カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2025年11月03日 ニュース特集 Q&Aで読み解く新リース会計基準と法人税基本通達(2025年11月3日号・№1097)

ニュース特集
税会一致に向け通達で会計基準を容認
Q&Aで読み解く新リース会計基準と法人税基本通達


 改正リース会計基準が令和6年9月13日に公表された。改正リース会計基準は、IFRS第16号「リース」と同様、借手のリースについて、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースについて、貸借対照表に使用権資産及びリース負債を計上することになり、現行のリース会計基準と大きく異なることとなった。
 令和7年度税制改正では、新リース会計基準を踏まえて税制が改正されるか否かが注目されることになったが、税制については大きく改正されず、“税会不一致”となり、オペレーティング・リースは、現行どおり賃貸借取引として支払賃借料の額を損金算入することができるとされた(法法53条)。ただし、国税庁では、会計基準と税務を一致してほしいとの業界団体等からの要望を踏まえ、令和7年6月30日に公表した「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」では、新リース会計基準による会計処理を容認する旨の取扱いを定めている。
 本特集では、新リース会計基準とこれに伴う法人税基本通達の改正の概要について、Q&A形式で解説する。

すべてのリースを使用権資産とリース負債に計上

Q
新リース会計基準の概要について教えてください。
A

 国際的な会計基準との整合性を図るため、リースの借手については、これまでのオペレーティング・リース(賃貸借取引に準じた会計処理)とファイナンス・リース(売買取引に準じた会計処理)の区分を廃止し、使用権資産とリース負債を計上する単一の会計モデルを採用することとなった。一方、貸手については、引き続きオペレーティング・リースとファイナンス・リースを区分することとし、その区分に応じた処理を行うこととされた。なお、ファイナンス・リースの場合の会計処理のうち、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法(第2法)による会計処理は、収益認識会計基準において割賦基準が認められなくなったことを踏まえて、廃止されることになった。適用は、令和9年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用することとされるが、令和7年4月1日以後に開始する事業年度の期首からの早期適用も認められている。このため、令和7年度税制改正では、新リース会計基準公表に伴う税制改正が行われている。

オペレーティング・リースは引き続き支払賃借料の損金算入可

Q
令和7年度税制改正での法人税法の改正について教えてください。
A

 新リース会計基準の公表に伴い、令和7年度税制改正では、①オペレーティング・リース取引に係る契約をした事業年度以後の各事業年度においてその契約に基づきその法人が支払うこととされている金額がある場合には、その支払うこととされている金額のうち債務の確定した部分の金額をその各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する (引き続き賃貸借取引として支払賃借料を損金の額に算入)、②令和9年4月1日以後に締結された所有権移転外リース取引に係る契約に係るリース資産の減価償却(リース期間定額法)については、そのリース資産の取得価額に含まれている残価保証額を控除しないこととし、リース期間経過時点に1円(備忘価額)まで償却できる、③新リース会計基準において割賦基準(第2法)が認められなくなったことを踏まえ、法人税法上のリース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例(延払基準の特例)が廃止された(なお、引き続き第1法及び第3法の適用は可)。
 結果、下記にあるように、会計と税務上の取扱いが異なることになった。税務上の取扱いは変わらないものの、会計上の取扱いが変更になったことで、これまで同様に損金算入することができるよう、法人税法53条を別途定めることで他の取扱いと区分することになっている。

リースとサービスの区分の会計処理、改正通達も容認

Q
 新リース会計基準では、リースを識別した上で、「リースを構成する部分」と「リースを構成しない部分」とに区分するとされていますが、改正法人税基本通達ではどのような取扱いとなっていますか。
A

 新リース会計基準では、取引の契約締結時にリースを含むか否かを判断(リースの識別)した上で、リースを含む契約である「リースを構成する部分」といわゆるサービス部分となる「リースを構成しない部分」に区分することが求められている。リースの識別については、これまで定めがなかったもの。リースの識別の判断に当たっては、「契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースに含む」とされており、これまではリースとして会計処理されていなかった契約がリースに含まれる可能性がある。
 今回の改正法人税基本通達(以下、「改正通達」)では、リースの識別については規定されていないが、リースとサービスの区分については、新リース会計基準による会計処理を行っている場合には、そのまま税務上も認めるとの見直しが行われている(改正通達7−6の2−17、12の5−3−3)。なお、貸手についても同様である(改正通達2−1−1(2))。

