的な市場環境の影響も受けて同被控訴人の業績が悪化し、これに伴って財務状況が著しく悪化し、事業継続性に重大な疑義が生じたため、被控訴人F社は有限の事業資金を被控訴人G社の完全子会社化ではなく、その事業の運営及び存続のために注入する緊急の必要性があると判断したためである。
(2)争点2の2について
争う。Tによる本件説明やその他の一連の行為は、本件スクイーズアウトの実施の確実性につき株主に対して誤信を惹起させるものではないから、控訴人の主張はその前提を欠く。
(3)争点5について
争う。控訴人の請求する損害額は、仮定的現状の実現を目的とする損害賠償であり、賠償されるべき損害の範囲に含まれない。また、控訴人が主張する本件株式譲渡によって得られたはずの対価を喪失するという損害の賠償請求は、契約の実現を目的とした損害賠償請求であり、認める余地はない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は、以下のとおり補正し、後記2で当審における当事者の主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決14頁15行目から16行目にかけての「株式投資契約」の後に「(以下「本件株式投資契約」という。)」を、原判決15頁3行目の冒頭に「本件株式投資契約には、被控訴人G社が株式公開に向けて最大限の努力を尽くすべき旨の規定が定められていたほか、」を、4行目の「要求する権利)」の後に「同時売却請求権(本件株主が発行済種類株式の総数の2分の1以上を第三者に対して売却することを企図する場合、一定の条件を満たすことで、他の株主に対しても当該第三者に対して同一条件で保有株式を譲渡するよう請求する権利)」をそれぞれ加える。
(2)原判決15頁9行目から10行目にかけての「本件株主である原告」を「原告を含む本件株主」に、20行目の「等」を「、現金相当分30%とするのは、本件株式譲渡が課税取引と考えられることから、株主が負担すべき税金を賄う趣旨である等」にそれぞれ改める。
(3)原判決15頁20行目の末尾を改行の上以下を加える。
「 本件提案書の冒頭には、被控訴人G社が香港上場企業との資本提携をすることによって、同被控訴人には中国市場に進出する足掛かりを含むいくつかのメリットがあるとともに、本件株主に対しても、確実に投資利益が提供される旨の記載があったが、その具体的内容については、その保有株式について、上記香港上場企業の株式への転換を通じた市場性の提供、売却機会の確保、株価上昇の機会の提供などといったメリットがあるとするにとどまっていた。
また、本件二段階買収のうち二段階目の取引については、本件二段階買収の全体像を描くイラストに、本件株式譲渡に応じなかった株主についてはスクイーズアウトが実施される旨が読み取れる部分(4頁)、被控訴人G社の全株式を取得する資金として上記香港上場企業の株式の新規発行と同企業の投資家(支配株主)からの資本供給を予定し、上記の新規発行株式のうち10%相当がスクイーズアウトの手続に充てられる予定である旨が読み取れる部分(6頁)があるほか、イラストの脚注部分に、ステップ2(スクイーズアウトを指す)は日本の会社法において実務的に適用可能である場合に実施されるが、被控訴人G社は90%以上の本件株主が募集に応じるものと見込んでいる旨の記載があった(4頁)。もっとも、これらの記載のほかに、スクイーズアウトの実施時期や具体的な手続等の詳細に関する記載はほとんどなく、本件提案書の大半は、一段階目の取引に相当する本件株式譲渡に関し、本件株式譲渡に応じた場合の対価の支払の流れやタイムスケジュール等のほか、上記香港上場企業の概要を説明する趣旨で、被控訴人F社の会社概要、財務情報、株価分析や株主構成等と併せて、参考資料として、香港株式市場の概要を説明し香港上場株式を保有するメリット等を説明するものであった。なお、本件提案書によると、本件株式譲渡を選択する場合のタイムスケジュールとしては、5月末までに正式契約の内容の確認を行い、6月中旬までに被控訴人G社を代理人として上記香港上場企業との正式契約を締結し、締結日から約3週間後に被控訴人G社の臨時株主総会で本件株主間契約を終了させること等に関する議案に係る議決をし、7月末に、上記香港上場企業の株式が登録証券口座に移転するとともに現金が支払われ、手続が完了する(クロージング)ことが予定されていた。」
(4)原判決15頁21行目の「なお」を「以上のとおり」に、23行目の「実施する旨」を「実施する等の本件スクイーズアウト実施の見込み、可能性について」にいずれも改める。
(5)原判決15頁25行目の「原告に対し、」の後に「控訴人のファイナンシャルアドバイザーを務めていた■■■■社の従業員のCを通じて、」を加える。
(6)原判決16頁3行目の「回答には」を「回答はソフトヒアリング(意向調査)なので」に、7行目の「実施する旨」を「実施する等の本件スクイーズアウト実施の見込み、可能性について」にいずれも改める。
(7)原判決16頁9行目から11行目の「原告に対し」までを、「控訴人は、本件株式譲渡に応じず、本件スクイーズアウトを希望する選択をし、これをCを通じてTに伝えたところ、Tは、平成29年(2017年)6月28日、このことを前提に、Cに対し」に改め、12行目の「送信し、」の後に「同人を介して控訴人に対し、」を加える。
(8)原判決16頁17行目の「本件各同意書には、」の後に「本件株式譲渡の手続の完了を条件として、」を加える。
(9)原判決16頁26行目の末尾を改行の上以下を加え、原判決17頁1行目から3行目までを削除する。
「 控訴人の担当者は、当初、Cに対し、本件株主のうち本件株式譲渡に応ずる者に宛てて送信された契約書案の条項のうち、
保有株式の譲渡価格の総額のうち、一定額は、売主に対する株式の割当て及び発行により充足される旨の規定(2.2.1)、
一定額は、売り主に対する現金の支払により充足される旨の規定(2.2.2)を引用した上で、控訴人が選択した本件スクイーズアウトは上記
の規定(2.2.2)に該当すると考えられるので、支払期限等を明記した上で同規定に関する合意をした旨を契約書の形で書面化することを希望した。Cから控訴人側の希望を聞いたTは、同人に対して本件Tメール②を返信し、同メールに、上記両規定はセットの条項であること(本件株式譲渡に応じない控訴人との関係で、被控訴人F社の株式との交換に関する上記
の規定(2.2.1)は適用され得ず、従って上記
の規定(2.2.2)に関する合意を書面化することはできないこと)を説明するとともに、上記❷の条項の原文(英語)を引用した上で、上記
の規定(2.2.2)と同じ株価でのスクイーズアウト実施を約束するために、本件各同意書に上記❷の条項を設けていることを説明した。続けて、Tは、スクイーズアウトは会社法上不可避の対応であり裁判所等への申請も必要なため支払時期の明言は難しいとして、スクイーズアウトの手続では端株相当株式任意売却許可の申立て(会社法234条2項、235条1項等)などといった裁判手続を経ることを要するため支払時期を合意書面で一義的に約束することはできない旨を説明し、最後に、控訴人以外の本件株主にも同様の内容でお願いしていることを記載して控訴人からの要望には応じられない旨を回答した。本件Tメール②を受信したCは、控訴人の担当者に対して同メールを転送した。」
(10)原判決17頁6行目の「実施する旨」を「実施する等の本件スクイーズアウト実施の見込み、可能性について」に改める。
(11)原判決17頁12行目の「プレスリリース」の後に「(7月7日付けプレスリリース)」を加え、13行目の「上記プレスリリース」を「7月7日付けプレスリリース」に改める。
(12)原判決17頁12行目の末尾の後に「7月7日付けプレスリリースは、香港証券取引所の上場会社に適用される関係法令及び開示規則に基づいて配信されたものである。」を加える。
(13)原判決17頁18行目の「できる」を「でき、それを意図している(intends to)」に改め、同行の末尾の後に「一方、同プレスリリースの冒頭の要約部分には、上記記載のほかに、警告として、「Accordingly, the Acquisition, the Subscription and the Target Share Consolidation may or may not proceed.」などと、対象株式の併合手続等が進行するかどうかは不確かである旨が記載されていた。」を加える。
(14)原判決18頁11行目の「実施する旨」を「実施する等の本件スクイーズアウト実施の見込み、可能性について」に改める。
(15)原判決18頁19行目の末尾の後に「控訴人と被控訴人F社とはそれぞれ弁護士を通じて交渉し、同被控訴人からは、令和2年5月、被控訴人G社の業績が悪化していることに鑑み、現時点での最大限の誠意を示した額として3500万円(1株2万0215円)の対価を支払って控訴人が保有する被控訴人G社の株式を取得することを内容とする和解案が提示されたが、控訴人はこれに応じなかった。」を、20行目の「甲14、」の後に「乙60、」をそれぞれ加える。
(16)原判決22頁18行目の末尾の後に「そして、本件において、控訴人と被控訴人G社等との間に上記事情があるとは認められない。」を加え、23行目の「できるのであり」から23頁4行目までを以下に改める。