会計上のリース期間を税務上も使用可能

Q
 新リース会計基準では、リース期間の見直しが行われていますが、法人税法の改正は行われていません。税務上、会計上のリース期間をそのまま使用することができますか。
A

 新リース会計基準では、借手のリース期間について、IFRS第16号の定めと整合的に、借手が原資産を使用する権利を有する①解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの②解約オプション期間及び③延長オプション期間を加えて決定することとされている。
 この点、改正通達では、リースの借手が新リース会計基準のリース期間を用いて経理を行っているリース資産に係るリース期間定額法の規定の適用に際しては、その新リース会計基準に定めるリース期間を用いることを容認している(改正通達7−6の2−10の2)。
 なお、貸手のリース期間に関する通達改正は行われていない。しかし、新リース会計基準では、貸手のリース期間について、従来の「借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間にリースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法」のほか、「借手のリース期間と同様に決定する方法」が認められているため、貸手についても同様に新リース会計基準に定めるリース期間を用いることができるとされている。

税務上は使用権資産から借地権や資産除去債務費用を控除

Q
 現行のリース資産の取得価額と新リース会計基準との使用権資産として計上される金額とは異なるように思います。改正通達ではどのような見直しが行われていますか。
A

 従来の通達(法基通7−6の2−9)では、「賃借人におけるリース資産の取得価額は、原則としてそのリース期間中に支払うべきリース料の額の合計額による。」とされている。このうち「リース期間中に支払うべきリース料」とは、リース契約で支払うことと定められているリース料の額のことをいう。一方、新リース会計基準の使用権資産とは、「借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産」とされ、使用権資産として計上される金額とは少し範囲が異なる。このため、改正通達では、税会一致が可能となるよう、法基通7−6の2−9の本文前段について、「そのリース期間中に支払うべきリース料の額の合計額」を「そのリース期間中リース料の額の合計額」に改正することで、新リース会計基準を適用することも容認する見直しがなされている。
 したがって、中小企業など、新リース会計基準を適用しない法人については、改正前と同様、リース期間中に支払うべきリース料の額となり、新リース会計基準を適用する法人については、使用権資産として計上される金額で算定することが可能になる。
 しかし、使用権資産として計上する金額を算定する際には、税務上、取得価額とすべきではないものが含まれているので一定の調整を図る必要がある。新リース会計基準では、①借地権の設定等に係る権利金等、②資産除去債務に対する除去費用についても使用権資産に含まれているが、税務上①に関しては、通常は土地等の非減価償却資産であり、リース資産の取得価額に含めないことが明らかであり、また、②に関しては、従来から税務上の固定資産の取得価額を構成しないものと取り扱われているため、これらは使用権資産に計上される金額から控除することになる。この点は、従来からその取扱いが明確であるとの理由から特に通達改正は行われていないので留意したい。

使用権資産の減価償却費も損金経理可

Q
 リース資産に係る「使用権資産」について減価償却費として経理した場合であっても、損金に算入できると考えてよいですか。
A

 新リース会計基準では、借手はすべてのリースについて、財務諸表に使用権資産を計上し、各リース期間について、使用権資産の減価償却費を計上することとされている。一方、税務上は、法人税法の改正はなく、リース資産に係る減価償却費のうち損金算入される金額は、通常の減価償却資産と同様、その償却費として損金経理した金額のうち、一定の金額に達するまでの金額とされている(法法31①)。
 この点、リース資産に係る使用権資産の減価償却費を損金として経理することができるのか疑問に思うところだが、税会一致とするよう、改正通達では、リース資産に係る「その償却費として損金経理をした金額」には、内国法人がリース資産についてその確定した決算において当該リース資産に係る使用権資産をリース期間の減価償却費として経理した金額が含まれる旨が明らかにされている(改正通達7−5−3)。