「できる。もとより、特に非上場会社の株式を保有する投資家において、当該投下資本をどのように回収するかは事案に応じ程度の差こそあれ大きな関心事であり、このことは本件における控訴人にとっても同様と考えられる。そして、本件二段階買収に関する提案や説明に当たり、二段階目の取引に当たる本件スクイーズアウトの実施の確実性については、一段階目の取引に相当する本件株式譲渡に応ずるか否かの意思決定に当たって考慮すべき事情の一つであることは否定し難い(上場会社のMBOに際してのいわゆる強圧性との関係は後述する。)。
もっとも被控訴人F社においても、その時々の社会経済情勢を含む同被控訴人や買収の対象とされた被控訴人G社を取り巻く状況等を踏まえて本件スクイーズアウトを取りやめる判断をする余地を残しつつ、迅速かつ円滑に企業買収を進める利益を有していることからすれば、被控訴人G社及び被控訴人F社による本件説明が本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する正当な信頼を惹起するものとして信義則に反するものといえるか否かは、本件説明の内容やその趣旨、本件説明がされるに至った経緯、関係者の属性その他諸般の事情を考慮して判断されるべきものである。」
(17)原判決23頁5行目の「本件説明」から13行目の「次に、」までを削除する。
(18)原判決23頁19行目の「実施する旨」を「実施する等の本件スクイーズアウト実施の見込み、可能性について」に改める。
(19)原判決23頁20行目の「本件提案書における記載内容は」を「本件提案書は」に、22行目の「するものであって、」から24行目の末尾までを「したものにすぎない。さらに、本件スクイーズアウトに関する記載が全体に占める割合はごく僅かである上、補正後の原判決第3の1(2)で認定した本件提案書の記載内容からすれば、本件提案書の主眼は、本件スクイーズアウトによる現金化ではなく、本件株式譲渡に応じて被控訴人F社の株式を取得することのメリットを強調し、控訴人を含む本件株主にこれに応ずるよう推奨することにあったとみるのが自然であり、少なくとも被控訴人G社においてこの時点で本件スクイーズアウトの実施の確実性を強調すべき必要性は見当たらず、先に原判決を補正引用して説示したとおり、本件提案書には本件スクイーズアウトの実施の見込みや可能性についての記載はなく、実施の確実性を示す意図を含むものではなかったと解される。そして、このことは、本件提案書が送付された経緯や、その時点においてあり得る今後の手続の流れを概括的に説明する本件提案書の記載自体から、控訴人を含む本件株主にも読み取ることが十分可能であったと解するのが自然である。そして、控訴人を含む本件株主は、非上場会社たる被控訴人G社において、本件各株主間契約等を締結するなどし、株主相互の関係が希薄な上場会社の株主とは異なる側面を有しており、本件スクイーズアウト実施の確実性を含めた今後の見通しについて必要な情報を収集分析して適切な判断をすることが期待できる地位にあったということができる。なお、控訴人は、Cが控訴人に本件提案書を送付した際、メールの本文に、被控訴人G社の「各株主の皆様・・に持分譲渡に係る業務の完了にご協力いただく必要がございます。」と記載したこと(甲17)を指摘し、同記載は全株主から何らかの方法で株式を取得することを前提とする趣旨であるから本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する信頼を惹起させ得るものであると主張するが、上記文言は、単に本件提案書を送付する旨の連絡文に付随的に記されたものであって、全ての本件株主から株式を何らかの方法で取得する確定的な意思がある旨までは表現されていないから、この記載が控訴人に本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する信頼を惹起させ得るものと評価することはできないというべきである。」にそれぞれ改める。
(20)原判決24頁3行目の「本件二段階買収」から5行目の末尾までを「そのことは控訴人を含む本件株主にも容易に理解可能であるから、本件スクイーズアウトの実施の確実性について何らかの期待、信頼を惹起するものとはいえないというべきである。なお、本件Tメール①の趣旨は、被控訴人らにおいて今後必要となる対価支払の準備の関係上、本件株式譲渡の対象となるおおよその株式数を把握しておくことにあったものと解され、このことは控訴人を含む同メールを受信した本件株主にとっても容易に理解可能と考えられるところ、このような本件Tメール①の趣旨からすれば、同メールにおいて、これらの2つの選択肢を優劣をつけずに提示したことをもって、本件スクイーズアウトが確実に実施されることを示唆するものといえないことは明らかというべきである。」に改める。
21 原判決24頁20行目の「取得することも」の後に「その当否は別として会社法上」を、22行目の「同じ価格とすること」の後に「の確約を得ておくこと」をそれぞれ加える。
22 原判決24頁26行目の「確実に」を削除し、25頁1行目の「示唆して」を「示して」に改める。
23 原判決25頁2行目の「したがって」から5行目の末尾までを以下に改める。
「 本件Tメール②の文面は、本件スクイーズアウトの実施と本件スクイーズアウトを実施した場合に控訴人が受領することができる対価の問題とを厳密に書き分けたものではなく、その文言だけをとらえると、あたかも本件スクイーズアウトの実施が前提とされているように読む余地がないとはいえない。しかしながら、スクイーズアウトの手続を含む企業買収の場面においては対象会社から締め出される少数株主が受け取る対価の価格の相当性が問題となることが多いことも踏まえると、本件Tメール②の狙いは、本件株主間契約の解約と引換えに、本件スクイーズアウトが実施される場合において、その対価を本件株式譲渡の対価と同じ価格に設定しようとすることを示すことにあったとみるべきである。そして、このことは、外国法人ではあるが、投資対象として相当程度リスクの高い非上場のベンチャー企業である被控訴人G社に投資を行っており、二段階買収を始めとする企業買収に関する日本の会社法制に関し相当程度の知見を有すると思われる控訴人においても読み取ることは十分可能であったということができる。以上によれば、本件Tメール②は、送信された経緯やその趣旨も考慮すると、本件スクイーズアウトの確実な実施を前提とする趣旨であったとはいえず、控訴人にそのような期待、信頼を惹起させるものであったともいえない。」
24 原判決25頁6行目の冒頭から9行目の末尾までを以下に改める。
「 本件説明の後に被控訴人F社によって公表された7月7日付けプレスリリースには、その当時予定されていた本件スクイーズアウトの具体的な内容に関する記載があったことは、補正後の原判決第3の1(3)アで認定したとおりであるが、そもそも控訴人は同日よりも前の6月には本件株式譲渡に応じないことを決定し、本件各合意書も提出していたのであるから、7月7日付けプレスリリースの上記記載によって、控訴人の本件スクイーズアウトの実施の確実性への信頼が形成されたことが推認されるものではない。また、7月7日付けプレスリリースは、香港証券取引所の上場会社に適用される関係法令及び開示規則に従って、市場一般に当時の被控訴人F社の本件スクイーズアウト実施についての意図する(intends to)ところを示すものであり、控訴人に向けられた本件スクイーズアウト実施の確実性を示す情報であったともいえない。なお、被控訴人らは、控訴人は、原審の審理において、裁判所の釈明に応じ、7月7日付けプレスリリースの発出が不法行為を構成する旨の主張を取り下げたと主張し、この点を被控訴人G社及び被控訴人F社の信義則上の義務違反を基礎付ける事実として主張することは、時機に後れた攻撃防御方法の提出として却下されるべきであると主張する。しかしながら、当裁判所の判断は上記のとおりであり、控訴人が上記の点を主張することによって訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められず、控訴人の上記主張等を時機に後れた攻撃防御方法として却下することが相当とは認められない。」
25 原判決25頁10行目の「本件において」から16行目の「認められないことから、」までを削除し、17行目から18行目にかけての「ものであった」を「ものであり、被控訴人G社及び被控訴人F社に信義則上の義務違反があった」に改める。
26 原判決25頁26行目の「本件」から26頁1行目の「といえ、」までを削除し、3行目の「そのことはやむを得ないものであったと解される。」を「それは、そのような選択に内在するリスクであり、控訴人に著しく酷な結果が生じたとはいえない。」に改める。
2 当審における当事者の主張に対する判断
(1)争点2の1について
ア 控訴人は、MBO指針や平成28年最決にも表れているとおり、二段階買収においては、対象会社の株主への強圧性の回避が要請されており、スクイーズアウトの実施の確実性が確保されて初めて強圧性が回避され公正な手続といい得る旨を主張し、控訴人のスクイーズアウトの確実な実施に対する信頼を法的保護に値しないとして否定することは、強圧性の存在を是認することにほかならず、原審判断は平成28年最決にも違反すると主張する。