フルペイアウト要件、会計上の要件をいずれか満たせば税務上もOK

Q
 今回、新たにリース取引の判定に関する通達(法基通12の5−1−3)が新設されています。具体的にはどのような内容ですか。
A

 ファイナンス・リースの取引の判定については、会計も法人税法も解約不能要件及びフルペイアウト要件があり、ほぼ同じ要件となっているものの、フルペイアウト要件の詳細については若干異なる部分がある。
 会計基準では、①貸手のリース料の現在価値が、原資産の現金購入価額の概ね90%以上であること(現在価値基準)、②貸手のリース期間が、原資産の経済的耐用年数の概ね75%以上であること(経済的耐用年数基準)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定される(新リース会計基準適用指針62)。一方、法人税法上は、その賃貸借期間において賃借人が支払う賃借料の金額の合計額がその資産の取得のために通常要する価額のおおむね百分の九十に相当する金額を超える場合(法令131の2②)とされている。
 この点、改正通達では、新リース会計基準の①又は②のいずれかに該当すれば、税務上もフルペイアウト要件を満たすこととしている(改正通達12の5−1−3)。借手についても同様だ。フルペイアウト要件については、新リース会計基準で内容面での改正が行われたわけではなく、改正通達は、これまでと同様の取扱いを明確化したといえそうだ。
 なお、サブリースに係るリース取引の判定についても、同様の取扱いが新たに措置されている(改正通達12の5−1−4)。サブリースが新リース会計基準の上記①又は②の基準に該当する場合には、法人税法のフルペイアウト要件にも該当することになる。また、借手についても同様の読み替え規定が手当てされている。

フリーレント期間を含む支払額の損金算入の可否

Q
 改正通達(法基通12の5−3−2)では、いわゆるフリーレント期間に関する取扱いが定められていますが、具体的な内容について教えてください。また、通達にある「課税上弊害があるもの」とは何ですか。
A

 新リース会計基準では、フリーレント(契約開始当初数か月間賃料が無償となる契約条項)に関する会計処理を明確にして収益認識会計基準との整合性を図るため、貸手は、オペレーティング・リースによる貸手のリース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上することとしている。
 一方税務上も、今回の改正通達では、賃借料総額のうち賃借期間の各事業年度に対応する金額を損金経理して損金に算入する方法が明記されることになった。キャッシュアウトが生じていない期間についても前倒しで損金として計上することが可能になる。例えば、賃借期間が5年間(このうちフリーレント期間が5か月)で、賃借料が総額3,300万円(月60万円×(60月−5月))の場合、改正通達によらない場合の1年目の損金算入額は420万円(1月60万円×7月)となるが、改正通達によれば、1年目の損金算入額は660万円(1月55万円×12月)となる。

 ただし、この改正通達の取扱いは、「課税上弊害があるもの」には適用できないとされ、具体的には、①フリーレント(無償等賃借)期間に関する定めがないとした場合に当該賃貸借取引につき支払うこととなる金額と当該契約に基づき支払うこととされている金額との差額が当該契約に基づき支払うこととされている金額のおおむね2割を超える場合、②賃借期間の開始の日の属する事業年度終了の日において、フリーレント(無償等賃借)期間内の日の属する各事業年度のいずれかの事業年度で、当該事業年度における賃借期間のおおむね5割を超える期間が賃料の支払がない又は通常に比して少額であるものとなると見込まれる場合(当該契約に係る無償等賃借期間が4月を超える場合に限る)とされている。
 例えば、賃借期間が2年間(このうちフリーレント期間が5か月)で、賃借料が総額1,140万円(月60万円×(24月−5月))のケースでは、1,440万円(フリーレント期間がない場合の支払金額)と1,140万円の差額である300万円と228万円(1,140万円×0.2)を比べることになる。結果、差額である300万円の方が大きくなるため、前述①の課税上弊害がある場合に該当することになる。また、賃借期間が5年間(このうちフリーレント期間が7か月)で、賃借料が総額3,180万円(月60万円×(60月−7月))のケースでは、前述②の課税上弊害がある場合に該当する。フリーレント期間が7か月あると、賃料の支払がない期間が5割を超えることになるからだ。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索