しかしながら、MBO指針は、上場会社において非上場化を目指して行われるMBOに適用対象を限定し、また、企業社会において共有されるべきベストプラクティスとして位置づけられるMBOに関する公正なルールの在り方を提示するものであり、MBO指針中に掲げられた各公正性の担保措置とM&Aの適法性との関係について整理することは意図されていない。そして、非上場会社の中でも特に株主が少数の場合には、会社と株主との関係や、株主間の関係が上場会社のように希薄ではなく、株式が不特定多数の投資家によって分散保有されているためにその利益の確保が困難になることが多い上場会社に比べて、強圧性の問題は生じにくいという点も指摘することができる。そうすると、同指針の中に、株主がMBOにおける公開買付けに反対した場合の取扱いについて、当該株主に対して強圧的な効果を生じさせず、適切な判断機会の確保を図る観点からの実務上の工夫として、公開買付けによって大多数の株式を取得した場合には特段の事情がない限りスクイーズアウトを実施すべき旨が指摘されている(甲18・13頁)からといって、スクイーズアウトを実施しなかったこと自体は、上場会社の場合であったとしても、直ちに違法とは評されず、MBO指針の適用対象ではない非上場会社の事案である本件においては、スクイーズアウトが実施されることが株主の予測可能性を確保し、その期待に応えるという意味で企業の行動として望ましいものと一般的にはいえても、スクイーズアウトを実施しなかったことをもって直ちに、違法又は株主に対する強圧性が回避されていない不公正な手続を行ったと評価することはできない。
また、控訴人が引用する平成28年最決は、株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い、その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし、当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において、上記公開買付けが一般に公正と認められる手続により行われた場合における会社法172条1項にいう取得の価格について判断したものであり、本件とは事案を異にし、本件と対比することは適切ではない。
以上のとおり、我が国における上場会社の二段階買収の実務を根拠に、本件においてもスクイーズアウトの実施の確実性が確保されて初めて強圧性が回避され公正な手続といい得る旨の控訴人の主張は、採用できない。
イ なお、控訴人は、二段階買収で一段階目の取引が成立したのに二段階目の取引であるスクイーズアウトが実施されないという例は前代未聞であり、そのような実情も考慮すべきである旨をいう。
そのような実情があるか、本件記録上は判然としないが、仮に控訴人が主張するような実情があるとしても、本件説明の内容やその趣旨、本件説明がされるに至った経緯、関係者の属性その他諸般の事情を考慮して、本件説明が本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する控訴人の正当な信頼を惹起するものといえないことは、補正後の原判決第3の1及び2で認定説示したとおりであって、上記控訴人の主張は、上記認定判断を左右するものといえない。
ウ 控訴人は、本件各株主間契約に基づき、共同売却権等という投資取引において重要な権利を有していたところ、本件各同意書によってこれらを放棄したのは本件スクイーズアウトが確実に実施されると信じたからこそであり、かかる信頼は保護されるべきであると主張する。
しかしながら、本件各合意書の内容は、本件各株主間契約の解約等と併せ、本件株式譲渡の手続完了後、本件スクイーズアウトが実施される場合にはその手続について一切の協力を行い、当該手続において一切の異議を申し立てないことを同意するものであるから、本件各合意書による合意の解釈として、本件スクイーズアウトの実施を条件として本件各株主間契約の解約に同意するものと解する余地がある。そうすると、スクイーズアウトが実施されなかった本件においては、控訴人はいまだ共同売却権や同時売却請求権等の本件株主間契約(D種優先株式)に基づく権利を保持していると解する余地もあるというべきである。
以上に反し、仮に、控訴人が、上記の本件株主間契約に基づく権利を本件株式譲渡の手続の完了時に放棄したと認められるとしても、上記権利の放棄は、本件スクイーズアウトが実施されるとの予測の下での行動であったものであるところ、共同売却権等の諸権利がいかなる財産的価値を有し、控訴人にいかなる経済的価値をもたらすものであるのかは判然とせず、また、仮に控訴人が上記権利を保持し続けた場合に、本件スクイーズアウトの実施に当たりどのような支障が生ずるのかについても具体的な主張、立証はない。仮に上記権利の保持と本件スクイーズアウトの実施とが両立しない関係にあるのであれば、上記権利の放棄について、控訴人が本件スクイーズアウトの実施への信頼に基づいて新たに独立の出捐行為を行ったと評価することができるのかについても疑義がある。
さらに、一段階目の取引で得られる対価である被控訴人F社の株式70%と現金30%と、二段階目の取引で得られる対価である現金100%のどちらが控訴人にとって意義あるものかは、香港株式市場の取引状況や被控訴人F社の株価動向、企業属性等の諸般の事情を踏まえた様々な判断があり得、二段階目の取引が確実に実施されるとまではいえないような場合であってもなお、一段階目の取引ではなく二段階目の取引を選択し、仮に二段階目の取引がない場合には株式を保有し続けるという選択もあり得るというべきであり、本件において、控訴人が本件株主間契約に基づく権利を放棄したことが本件スクイーズアウトが実施される見込みの上のことであったとしても、本件スクイーズアウトが確実に実施される旨を信じなければ権利を放棄しなかったとまで認められるかについても疑問がある。
以上に加え、上記権利の放棄は、控訴人が既に本件株式譲渡に応じないことを選択することを決定して被控訴人G社側にその旨を伝えた後の事情であること(補正後の原判決第3の1(2)ウ)、本件説明が控訴人に対して本件スクイーズアウトの実施の確実性に対して過度の期待を抱かせるようなものであったとはいえないこと等も踏まえると、本件各同意書の提出によって本件株主間契約(D種優先株式)に基づく権利を放棄したことが、被控訴人G社の信義則上の義務違反に基づくものではないとした前記認定判断を左右するものではない。なお、控訴人は、本件スクイーズアウトを含む本件二段階買収の提案は、被控訴人G社の本件株式投資契約及び本件各株主間契約上の義務の履行として行われたものであるから、本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する控訴人の信頼は法的保護に値すべきであるともいう。被控訴人G社が買収等の提案を受けた場合の対応については、本件株式投資契約には、被控訴人G社は投資家と十分協議して決定する旨の定めがあり、本件各株主間契約にも被控訴人G社において本件株主の意向を尊重する旨の定めがあるが(甲1、2及び4)、二段階買収において、買収者又は対象会社は、確実に実施する旨を約さない限り少数株主に対してスクイーズアウトを実施する法的義務を負うものではないことは補正して引用する原判決で説示したとおりであり、上記契約においてこれらの定めがあることによって本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する控訴人の信頼が法的保護に値するものとなるとはいえないとした前記認定判断を左右するものではない。
エ 控訴人は、被控訴人F社が被控訴人G社の株式を取得した真の目的は、中国政府から補助金の支給を受け、同被控訴人の技術を中国に移転させることにあったと主張するが、上記控訴人の主張事実を裏付ける証拠は提出されていない。かえって、決算報告書上の数値を前提とする限り、被控訴人G社の第8期(平成29年4月1日〜平成30年3月31日)の当期純損失額はその前年度と比べて大幅に悪化し(▲7億9486万円余→▲20億3203万円余)、被控訴人F社からの運転資金等の借入れに係る長期借入金の事業年度末残高は、第8期以降増加の一途を辿っており(乙31〜35)、これらの事実は、本件スクイーズアウトの実施を取りやめたのは、被控訴人G社の業績の悪化を踏まえた経営判断(完全子会社化を断念し、事業の運営と存続に事業資金を注入する)に基づくものである旨の被控訴人らの説明を裏付けるものといえる。そうすると、結果的にK及び被控訴人ら関係者を除き、被控訴人G社の株式を保有しているのが控訴人だけであるからといって、本件スクイーズアウトが実施されなかった背景に控訴人が主張するような事情があったことはうかがわれない。上記控訴人の主張は採用できない。
(2)争点2の2について
控訴人は、本件スクイーズアウトの実施が確実なものではないことは株主の判断のために重要な事項であり、Tは、被控訴人G社の取締役として、控訴人に対し、このことを適切に開示すべきであったと主張する。しかしながら、本件説明が本件スクイーズアウトの実施の確実性に対する正当な信頼を惹起するものとはいえない以上、少なくとも本件においてTにおいて控訴人に対して控訴人が主張するような対応を積極的に行う法的義務を負う理由はないというべきであり、上記控訴人の主張は採用できない。
(3)控訴人は、その他種々主張するが、いずれも上記認定判断を左右するものとはいえない。
第4 結語
以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、控訴人の請求はいずれも理由がない。したがって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官 小出邦夫
裁判官 田中孝一
裁判官 中嶌諏訪
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